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税理士がやってはいけない! 工夫のない値下げ 記事

税理士がやってはいけない工夫のない値下げ

長年、地元の中小企業経営者の相談にのってきた税理士のAさん。
物腰の柔らかい人柄と、生まれついての人の良さが評判となり、順風満帆の税理士人生を送ってきました。
ただ、Aさんの悩みの種は自身の年齢。70歳を過ぎた身体で、日々業務をこなしていくことに限界を感じていました。
しかし、事務所をまかせられる人材にはめぐり合えず、迷ったもののAさんは廃業を決意します。
この時点で14件の顧問契約があったため、Aさんは急いで予定していた引継ぎ先事務所に声をかけました。

 

人望が厚いAさん、引き継ぎ先も容易のハズ……でしたが

Aさんは知り合いの同業者も多く、引継ぎ先は容易に見つかるものだと思っていました。
ところが、Aさんは多少理不尽だと思っても顧客から泣きつかれると断らなかったため、それが『顧問料』にもあらわれていたのです。

 

価格が上がる!? 納得できない顧客は炎上

一般的な税理士事務所への依頼料は
・個人の確定申告のみ   数万円~
・仕訳もすべて任せる場合   10万円前後
・顧問報酬   月額3万円前後

それに対して、Aさんの場合は
・個人の記帳   1万円
・確定申告も含む   3万円

市場相場との隔たりが大きく、予定していた引継ぎ先も「これはちょっと……」と首をかしげる状態に。
Aさんは顧客に「今後は料金が高くなる」と懸命に説明しますが、納得してもらえたのは14件中7件。
他の顧客たちは価格の値上げに納得がいかず、最終的に話し合いは決裂。
独自で探すとの結論に至りました。
しかし、Aさんの激安料金に慣れてしまった元・顧客たちはどこの税理士事務所でも容易には折り合わいがつかず、本業にも影響がでてしまいました。

 

 

市場価格を無視するのはNG?

上記のケースを考えた場合、原因はAさんの料金設定にあることは明白です。
ただ、経営者もコスト感覚にシビアですから、料金提示に対して即OK、ということは難しいでしょう。
今回、Aさんはどうしたら良かったのか?
この場合、お客さんの話をしっかりと聞いて事情を把握するのはもちろんですが、こちらからの提案が足りなかったことが考えられます。
お客さん、つまり経営者は常に“不安”を抱えています。
なので本心は「顧問として常に傍らにいてほしい」……のですがコスト面を考慮した結果、しかたなしに単発契約ということが多いのです。
もちろん例外もありますが、顧問がいることが望ましいのは事実です。

 

確定申告の代行は受けるべきでない

よくインターネットで検索すると
『確定申告代行 激安!』といった単発依頼のキャッチコピーを見ることがあります。

たしかに安いので、知識のない経営者は飛びつくかもしれませんが、今は会計ソフトの利用で申告書が自動作成されることを考えると、これはあまり意味がないと思われます。
顧客に対して、安価な提案ばかりして仕事をとっても、今回のようにトラブルの原因になります。

ここで妥当なのは、
・会計ソフトをうまく使うことにより顧問先にも負担をお願いする
・必要ならクラウド会計ソフトの導入を指南する

といったような対応をすることです。

現在、多くの経営者は経理の処理に会計ソフトを導入しています。
その種類を大別すると昔からあるインストール型と近年、脚光を浴びているクラウド型に分かれます。
クラウド型だと作業場所を固定されず、バージョンアップなどによる継続費を抑えるメリットがあり、預金取引やカード取引を自動取得できるなど、より便利になっていることが特徴です。

今回のケース、人の良さが一番の“売り”だったAさんですが、長年の税理士人生の最後の幕引きに大きなトラブルが起きてしまいました。
Aさんは純粋な善意に基づいての『激安価格』でしたが、それは決してよい顛末につながる訳ではありません。
お金のプロである税理士だからこそ、適正な市場価格を常に心がけるべきでしょう。