【セミナーレポート】もう待ったなし!「電帳法改正&インボイス制度」完全攻略講座
- 2022.12.14
- プロパートナーONLINE 編集部
2022年1月1日より、改正電子帳簿保存法が施行され、
国税関係の帳簿・書類のデータ保存について、抜本的な見直しが行われました。
また、2023年10月には、インボイス制度がスタートします。
そこで、税理士法人峯岸秀幸会計事務所の峯岸秀幸氏が講師を務めたセミナーから、
会計事務所がとるべき対策について紹介します。
〔セミナー概要〕
「もう待ったなし! 電帳法改正&インボイス制度 完全攻略講座」
開催日:2022年11月16日(水)
開催方法:オンライン
協賛企業
会計事務所は、インボイス制度や改正電帳法とどう向き合っていくべきか
2022年4月に、改正電子帳簿保存法が施行されました。2023年10月からは、インボイス制度がスタートします。
インボイス制度と改正電帳法については、各所で解説がされていますが、
概要は以下の通りです。
インボイス制度と改正電子帳簿保存法が会計事務所にもたらすリスクには、下記のようなものがあります。
想定できる具体的なリスクの例
【インボイス制度開始前のリスクの例】- 顧客に対して適格請求書、発行事業者の登録手続きの必要性について案内しない
- 顧客の適格請求書発行事業者の登録手続を失敗する
- 顧客の適格請求書発行事業者になるか否かの選択にあたり
- 課税関係の十分な説明を怠る
- 顧客において電子帳簿の電子保存・取引書類のスキャナ保存が適法になされるための説明や指摘を怠る
【インボイス制度開始後のリスクの例】
- 顧客の仕入先が適格請求書発行事業者ではないのに
- 適格請求書発行事業者であると誤認する
- 顧客が適格請求書の交付を受けていない/保存していないのに仕入税額控除を適用する
- 宛先が顧客ではない適格請求書が保存されているのみであるのに仕入税額控除を適用する
- 帳簿の保存のみで仕入税額控除可能な場合の帳簿への記載を誤る
- 仕入税額控除の経過措置の適用が可能であるのに、しない
- 相続が発生した個人事業主について新たな登録申請を失念する
- (2024年1月1日〜)顧客において電子取引情報の電子保存がなされるための説明や指摘を怠る
インボイス制度が開始したあと、
会計事務所は上記のようなリスクにさらされることになるだろうと思います。
そして、これらのリスクは会計事務所への損害賠償請求となって、
顕在化することになります。
このようなリスクに我々がどう対応していくのか、
整理して考えてみる必要があります。
■顧客への周知活動や契約改定でリスクに対応する
制度開始前のリスクについては、現在進行形ですから、対応するしかありません。これは、「適切な資料を用いた説明や助言を行う」
ということに尽きるのではないでしょうか。
各会計事務所の経営者が、研究して、資料をつくって職員に研修して、
顧客に説明するという全プロセスを自分でやるというのは、
およそ経済的ではないと思いますので、
外部サービスを積極的に活用するのがよいのではないかと思います。
一方で、制度開始後のリスクについては、3つの選択肢があります。
- リスクをそのまま受け入れる
- リスクを回避する
- リスクを正面から受け止めて対応する
(2)リスクを回避するための策としては、インボイス制度の開始後、
以下のような業務は顧客が行うのか、会計事務所が行うのか」
を契約で明らかにしておくことが必要です。
顧客側・会計事務所側双方での業務範囲を明確にしておくべきこと
- 仕入先が適格請求書発行事業者であるか否かの確認
- 適格請求書の記載事項が正確であるかの確認
- 適格請求書の原本と会計帳簿の照合
- 帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能な場合であるか否かの確認
- 適格請求書の適法な保存
- 電子取引情報の電子保存が適法になされていることのモニタリング
契約で業務外であると明確にしない場合、
会計事務所の業務の範囲内であると判断されるおそれがある点に注意が必要です。
「ルールとしてこれを守らないといけない」と、
会計事務所として説明したあとは、運用に関しては
「お客様側できちんと行ってください」
ということをはっきり伝えておかなければなりません。
もちろん、会計事務所の経営者としては
「お客様との間で何を・どのように合意すればリスクヘッジできるのか」
ということを知る必要があります。
そのためには法務的な観点を踏まえた助言が必要ですので、
ここに関しても外部サービスを活用するのが良いかと思います。
(3)リスクを正面から受け止めて対応するという場合は、
チェックリストの活用など会計事務所内のプロセスを整備するということに尽きると思います。
とはいえ、自分たちで一からつくるというのは、
よほど規模の大きい事務所でない限りは、非効率的です。
会計ソフトベンダーにも、こういったサービスを提供されているところがあると思いますので、
外部のリソースを積極的に活用していくべきだと思います。
インボイス制度開始後に顕在化するリスクを
真正面から受け止めて対応するという方針を取る限りは、
会計事務所としては作業工数が必ず増加します。
それに対して、報酬と人を増やしてシステムに投資するという対応策もあるでしょうし、
採算の合わないお客様を整理するという方法もあると思います。
もしくは、コストを削減して、
その工数増加分を吸収するという方針を取る場合もあると思います。
しかし、人員増やシステム投資は「固定費の増大」、
顧客の整理は「事務所規模の縮小」、
コスト削減は「利益減少」という新しい問題を派生させます。
つまり、インボイス制度の開始と改正電子帳簿保存法、
特に、電子取引情報の電子保存の本格化は、
会計事務所にとって新しいリスクを生じさせるのです。
そのような問題の解決に、我々は向き合っていかなければいけません。
その解決策を練っていくうえでは、やはり外部リソースの積極的な活用が、
今後ますます重要になってくると思います。
【まとめ】インボイス制度や改正電帳法のリスクへの対応策
- 顧客に対しての周知を徹底する
- 会計事務所が担う業務範囲を契約で明らかにしておく
- 資料やマニュアルや外部リソースを積極的に利用する
本セミナーは、以下の企業に協賛いただきました
プロフィール
峯岸秀幸 氏
税理士法人峯岸秀幸会計事務所 代表社員
準大手監査法人と大手税理士法人に勤務後、2012年開業。
業務の傍ら税務における法律を大学院で学ぶ(修士「ビジネスロー」)。
日本公認会計士協会租税調査会租税政策検討専門委員会副専門委員長などを務める。
準大手監査法人と大手税理士法人に勤務後、2012年開業。
業務の傍ら税務における法律を大学院で学ぶ(修士「ビジネスロー」)。
日本公認会計士協会租税調査会租税政策検討専門委員会副専門委員長などを務める。
関連コンテンツ