2024.04.04
【ゴールデンウィーク中の商品発送について】
ゴールデンウィーク休業期間中、商品の出荷対応につきまして
下記の通り、ご案内いたします。

≪発送休業日≫
2024年4月27日(土)~2024年5月6日(月祝)

※2024年4月30日(火)~2024年5月2日(木)は一部ご注文・お問い合わせについて対応させていただきます。

通常よりもご注文からお届けまでに多くの日数がかかりますので、お急ぎの場合はご注意ください。
ご不便をお掛けいたしますが、ご理解及びご協力の程、よろしくお願い申し上げます。
2023.09.25
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応に関するお知らせ

2023年10月01日(日)より、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されますので、弊社の同制度への対応についてお知せいたします。

弊社ではインボイス制度の対象となる課税取引のご利用について、
2023 年10月以降の決済分より、同制度の要件に対応できるようにいたします。

【当行適格請求書発行事業者登録番号のご案内】
株式会社アックスコンサルティングの登録番号をご案内いたします。

適格請求書発行事業者登録番号
T9011001004344
 

激変する経済状況下で、顧問先を守ために士業が持つべき視点



日本経済の回復に向けて動き出した2022年。
ですが、ウクライナ情勢の悪化や円安進行による物価上昇が強まったことで、
実質的な賃金上昇と消費回復の兆しは見えてきていません。
この状態が継続すると、中小企業や個人にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
激変する経済状況下で、士業が顧問先を守るために必要な視点について、
日本公認会計士協会租税政策検討専門委員会副専門委員長を務める峯岸秀幸氏が解説します。

激変する経済状況下で顧問先企業の資産を守るための分散投資と税務(法人編)はこちら



 

​​進むインフレと「悪い円安」

新型コロナウイルスに対抗するための経済活動の縮小傾向に、やっと出口が見えてきました。
それにもかかわらず、景気の先行きは依然として不透明です。
足元では物価高と円安が進行しており、
加えて短期的には解決しない問題であると見る向きが多いことから、
今年、企業のビジネス環境は厳しさを増すと考えるべきかもしれません。
私も同様ですが、士業の多くは経済の専門家ではありません。
しかし、経済環境の現在や将来についての見解そのものや、
それを前提とした各々の専門領域での助言を求められるのが士業であり、
その役割から逃げるわけにはいきません。
今回解説する内容は、そういった場面で「秘策」を練っていただくための
一材料として参考にしていただければと思います。
特に、顧問先の業績変動の観点で、私たち士業が果たす役割について述べていきます。
 

 

世界情勢による供給危機と物価上昇

まずは足元の経済環境についてですが、現在、世界的なインフレが続いており、
2022年3月の時点で米国の消費者物価指数の上昇率は前年同月比+8.5%を記録しました。
日本は米国に後れをとっているとはいえ、
やはり前年同月比+1.2%の物価上昇局面にあります。
日本における物価上昇の原因は、主に燃料や原料の価格上昇であるといわれます。

例えば、本稿執筆時点でWTI原油先物価格は101ドル/バレル前後、
LMEアルミニウム先物価格は3,100ドル/MT前後で推移していますが、
これは1年前の1.3倍から1.6倍も高い価格です。
小麦の政府売渡価格が2022年4月から17.3%引き上げられたことも記憶に新しいでしょう。
コロナ禍からの立ち直りによる世界的な景気回復での需要増に加え、
いわゆるウクライナ危機による供給不安がこれらの価格上昇を生んでいるといわれます。



さらに、急激に進む円安が輸入価格の上昇に拍車をかけています。
1年前は110円/ドル前後で推移していたものが、現時点で、一時130円/ドルを突破してしまいました。
この円安急進の背景には利上げに進む欧米と、低金利政策を維持する日本との金利差があるといわれますが、日本の国力低下の表れで一過性のものではないと指摘する声もあります。
一般に、円安は輸出産業やインバウンド需要を取り込む観光産業の業績を押し上げる効果があるはずです。
しかし、今回はそのようなメリットよりも、物価押上げによるコスト高のデメリットが上回る「悪い円安」であると指摘されています。こちらに関しては、鈴木俊一財務大臣も4月15日の記者会見で、原材料価格の上昇の価格転嫁や賃金の上昇が伴わないという意味で「悪い円安といえるのではないか」と述べています。

すなわち、現下の物価高と円安は、企業に対して、
まず原材料の仕入コストを増大させる影響を及ぼします。
その負担を自社商品の価格に転嫁できれば利益は維持されますが、
転嫁できない場合、利益が減り、昇給原資が減ります。
そして、物価が上がる中で昇給できなければ経営者と従業員の生活が苦しくなります。
このような悪循環に陥ってしまう懸念を込めて「悪い円安」と表現されているのです。
昨今の経済環境については以上のような受け止めが一般的ではないかと思われますが、
このような認識をもとに将来についてどう判断し行動するか、
今後、経営者をサポートする我々士業の見識が問われます。
いずれにせよ確かとされることは、今後、物価上昇と円安が企業の原材料コストを大きく押し上げ、
業績を圧迫する要因になるであろうということです。
身近な例でいえば、決して利幅の大きくないラーメン店です。
今のような小麦高が続けば、多くのラーメン店は廃業せざるを得ないのではないかと、
ある著名ラーメン評論家がSNSに投稿していました。
現在のインフレと円安の行方は、そういう緊張感のある目で眺める必要があるのです。

