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社員の定着率は会社の空気の良し悪しで決まる! 記事


 

社長のメンタルを蝕む社員の離職問題

中小企業の社長の悩みの一つは、社員の離職です。

「募集してもなかなか人が来ない。そんな中でやっと採用できたのにすぐ辞められてしまってはたまらんな」

というのが社長の心情です。
私は2年前に職員が全員辞める予定となっていて困っているS動物病院の院長のM先生を紹介されました。既に誰が何月に辞めるということまで決まっていました。
動物病院は職員の離職率が高い業界で、離職率に限らず、院長の悩みは人の問題です。
売上が順調に伸びている動物病院であっても人に関する悩みは尽きないそうです。

M先生との初対面では覇気がなく鬱状態の印象を受けました。
まだ開業して間もなく、職員は3名でしたが、全員辞めると言われるのは精神的にもきつかったと思います。
一気に全員に辞められるということは、院長ご自身を否定されたような気になり、精神的ダメージも大きくなるからです。
私への依頼内容は、次の3点でした。

・職員が定着する組織への変革
・職員を自律型人材に育成
・院長に対するコンサルティング

普通は「とにかく職員をなんとかしてくれ」と言われることが多いのですが、M先生からは、

「職員が全員辞めるということは、私にも問題があると思うので改善したいと思っています。私に対してもご指導いただけないでしょうか。組織や人については分からないことばかりなので、トップとしての考え方も教えていただきたいです」。

と言われました。 結論から言うと、開業から2年経って職員は2倍に増え、院内の雰囲気も良くなり、定着率も良くなりました。元々思考がネガティブで、ついてこられなくなっていった職員は辞めていきましたが、それ以外のスタッフは前向きに仕事に取り組んでいます。

しかしここに至るまでは苦難が続きました。
この経緯については別の機会でお伝えするとして、この動物病院で組織のbefore・afterを体験したことから何が違うのかということをここからお伝えしていきたいと思います。

 

人が辞める根本的な原因は空気である!

社員が辞める会社と辞めない会社の大きな違いは『空気』にあります。
空気とは会社の雰囲気のことですが、組織風土とも言い換えることができます。

良い組織風土の会社は次のような感じです。

・業績は良くても危機感を持っている。
・前向きな発言が多い。
・社員同士の仲が良い。
・仕事にやりがいを感じている社員が多い。
・会社が好きな社員が多い。
・社内のイベント(飲み会、旅行など)の参加率が高い。
・社員が会社の方向性を理解している。
・良い意味で厳しさがある。
・挨拶がきちんとされている。

このような組織は社員の定着率が良く、会社を嫌で辞める社員は少ないです。
ちなみに悪い組織風土の会社はこの逆です。

社員の離職率が高い会社の社長は、給料を高くしたり、評価制度を導入して頑張った社員とそうでない社員の差をつけてモチベーションを高めようとしますが、給料を高くしても評価制度を導入しても、根本的な課題を解決しない限りは社員の離職率の改善にはつながりません。

低すぎる給料は退職理由につながりますが、標準的な金額であれば辞める要因にはなりません。特に女性の場合は、働きやすい職場かどうかということが重要です。
転職には結構なエネルギーが必要です。
職探しもそうですが、入社後に新たな人間関係を築かなければなりませんし、会社によって仕事の進め方が異なるのでそれに合わせなくてはいけません。
人は変化を嫌う生き物ですから、できれば慣れた環境でずっと過ごしたいと考える人が多いです
なので特に大きな不満もなく、自分にとって良い環境であれば辞めるという選択肢は独立を考えている人でない限りは選ばないと思います。

 

キツいけれど効果抜群の手書きの作業

では良い組織風土はどうやったらできるのか?という話ですが、当然ながら一朝一夕ではできません。最初にやることは、社長がどのような会社にしたいのかということを明確にすることです。私はその場で紙に書いてもらうようにしています。

「社長はどのような会社にしたいのですか?」

という質問から始まり、理想の会社像を考えながら手書きで紙に書いてもらいます。
PCで打ち込んだ方が楽かもしれませんが、手書きで文字を書いた方が脳が活性化され、記憶を意識のより深い部分へ定着させる効果があるので手書きにした方がよいのです。

儲かればよいとだけ思って経営している社長の会社と、5年後にはこういう会社にしたいと考えながら経営している社長の会社の数年後は差が出るはずです。
私が5年前から組織作りの支援をしている動物病院の院長はお会いした時から、「こういう病院にしたい」という明確なイメージがあり、5年経った今もぶれていません。
そして5年経った現在はスタッフは4倍に増え、業績も順調に推移しています。
やはりイメージを明確にすることは大事だということを改めて実感しました。

これをやるとほとんどの社長が

「けっこう疲れたけどこういうのは普段じっくり考えなかったし、頭の中が整理できました。」

と仰ります。重要だけれど優先度が低いことは誰かから言われなければなかなかやりません。社長を支援するパートナーとしての専門家はこういうことを一緒にやることが大事なのではないかと思います。

プロフィール

野崎 大輔(のざき だいすけ)氏

組織風土醸成コンサルタント
グラウンドワーク・パートナーズ株式会社 代表取締役



「自社の課題は自社の社員が解決するのが理想の組織、そのために必要なのは良き組織風土である」と提唱し、経営者と二人三脚で組織風土の醸成と人材育成に特化して企業変革を行う実践重視のコンサルタント。
自社の課題を外部主導で解決するのではなく、社員主導で解決できる社内体制を構築する。
コンサルティングの支援先は医療福祉業界、製造業、サービス業と多岐にわたり、支援した多くの企業は、どの業界であっても労働問題の発生率の低下、社員の定着率向上と売上アップによる社員数の増加、業績の向上といった良き組織風土へと生まれ変わり安定成長している。
各分野のコンサルタント情報を厳選した「日本の専門コンサルタント」、人事専門誌が評価する「人材コンサルティング会社&サービスガイド100選」にも選出され、専門性を高く評価されている。
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