理念採用と記帳代行で拡大!事務所を強くする組織づくりの秘訣とは?【セミナーレポート】
- 2023.01.06
- プロパートナーONLINE 編集部

創業58年の歴史を持つ名北会計センター。2020年より本格的に拡大路線へと舵を切り、
現在は7つの事業を展開し、従業員は35名にまで増員。
「経営戦略室長」として戦略的な組織づくりを実施してきた中坪達哉氏が、事務所成長の秘訣を解説します。
〔事務所概要〕
名北会計センター
創業/1964年
従業員/35名
所在地/愛知県名古屋市北区金城3-12-19 日東エステイトビル4F
理念経営をつくり、職員の意識統一&定着率アップ!
名北会計センターは、まだ志半ばではありますが、現在、従業員35名までに成長しました。ここまで事務所を大きくできたのは、理念経営を実践してきたことが大きいと考えています。
理念経営を意識する前は、事務所と毛色が合わない職員もいましたが、
理念に共感するメンバーが集まることで、定着率もアップしました。
■名北会計センターの経営理念
「子どもたちが働きたいと思えるような会計事務所」をつくること
1 お客様の為に熱き使命感に燃え、人格を高め、働き甲斐と生き甲斐のある会社になる。
2 私たちは、心の優しい人間集団になること。そしてお客様から真に喜ばれる税理士法人になる。
3 私たちは、お客様に技術を売る前に、使命感・ビジョン・経営理念と一人一人の人間性をお客様に伝え、
お客様の幸福と繁栄を応援して、お客様から必要とされ、感謝される税理士法人になる。
会計事務所の仕事は、顧問先との頻繁なやりとりや、法改正への対応、
繁忙期には残業が発生したりなど、決して楽な業務ではありません。
そんななかで、全員が同じ気持ちで前向きに仕事ができるように、上記の経営理念をつくりました。
■理念経営のメリット
理念経営を行ったことでのメリットは、次の二点です。
(1)顧客対応へのスタンスが統一できる
職員にスキルがあっても、理念が共有できていなければ、
サービスを提供する姿勢がバラバラになってしまいます。
税理士は、お客様の人生に関わる重要なことをたくさん相談される立場です。
お客様の期待に応え、質の高いサービスを提供することが求められます。
理念経営を行うことで、どんなときでも同じ心持ちでサービスを提供することができるようになりました。
(2)採用後の定着率が向上
当事務所では、これまで結婚など家族の理由以外で、離職する職員はゼロ。
これは理念を採用面接の時点で伝えるようにしたことが大きかったと考えています。
採用媒体には、理念、ビジョン、どんなお客様に価値を与えていきたいのか、など、
かなり長文で詳しく掲載。また、仕事に対してなるべくポジティブな方を採用することも心がけています。
これらを実践したことで、当事務所と非常に親和性が高い方を採用でき、
入社後のギャップも少なく、定着率がアップしました。
事務所の新しい武器として「経理代行」を強化!
理念経営に加えて、さらに事務所を成長させるために、「事務所の武器になるサービスをつくりたい」と考えました。
そこで私たちが着手したのは、「経理代行サービス」です。
経理代行は非常に標準化がしやすい業務です。
事業承継・相続などは専門性が必要になりますが、経理代行はどの職員も経験するものですので、
注力しやすいと考えました。
経理代行を強みにするメリットは、顧客側にも事務所側にもあります。
〔顧客側の経理代行のメリット〕
(1)費用が外注費扱いになる
経理を自社で行う場合は「人件費」になりますが、
経理代行で外部企業に委託するのであれば「外注費」扱いになります。
人件費よりも外注費の方が低コストで済むケースが多く、経営者に喜ばれるのです。

