2023.09.25
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応に関するお知らせ

2023年10月01日(日)より、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されますので、弊社の同制度への対応についてお知せいたします。

弊社ではインボイス制度の対象となる課税取引のご利用について、
2023 年10月以降の決済分より、同制度の要件に対応できるようにいたします。

【当行適格請求書発行事業者登録番号のご案内】
株式会社アックスコンサルティングの登録番号をご案内いたします。

適格請求書発行事業者登録番号
T9011001004344
 

スペシャリストが語る!外国人材活用のこれから

スペシャリストが語る外国人材活用のこれから

労働力人口の減少に伴い、外国人材を採用・活用する企業が増えています。
生産性向上の一助になる一方で、文化や価値観の違いなどを考慮した対応が必要です。
そこで、外国人材を活用する際に企業が注意すべきこと、
また士業ができるサポートなどを、
高度外国人材即戦力化&定着支援コンサルタントの菊池領子氏が解説します。



 

外国人材活用の基礎知識と最新動向

外国人労働者の数は過去最高を記録

日本で働く外国人というと、どんな人たちを思い浮かべるでしょうか。
身近なところでは、コンビニやスーパーの店員、
ニュースで見聞きする介護施設や建設現場、工場、農家で働く人たちでしょうか。
実際は、外国人が働く現場はより多岐に渡り、
営業、プロジェクトマネージャー、設計、施工管理、マーケティング、
人事、技術開発、教員まで、さまざまです。

現在、日本における外国人労働者は約172万人(表1)。
全事業所の5%に相当する、約27万の事業所で雇用されています。
コロナ禍の影響はあったものの、過去最高を記録しました。
さらに、この10年あまりで約3・6倍と急増。
少子高齢化で人手不足が深刻になるなか、今後さらなる増加が予想されます。
さまざまな在留資格を持つ外国人労働者のなかで、
今後とりわけ注目すべきなのは、「高度外国人材」といわれる人たちと、
「特定技能」を持つ人たちです。
ざっくりと捉えると、「高度外国人材」は
イノベーションを担うことを期待されるIT人材や、
経営戦略を担う幹部候補、社内業務を担うホワイトカラーの人たちです。




一方、「特定技能」は現場を支える人たちです。
建設会社を例にすると、設計や施工管理は「高度外国人材」、
左官や板金加工などの施工スタッフは「特定技能」が担います。
少子高齢化の時代に、企業をリードするブレーンも欲しいし、
現場を支える人たちも欲しい。
そのカギを握るのが「高度外国人材」、そして「特定技能」です。

 

高度外国人材はイノベーションを担う

「高度外国人材」は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国・約29万人)と、
「高度専門職」(約3万人)の総称として用いています。
そのうちの「技人国」は主に学士および専門士以上の学歴が対象で、
大手企業に雇用されるケースが多くありましたが、
最近は中小企業も積極的に採用する傾向にあります。
現場作業しか行えない「技能実習」と異なり、
施工管理や現場監督の業務を担えるため、
将来の幹部候補として育てることが可能だからです。
ほかにも、日本人にはない視点や発想で社内の活性化を図りたい、
海外展開の際の開拓役や本社とのハブ役になる、といった期待もあります。

このように、「人手不足だから外国人材を採用する」のではなく、
「会社の目的に適う人材だから採用する」というスタンスの企業が増えています。
採用対象も、日本で留学を終えた人だけでなく、海外から直接採用することもあります。

一方、「技人国」より高い専門性を求められる「高度専門職」は、
IT技術の人材が約8割を占めています。
政府としては、日本のイノベーションを担う優秀な人材を確保するため、
2022年末までに高度専門職4万人を達成したい意向があり、
「学歴」「職歴」「年収」などを基準にポイントを設けて、
永住権の早期付与などの優遇措置を行っています。
そのため、「技人国」から移行する人もいて、
国際間の激しい人材争奪戦が繰り広げられるなか、今後の動向が注目されます。

 

人手不足解消の切り札に特定技能が注目される

次に、現場を担う「特定技能」ですが、
これは、人手の確保が困難な分野において、
即戦力となる外国人を受け入れるために創設されました。
現状は、コンビニや飲食店でアルバイトをする留学生が約37万人。
本来は就労目的ではないため、限られた条件のなかですが、
いまや貴重な労働力となっています。

また、ニュースでよく耳にする「技能実習」は40・2万人います。
技能などの移転を通じた国際貢献が本来の目的ですが、
現状は労働力としてみなされています。
こうした状況の改善もにらみ、2019年に就労目的の在留資格として「特定技能」が設けられ、
中小企業の人手不足を解消する策として期待されています。
2021年9月末時点では約3万9000人ほどですが、
「技能実習」からの移行や、アフターコロナの動きが注目されています。
「特定技能」は1号と2号があり、1号は14分野での就労が認められています(表2)。




