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【実務を斬る】〝争続〟トラブルを回避して円満な想いを伝える/弁護士法人山村法律事務所 山村暢彦

【実務を斬る】〝争族〟トラブルを回避して円満な想いを伝える/弁護士法人山村法律事務所 山村暢彦

増え続ける〝争続〟を回避するために士業ができることは何か。
不動産・相続に特化する 弁護士法人山村法律事務所の代表・山村暢彦氏が、
争続回避のポイントを解説します。



 

士業がとるべき相続相談とは

『囚人のジレンマ』という言葉を聞いたことはありますか?
誰かが得しようとすると、全体の利益が減るような状況を
指すゲーム理論の言葉です。
相続手続きも、まさに『囚人のジレンマ』です。
揉めれば揉めただけ、時間的・金銭的コストが発生します。
そのため、相続人全体で損をしてしまいます。

一つ屋根の下で暮らしていた家族だったにもかかわらず、
なぜ揉めてしまうのでしょうか?
今回は前後編で「相続は、なぜ揉めるのか?」の原因と、
その少しばかりの解決策をご紹介します。

まず、「争続」化の原因ですが、
一つ目は、相続財産の額が高額であることが多いからです。
仮に年収500万円の方にとって、
相続の取り分が2,000万円になるか、3,000万円になるかは、
年収2年分の重みをもちます。
これだけ多額なので、揉めてでも
自分の取り分を増やそうとする方も出てきます。
二つ目の理由は、昔は一つ屋根の下で暮らした家族であっても、
独立後は家計が別、財布が別だからです。
家計が別になると、残念ながら親族間といっても
優先順位が変わってしまいます。
一緒に育った兄妹よりも、自分の子を優先したい気持ちが
でてくるのも人情なのかもしれません。
よく遺産分割協議で配偶者から横やりが入るのも、
自分の子を優先したいという気持ちが出てしまうからでしょう。
三つ目は、法律の制度は完璧ではなく、
「想い」や「行動」が評価されないこともあるからです。
典型的には親の介護の問題です。
介護に寄与した場合、「寄与分」として評価する制度自体はあります。
しかし、非常にハードルの高い制度で、
プロの介護事業者に代わるほどの介護を行って、
幾分かの寄与が認められる程度です。
そのため早い話、金銭効率を考えるならば、
親の介護は兄弟に任せて自分は介護に協力しないのが
「得」という結果になりかねません。
「相続」は常に「争続」になりかねない原因を孕んでいるのです。

このような「争続」トラブルを回避するためには、
「発想の転換」が必要です。
結局、法律というのも制度の一つであり、
すべての方の心情に配慮できるほど完璧ではありません。
また、「親の財産は、子である私がもらって当然」という思考が
根底にあるため、トラブルに発展するケースが多い
ように思います。
親と同居していた、親の介護をしていた場合はなおさらです。

ですが、法律上は「親の財産は親の財産」。
子の財産とするには、税金を払わないといけないですし、
兄妹とも分割しなければなりません。
実例でみると、「5,000万円の土地がもらえるはずなのに、
代償金1,000万円を払わなければならない」のではなく、
「1,000万円払えば、5,000万円の完全な土地が手に入る」
と考えるべきなのです。


 

裁判時の不動産評価方法を知る

「争続」になる最大の理由とされる、
不動産評価の問題と評価方法の実態をご紹介します。
不動産評価は、「一物四価」と呼ばれるほど多彩な評価方法があります。
①実勢価格、②公示地価、③路線価(相続税評価額)、④固定資産税評価額
という分類だけでも4つ。
加えて、「実勢価格」自体が、①―A取引事例比較による算出、
①―B積算評価による算出、①―C利回りによる算出と、
さまざまな算出方法があります。

しかし、不動産の金額自体は売主相と買主の
個別の事情によって定まる「相対取引」でしかないため、
客観的に評価するのは困難という意見もあります。
不動産鑑定士といった専門家が存在するように、
不動産の評価は一筋縄ではいかないのです。

このように、不動産評価を一律に定めることは難しく、
裁判所での評価も事実上の限界があるため、
双方の主張が食い違いやすくなっているのです。
では、裁判所(調停)では、どのように不動産を評価するのか。
実は、「実勢価格」という以上のことは決まっていません。
もし、最高裁の裁判例等があって、
一つの算出基準が決まっていれば、
容易に相続関係の調停等を行うことができるかもしれません。
しかし、現実的には「実勢価格」としか決まっていないため、
金額の主張もさまざまに食い違います。

たとえば、木造アパート、賃料収入500万円、
築年数20年程度の評価を考える際に、
①更地前提で取引事例比較法に基づくと7,500万円という評価もできれば、
②実際の利回りから算出すると5,000万円の評価しかできない、
ということも多々あります。
また、③路線価によって計算した金額×1.25倍(÷0.8)すれば、
便宜的に「実勢価格」に近づくという話もあり、
税務申告時の数字から「実勢価格」を算出する場合もあり得ます。
この数字も、取引事例比較法や利回り計算等からずれることが多いのです。

結局、確かに言えることは、「税務申告の数字」よりも
裁判所になると不動産は「高く評価される」。しかし、具体的に
どう評価されるかは都度異なるため分からない
というのが実態です。

さらに、評価に合意できない場合、
裁判所選任の不動産鑑定士による「鑑定」によって金額を決めます。
そうすると、鑑定費用を双方が負担しなければなりません。
鑑定まで押すのか、その手前で引くのか、
という塩梅も難しいところなのです。

制度的にも不動産の評価は困難であるため、
相続人には「不動産の評価は錯綜しても仕方ない」
という点を念頭においてもらうのが、
トラブル回避を最小限にとどめる秘訣です。
評価額にとらわれてしまうと、それが火種となって、
争続へ発展してしまい、鑑定費用が発生するといった
金銭的負担や精神的負担を負うこととなります。

相続は感情に任せて進めると揉めて、相続人が損をします。
初期の段階で相続相談をすることの多い、
税理士や司法書士の先生に、
「相続人の勘違い」を解く説明をしていただき、
円満な相続へと導いていただくために、
本コラムが役立てば幸いです。
プロフィール
山村暢彦氏
弁護士法人山村法律事務所 代表
大阪府和泉市出身。不動産・相続トラブルと企業法務専門の法律事務所として、横浜に山村法律事務所を設立。メルマガやニュースレターへの記事の執筆、FMラジオへの出演、セミナーなどにも力を入れている。
https://fudousan-lawyer.jp/
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