2023.09.25
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応に関するお知らせ

2023年10月01日(日)より、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されますので、弊社の同制度への対応についてお知せいたします。

弊社ではインボイス制度の対象となる課税取引のご利用について、
2023 年10月以降の決済分より、同制度の要件に対応できるようにいたします。

【当行適格請求書発行事業者登録番号のご案内】
株式会社アックスコンサルティングの登録番号をご案内いたします。

適格請求書発行事業者登録番号
T9011001004344
 

アディーレの弁護士たち 楽器が好き!杉田浩之弁護士

短期集中連載『アディーレ法律事務所5人の弁護士たち! Vol.01』 10年のブランクからリターンマッチで司法試験突破! 元・楽器店経営 杉田浩之弁護士

日本最大級の規模を誇る“弁護士法人アディーレ法律事務所に所属する弁護士の半生を、リアルに紹介する特別企画が今回よりスタート!
記念すべき第1回目にご紹介するのは、杉田浩之弁護士(すぎたひろゆき)です。

老舗楽器店の子息として生まれ、学生時代に司法試験に挑戦するも、突然の父の脳梗塞から受験を断念。
しかし、10年のブランクを経て、再挑戦し弁護士の道を勝ち取るまでのヒストリーをお伝えします。

 

実家の父が倒れ司法試験断念!
稼業を継ぐ傍ら、諦めきれない弁護士の夢

「私には、ハイドンの交響曲がぴったりとハマったんです」

二度目の司法試験へ挑戦中、朝、起床と共にクラシックを聴くことが杉田氏の習慣となっていた。実家が埼玉県の老舗楽器屋で、一時は稼業を継いだ時期もあり音楽への造詣が深い。後に弁護士となり、現在はアディーレ法律事務所に在籍し活躍しているのだが、この時は己のマインドをクラシック音楽により整えていたのだ。

この独自の勉強法は後半に詳しく説明するが、杉田氏には一度、司法試験を断念した過去がある。今回はそんな杉田氏の受験記をお伝えしたい。


時代はITバブル前夜の1995年。東京・早稲田大学のキャンパスに杉田氏はいた。当時、法学部の4年生で旧司法試験突破を目指し猛勉強中であり、その甲斐もあって択一試験を合格。論文試験では落ちたものの、最難関といわれる司法試験だけに1度目の挑戦で択一試験突破は大金星。十二分の自信をつけて翌年の試験に備え、果敢に挑戦すべく、日々六法と格闘を続けていた。

しかし、そんな杉田氏に逆境が訪れる。卒業を間近にに控えた4年生の秋、実家の父親が脳梗塞で倒れたのだ。幸い一命を取り留め、ある程度回復はしたものの、後遺症で一部の記憶がなくなるなど生活上に諸問題を抱えることとなった。
父親は自営業で楽器店を営んでいたのだが、こんな状態で取引先へ一人で出向かせるわけにはいかず、杉田氏は兄と共に稼業の楽器店を継ぐことになる。本心は卒業後も司法試験の突破を目指して勉強に専念したいと考えていたが、規模はいわゆる“町の楽器屋”で、経営者といえど店頭の接客から楽器の搬入のため車両の運転など、兄と二人で店の大半を切り盛りしなければならなかった。最初は経営者と受験をうまくこなして……と、数年間、二足のわらじで頑張ってみたが、そもそも旧司法試験は合格率1%前後の最難関試験。

次第に受験勉強から遠のいていった……。
 

さて、その後、杉田氏はあることをきっかけに再び学習を始めるのだが、その前に、そもそも弁護士を志した理由をご紹介したい。

 

“仕事”は生涯現役を貫きたい!

「もともと私自身は理系寄りの人間で、高校時代は科学部の部長を務めながらで動くリニアモーターカーの模型を製作したり、液体窒素を使った超電導の実験などをしていました。なので、充当にいけばエンジニアといった類の仕事についていたかもしれませんが、知人からシステムエンジニアは高齢になるまで現場で仕事ができない、という話を聞きました。それは企業の仕組み上、管理職になってしまうからという意味ですが、私は父が自営業だった影響もあってか、生涯、最前線の現場で仕事をしていたいと考えていました。
そんなとき、法律職というのは、太古の昔から国の統治には欠かせないもので、多少形が変わるかもしれませんが、生涯現役で仕事ができるのでは?と思い、また“困っている人を助ける”という要素も仕事としての大きな魅力を感じました。さらに司法試験が難しいことも逆に“やってやろう!”という気持ちになりました。」

