本当の意味での“働き方改革”とは?
- 2022.02.17
- プロパートナーONLINE 編集部
経営理念ありきの会社づくりから企業文化中心の会社づくりへ
アメリカに大きく遅れた日本の働き方改革
アメリカでは10年以上前から働き方改革や人の問題をテーマとして扱っていますが、日本でもようやくここ数年、あちこちで〝働き方改革で大切なこと〞が謳われるようになりました。
でも、有給を取らせれば、働き方改革といえるのでしょうか?
パートを社員にすれば、ワーク・ライフ・バランスを保てば、それは働き方改革といえるのでしょうか。
会社に20時間いたい人は、いればいいのです。なぜ無理やり帰らなきゃいけないのか。
制度は制度としてもちろん守らなければいけません。
しかし、国の規則を守り、昼飯をタダにしたら社員が辞めないのかといえば、そうではないんですよね。
本当の働き方改革って何なのか、原点から考えてみましょう。
アメリカではもう、ワーク・ライフ・バランスという言い方はしません。
今は、〝ワーク・ライフ・インテグレーション〞、または〝ワーク・ライフ・フィット〞とも言います。
私は6月にサンディエゴで行われたATD(Association for Talent Development)のイベントと、
つい先日ラスベガスで行われたHR Technology Conference&Expoのイベントで、
アメリカの働き方に対する意識がどれだけ高いのかを体感してきました。
ATDは1944年に設立された、「人材をいかに資源として活かしていくのか」という理念を
広く世界に発信している非営利団体です。昨年のイベントにも、世界中から1万人以上が集まりました。
とにかく今、人をどのように活かそうとするのかが、働き方を考えるうえでの世界の主流だと思ってください。
残念ながらこれまで、日本にHRの考えは存在していませんでした。
日本では今、1年に1割の新卒が会社を辞めています。転職においては300万人です。
転職は悪いことではありませんが、辞めた理由のほとんどが、雇用条件を理由にもっと良い会社に移るからなんです。
社員がほかの会社から良い条件を提示され、ヘッドハンティングをされた場合、
気持ちを一度固めてしまったらその社員はもう戻ってはきません。
しかし、アメリカでは、他社からオファーがあったら、まず会社に教えてほしいと伝えています。
教えてきた人には残りたいという意思があるとわかるので、提示された条件の裏をとって対策を考えるんだそうです。
つまり、日本の会社ももっと、今いる社員たちが本当に能力を活かせているのか、
その会社のビジョンとともに歩もうとしているのかを意識すべきなのです。
(上)ATDで賑わう企業出展ブース
〝会社〟よりも〝人〟にフォーカスをあてる
現代の20代の人たちは、スマートホンやタブレットに慣れています。今、その人たちの力でどんどん新しい会社が出てきています。
多種多様な人たちと一緒に働くダイバーシティ、すきま時間で副業を行うアイドルエコノミーなど。
必ずしも会社に勤めなくても仕事ができる時代になりました。
大事なのは、こういう時代のなかで、いろんな人たちの考え方をどのような軸で一緒にしていくかということなんです。
会社は、社会をより良くするために存在しています。しかし、そのために人を不幸にしてはいけません。
これまでの企業の人事部は〝会社〞にフォーカスしていましたが、これからは〝人〞にフォーカスしなければなりません。
今後さらに、すべての従業員の幸せと会社の利益を常に考えなければいけない時代になっていきます。
つまり、経営理念ありきの会社づくりから、企業文化中心の会社づくりへの移行が必要なのです。
上司は部下に、所長先生は職員に、エネルギーを与えるのが仕事。
目標を立てて半年後にフィードバックするのではなく、それを毎日やるんです。
家族、友達、夫婦間でLINEを送っているように、これを会社の社員とやるのです。
この、個人と会社との結びつきをエンゲージメントといいます。
エンゲージメントとは、昔でいう愛社精神です。会社は家族と一緒だという想いが、どれだけ強いのか。
お客様への愛、所長への信頼、周りの仲間との絆。これがエンゲージメントの骨格です。
(上)ラスベガスで開催されたHRイベント
従業員の幸せがお客様を幸せにする
従業員の不安感というのは、自分の成果があがらないときに出ます。存在感をなくすのは、仲間の中でうまく自分と折り合いがつかないときです。
辞めるのは、給料が理由ではありません。
最近は心の病気になる人がとても多いですが、それは周囲の環境、上司との関係、同僚との関係が影響しています。
上司や仲間との関係を改善させるだけで離職数が減るといわれている今、
そこにフォーカスすることでみんなが幸せになるのではないでしょうか。
ただし、経営は大変です。どういう会社にするのか、どういうビジョンにするのか、誰に何を売ってどう儲けるのか。
そこには、ブランド力も必要になってきます。
私は、うちの会社のブランド力は 〝顧客との約束〞だと思いました。
社員を幸せにすれば、お客様も幸せになります。
上司がいかに部下とコミュニケーションをとるのかで、その会社の良さは変わっていきます。
私は靴のない人に、靴を売るのが〝仕事〞だと思っています。
士業の先生たちは、中小企業を助ける、本当に素晴らしい仕事をしているんです。
会社はもっと楽しいところであるべきです。
真の働き方改革を捉え、もっと楽しいことをやっていきましょう。
プロフィール
広瀬 元義
株式会社アックスコンサルティング代表取締役
1988 年 「株式会社アックスコンサルティング」を設立。不動産コンサルティング、会計事務所向けコンサルティングを中心に業務を展開。「会計事務所M&A 支援協会」、黒字経営を実現する会計事務所の会「FAN アライアンス」、資産税ビジネスの全国ネットワーク「アックス資産税パートナーズ」、スモールビジネスの成功を支援する会計事務所の全国フランチャイズ「Q-TAX」を順次発足。さらに、業界のトレンドと実践がわかる『税理士業界ニュース』の発行等、会計事務所業界に常に新たな提案を続けている。AAM(米国会計事務所マーケティング協会)の正式メンバーとして常に最新情報を入手し、日本の会計事務所業界の成長発展に貢献している。会計事務所および経営者向けセミナーの講演は年間50回以上。これまでに出版した著書25冊の累計発行部数は30万部を超える。
1988 年 「株式会社アックスコンサルティング」を設立。不動産コンサルティング、会計事務所向けコンサルティングを中心に業務を展開。「会計事務所M&A 支援協会」、黒字経営を実現する会計事務所の会「FAN アライアンス」、資産税ビジネスの全国ネットワーク「アックス資産税パートナーズ」、スモールビジネスの成功を支援する会計事務所の全国フランチャイズ「Q-TAX」を順次発足。さらに、業界のトレンドと実践がわかる『税理士業界ニュース』の発行等、会計事務所業界に常に新たな提案を続けている。AAM(米国会計事務所マーケティング協会)の正式メンバーとして常に最新情報を入手し、日本の会計事務所業界の成長発展に貢献している。会計事務所および経営者向けセミナーの講演は年間50回以上。これまでに出版した著書25冊の累計発行部数は30万部を超える。
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