司法書士事務所が相続案件を安定して獲得する仕組みづくり【セミナーレポート】
- 2023.03.30
- プロパートナーONLINE 編集部
需要の高まりとともに、相続案件を安定的に獲得している司法書士事務所がある一方で、
なかなか獲得できずにいる事務所も存在します。
もしかしたらその差は、「営業力」にあるのかもしれません。
そこで、「今からでも間に合う相続案件を受注する仕組みづくり」をテーマに、
株式会社アックスコンサルティングの岩﨑友宏氏が解説します。
2023年の法改正を理解して相続市場の流れを掴む
2023年は遺産分割や登記など、相続に影響する「法改正ラッシュ」の年と言われています。
これから相続業務に力を入れたいと考えている先生や
相続案件獲得のための対応を強化していきたい先生、
何から始めたらよいかわからないという先生は、
まずは法改正を正しく理解していきましょう。
お客様に最新情報をお伝えして、
事務所サービスの必要性をより強く感じていただければ、
そこから具体的な相談へと発展するチャンスが生まれます。
■2023年以降の主な法改正
・相続土地国庫帰属制度(制度開始日:令和5年4月27日)相続した土地について、「遠くに住んでいて利用する予定がない」、
「管理が必要だけど、負担が大きい」などの理由で
相続した土地の管理ができないまま放置された場合、
「所有者不明土地」が発生してしまいます。
2018年(平成30年)版土地白書によると、
2016年度(平成28年度)地籍調査に基づくと
全国の所有者不明土地は約410万haとなっており、
九州(約367万ha)を超える水準と推計されています。
所有者不明土地を防止するため、
相続または遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部または全部を譲ること)
により土地の所有権を取得した相続人が、
一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする
「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。
相続土地国庫帰属制度は、令和5年4月27日からスタートします。
・相続登記の義務化(制度開始日:令和6年4月1日)
土地の名義人が亡くなった後、登記しないまま放置をしてしまうと、
その間に相続人が多くなってしまい、
相続の対象となるすべての人に連絡するのが困難になってしまいます。
そのため、土地を売却したり、
利用する場合、手続きも相当な時間を要してしまうなど、不具合が生じます。
このような問題を解決するために、政府は相続登記の義務化を模索し、
令和6年4月1日から開始されることとなりました。
相続登記の義務化では、相続によって不動産を取得した相続人は、
その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければいけません。
(遺産分割協議成立による場合は、その成立を知った時から)
また、正当な理由なく期限内に登記しなかった場合
10万円以下の過料が科されることがあります。
・長期間経過後の遺産分割について(制度開始日:2023年4月1日)
先述した所有者不明土地のように、
遺産分割されないまま長期間放置されてしまっている土地を抑制することを目的として、
遺産分割の協議(合意)及び遺産分割の申し立ての期限を、
相続開始時から10年と設定されました。
相続開始から10年を経過するまでに、
遺産分割の協議(合意)及び遺産分割の申し立てがない場合は、
法定相続分(または指定相続分)に従って遺産分割されたものとみなされます。
これらの法改正により、不動産などの資産を相続する際の
事前対策への潜在的ニーズが増加していくことが考えられます。
この波をチャンスととらえて、
生前対策など新たなサービスを提案する準備を進めておきましょう。
隣接業界の最新動向を知り、顧客のニーズをつかむ
法改正に合わせて、隣接業界の最新動向を理解することも必要です。最新動向をお客様にお伝えして喜んでいただくだけでなく、
他業界と連携することで新たな見込み客の発掘が可能になります。
では、司法書士業界と深く関わりのある4つの業界の動向を見ていきましょう。
金融業界
・地銀の苦戦相続された預金の66%が相続人のメインバンクに移動しています。
このため、相続資産が都市部へ流出し、地銀が苦戦しています。
・相続相談会が実施できない
働き方改革等によって、これまで土日祝や平日の夜に開催していた
相続相談会などが開催できなくなってきています。
・銀行が遺産整理業務を強化
保険会社が銀行代理業に参入する動きと相まって、金融商品だけではなく、
