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収益不動産(建物)の贈与 記事

収益不動産(建物)の贈与
 

アパートの収益力を子に贈与するには

今回は、親名義の賃貸不動産を子どもに譲る税効果についてのお話です。
事例として、新宿といった東京のターミナル駅から私鉄で30分かかる、駅徒歩10 分の静かな住宅地に、90坪の土地に80坪の2階建てアパートを、親が持っているとします。

この建物は昭和61年建築で当時の建築費は3,000万円、坪40万円弱で当時の一般的な木造アパートです。現在のその建物の固定資産税評価額は650万円で坪8万円強となっています。
土地の現在の路線価では6,300万円、受取家賃等は年額720万円とします。

土地路線価評価と建物固定資産税評価を単純合計すれば6,950万円となります。
相続税課税価格は貸家評価等として評価は少し安くなり約5,600万円程です。実際に売却するとすれば投資物件として家賃が年間720 万円で利回り8%と考えて、9,000万円程度でしょうか。このアパートを子に贈与する場合、不動産としてのアパートの土地建物を贈与すれば5,600万円程に対する贈与税課税で贈与税は2,500万円にもなり、現実的ではありません。むしろアパートの収益力が帰属する建物部分のみを贈与します。

建物の固定資産税評価額は650万円とすると、貸家評価としてその70%の455万円が贈与税課税の対象となり、これに対する贈与税は44万円です。
これに加え、所有権移転登記をするのなら、登録免許税と不動産取得税(計32万円)が課税されます。

44万円の贈与税が一回課税されるだけで、年間720万円の家賃収入が今後ずっと子の収入となります。
これがアパート建物の贈与であり、その意味するところはアパート収益力の贈与です。
本来は土地と建物の双方から収益力が生じるのですが、現在の扱いでは建物所有者に家賃収入が帰属することになっているのがポイントです。

贈与の効果が高いのは、高家賃水準の地で築後年数が経過したアパートや賃貸ビルです。
つまり土地の値段が高い(=家賃水準が高い)が、建物が古い(つまり贈与税課税の対象となる固定資産税評価額が低い)物件
です。それに建築費のローン返済が終わっていることもポイントです。ローン残があると銀行との交渉が必要となります。

 

相続時精算課税か分割贈与か

なお贈与税でも相続時精算課税を使えば、2,500万円の非課税枠があり税負担ゼロも可能です。
しかし相続時精算課税制度にはデメリットもありますので、贈与税負担を考えながら検討します。
通常の贈与でも年度を分け贈与すれば、贈与税は減少します。上のケースで建物持ち分1/2 づつ2年で贈与すれば、贈与税は
2年合計で24万円で済みます。

なお預かり敷金があったとすると、親は子に対して預り敷金の残高を渡して精算します。親が中古投資物件を現金で購入し、しばらくして建物だけ子に贈与することも同様の効果があります。

贈与でなく建物だけの売買でも可能です。売買価格は時価として償却後簿価が一般的ですが、築年数が古くて減価償却済みとなっていると、価格算定に苦労します。また門塀等の評価や、消費税が課税されることにも注意が必要です。

 

プロフィール

税理士法人エクラコンサルティング / 株式会社エクラコンサルティング

代表社員/税理士 田中 誠、税理士 三井 皓市
事務所所在地/東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート 8F
従業員数/11名(税理士6名)
http://www.eclat-c.com/