2024.04.04
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2023.09.25
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応に関するお知らせ

2023年10月01日(日)より、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されますので、弊社の同制度への対応についてお知せいたします。

弊社ではインボイス制度の対象となる課税取引のご利用について、
2023 年10月以降の決済分より、同制度の要件に対応できるようにいたします。

【当行適格請求書発行事業者登録番号のご案内】
株式会社アックスコンサルティングの登録番号をご案内いたします。

適格請求書発行事業者登録番号
T9011001004344
 

令和5年度税制改正大綱を読む(前編)〜インボイス制度と電子帳簿保存法を含む納税環境整備について〜

令和5年度税制改正大綱を読む(前編)〜インボイス制度と電子帳簿保存法を含む納税環境整備について〜

2022年12月に発表された、令和5年度税制改正大綱。
NISAの抜本的拡充・恒久化やグローバル・ミニマム課税の導入などが注目を集めていますが、
会計事務所が特に注目すべきポイントはどこなのでしょうか?
日本公認会計士協会租税調査会租税政策検討専門委員会副専門委員長などを務める、
税理士法人峯岸秀幸会計事務所の峯岸秀幸氏が、全2回で解説します。



 

はじめに

昨年12月16日、自由民主党・公明党から令和5年度税制改正大綱が公表されました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まった令和2年以降、
税制改正は現下の問題に対処するために既存の税制を手直しするものが中心でしたが、
コロナ禍に出口が見えたためか、
はたまた岸田政権がいわゆる「黄金の3年」を手にしたためか、
令和5年度税制改正大綱では近年にない量の改正項目が示されました。
本稿では、令和5年度税制改正大綱で示された豊富な改正項目のなかから、
私たち実務家が高い関心をもって成り行きを注目してきたものを
2つの視点から抽出して解説していきます。
前編では、企業一般の経理実務、
ひいては会計事務所のビジネスモデルにすら甚大な影響を及ぼしている、
インボイス制度と電子帳簿保存法を含む
納税環境整備についてみていきたいと思います。


 

1.方向性が定まったインボイス制度

インボイス制度については、制度創設以来、特に一昨年、昨年と、
国税庁から実務上の取扱いに関する見解の公表が進むにつれて
実務的な懸念が大きくなっていました。
また、免税事業者である小規模事業者の事業存続への危機感から、
制度の中止を求める声も一部から上がっていました。
そういった心配に対して、今回の大綱では、
実務的な懸念に対応するべく制度の一部修正には応じるものの、
大筋においては当初の予定通りに制度を開始するのだ
という意思が示されたと評価できるでしょう。
今回の大綱では、以下の改正について明らかにされました。
中身を見ていきましょう。

(1)小規模事業者の税額控除の経過措置(2割特例)の創設
免税事業者がインボイス制度の開始を契機として
適格請求書発行事業者(すなわち課税事業者)になる場合に、
以下のとおり、課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、
その課税標準額に対する消費税額の8割を乗じた額とする経過措置が設けられました。
 
1.対象となる期間
適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間
2.対象となる者
インボイス制度の開始を契機に免税事業者から適格請求書発行事業者
(すなわち課税事業者)になった者
3.納税額の計算方法
売上税額-売上税額×80%=納税額(すなわち、売上税額の2割)
4.適用を受けるための手続
確定申告書に設けられる記載欄に適用を受ける旨を記載する(事前の届出不要)

以上の特例は、本則課税や簡易課税との間で申告時に有利選択できることとされており、
事前の届出等が不要であることは実務家にとって朗報といえるでしょう。
但し、適用の検討に当たって、適用対象者が限られていることに注意が必要です。
すなわち、あくまで適格請求書発行事業者になることにより
課税事業者になる者を対象としているため、
インボイス制度開始前から課税事業者である者や
基準期間における課税売上高が1千万円を超える等の理由で
インボイス制度開始と同時期に課税事業者となる者は
本経過措置の適用を受けることができません。
また、課税期間を3カ月や1カ月に短縮している者も
適用を受けることができないとされています。
特に後者の点について、今後、早期の還付を目指して課税期間の短縮をする際には、
その後にこの経過措置の適用がなくなってしまうことを十分考慮する必要が生じますので、
注意しましょう。