一方、杉田氏は実家が楽器屋。物心ついた頃から楽器に囲まれた生活を送っていたのだから、ミュージシャンや演奏者に対しての憧れはなかったのか?杉田氏から、非常にシビアな考えが返ってきた。


「私が小さいころから、両親は『楽器演奏は、趣味なら人生を豊かにするが、仕事にしてはいけない』と口酸っぱく言ってきました。やはり常に楽器と接してきたからこそ、その辺の感覚はよくわかっていたのでしょう。また、ひと昔前はイベントがあると、その都度、演奏者が呼ばれましたが、オーディオ機器の発展により、そういった仕事が減ったのも大きく影響しています」

こうした考えから、最終的に杉田氏は弁護士を目指すのだが、やはり最難関の試験。まだまだ果てしない道のりが続く……。
 

突然の訪問客が
再び司法試験受験に火をつける

仕事に追われる中、受験勉強への真剣味は薄くなり、本を開いているけれど頭に入ってこない。そしていつしか本も開く時間がなくなり、勉強そのものを全くしなくなった。司法試験を目指していたのは過去の思い出になり、すっかり昔の出来事として遠い目をするようになった。

2000年代に入りインターネットが全盛となって楽器の販売経路も変化し、海外の希少な楽器を扱うなど仕事の幅も広がった。父の臨時代理で受験と兼業のつもりでやってきた楽器店の経営者も板についたその頃、ある少女とその父親と思われる紳士がふらりと来店した。聞くと、フルートを探しているという。慣れた接客で少女に適したフルートを選び、その紳士と世間話をしていたところ、なんと、その紳士は弁護士であった。

「お客さんと世間話の延長で、学生時代に司法試験を目指していた話をしたところ、その弁護士の先生は興味深く受験時の様子を聞いてきました。私は正直に、初年度に択一は合格したけど、論文は駄目だったと話をしたら、今は法科大学院という制度があって、旧司法試験で択一を突破したなら充分に可能性がある。もう一度、挑戦してみたら?というような話をされたんです。」

この、何気ない紳士の言葉が杉田氏の中にくすぶっていた司法試験への熱い気持ちを掻き立てた。幸い、前述のインターネット販売もうまくいっており、楽器店の経営は安定していた。
今ならやれるかもしれない。しかし、“二足のわらじ“でクリアできるほど、司法試験が甘くないことも自身の経験から知っていた。

「俺にもう一度チャンスをくれないか?」

新制度ゆえ法科大学院への通学を含めて数年間は勉強漬けにならなければ、弁護士への道はとうてい無理だ。そのため、仕事を離れなければならない。杉田氏は、胸の底にしまっていた司法試験への熱い思いを家族に話す。兄と母は快く賛成してくれたが、父には反対された。

「父は厳しいことを言いました。新司法試験の制度は法科大学院を卒業後、5年間のうち3回受験のチャンスがあります。そのため、どこか1回受かればいいような気持ちが正直ありました。しかし、父は私の“たるみ”を見切っていたのかもしれません。シビアに“そんな考えじゃ落ちるぞ!”と。“試験に落ちたら、また楽器店にもどってくるのか!! その時、オマエは幾つになっているんだ”と激を飛ばされました。今になって振り返ると、この言葉は父なりのエールだったと思います。私はなんとしても1発で受かることを誓い、再び受験生活を始めました。」

 

新・旧司法試験のギャップ

法科大学院の既修者のコース(2年)へ入学し、猛勉強の毎日が始まった。約10年のブランクがある中、試験制度も変わっており、単純に過去の勉強の延長では受からない。新・旧どちらの試験も変わらない点、変化した点、この2つを冷静に分析する必要があった。
まずは、司法試験を受ける上でベースとなる学習を調べてみると、かつて学習の王道であった基本書の重要性は陰り、“判例を読む”ことこそが試験突破の最優先課題になっていた。さらに、学説は二の次、三の次となり、勉強の進め方が大きく異なっていたのだ。

「学生時代は、判例をそのまま受け取るのではなく批判的に読まなければならない、判例変更を主導するような学者が書いた基本書を精読しなさい、と教えられました。それこそ学説を発する先生の意見と心中をするぐらいトコトン追及していきましたが、新試験では学説は学者の一意見に過ぎず、むしろ判例をよく読んで理解しなさいと、逆のような見解になっていました。」

杉田氏は再挑戦初期、今までの勉強や教材は使えないのでは……と、愕然とする。が、だんだんと新・旧試験の共通点をみいだし、司法試験受験の優先順位、条文、判例、学説とペースを取り戻していった。

「新試験は採点者から見た、広い視点が必要なんです」

10年のブランクは無駄ではなかった。時が経ったから理解できる俯瞰した視点がそこにはあった。
 

受験生必見!? クラシック勉強法で
怒涛のスパートがはじまる!

