【特集】新春・税理士座談会:注目の若手税理士が語る!成長戦略2023(前編)
- 2023.01.05
- プロパートナーONLINE 編集部
DXの加速、人材確保やマーケティング手法の変化、
さらには電帳法・インボイスへの対応などが迫られるなか、
事務所を成長させるためには何が必要なのか?
近年、事務所を急拡大させている若手税理士が、
事務所の成長戦略や2023年以降の会計業界の動向について語り合います。
ブランド・コスト面・従業員満足度などを理由に拡大路線へ
ただし、拡大する意味を明確にすることが重要
鶴見 本日お集まりいただいた先生方は、100名規模から300名規模のご事務所を経営されています。
この規模は、会計事務所業界の上位0.3%にあたります。
そこで、先生方のこれまでの拡大戦略を振り返りながら、
2023年にどんな展望を描いているか、
何に取り組んでいくのかといったことをうかがっていきたいと思います。
もちろん、事務所を拡大することは一つの手段で、
拡大しないという方針もあります。
そこでまずは、ご事務所を拡大しようと決めた時期や理由を教えていただけますか?
菅 私の場合は、2008年に事務所を合併して引き継いだのですが、
その事務所がすでにある程度の規模があって、
規模を強みにしていたんですね。
だから、それ以外の道がなかったというのが理由です。
あと、事務所がある九州には、当時あまり大きな事務所がなかったんです。
だけど、特に規模の大きな会社に行ったときなどに、
「ご事務所に税理士さんは何人いるんですか?」と聞かれるんですよね。
私自身、まだ20代でしたし、輝かしいキャリアがあるわけではないので、
規模は一つの武器になると思っていました。
アップパートナーズグループ
代表 菅 拓摩氏
2001年、税理士事務所に入所。2003年に菅拓摩税理士事務所を開設。
2008年、旧内田会計グループと合併し、税理士法人アップパートナーズへ社名変更。
グループ全体で300名超という九州最大級の事務所を率いる。
鶴見 規模があることで、ブランド力は強くなりますよね。
菅 もともとは佐賀県で開業したのですが、
佐賀県では2番目の規模でした。
1番大きい事務所は諸井会計さんなのですが、
やっぱり認知度がすごく高いんです。
どこに行っても、みんな知っている。
でも、2番目のうちのことは誰も知らない。
1番と2番の差を実感しました。
ほかにも、大きな仕事をしようと思ったら、
それなりに体制を整えておかないと、
なかなか信頼してもらえないという理由もあります。
鶴見 確かに、お客様の規模が大きい場合などは、
事務所規模も信頼してもらえる要素の一つになりますよね。
続いて、朝倉先生はいかがですか?
朝倉 私はもともとデロイトトーマツ税理士法人にいたので、
大きいところの良さは知っていましたし、
規模が大きいとサービスも良くなるという一面も感じていました。
それは、IT化が進むなかで、
規模が大きいほうがITなどの間接コストもかけられて、
サービスに反映できるということです。また、広告予算もとれます。
もちろん、菅先生がおっしゃったように
ブランド力もつくので、職員やお客様から見ても、
基本的には「規模が大きいほうがメリットも大きい」と思っています。
なので、はじめから拡大は見据えていました。
サン共同税理士法人
代表 朝倉 歩氏
2004年、大手税理士法人に入社。
シニアマネージャーとして活躍した後、2016年にサン共同税理士法人を設立。
6つの会計事務所の承継および5拠点の開設で、全国10拠点、
100名超の規模に成長。最新のITを利用した効率化にも注力。
鶴見 ビジネス展開するうえでも有利だということですね。
菅 朝倉先生の事務所は、実際かなりITに力を入れていますよね。
それは、どういった理由なのでしょうか?
朝倉 昔の税理士事務所は、
税務の力=事務所の力だったと思うんです。
個人事務所でも税務に強い先生が勝てる時代がありました。
次に、広告が解禁されて、集客力=事務所の力になりました。
その次は、ITの力=事務所の力になると思っています。
ITを活用して作業を無人化したり自動化したりして、サービス品質を上げながら、
ほかの事務所が50万円で受ける仕事を30万円でできるようにする。
そのためには投資コストがかかりますが、お客様が多ければ賄えますし、
規模が大きいほうがIT予算も持てるという結論になりました。
鶴見 ありがとうございます。
では、大堀先生、お願いします。
大堀 私は朝倉先生と少し違って、
拡大しようと本格的に決めたのは、実は最近のことです。
私も会計事務所で働いたことがあるのがベンチャーサポート税理士法人だけで、
それが標準だったので、小さくまとまって経営するということは、
そもそもイメージができていませんでした。
でも、2011年に創業してから、3、4年で10〜20人ぐらいの規模になるまでは、
集客がうまくいって、自然と拡大していったという感じなんです。
スタートアップ税理士法人
代表 大堀 優氏
2011年に会計事務所に入所し、5年間勤務後、2015年2月にスタートアップ会計事務所を開業。
毎年顧問先を100件以上増やし急成長。
現在、新宿と横浜にオフィスを構え、社労士法人、司法書士法人も開設している。
ただ、「これでいいのか?」と思ったきっかけはあります。
開業時、4人でスタートしたんですが、
それぐらいの時期って全然儲からなかったんです。
菅先生はどうでしたか?
