2023.09.25
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応に関するお知らせ

2023年10月01日(日)より、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されますので、弊社の同制度への対応についてお知せいたします。

弊社ではインボイス制度の対象となる課税取引のご利用について、
2023 年10月以降の決済分より、同制度の要件に対応できるようにいたします。

【当行適格請求書発行事業者登録番号のご案内】
株式会社アックスコンサルティングの登録番号をご案内いたします。

適格請求書発行事業者登録番号
T9011001004344
 

令和5年度税制改正大綱を読む(後編)〜相続税と贈与税の一体化をはじめとする資産・所得課税の改革について〜

令和5年度税制改正大綱を読む(後編)〜相続税と贈与税の一体化をはじめとする資産・所得課税の改革について〜

2022年12月に発表された、令和5年度税制改正大綱。
そのなかで、会計事務所が特に注目すべきポイントはどこなのでしょうか?
日本公認会計士協会租税調査会租税政策検討専門委員会副専門委員長などを務める、
税理士法人峯岸秀幸会計事務所の峯岸秀幸氏が、全2回で解説します。



 

はじめに

前編では、令和5年度税制改正大綱で明らかになったインボイス制度と
電子帳簿保存法の改正内容を中心に、
納税環境整備を巡る制度動向について確認しました。
前編はこちら

後編では、相続税と贈与税の一体化をはじめとして、
ここ数年試みられている資産と
所得の課税を巡る制度変革について確認していきたいと思います。
私見を思い切って述べれば、ここ数年の税制改正、
そして今回の大綱で明らかになった改正内容を俯瞰すると、
今後の税制は、現在既に資産蓄積がある資産家への課税強化ではなく、
主に中間層をターゲットとして増税方向に動くと
予想すべきではないかと思われてなりません。
そのことを踏まえて、今、会計事務所がこれから
どの顧客層にアプローチしていくべきなのかを
改めて考えてみる時期なのではないかという思いを強くしています。


 

1.『相続税と贈与税の一体化』の方向性が明確になった

ここ数年、いつ相続税と贈与税の一体化が図られるのか、
実務家の大きな関心の的でした。
一体化の中身によっては、これまで施してきた相続税対策が
ご破算になる可能性すら懸念されていました。
今回の大綱で、資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築という観点から、
相続税と贈与税の一体化がどのように・どの程度で図られるのか、
あるいは「図られないのか」、明確になったといえるでしょう。
これを受けて、今年は相続税対策の見直しが
重要なテーマの一つになることは間違いがありません。
今回示された改正内容は以下のとおりです。

(1)相続時精算課税贈与制度の見直し
従来は、相続時精算課税贈与制度を選択すると、
暦年課税で認められる基礎控除額110万円のメリットを
享受できないという問題がありました。
そのことが高齢世代から若年世代への資産移転を
妨げていたかどうかの確信はありませんが、
相続時精算課税贈与制度について以下のとおり改正されることになりました。
納税義務者にとっては使い勝手が向上したといえるでしょう。
・相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産に係る年分の贈与税について、
課税価格から110万円を控除できることとする。
また、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等される財産の価額は、
それを控除した後の残額とする。
・相続時精算課税贈与制度の利用により贈与を受けた一定の土地又は建物が、
贈与の日から特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までに
災害によって一定の被害を受けた場合、
相続税の課税価格に加算等する土地又は建物の価額は、
その災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。

すなわち、相続税と贈与税の一体化は、
相続時精算課税制度の利用促進により図るという基本的な姿勢が
明らかになったといえるのではないでしょうか。
今後、相続時精算課税贈与制度を利用した場合には
年110万円の控除後で相続財産に加算されることになる一方で、
暦年課税で課税を受けていた生前贈与については、
一定期間分は控除なしで加算されることになります。
後述のとおり、今回の改正で相続前贈与の加算期間が延長されたことも手伝い、
相続開始まで長くないと見込まれる場合の相続税対策においては、
相続時精算課税制度の利用が一層進むことになるものと思われます。

この改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税
または相続税から適用になります。




(2)相続前贈与の加算期間の延長
現行制度の下では、相続開始前3年以内の暦年課税に係る贈与によって取得した財産が、
相続税の課税価格の計算において加算されることとされています。
その加算期間が7年に延長されることとなりました。
この改正も、令和6年1月1日以後に贈与により
取得する財産に係る相続税から適用となります。
もっとも、その期間については以下のように考えます。
 
令和6年から令和8年の間に発生する相続については、
加算期間は従来通り3年のままであり、
令和9年以降に発生する相続から順次加算期間が延長されて、
最終的に令和13年1月1日以後に発生する相続から7年になる。

いずれにせよ、今年中に行われる贈与については改正の対象外です。
以上の改正を踏まえ、前述のとおり、
相続開始まで長くないと見込まれる場合の相続税対策には
相続時精算課税贈与制度の利用が推奨され、
そうではない長期的視点で行われる相続税対策においては、
引き続き暦年課税の利用の有用性が失われないといえるでしょう。
また、この加算期間の延長により、
会計事務所における贈与の履歴の管理の重要性が一層増すことになります。
このことは、ある意味では、
会計事務所と顧客との間の長期的な関係構築に資するものといえるでしょうし、
逆に、業務拡大を図る会計事務所の
新規顧客獲得の障壁になるといえるかもしれません。

以上のほか、以前から世帯間格差を助長するとして
廃止の可能性が取り沙汰されていた教育資金の一括贈与の非課税措置、
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置は、
一定の手当てがなされたものの、3年延長されることになりました。


 

2.“1億円の壁”への施策として示されたのは…

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プロフィール
峯岸秀幸 氏
税理士法人峯岸秀幸会計事務所 代表社員
準大手監査法人と大手税理士法人に勤務後、2012年開業。
業務の傍ら税務における法律を大学院で学ぶ(修士「ビジネスロー」)。
日本公認会計士協会租税調査会租税政策検討専門委員会副専門委員長などを務める。
https://minegishi-accounting.com/
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