現在、お知らせはありません。

「178万円の壁」が動き出す2026年——3月決算申告の合間でも、顧問先に届けるべき税理士からの一言

3月決算法人の申告期限まで、残りわずか。
多くの税理士事務所では、5月は1年で最も気の抜けない時期かと思います。

毎日深夜まで申告書のチェック、職員からの相談対応、顧問先との最終確認。
「今は申告以外のことを考える余裕などない」というのが、5月の税理士事務所のリアルかもしれません。

それでも、本記事をお読みいただきたい理由が一つだけあります。
2025年12月に確定した「178万円の壁」――この時事ネタは、繁忙期の真っ只中である今この5月にこそ顧問先へ一報を入れることに価値があるテーマだからです。
申告業務に追われる中でも最小工数で動ける形で、その背景と具体策をお伝えします。

 

1. 2026年分から「178万円の壁」が現実になる

2025年12月に閣議決定された令和8年度税制改正大綱で、所得税の課税最低ライン――いわゆる「年収の壁」――が、現行の160万円から178万円へ引き上げられることが正式に確定しました。
2026年分の所得税から適用されます。

2024年までは「103万円の壁」と呼ばれてきたこの基準は、わずか2年で75万円も引き上げられたことになります。

ニュースでは「減税」「手取り増」といった言葉が踊っていますが、現場の中小企業経営者にとって本当に重要なのは、この変更が自社のパート・アルバイト戦略にどう影響するかです。

 

2. なぜ「申告期で忙しい今、5月」に動く価値があるのか

「うちは5月申告期で手一杯。情報発信は6月以降に回したい」――そう感じられる先生が大多数かと思います。
それでも「178万円の壁」だけは5月中の一報に意味があります。理由は3つです。

理由1:夏のシフト計画・採用計画は、5〜6月に決まるから
飲食・小売・サービス業を中心に、夏の繁忙期に向けたパート・アルバイトのシフト枠と採用計画は、5〜6月に確定します。
6月に情報を届けても、すでに計画が固まった後になってしまう顧問先が出てきます。

理由2:申告書納品時の面談こそ、最大の接触機会だから
5月は税理士事務所の繁忙期ですが、見方を変えれば、1年で最も多くの顧問先経営者と直接顔を合わせる月でもあります。
決算報告・申告書納品の面談で一言添えるだけで、経営者は「この先生は最新情報まで気を配ってくれている」と感じます。新たに訪問アポを取る必要はなく、既存の面談機会に乗せるだけで済むのが、5月の特権です。

理由3:年末調整・確定申告で初めて実務が動くから
2026年分の所得税から適用ということは、影響が顕在化するのは2026年末の年末調整、そして2027年3月の確定申告です。今から半年かけて整理しておかないと、年末に大混乱します。
 

3. 顧問先の経営者が抱える3つの誤解

申告書納品の面談で軽く触れる際、押さえておきたいのが、メディア報道による経営者の典型的な誤解です。

誤解1:「178万円まで働けば社会保険料も非課税」
実態は、所得税の話と社会保険の話は別物です。
社会保険料の負担基準(106万円・130万円の壁)は別途存在し続けます。
経営者がこの違いを誤認したままシフト枠を組むと、「税金は非課税のはずなのに手取りが減った」というクレームがパート従業員から出てきます。

誤解2:「全パートの所得税が一律で減る」
壁の引き上げで恩恵を受けるのは、年収123万円超の層だけです。すでに年収103万円以下に抑えて働いている層には、税負担の減少は発生しません。

誤解3:「扶養から外れる基準も178万円に変わった」
配偶者控除の対象配偶者の年収要件は別途定められており、すべてが178万円に統一されたわけではありません。
家族構成別に試算しないと、経営者個人の家計設計にも影響します。

 

4. 申告期の合間でもできる、3つの最小工数アクション

時事ネタを「ただ知っている」だけでは、顧問料は守れません。
情報を顧問先の経営判断に翻訳して届けることが、AI時代の税理士の価値です。
申告業務の合間でも実行できる最小工数アクションに絞ってご紹介します。

アクション1:申告書納品時の「ひと言添え」
最も工数が低く、効果が高いのがこれです。
決算報告・申告書納品の面談の最後に、「178万円の壁の件、夏のシフト計画にも関わるかもしれませんので、後日資料をお送りしますね」と一言添えるだけ。
事前のアポ取りも、追加の訪問も不要です。
既存の面談機会に乗せるだけで、顧問先からは「先生は最新情報を気にかけてくれる」という信頼が積み上がります。

アクション2:6〜7月の個別相談アポを5月中に予約しておく
申告書納品の面談で「178万円の壁」に触れた顧問先のうち、特にパート・アルバイト比率の高い業種(飲食・小売・介護・運輸など)の経営者には、「6月以降に1時間お時間をいただいて、貴社の人件費シミュレーションをご一緒しませんか」と個別相談アポを予約してしまいましょう。
5月の繁忙期に深く取り組む必要はなく、種だけ蒔いておく。
実際の提案・実務は、時間に余裕のある6月以降に行えば十分です。

アクション3:顧問先全社への一斉情報配信
ひと言添えと個別アポと並行して、顧問先全社に「178万円の壁」の解説情報を一斉配信しましょう。
「178万円の壁とは何か」「貴社の人件費にどう影響するか」をまとめた原稿をメールやニュースレターで届けるだけで、面談機会のない顧問先にも漏れなく情報を届けられます。
繁忙期に所長自らが原稿をゼロから書くのは現実的ではありません。
事務所内のスタッフに概要を共有し、テンプレートに沿って下書きを作ってもらう、もしくは業界共通の原稿テンプレートを活用するのが、現実解です。
所長は最終チェックと配信日の指定だけで完了する仕組みを作っておくと、こうした時事ネタ配信は今後の年末調整・税制改正のたびに繰り返し活用できる事務所の資産になります。

 

5. まとめ

繁忙期だからこそ、「先生もお忙しい中で、わざわざこの情報を伝えてくれた」という経営者の感謝が際立ちます。

申告書納品時の「ひと言」、6〜7月の個別相談アポ予約、顧問先への一斉情報配信。
いずれも申告業務の合間で実行可能な、最小工数のアクションです。
最後まで走り切りつつ、ひと言の種まきから始めてみてはいかがでしょうか。

なお、アクション3でご紹介した一斉情報配信については、弊社のMiGメールにて「178万円の壁」解説原稿テンプレートもご提供しています。
配信日と配信先をご指定いただくだけで運営事務局が代行する仕組みもありますので、ご関心のある先生は下記よりご確認ください。

「178万円の壁」解説原稿テンプレートはこちらからご依頼ください
https://app.mig-sys.jp/mig/office/3bAwALqxza/questionaries/10172

▶MiGメールについて詳しく見る
[MiGメール 詳細URL]
https://pro.mig-sys.jp/
 [MiGメール お問い合わせURL]
https://pro.mig-sys.jp/contact/
プロフィール
松村菜穂実
株式会社アックスコンサルティング
MiG運営事務局 責任者

大手情報通信会社で企画、総務を経験後、株式会社アックスコンサルティング中途入社。HR事業部で中小企業向けサポートを担当したのち、メルマガ配信システム「MiGメール」運営事務局責任者として300社以上の事務所をサポート。北海道から九州まで幅広く担当し、各事務所・顧問先の方向性やニーズにあった情報配信戦略の立案を得意としている。