菅 私はずっと儲かっていないです。
朝倉・大堀 いやいやいや(笑)
大堀 だから、菅先生が大きい事務所と合併したというのは、
すごく羨ましいなと思いました。
私が4人でスタートした1年目のときは、
毎月、月末の預金残高が10万とか20万ぐらいしかなくて、
「小さい規模でやっていたら全然儲からない!」と思っていました。
紹介でお客様は徐々に獲得できていったのですが、
同時に、職員も雇わないといけません。
でも、このままでは給与が上げられないなと感じたんですよね。
職員が満足のいく生活を送るためには、
「小さくまとまっていたら絶対無理だ」ということは、
ずっと思っていました。
朝倉 給与水準を上げないと職員の生活を守れないというのは、
私も同じです。
職員の満足度が上がっていけば、サービス品質が上がって、
結果的に収益が上がっていくと考えているので、
私は、まずは従業員満足度を上げることで自然に成長できると考えています。
大堀 そうなんです。ただ、うちの場合、
2年目か3年目の7〜8人規模のときに、
職員が2名、急に辞めると言い出したんです。
そのメンバーは私が直接教えていて、
スキルもどんどん上がっていましたし、
給与もそれなりに上がっていました。
本人も給与に満足していると言っていたのですが……。
理由を聞いたら、
「この事務所には担ぎ上げたい人がいないんです」
言われたんです。
鶴見 担ぎ上げたい人ですか?
大堀 そうです。
当時、事務所としての方針などもなかったですし、
将来の夢みたいなものもありませんでした。
それが理由で、働く環境や給与には満足している職員が辞めるという出来事があり、
事務所が拡大する意味や方向性をちゃんと掲げて経営する必要性を感じました。
鶴見 その出来事をきっかけに、理念などを決めたのですか?
大堀 それが、忙しい時期が続いてしまって、
結果的に6、7年はふわっと拡大しようという感じのままで、
拡大する意味を明確に考えたのは、2021年ぐらいです。
そのタイミングで会社のミッション・ビション・バリューを言語化して、
「この方針でいくぞ」と決めました。
会社の方向性を決めないと人がついてこないと思ったから、
拡大する理由をちゃんと決めたという感じです。
鶴見 なるほど。
朝倉先生は、従業員満足度を上げることが優先とおっしゃっていましたが、
どのような背景があるのでしょうか?
朝倉 まず、私が人から嫌われたり、
裏で不満を言われたりするのが嫌だというのがあるのですが(笑)。
職員が不満を抱かなければ上手くいくと思っていて、
たとえば、残業がなければストレスも減りますよね。
鶴見 そういった考え方があっての拡大戦略なんですね。
ミッション・ビジョン・バリューやクレドは
時代や組織のフェーズに合わせて見直しが必要
鶴見 先ほど、大堀先生からミッション・ビジョン・バリューのお話がありましたが、菅先生や朝倉先生は、いつのタイミングで決めましたか?
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プロフィール
サン共同税理士法人
代表 朝倉 歩氏
2004年、大手税理士法人に入社。
シニアマネージャーとして活躍した後、2016年にサン共同税理士法人を設立。
6つの会計事務所の承継および5拠点の開設で、全国10拠点、100名超の規模に成長。
最新のITを利用した効率化にも注力。
アップパートナーズグループ
代表 菅 拓摩氏
2001年、税理士事務所に入所。
2003年に菅拓摩税理士事務所を開設。
2008年、旧内田会計グループと合併し、税理士法人アップパートナーズへ社名変更。
グループ全体で300名超という九州最大級の事務所を率いる。
スタートアップ税理士法人
代表 大堀 優氏
2011年に会計事務所に入所し、5年間勤務後、2015年2月にスタートアップ会計事務所を開業。
毎年顧問先を100件以上増やし急成長。
現在、新宿と横浜にオフィスを構え、社労士法人、司法書士法人も開設している。
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