会計事務所の人材教育事例「関与先の黒字割合80%」目標で充実した研修体制を構築
- 2020.05.26
- 株式会社 アックスコンサルティング
会計事務所の商品は、実際に顧客に接する「人」そのものです。
一般企業が商品管理を徹底するように、会計事務所は人材教育に力を入れなければなりません。
しかし一口に人材教育といっても、仕組みを構築し、運用していくのは難しいところです。
今回は充実した研修体制を築き、運用している税理士法人ガイアの事例を紹介します。
この記事のPoint
- 入社1年目の新人には業務時間内で年間80時間の研修を課している
- 月に1日、業務から離れて研修に集中する
- 研修課題が遅れている職員には所長が指導にあたる
研修を行うのは「やるべきことをやる」ため
税理士法人ガイアで研修体制を構築したのは、野口省吾氏が事務所を承継した2008年。正しい月次決算を組んで、関与先を黒字にするためには職員研修が必要という考えに、自然と行きついたとのこと。
「当事務所は特殊な業務をしているわけではありません。
毎月お客様を訪問して、正しい月次決算を組んでいます。
黒字を啓蒙するためには『やるべきことをやる』だけです。
そのためには研修が必須。
やるべきことを教えないと、間違いが起きてしまいますから」
と野口氏。
大切なお客様を困らせないために、新人にはしっかりと研修させるつもりです。
仕事へのプロ意識を伝える「1日研修」
税理士法人ガイアでは研修部という組織を設け、研修体制を構築・運営しています。入社1年目の新人には、業務時間内で年間80時間の研修を課しています。
研修体制の核となっているのは、毎月1日(3月を除く)に実施している「1日研修」。
文字通り、1日かけて全員が各種研修を受けています。
1日研修では、野口氏が「パッション研修」と称して1時間の講義を担当。
会計人としての正しい考え方や、仕事へのプロ意識と使命感とは何かを伝えています。
ほかには、TKC(栃木県宇都宮市に本社を置く会計事務所)によるシステム関係の研修や、ハウスメーカーや金融機関などから外部講師を招いた研修などを実施。
月に1日、通常業務を離れて研修に集中します。
多くのことを学ぶことで成長できる
1日研修以外にも、表にあるような、さまざまな研修や課題が組まれています。
- 自己啓発
- DVD研修
- 新人試験
自己啓発
ここでは各人が興味を持つ分野に焦点を当て、任意的に学習。仕事のモチベーションアップや個人の目標について学んでもらいます。
DVD研修
DVD研修では実務に関するDVDやオンデマンドのWeb動画を視聴して学習。業務時間を利用して、年間12時間の学習が課せられています。
証券外務員試験は二種合格まで勉強に励んでもらうのです。
新人試験
新入社員に対しては「新人試験」を実施。科目コードや消費税課税区分のペーパーテストをはじめ、電卓操作など実務に即したものや、関与先名のテストも行います。
試験をクリアし、関与先名を覚えた状態ではじめて、外線電話の応対許可が出ます。
「税理士の仕事は、弁護士や公認会計士と違い、個人のマンパワーによる差が小さいです。
なので、お客様へのサービスは均一化される必要があります。
そのためには教育を徹底しないと、お客様に失礼です。
『忙しいから』では何もできません。
多少は無理をしてでも、できるだけ多くのことを学んでこそ成長できるのです」
と野口氏。
研修継続のためにはトップが直接指導
研修運営のポイントについて「やっていることは継続して必ずやる」と野口氏。
しかし、すべて職員任せにすると形骸化する危険性があるため、研修継続の管理はトップである野口氏自身が対応しているそうです。
各職員の研修課題の進捗状況は、研修部で管理。
野口氏はその結果を見て、遅れている職員に対して直接指導にあたります。
「本来は上司である部長がすべきことですが、部長たちは本業が忙しくて、なかなか注意できないんですよね。
それならば、研修の遅れが浅いうちに私が直接指導したほうがいいと判断しました。
研修が遅れているメンバーを1人でも減らすことが、研修制度を継続させる秘訣ですから」
10年近く続けてきた研修制度だが、細かいところで常に改善を重ねている税理士法人ガイア。
しかし、「関与先の黒字割合を80%にする」という研修のゴールは不変だと野口氏。
「やるべきことをやる」というシンプルなポリシーをベースに、税理士法人ガイアの研修制度は進化を続けています。
プロフィール
税理士法人ガイア(東京都北区)
代表社員 税理士
野口 省吾 氏
2006年1月、野口省吾税理士事務所を開業。
同年7月に法人化し、税理士法人ガイアを設立。
2008年に、1975年創業の野口邦雄税理士事務所と合併した。
同年行政書士法人ガイアを設立。
関与先の黒字割合は約70%を誇る。
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