(2)一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)
インボイス制度の開始により、
仕入税額控除のためには原則として適格請求書等の保存が必要になりますが、
そのことによる事務負担を軽減するため、以下のとおり、
一定規模以下の事業者に対して、適格請求書等の保存を不要とし、
一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除を
認めることとする措置が設けられました。
 
1.対象となる期間
令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入れ
2. 対象となる者
基準期間における課税売上高が1億円以下の事業者
特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者
3. 対象となる取引
課税仕入れに係る支払対価の額(税込価額)が1万円未満の取引
※この金額判定は、取引1回ごとではなく、商品等1つごとに行う。

大綱公表前、日税連が現行の3万円未満の少額取引の特例
(仕入税額控除のために請求書等の保存を不要として帳簿のみの保存で足りるとする)
の存置を要望していたことも手伝って、
同旨の特例がインボイス制度開始後も設けられるとの
税制改正がなされるのではないかと期待する向きがありました。
これに対して、一定規模以下の事業者に絞って、
対象の取引金額を引き下げる形で同じような特例を
設けるという回答がなされたことになります。
この特例においては、
一定の事項が記載された帳簿のみの保存が求められることになりますが、
その「一定の事項」が具体的にどのようなものであるかがまだ明らかになっていません。
インボイス制度の下では、この特例のほかにも、
3万円未満の公共交通機関による旅客の運送の場合など、
限定された場合に一定の事項を記載した帳簿のみの保存で
仕入税額控除が認められることとされています。
これらの書き分けが煩雑なようであると、
会計事務所としては記帳自体やそこでのエラーの防止・発見是正、
あるいは顧客が記帳した帳簿の内容確認のための事務工数の増加を見込まざるを得ず、
成り行きが注目されます。

(3)適格返還請求書の交付義務の一部免除
かねてから、客先が売上金の振り込みに際して
振込手数料相当額を勝手に差し引いて振り込んでくる際に、
その勝手に差し引かれた側がそれを値引きとして処理する場合に、
客先に適格返還請求書を交付しなければならないという問題が指摘されており、
このままでは実務が立ち行かないのではないかと心配されていました。
この問題に対処するべく、売上に係る対価の
返還等に係る税込価額が1万円未満の場合に、
適格返還請求書の交付義務が免除される改正がなされることになりました。
これにより、この問題に対する実務上の懸念はほとんど解消したといえます。
もっとも、実務上は、その勝手に差し引かれた振込手数料相当額を
値引きとして処理するのではなく、
支払手数料として処理してしまった場合、
この措置の適用がなくなってしまうことにくれぐれも注意が必要です。
支払手数料として処理した場合、仕入税額控除の適用を受けるためには、
従来通り、立替金精算書等の交付を受けることが必要になってしまいます。
今後は売上値引として処理するよう、顧客に対して、
あるいは各会計事務所の所内で、徹底する必要があるでしょう。

(4)適格請求書発行事業者登録の手続の柔軟化
大綱では、適格請求書発行事業者登録の申請期限(令和5年3月31日)後に
提出する登録申請書に記載する困難な事情について、
「運用上、記載がなくても改めて求めないものとする」
という記載がなされました。これを受けて、国税庁は既に
「令和5年4月1日以後に困難な事情の記載がない登録申請書が提出されたとしても、
令和5年9月30日までの申請については、インボイス制度が開始する
令和5年10月1日を登録開始日として登録されることとなります」(注)
という見解を公表しています。

(注)国税庁ウェブサイト
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_shinei.htm

※令和5年1月16日最終確認参照

インボイス制度について以上のような改正がなされることが明らかになりましたが、
制度開始前の税制改正はこれが最後となります。
制度開始時の制度の全体像が確定したことで、今後、
インボイス制度の開始に向けた準備が各所で加速することになるでしょう。




