「税理士懲戒処分」になり得る注意すべき違反行為
- 2020.05.26
- 株式会社 アックスコンサルティング

税理士、税理士法人が不正行為を行うと下される「懲戒処分」。
今やどんな税理士でも懲戒処分のリスクが突然降りかかってくる時代。
今回は、リスクが大きい「税理士懲戒処分」23事例から6事例をピックアップしてお伝えします。
2014年度の税理士懲戒処分件数は過去最多の59件、その後年々減少していますが、税理士・税理士法人に対する懲戒処分はまだ多く、今後増加する可能性もあります。
「自己脱税」「名義貸し」「反職業倫理的行為」などは言語道断ですが、時には事務所職員や顧問先等に起因する故意・過失によって義務違反行為を指摘されるケースもあります。
例えば、税理士の知らないところで、事務職員が担当する顧問先に依頼され、不真正な税務書類を作成したことが税務調査で発覚することもあるのです。
リスクが大きい「過失による特定の義務違反行為」
税理士懲戒処分の処分事由は、以下の3種類に分類されます。- 故意による特定の義務違反行為
- 過失による特定の義務違反行為
- その他の義務違反行為
「故意による特定の義務違反行為」に当たる税理士法第四十五第一項(脱税相談等をした場合の懲戒処分)と、「過失による特定の義務違反行為」にあたる税理士法第四十五条第二項(脱税相談等をした場合の懲戒処分)とを比べると、当然懲戒処分としては税理士が自覚している分、第一項のほうが重いです。
しかし、自覚していなくても過失責任を問われる以上、第二項のほうがリスクは大きいのです。
税理士法第四十五条第二項の違反事例
税理士として本来払うべき注意を怠った結果、違反行為として罰則を科せられます。事例1:仕入に係る支払事実を確認せず、所得金額を不正に圧縮した申告書を作成
税理士が関与先法人の役員から口頭により仕入金額の提示を受けたが、その仕入に係る支払事実等を何ら確認することなく、提示を受けた根拠のない金額を仕入に計上するなど、関与税理士として相当の注意を怠った結果、所得金額を不正に圧縮した申告書を作成した。事例2:原始記録を確認せず、売上除外の事実を税務調査で把握
A及びB銀行に売上の入金口座として会社名義の口座を開設しており、顧客への請求書にも二つの銀行を併記しており、領収証もA銀行入金分とB銀行入金分を区分していなかったが、会社は決算申告に際しA銀行に振り込まれた売上を除外した。税理士は関与当初から原始記録を確認したことがなく、売上除外の事実を把握しておらず税務調査により売上除外の事実を把握された。
税理士は、相当の注意を怠った結果、所得金額を不正に圧縮した申告書を作成し提出したとして懲戒処分を受けた。
「職員に対する監督義務」は予期せぬ最大リスク
「過失による特定の義務違反行為」で、よくあるケースとしては[使用人等に対する監督義務]の規定です。顧問先の多い大規模な税理士事務所の所長税理士あるいは税理士法人にとって「予期せぬ懲戒処分」を受ける最大のリスクとなり得ます。
職員に対する監督義務の規定に関する事例を挙げておきます。
事例3:顧問先から架空経費や売上除外を強要
職員が担当先の代表者から強要されて架空経費の計上あるいは売上除外等の方法で所得金額を不正に圧縮した決算書を作成し、それに基づいて申告書を作成、提出した。事例4:顧問先の要求で給与支払報告書を改ざん
職員が担当先の代表者の求めに応じ、住民税の負担を免れるために給与支払報告書を改ざんして提出した。事例5:小遣い稼ぎで友人の申告書を作成
職員が小遣い稼ぎのために親戚、友人、知人等の申告書を作成して報酬を得ていた。事例6:書損した総勘定元帳をメモ用紙に使い普通ゴミで廃棄
書損した顧問先の名称が入った総勘定元帳や財務諸表の用紙の裏側を他の顧問先の申告書として使用したり、所内のメモ用紙等で使用し、裁断することなく普通ゴミとして廃棄したこと等が守秘義務違反に問われた。職員に違反行為をさせないための4つの予防策
職員の違反行為への予防策として、次の4点が挙げられます。- 常勤、非常勤にかかわらず守秘義務規定を盛り込んだ誓約書あるいは雇用契約書を交わす
- 最低でも年に1回は職員研修を実施して注意喚起をする
- 顧問先の担当を複数制にするなどチェック機能が働く仕組みをつくる
- 税理士自身が定期的に顧問先を訪問する
懲戒処分は業務禁止・停止となる重い処分であり、税理士生命にかかわります。
突然降り掛かるリスクに備え、対策を取ることをおすすめします。
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