相続や事業承継、M&Aなど多角的にサービス展開を開始してきています。
銀行によっては、HPに具体的な料金表示して、対応可能アピールをしています。
不動産業界
新型コロナ感染症により、海外でリモートワークが増加し、住宅リフォームが増加しました。
これにより、それまで輸入に頼っていた材木が減少し、
日本でも家屋の価格が高騰しています。
また、2013年から続く金融緩和によって、緩和マネーが不動産市場に流れ、
その結果、不動産価格が上昇しています。
このような背景から、不動産会社は短期顧客の契約率アップと
長期顧客の囲い込みに力を入れています。
保険業界
2019年に、法人税基本通達の改定があり、経営者向け定期保険などの販売休止に。
以来、業界全体が厳しい状況にあり、銀行代行サービス開始するなど、
新たな動きも活発になっています。
葬儀業界
近年、葬儀の低価格化が進み、顧客単価の縮小化と価格競争が厳しくなっています。
葬儀会社各社では、葬儀価格縮小による収入減を補うため、
オンライン葬儀などの新しいサービスを展開させています。
そのほか、他社との差別化を図るため、相続や不動産、
特に宅建業へ参入する葬儀会社が増えています。
まとめ
お客様に最新情報をお伝えし喜んでもらうため、また、事務所サービスの必要性をより強く感じていただくためには、
最新の法改正をとらえることが欠かせません。
また、隣接業界の動向もチェックして他業界との連携の可能性を探り、
新たな見込み客の発掘していくことも必要です。
営業力とマーケティングを強化して、継続して相続案件を獲得
では次に、継続して相続案件を獲得するために何をすべきかを見ていきましょう。営業とマーケティングについて、
多くの方がもう知っていると思われるかもしれませんが、
「知っている」と「できる」は違います。
営業とマーケティングの基本について改めて理解して、
顧客獲得に活かしていきましょう。
営業は、「お客様に商品を販売すること」を意味します。
一方、マーケティングは「商品・サービスが売れるための仕組みをつくること」で、
安定した案件を獲得するには、営業とマーケティングの両方が必要です。
継続案件を獲得するにはまず、「売りたい商品」を用意することが必要です。
この際、商品にはフリー商品、フロント商品、クロスセル、アップセル、
バックエンドという5つの種類があるというビジネスの基本を意識しましょう。
司法書士事務所が案件を獲得する場合にも、この5種類すべてを用意することが必要です。
「5つの商品」とは
フリー商品:集客を目的とした無料のサービス例)無料相談会、無料セミナー、無料メールマガジン、無料SNS発信、
ブランド力、YouTubeを利用した無料動画配信、節税チェックリスト等の配布 など
フロントエンド商品:集客を目的としたサービス
例)有料1dayセミナーや、有料相談会、1時間いくらなど単発税務相談、ビデオレター、
相続club、相続カウンセリング、自社株評価 など
クロスセル:顧客が購入しようとするサービスとは別のものを提案して単価向上につなげるもの
例)家系図、民事信託、贈与等の生前対策 など
アップセル:顧客の購入単価を向上させるもの
例)民事信託、贈与等の生前対策、 など
バックエンド商品:フロントエンド商品を購入してもらった後に販売するサービス
例)相続登記、事業承継、組織再編、M&A など
「5つの商品」を揃えた後は、顧客を獲得するためには、
以下のステップを1つずつ進めていきます。
ステップを踏んでアプローチをしていくことで、必ず成果につながります。
STEP1 リストアップ
新規、既存顧客と分けて、100~150件を目安にリストアップしていきましょう。
STEP2 アプローチ
電話やメール、DMなどを活用して、
リストアップした見込み客にアプローチしていきます。
司法書士事務所から税理士事務所へのアポ獲得率は15%前後です。
STEP3 面談
STEP2で面談まで進んだら、
実際に提案書を活用しながら詳しくヒアリングしていきましょう。
初回の面談時間のうち7割はヒアリングに割き、
相手が求めていることや困っていることを伺いながら、
一緒に提携しながら営業活動できることはないか考えていきましょう。
ポイントは必ず次回のアポイントを獲得することです。
STEP4 ルート営業
獲得したい案件を取り扱っている士業事務所や
関連企業などから紹介案件を獲得するにあたって
関係性維持のために訪問営業を行います。
面談後に提携先のABCランクを明確にし、
Aランクには毎月1回チラシ等のツールの補充を行いましょう。
STEP5 勉強会&タイアップセミナー
勉強会やセミナーを開催して、お客様に喜ばれる情報を提供します。
セミナー終わりには無料相談会を開催するなど、
