10年で100名体制を確立初心者でも活躍できる梶浦式生産管理術とは

2020.05.26
株式会社アックスコンサルティング

10年で100名体制を確立した税理士法人Bricks＆UK。
「一人が処理できる業務量には限界がある。職員が活躍できる仕組みをつくらないといけない」
と語るのは、代表税理士の梶浦潮氏。
どのように取り組めば初心者でも活躍できる環境にできるのか、「梶浦式生産管理術」についてお伺いしました。

監査法人のように税理士にも寡占化の波が

税理士法人Bricks＆UKは設立して10年で100名体制になりました。
事務所規模の拡大にこだわったのは、税理士法が改正され、少数の大手事務所にお客様が集中してしまうと思ったからです。
この現象は監査法人で起こっています。
当たり前ですが、お客様は「小さい事務所」よりも「大きい事務所」を選びます。
「開業当初の梶浦」と「現在の梶浦」を比較してみましょう。
10年で私の能力は変わっていません。
むしろ年を取り能力が下がっている可能性があります。
それでもお客様は、100名体制の「現在の私」を選ぶでしょう。
事務所規模が大きいことは、営業するうえで武器になるのです。

100名体制を確立するには、自分の能力に固執してはいけません。

一人が処理できる業務量には限界がありますから。
初心者でも活躍できる仕組みをつくる必要があります。
これに気づいたのは、スタッフ数が20名を超えたときですね。
仕組みづくりについて何度も試行錯誤し、到達したのが製販分離という考え方です。

入力作業を行う「ラボ」と、お客様へ訪問する「ビジター」というチームをつくりました。
ラボは15名のスタッフで構成されていますが、正社員はわずか1名しかいません。
パートさんに活躍していただいています。
ラボが作成した帳票は、税法のプロ集団「品質管理チーム」がチェックします。
能力が高い職員は実務をするのではなく、クオリティコントロールに徹してもらうのです。

1時間当たりの売上高で生産管理を行っている

ビジターは「スループット」という指標を使い、管理をしています。
スループットとは、1時間当たりの個人売上高です。
計算式は「売上高／作業時間」となります。
スループットの標準ラインは5,000円／時に設定しており、このラインを超えないと一人前と呼ばれません。
5,000円に設定したのは、入社して1年目の人が無駄なく作業すれば達成できる数値だからです。
ビジターはスループットに比例して評価が変わります。
入社して4、5年目になると、1万～2万5,000円になる人もいますよ。

また当事務所は残業を60時間までに設定しています。
ビジターは「1ヵ月の業務時間（236時間）＝1営業（8時間）×1ヵ月（22日）＋残業時間（60時間）」で業務を行わないといけないのです。
個人の月間売上高はスループットと業務時間を掛け合わせると算出されます。
たとえばスループットが5,000円だとすると「5,000円／時×236時間＝118万円」となります。
売上高から目標設定していたこともありますが、職員が疲弊してしまいますね。

業務時間を短くするとスループットの数値が上がり、評価もよくなりますので、職員は早く業務を終わらせようとするわけです。
スループットは全社員が毎日見れるようになっており、私も毎日10分ほど見て、問題が発生していないか確認しています。

当事務所の仕組みはトヨタの生産管理を参考にしてつくられたものです。
トヨタはスペシャリストがいなくても自動車を組み立てられる仕組みを構築しています。
試算表作成は自動車をつくるよりも簡単ですから、会計事務所が仕組みをつくるのは不可能でないと思いますよ。

プロフィール

税理士法人Bricks & UK
愛知県名古屋市
代表税理士
梶浦潮(かじうらうしお)氏

慶応義塾大学経済学部を卒業後、世界5大会計事務所のひとつアーサー・アンダーセンで経営コンサルタントとして活躍。
自動車部品の世界シェア第1位を誇る株式会社デンソーを担当し、経理業務向けトヨタ式カイゼン手法を開発した。
2007年には税理士法人Bricks＆UKを設立。