2023.09.25
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応に関するお知らせ

2023年10月01日(日)より、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されますので、弊社の同制度への対応についてお知せいたします。

弊社ではインボイス制度の対象となる課税取引のご利用について、
2023 年10月以降の決済分より、同制度の要件に対応できるようにいたします。

【当行適格請求書発行事業者登録番号のご案内】
株式会社アックスコンサルティングの登録番号をご案内いたします。

適格請求書発行事業者登録番号
T9011001004344
 

エストニア 「税理士が消えた!?」IT大国電子政府誕生で何が変わる?

エストニア 「税理士が消えた!?」IT大国電子政府誕生で何が変わる?
「税理士が消えた!?」という字面だけ見ると衝撃的な事件のように感じるかもしれませんが、正しくは「税制が簡素化されたことで、個人の顧客を対象にした仕事がなくなった」ということ。
IT先進国エ ストニアの事例は、日本にとって対岸の火事や否や――?

税理士の仕事はAIに取って代わられる?

会計業界のビジネスは、テクノロジーの進化に後押しされ、変化してきました。
手書きから、ハード・ソフト一体型のオフコンの時代へ。
パソコンが普及し自計化へと舵を切る。
自社サーバーを構築し、インストール型の会計ソフトが業界を席巻したかと思えば、SaaS(サース)を経て、現在はクラウド会計ソフトの時代になりつつあります。

さて、2015年の1月、多くの税理士の方にお集まりいただいたアックスコンサルティング主催の新春感謝祭での、大前研一氏の講演は衝撃的なものでした。

IT大国エストニアで「税理士が消えた」というのです。
ロシアから独立したときに初代の首相が元IT会社の社長。
この元IT会社の社長がエストニアの情報社会化を推し進め、IT大国になっていったのです。

エストニアでは、健康保険、銀行口座へのアクセス、デジタル署名、選挙での投票、政府データベースへのアクセス、カルテ、納税記録の確認や、バスに乗るなどについてまでも、クロスロード( X-ROAD/制度を横断する情報交換基盤)というもので1つにまとめてしまったというのです。

「1年間の取引を全部、銀行でやるんです。リアルな銀行はATMしかない。電子銀行でやっていると、自分の使った金、給料、その他、全部わかります。これが月末になると家計簿に、年末になると政府から自動的に納税する分をその銀行から引かれます。」(大前氏)
 

日本はエストニアのように税制を簡素化できるのか?

「世界中どこにいてもエストニアの人は、地方選だろうが、国会の選挙だろうが、選挙1週間前から投票して、国会の議事進行も全部覗けるようになっています、スマホで。それから、あの代議士、一体どれくらいの資産を持っているんだろうか?とか、公的な立場にある方の資産は、国民が全部、覗けるようになっています」(大前氏)

エストニアと比べると、日本の税制は非常に複雑であり、簡素化するための課題が多すぎます。
それゆえ、日本の税制が簡素化されることは当面ないと考えられています。

エストニアでは、政治、歴史、経済、環境など、さまざまな条件がタイミングよく整ったからこそ、税制を簡素化することができた。
それによって、「税理士が消えた世界最初の国」を実現できたのだろう。

「皆さんの商売(税理士・会計士)がいらなくなるんですよ。現実にそういう国が1つだけできたんです」(大前氏)

そして、近年、エストニアの電子政府の実態を確かめるために、日本からの見学が殺到しているようです。

「私は質問しました、ここ(エストニアでの取材先)のチーフインフォメーションオフィサーに。そういう業界(税理士・会計士)から文句は出なかったんですか? と言ったら『113万人しかいないので、税理士になる優秀な人は他に商売がいっぱいあるし、気にもしていないです。いくらでもこの国は職があるので、もっと付加価値が高いことをやってもらうと。納税申告がいらなくなりました』と」(大前氏)

納税申告がいらない国が1つできたというのは事実だが、「日本がここまで行くのは 22 世紀ですから、たぶん皆さんがいる間にはならないと思います」(大前氏)
 

日本で税理士の仕事がなくなるのか?

エストニアへの見学が殺到したということからも、「税理士が消えた」という、大前氏の講演の衝撃的なテーマへの関心度が高いことがうかがえます。
ただ、言葉のインパクトがあまりにも強かったために、特に先生方の間では、言葉がひとり歩きをし始めてしまったようです。

これを受けて、本誌編集長・広瀬元義は新春感謝祭(2017年1月/主催:アックスコンサルティング)で「日本では税理士の仕事はどうなるか?」ということについてエストニアについての話を交え、見解を示しました。

「バルト3国のひとつであるエストニアは、1人あたりのGDPが1万7288USドルほどの小国で、これは日本の約半分。人口は約131万人で、日本の100分の1程度。ちょうど川崎市の人口と同じくらいだ。」(広瀬)

大前氏の話の中で出てきたエストニアの国民ID制度「クロスロード( X-ROAD )」がなぜスムーズに普及したかについては「もともと社会主義の国で、国民の個人情報を持っていたことから、データベース化もすぐにでき、個人の確定申告の自動化が早く進んだのだ。ようやくマイナンバーが導入されたが、なかなか普及が進まない日本とは大違い」(広瀬)との見解です。

そして、先生方にとって最大の関心事である、「日本で税理士の仕事がなくなるのか?」ということについては、
「『日本でもいつか税理士がなくなるのではないか』という見方があるが、私はそうは思わない。まず、人口が100分の1のエストニアと日本とでは、環境がまったく違う。個人の年末調整や確定申告といった手続き業務は、いずれ自動化するかもしれないが、アメリカでは申告代行会社のH&Rブロックが今なおしっかり残っている。法人の場合、コンサルタントのような第三者のサポートがないと、税務申告は無理ではないだろうか? エストニアから税理士がいなくなったからといって、日本でもすぐに税理士の仕事がなくなるとは考えられない」(広瀬)

エストニアでは「税理士が消えた」のかもしれませんが、日本ではまだまだ先の話ではないでしょうか。

エストニア共和国地図
<基本情報>
エストニア共和国 
首都:タリン 
人口:134万人(2008年) 
面積:4万5,000km2 
GDP:249億ドル(2013年)
 
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