(2)不正会計の防止策になる
経理は業務の性質上、担当者のみが情報を把握しているため、
属人化しやすくブラックボックス化しやすい一面があります。
万が一、不正が起きても未然に防ぐことが難しいケースがあります。
経理業務の代行を依頼して、外部に任せることで、不正防止にもなります。
〔会計事務所側・経理代行のメリット〕
(1)報酬額を高めに設定できる
記帳代行は、振込業務まで行うと、年額30万円、40万円くらいの金額で引き受けることも可能です。
一般的な顧問報酬が5万円、10万円というなかで、30万、40万円というのは大きな数字。
事務所の収益基盤の柱にすることができます。
(2)マーケティング時のPRポイントができる
経理代行業務のマーケティング・営業手法は、まずは担当者から顧問先に案内をします。
さらに、ホームページでも「経理代行に強い事務所」としてPRすることで、
これまで関係のなかった企業から問い合わせをいただくことが増えました。
すでにほかの会計事務所が顧問業務を担当している企業でも、経理代行だけを当社で受けたり、
ほかの会計事務所から紹介をいただくといったケースも。
強みとなるサービスを定めて訴求したことで、マーケティングの効果を実感しています。
業務改善にも着手! 職員の負担を削減する
記帳代行業務の受注が増えてきたタイミングで、組織内の業務改善も行っていきました。というのも、受注が増えたことで一人当たりの作業負担が大きくなり、
職員が疲弊していると感じたからです。こうした状況を改善するために、
当社で取り組んできたことをいくつか紹介します。
(1)別会社として記帳代行専門会社を立ち上げる
会計事務所とは別に、記帳代行専門会社を設立。ここでは、業務フローを標準化し、
高い生産性を維持しながら仕事をすることを目標としています。
新入社員には、キャリアの第一ステップとしてこちらに入社し、
経理の基礎を学んでもらうようにしました。
入力作業などの実務経験を業務の中でしっかりと積んでから、
税理士法人に入社してもらうようにしています。
(2)接遇・マナーの研修を実施
事務所のお客様は、基本的に経営者や富裕層の方がほとんど。
そのため、求められる接遇のレベルは高く、対応にとても敏感な方が多い印象です。
職員には、そういった方々に対してのホスピタリティを学べる研修を受けてもらっています。
一般的に、会計事務所は、接遇やコミュニケーションよりも、作業が好きな方が多い傾向がありますが、
お客様は一流のサービスに慣れている方々。
私たちも、サービス業としての一面を大事にしなければ、差別化も難しいと考えています。
マナーやホスピタリティについて、座学と実践を交えた研修を行うことで、
職員の接遇レベルが上がり、お客様からの満足度もアップしました。
(3)資料回収方法を統一する
資料回収は、現在、郵送が70%、チャットワーク経由が20%、訪問時が10%となっています。
まだまだ郵送が多い状態ですが、今はツールを使って効率よく資料を集めることができるので、
チャットワーク導入をお客様に依頼しています。
依頼時には、「私たちの手間が省けるから」ではなく、
「お客様にメリットがあるから」ということを強調して説明。
お客様にチャットワークなどのツールを導入していただければ、
電話や訪問をしなくても売上や現状を素早く把握できるため、
お客様に時間を割いていただく必要もなくなるとお伝えしています。
また、紙資料で回収する際には、お客様に、「領収書」「通帳」など、
項目ごとに一目瞭然になるようにファイルに入れていただいています。
「迷ったものはここに入れる」という項目も作成して、事務所での作業がしやすいように工夫しています。
■業務改善の結果、確定申告も余裕を持って完了!
「経理代行の専門会社の立ち上げ」、「職員の接遇レベルのアップ」、
「資料回収方法の統一化」によって、職員の残業時間が削減。
今までギリギリで職員が疲弊していた月次作業も、
納期通りにしっかり完了できるのが当たり前になりました。
また、毎年の確定申告も、期日よりも数日余裕を持って完了できるようになり、
職員の負担を大幅に減らすことができています。
〔まとめ 事務所を成長させるためにすべきこと〕
●理念経営によって職員が同じ方向を向き、定着率を高める
●事務所の武器となるサービスを決めて、マーケティングを行う
●業務の効率化・標準化でムダな時間を減らす
プロフィール

中坪達哉氏
名北会計センター 経営戦略室室長
2004年に新卒で入社し、2011年より経営戦略室室長就任。
マーケティング、M&A、相続・事業承継、内部統制、監査業務など、多分野に渡り中小企業の成長を支援している。
現在は、グループ7社の代表を務める。
2004年に新卒で入社し、2011年より経営戦略室室長就任。
マーケティング、M&A、相続・事業承継、内部統制、監査業務など、多分野に渡り中小企業の成長を支援している。
現在は、グループ7社の代表を務める。
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