2号は、1号より高い技術と経験を持つ熟練者で、
外国人材の現場を束ねる存在になることが期待されます。
現在は、建設分野、造船・舶用工業の2分野が対象ですが、
2021年9月末時点では、まだ該当者はいません。
政府は、対象業種を宿泊業、飲食料品製造業、外食業などにも拡大する方向で、
今春にも正式決定を目指すというニュースがあり、大きな話題となっています。
こうした外国人材ですが、入社後に早期離職や
コミュニケーショントラブルで悩む経営者や管理職が少なくありません。
次は、外国人材を雇用する際の注意点、活かすためのポイントをご紹介します。


 

外国人材を雇用する際の注意点

文化の違いから人間関係に影響が

外国籍社員を雇用する際、どんな問題が生じるでしょうか。
ひと口に外国籍社員といっても、実際は学歴や日本語レベル、
文化習慣の理解度合が異なります(表3)。




採用時には、経歴や応募動機だけではなく、
日本語の運用能力および文化習慣の理解度合いも確認し、
不足部分を補わないと、さまざまな問題が生じかねません。
その具体例を見てみましょう。

金融会社A社はある年、2名の中国人社員を採用しました。
Xさんは日本の大学を、Yさんは中国の大学を卒業。
日本語レベルはいずれもN1(日本語能力試験の最も高いレベル)です。
入社後、二人は日本人社員と一緒に新人研修を受けることになりました。
N1合格者だから問題ないだろうと企業側は考えましたが、
グループディスカッションになると、
Yさんは日本人の話すスピードにまったくついていけず、Xさんも大変そうです。
日本人が普段話す日本語はスピードが速く、
用いる言葉数はテキストを遥かに超えています。

配属後はどうでしょうか。
よくあるトラブルが、報告・連絡・相談にまつわるものです。
日本人にとって報・連・相は当然のことに思えますが、
外国籍社員はどのタイミングで何をすればよいかわかりません。
「日本人と仕事をするなかで最も困る」という声もよく聞きます。
一方、日本人からすると、なぜ相談もせずに勝手に進めてしまったのか、
報告がまったく来ないなど、ストレスが溜まる原因になります。

また、コミュニケーションスタイルの違いから生じるトラブルも多くあります。
頷きながら話を聞く習慣のある日本人が、その習慣のない外国人と話すと、
聞いているのかどうかわからず、イライラしがちです。
そんなときに「はい」ではなく「うん」と返事をされたらどうでしょうか。
中国語の「うん」は日本語の「はい」の意味であり、
決してなれなれしい態度をとっているわけではないのですが、
「その態度はなに?」と言いたくなりませんか。
実際、アルバイト先も含め職場で叱られたという話をよく聞きます。
そして、注意の仕方によっては人間関係に影響します。
放置すると外国籍社員のみならず、日本人社員の離職にもつながりかねません。

 

能力を発揮するには企業側の環境整備が必須

以前は採用に全力を尽くし、その後は現場に任せる企業が大半でした。
しかし、早期離職の問題に直面した現在、主眼は育成定着に移りつつあります。
育成定着のためには、いくつかのポイントがあります。

第一に、なぜ外国人材を採用するのか、
どのような人材を求めるのかを明確にすること。
ここが明確でないと、採用後のキャリアパスを示すことができません。
自分の将来が見えない職場には魅力を感じられず、早期離職へとつながります。

第二に、採用面接。
どんな価値観を持っていて、仕事の動機がどこにあり、
どんなライフプランを持っているのかを確認すると、
配置やキャリアパスを考えやすく、モチベーションの維持もしやすくなります。

第三は、採用から生活面のフォロー、研修まで一貫して携わる担当者の存在。
定着に成功している企業の多くは、海外経験のある担当者がつき、
きめ細かなフォローをしています。
さらに、相談相手となるメンターをおくことも大切です。

そして、全社を挙げて行うべきは、
ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)の環境整備です。
外国籍社員が受け入れ企業側に合わせるのが当然という考えがまだ多いようですが、
相互の歩み寄りなくしては外国人材が能力を発揮できず、
企業の成長につながりません。
受け入れ準備は、住まいなどのハード面はもちろん、
外国籍社員に対する考え方、接し方、わかりやすい日本語で話すなど、
ソフト面がより重要です。

 

ダイバーシティ実現は7ステップで進める

ダイバーシティ&インクルージョンの実現のために、
7つのステップを推奨しています。ステップ1は、経営者、人事担当者、
受け入れ部署の管理職のマインドセット研修。

ステップ2は、社員のマインドセット研修。
そしてステップ3、4は、外国籍社員の内定者研修として、
ビジネスコミュニケーションとビジネスライティング。
ステップ5は、入社後のチームビルディング研修。
ステップ6は、配属後の日本語の補足レッスン並びに
モチベーション維持のためのキャリアカウンセリング。
そしてステップ7として、
定期的なキャリアカウンセリングを行いながら日本語をサポート。
こうして1年以内の離職を防ぎ、定着へとつなげます。

最後に、外国人雇用を検討している企業に対して
士業ができるアドバイスや採用後に提供できる業務について考えます。




 

士業にとってのビジネスチャンスとは

企業の相談役として、外国人材受け入れの環境整備をサポート

外国人材雇用が普及していくなかで、士業はどのような役割が果たせるでしょうか。
ポイントは2点あると思います。
一つ目はネットワークの構築、ご自身の専門分野の業務の工夫です。
企業にとっての課題が、採用から早期離職の防止、
定着に移行しつつあることは前述した通りです。