[現在の世界情勢における懸念点]
◆原材料の仕入れコストの増大による価格転嫁
◆進む円安と物価上昇による企業の業績圧迫
◆物価が上がるなかで業績圧迫による昇給原資の減少

グラフ出典:総務省「2022年4月消費者物価指数」


 

税務面ではタックスプランニングがますます重要に

このような経済環境下において、我々は経営者をどのように支援していくべきでしょうか。
これは一言でいえば、余計な費用を支払わせず、
過度なリスクを負担させないということに尽きるのだと思います。
私の専門領域である税務についていえば、
将来にわたる企業業績に不確実性を増す状況下で少しでも資金の流出を減らすべく、
綿密なタックスプランニングを施すことの重要性が一層増すと考えられます。

といっても、近年の税制改正で、
従来型の課税の繰り延べによる節税策の選択肢はどんどん狭まっています。
企業とその経営者への所得課税に関わるものだけでも、

・2019年の通達改正による生命保険を使った課税繰り延べ全般の大幅な制限、
・2020年の法改正による所得税における国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の制限
・2021年の通達改正による、低解約返戻型逓増定期保険を使ったいわゆる名義変更プランの制限
・今年の法改正による貸付けの用に供する少額資産の取得価額の損金算入制度の見直し など

上記のような課税時期の先送りと、税率差の利用を企図した節税策を封じる
税制改正がたて続いています。
このような税制改正の傾向は今後も続くと見るべきでしょう。

そのようななか、実務誌での宮沢洋一・自民党税調会長のインタビュー記事
「宮沢洋一・自民党税調会長に聞く 令和4年度税制改正と次の改正への展望」
税務通信3696号(2022年3月21日、税務研究会)での発言が注目されるように思います。

宮沢会長はこの記事で、人材など「未来への投資」に積極的な法人への減税を、
そうでない法人への増税を原資にして行う税制改正や、
比較的多額な金融所得がある個人への増税に向けた税制改正に意欲を示しています。
ポストコロナに向かって、企業所得に課される法人税、
経営者の個人所得に課される所得税ともに
増税に向かう可能性があることを念頭に置く必要があるかもしれません。

企業の業績の行方に不確実性が増すなか、
利益が出ればそこに課される税の負担が重くなる可能性があるものの、
「利益を将来に繰り延べる手法にはすでに限界が見えている」
ということです。

峯岸秀幸氏


 

高まる士業ニーズ
今こそ構造的な対策で不確実性に対峙する

いわゆる節税商品を使った課税の繰り延べは、いわば対処療法的な節税策でした。
それが制約されるなかでは、より構造的で予防的な
タックスプランニングが求められることになります。
例えば、今顧問先が営む複数のビジネスを
・1つの会社にまとめておくのが有利か
・複数の会社に分けるのが有利か


会社を分けるとすれば、
・各々の役割をどう位置付けるか
・経営者とその家族は企業グループからいつ、どのような形で所得を得るのか
・会社の資産ポートフォリオをどのように形成するか

といった企業経営の形態に関することから、
・設備投資は購入でするか
・リースでするか


購入するのであれば
・手許現金から行うか
・借入れを起こして行うか
・それをいつ実行するか


といった日々の経営判断に関することまで、
顧問先のビジネスや経営者の人生設計を深く理解して、
持てる専門性を総動員して助言する姿勢が求められるのではないでしょうか。

不確実性の高い時代だからこそ、
我々士業の実力が問われてしまうともいえます。
例えば、複数の会社を有する企業グループでは、ある子会社では利益が出るが、
違う子会社では損が出るということが往々にしてあり、
グループ全体の税負担を軽減する観点では、従来の連結納税が改組されこの4月から、
適用開始となったグループ通算制度の導入が有効な解決策になる場合があります。
これまでは、「適用するための事務負担が重い」「制度が難解で恐ろしい」
といった理由で、連結納税やグループ通算制度を敬遠して
提案の俎上に載せない会計事務所も多くあったのではないかと思われます。

しかし、余計な税負担が顧問先の命取りになりかねない状況下だからこそ、
これまで扱うことに慎重だった業務にも向き合う必要があるかもしれません。

また、前述した助言は税務の観点からのみ、なされればいいものではありません。
税負担軽減の観点からは1つの会社で複数事業を
営むことが支持される場合であっても、
労務面や許認可などの観点から複数の会社で
企業グループを形成することが支持される場合もありえます。
士業同士の連携が今まで以上に重要な局面であることはいうまでもないでしょう。

 

【これから求められる士業の支援姿勢】

場当たり的な租税回避のスキームの活用ではなく、
利益が残る財務体質の強化を目的としたタックスプランニングを行い、資金の流出を抑えること



激変する経済状況下で顧問先企業の資産を守るための分散投資と税務(法人編)はこちら

 
プロフィール
峯岸秀幸氏
税理士法人峯岸秀幸会計事務所
代表 公認会計士・税理士

準大手監査法人と大手税理士法人に勤務後、2012年開業。
業務の傍ら税務における法律を大学院で学ぶ(修士「ビジネスロー」)。
日本公認会計士協会租税政策検討専門委員会副専門委員長などを務める。
https://minegishi-accounting.com/
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