 

2.電子帳簿保存法、宥恕措置終了後の姿が明らかに

令和3年の年末、急遽、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の
保存義務の宥恕措置が設けられたのは記憶に新しいところです。
この宥恕措置の期間は令和5年12月31日までとされていましたが、
今回の大綱で、宥恕措置の延長はしない旨が明らかにされるとともに、
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務に関連して、以下のとおり、
新たに保存要件が緩和される措置がなされることになりました。




ここでいう「相当の理由」の内容は未だ明らかになっていません。
しかし、現行の宥恕措置においては「やむを得ない事情」とされており、
異なる文言が使用されていることに鑑みれば、現時点では、
現行の宥恕措置よりも限定的な状況を指すものと
予測しておくのが無難ではないかと思われます。

これらの措置は現行の宥恕措置の期限が切れた令和6年1月1日以降に適用になります。
注意すべきは、電磁的記録の保存に代えて出力した紙を
保存してもいいこととされている現行の宥恕措置とは異なり、
いずれの場合でも電磁的記録の保存自体は必須になることです。
引き続き紙出力で足りると誤解しないようにしましょう。
また、スキャナ保存制度について、解像度及び階調情報の保存要件、
大きさ情報の保存要件と入力者情報の確認要件が廃止されるとともに、
重要書類に当たらない書類についてのみスキャン文書と
帳簿の相互関連性の保持要件も廃止されることとなりました。
相互関連性の保持要件は実務上の高いハードルであり、
それが一部緩和されることは歓迎されますが、
しかし、そもそも重要書類とそうでない書類の区別を
現場レベルで行うこと自体に困難さが存在するため、
この改正によってスキャナ保存制度の導入が進むかといわれれば
疑問を覚えなくもありません。
さらに、今回の税制改正で、過少申告加算税の軽減が受けられる
優良電子帳簿における帳簿の範囲が限定的に画されることが明らかになりました。
もっとも、優良電子帳簿の各要件が緩和されるわけでなく、
導入は概ね一定規模以上の会社に限られてしまうのではないかと思われます。


 

3.納税環境整備を巡るその他の動き

以上のほか、大綱では、無申告加算税の割合が加重される
(納税額300万円超部分に対して30%へ引上げ)等の改正が明らかにされています。
加算税について、令和4年度税制改正で帳簿の提出がない場合等の
過少申告加算税等の加重措置が設けられたことに引き続き厳罰化を図る改正です。


 

おわりに
~納税環境整備を巡る税制改正は激動の時代に〜

近年、3の加算税関連の改正、電子帳簿保存法の大改正、
インボイス制度の開始とこれを見据えたデジタルインボイスの整備、
令和4年度の隠蔽仮装等に係る簿外経費の必要経費・損金不算入措置の創設など、
納税環境整備の関連で納税者に厳しい対応を図ったり、
国側(・納税者側双方)の利便性を向上させるための制度整備が続いています。
また、昨年10月の所得税基本通達35-2の改正では、
事業所得と雑所得の区分の判断に記帳の有無という基準が持ち込まれることとなりました。
これらの動きはいずれも、今後、会計事務所とその顧客が、
今まで以上に税務処理の正確性や厳密さを求められること、あるいはその先の、
DXにより税務処理の大部分が自動化された未来を予感させるのに十分なものです。
今回の大綱で、すぐそこに迫ったインボイス制度と
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存の義務化について、
制度の全体像が確定しました。
それらを正確に理解したうえで、我々の業界の未来像を予測しながら、
目下の課題に対して必要な手をたゆまず打ち続けていくことが求められます。

後編(Vol.2)はこちら

 
プロフィール
峯岸秀幸 氏
税理士法人峯岸秀幸会計事務所 代表社員
準大手監査法人と大手税理士法人に勤務後、2012年開業。
業務の傍ら税務における法律を大学院で学ぶ(修士「ビジネスロー」)。
日本公認会計士協会租税調査会租税政策検討専門委員会副専門委員長などを務める。
https://minegishi-accounting.com/
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