面談確約をとれるきっかけの場を創出します。
面談確約が取れないで質問のみで終わった長期見込みのお客様も、
関係性を構築できるようにメールアドレスは必ず取得しましょう。
例)
・税制改正セミナー
・民法改正セミナー
・奥様と子供目線の相続セミナー
・遺産整理業務と相続にかかわる税金の話
・事業承継に関するセミナー
・成年後見制度の活用セミナー
・相続の基礎と遺言の上手な使い方セミナー
・民事信託セミナー
・ふるさと納税&土地活用セミナー
既存のチャネルの強化と新しい相続案件獲得チャネルの開拓
では次に、司法書士事務所が実際にチャネル開拓した事例を紹介しながら、相続案件の獲得手法を解説します。
■事例1 A司法書士事務所(兵庫県)
税理士事務所を開拓し、年間10件の相続案件を獲得
A司法書士事務所の概要
・職員数6名(資格者1名)
・不動産登記7割超、相続3割弱
・現在のチャネルは不動産業者メインで、税理士事務所との付き合いはなかった
【取り組んだ活動】
(1)近隣の税理士事務所(総数50件)をリスト化
(2)テレアポ業者を活用してアポ取り
【提携先の税理士事務所のニーズ】
「一緒に集客に取り組んでいける、信頼できる司法書士と連携したい」
具体的には…
(1)相続業務の業務効率化
(2)相続市場の動向や最新情報の提供 を求めていた
【受注できたポイント】
(1)案件発生後に迅速に適切なレスポンスをしていた
(2)税理士向けのトークスクリプトを作成して、営業時に相手のほしい情報を提供
(3)セミナー共同開催など、遺産整理業務の連携を提案した
【結果】
11事務所のアポイントを獲得し、3事務所から継続的に案件を受注。
うち1事務所とは共同でマーケティング活動実施
(マーケティングコストはテレアポ業者に依頼した6万円)。
■事例2 B司法書士事務所(大阪府)
不動産会社と連携し、勉強会直後に相続登記2件、民事信託3件の相談を獲得
B司法書士事務所の概要
・職員数7名(資格者2名)
・不動産登記3割、相続4割、商業3割
・現在のチャネルはWEBが6割、税理士等からの紹介4割
【取り組んだ活動】
(1)過去にやりとりがあった大手不動産会社に、相続案件の獲得サポート等を趣旨とした連携を提案
(2)全国拠点で勉強会を開催し、連携体制を強化。各支店から案件相談を獲得
【提携先の不動産会社のニーズ】
(1)相続が絡む案件を幅広く対応できる協力企業との連携
(2)シニアオーナー向けの生前対策コンテンツの充実
(3)集客サポートを行ってくれる専門家との提携
【受注できたポイント】
案件を発生させるために積極的にアクションを打ち出した
具体的には…
(1)企業規模が大きい会社の場合は、現場担当者との接点をつくって認知
(2)待っているだけでは相談は来ないので、見込みのある担当者に接触
(3)ニーズ把握後も、定期的な接触づくりを行った
【結果】
勉強会直後に相続案件2件獲得、信託相談3件獲得
[まとめ]
お客様に必要とされる事務所となるためには、司法書士事務所が相続案件を安定的に獲得し、売上を上げるには、
「お客様から必要とされる事務所」であり続けなければなりません。
そのためには、
- 最新の業界事情や法改正を理解して、お客様に最新情報を提供する
- 隣接業界の動向とニーズを把握して、連携の可能性を探る
- 営業とマーケティングの基本を理解して、新規獲得のための営業力・マーケティング力を強化する
プロフィール
岩﨑 友宏氏
株式会社アックスコンサルティング チーフマネージャー 大阪支社長
マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士。
入社以来一貫して、相続・資産税に特化した士業事務所の経営・マーケティング支援に従事。
のべ200社以上を成功に導いたコンサルティング実績を持つ。
個人・法人の相続相談実績10,000件以上、
全国100事務所が加盟している「アックス資産税パートナーズ」
「アックス司法書士パートナーズ」の立ち上げ・運営において中心的な役割を果たしている。
マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士。
入社以来一貫して、相続・資産税に特化した士業事務所の経営・マーケティング支援に従事。
のべ200社以上を成功に導いたコンサルティング実績を持つ。
個人・法人の相続相談実績10,000件以上、
全国100事務所が加盟している「アックス資産税パートナーズ」
「アックス司法書士パートナーズ」の立ち上げ・運営において中心的な役割を果たしている。
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