対策の要である人材育成について相談に乗ることができる士業にとっては
ビジネスチャンスが広がるといえるでしょう。
当方のような研修を実施している専門家とのネットワークを持つことも有効です。
考え方を理解し、相談された時につなげるチャネルを持つことが重要です。

外国籍社員の育成には、主に3つの分野があります(表4)。
第1は、日本語力と日本語でのコミュニケーション力、
第2は価値観や生活習慣、そして第3は業務に対する考え方、進め方です。
すべての研修を企業側で行うこともありますが、
うまくいかず当方のような外国人材の育成定着の専門家に依頼する企業が少なくありません。
こうした事実を伝え、事前にアドバイスができる士業の存在は、企業にとって貴重です。

また、外国人材はキャリアパスや評価制度への関心が日本人より高い傾向にあります。
不十分な整備は早期離職を誘発しかねません。
受け入れを機に見直す、制度のない会社は作成することを提案するとよいと思います。

次に、普段提供している業務の工夫について考えてみましょう。
外国人材の受け入れに当たり、整備やサポートを要する事柄は多岐に渡ります(表4)。




まずは、入社にあたり取得や切り替えが必要となるビザ。
ステージに応じた変更が必要ですが、管理が後手になることがあります。
防止策として、管理アプリなどの利用や管理ツールを作成する企業も増えています。
アプリの選択や作成のサポートは、有効なサービスです。

次に、就業規則や給与明細などのさまざまな書類。
これは日本人の新入社員も理解は容易ではありません。
見方のわからない外国籍社員は、往々にして額面と手取りの差に驚きます。
そのため、外国籍社員向けの書類や説明の場が必要です。
母国語での用意が理想的ですが、「やさしい日本語」も有効な言語です。
出入国管理庁によると「日本語」を「日常生活に困らない言語」とした外国人は約63%、
「希望する情報発信言語」として「やさしい日本語」を選んだ外国人は76%だそうです。

近年、行政では外国人向けに「やさしい日本語」版の書類を用意するところが増えています。
「やさしい日本語」は、阪神・淡路大震災を契機に生まれました。
JLPT(日本語能力試験)N5、N4程度のレベルで、短い文にする、
受け身やカタカナことば、擬態語を避けるなどのルールがあります。
現在では、医療現場、観光、企業内コミュニケーションなど、さまざまな場で用いられていますが、
「やさしい日本語」版といいながら、漢字のフリガナがあるだけで、
やさしくないものも多く見受けられます。
ぜひ皆さんがお住まいの行政のサイトをご覧になってみてください。

さらには、税金、保険、年金などに関する書類も、外国籍社員にとっては理解が大変です。
日本語レベルが上級の外国籍社員の中には、ふるさと納税をしたり、
NISAなどの金融商品を購入したりと、日本の生活を上手に楽しんでいる人もいます。
周囲にこうした先輩やメンターがいればよいのですが、いない場合は、
士業の方のサポートがあると日本での生活の質の向上につながり、喜ばれると思います。

次に、住まいの問題です。
国外から来日する外国籍社員に対しては企業が用意するのが一般的ですが、
ネット環境までしっかり対応しているところは多くないように思います。
手配はしても、実際の接続状況は確認していないこともあり、
入社後しばらく接続のために右往左往し疲弊している人を見かけます。
最近はTVを持たず、スマホやパソコンで動画を見る人も多くいます。
在宅で研修を受けることもあり、しっかりとしたネット環境を提供することが不可欠です。
住まいは宅建士の方の範囲ではありますが、ほかの士業の方もアドバイスは可能だと思います。
 
また、来日したての人が困るのが買い物です。
例えば、白米ともち米の区別がつかず、
最も少量のものを選んだら、もち米だったなどという話はよく聞きます。
簡単な訳語を用意してあげたり、
ネットスーパーや宅配サービスの案内をアドバイスするのもよいと思います。

家族帯同で子どもがいる場合は、PTAや地域とのつきあいも悩みのタネ。
懸け橋になるような提案ができると業務の幅が広がると思います。
ほかには、行政の持つ保養施設や観光スポット、イベントの案内なども喜ばれます。

新たな環境は日本人でもストレスが溜まります。
外国籍社員は言語や文化習慣の面で、より負担が大きくなります。
心身の健康を保ち、能力を発揮してもらうためには
快適な生活環境と手厚い研修の提供が欠かせません。
そのアドバイスやサポートができる士業は、
今後さまざまなビジネスチャンスに恵まれるでしょう。
当方も、士業の皆様が業務の幅を広げるお手伝いができればと思っています。

 
プロフィール
菊池領子氏
Rproduction 代表
高度外国人材即 戦力化&定着支援コンサルタント。
異文化ダイバーシティ経営で企業を成長させるため、企業側のマインドセット、
研修から、外国人材 の研修・カウンセリングなどを行う。
https://rproduction.jp/

問い合わせ
https://forms.gle/NnKrAG42iZTK4SFa6
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