受験勉強を進める内に様々な不安が頭をよぎる。これは司法試験に限らず誰しも受験をすれば体験することだろうが、杉田氏はここで、かつての経験を活かしたマインドの調整法を試みた。
これは朝、起床後に数分間クラシック音楽を聴くというもの。楽器店経営の中で覚えたクラシック。もともと“音楽は脳に良い”と提唱する学者はいるが、これを自分なりに実践していった。

「受験勉強に対してモチベーションを高める目的で、色々なクラシックを試していきました。すると音楽によって調子の良し悪しが表れたのです。まず、最初に聴いていたのがベートーヴェン。もともと好きなのですが、曲が非常に強い。とにかく強すぎるんです。司法試験というのは膨大な範囲から出題されるので、すべての範囲を完全に網羅することは不可能です。それゆえ誰しもが“ここが出題されたら……”という不安があります。自分の調子が悪い時に聴くと、この不安部分が増大し、負けてしまうんです」

「これぞ!」という一曲を探すため、次々にクラシック音楽をかけていった。

「次にバッハを聴いてみました。バッハは非常に理詰めの音楽のせいか、勉強も理屈重視になっていき余裕がなくなりました。その次はモーツァルト。とても心地良く、メロディアスで人情的なんです。だけど、それが頭に残り過ぎて、試験中に何度もリフレインするんですね。事案の処理も人情重視で考えすぎてしまう。これはいかんとハイドン(フランツ・ヨーゼフ・ハイドン)をかけてみたんです。ハイドンはコンサートなどでもメインになることは少なく、それほど一般的ではないのですが、よく聞いてみると……仕掛けを作って、曲にして、聴かせるといった“職人芸”のようなところがあるんです。
これが“答案のつくり方”に似ているんです。法律の論文のつくり方は原告、被告、裁判官と多方面の見解が必要で、理屈だけや人情だけに偏らず、それぞれの事案に応じた重要な部分を見つけ出し、手を変え、品を変え、更にひとひねりを加えて解答を作っていきます。その作業が似ているように感じました」

杉田氏はヨッフムという指揮者がタクトを振る、ハイドンの交響曲の選集の中で、各交響曲の第一楽章と第四楽章がモチベーションの維持にマッチしたそうだ。試験の前には必ず聞いていたという。

そして、迎えた司法試験本番……。
積み上げられた努力の結果、1回での受験に成功!
苦節、10年のブランクを見事に克服したのだ!!

「ブランクのある人が司法試験を突破するために大切なモチベーションを申し上げるとすれば、まず“諦めない”、そして“一生懸命やったことは役に立つ”、最後に“前向きに”の3点です。特に一生懸命やったことは役に立つというのは大切で、これは司法試験に限ったことではないです。私は楽器店をやっていたとき、お客様に合った楽器選びができるよう、毎日一生懸命接客をしていましたが、真っ直ぐ弁護士になった人と比べると、回り道の無駄な時間を過ごしてしまったと考えていました。しかし、今になって振り返ると、楽器店時代の接客経験が非常に生きています。
依頼を受ける際に、人から話を色々と聞くのですが、言いにくいようなこともあるわけです。それを話し易いことから徐々に核となる部分を……開いていく。こうしたコミュニケーションが実務の上では特に大切なことです。
一生懸命にやったことというのは、必ず、後にも生きるんです!ブランクは無駄な時間ではないんです!」


いかがでしたでしょうか。
10年のブランクを乗り越えて、合格した杉田氏の半生は非常に興味深いものでした。
人生は様々です。決して恵まれた環境の人ばかりではありません。弁護士という尊い身分があろうと、その道のりには高い壁がそびえています。逆境にいたからこそ、依頼者の苦しむ気持ちが理解できる杉田氏は、まさに弁護士として最も大切な経験を積んでいるといえるでしょう。
 

アディーレ法律事務所の次回企画予告

次回はアディーレ法律事務所にて勤務する、現役の僧侶兼弁護士、秦和昌(はたかずまさ)弁護士です。お楽しみに!

プロフィール
杉田 浩之(すぎた ひろゆき)氏

弁護士

資格:弁護士・応用情報技術者
所属:東京弁護士会
出身:埼玉県
出身大学:早稲田大学法学部・明治大学法科大学院
所属委員会等:弁護士研修センター運営委員会

公式ホームページ(弁護士法人アディーレ法律事務所)
https://www.adire.jp/profile/sugita_hiroyuki/

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