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  • 士業温故知新/伝統×革新で新時代に羽ばたく! 集合天才で挑む事務所改革とは

     1976年、京都府京都市で開業したM&N辰巳税理士法人。2021年には、3代目の辰巳正樹氏が代表に就任。弟の辰巳悠樹氏とともに、伝統と革新を融合した経営戦略で急拡大しています。3世代で変わらないこと、変えてきたこととは?正樹氏と悠樹氏に聞きます。 撮影/株式会社アド・リビング  “集合天才”を礎に、規模拡大に踏み切る――M&N辰巳税理士法人は、創業45年の老舗事務所でありながら、ここ5年ほどで規模が急拡大したと聞きました。転機になったことは何でしょうか?辰巳正樹氏(以下、正樹)2014年に悠樹が参画してくれたことが大きいですね。それまでは、2代目である私たちの父と、ナンバーツーである事務長が二人三脚で経営し、私は事務所を継ぐ予定で勤務していました。しかし、事務長が病で突然亡くなってしまい、大きな柱がぽっかり空いてしまったのです。当時、悠樹は大手企業で営業職に就いていたのですが、事務所の危機だということで、転職してきてくれました。辰巳悠樹氏(以下、悠樹)税務会計のことは何もわからなかったので、最初の3年は月次の記帳から確定申告まで、ひと通りの実務を勉強しました。まずは業務を理解することで、会計事務所にとって何が一番大事なのか、どんなお客様を獲得することが重要なのかを知ることができると思ったので。また、私の強みである営業力をより活かせるように、MBA(経営学修士)を取得しました。正樹 アメリカのローファームなどでは、弁護士さんがいて、経営実務はMBAホルダーのCOO(最高執行責任者)が行うというところが多いのですが、これを当てはめてみようという流れでした。このMBAが、彼にすごくハマったんです。もともとの行動力とアイデアに理論が加わり、事務所に足りていなかった部分をすべて補ってくれました。――別の業界から入った悠樹さんから見て、事務所の良い点、改善すべき点というのは、どのようなところだったのでしょうか?悠樹 私が入社した当時は、職員は8名ほど。資料の郵送から税務まで、一人ひとりがすべてを行っていました。それまでは大企業にいたこともあり、「みんなが当たり前にすべてのことができる」というのは強みだと感じました。ただ、それぞれが自分の担当を持っていて、担当外の顧問先のことはあまり知らないというのは、組織としては弱いと感じました。お客様から見れば、「一人の職員しか頼れない」ということになってしまうからです。そこで、正社員もパートも業務委託の職員もワンチームになり、「組織として強くなる」「みんなでクライアントを守っていこう」という考え方にシフトしました。そうすれば、仮に誰かが休んだとしても、お客様には迷惑をかけません。そうした組織をつくるためには、ある程度規模を拡大していくことが必要で、ひいてはそれがお客様を増やすことにもつながると思いました。徹底的なお客様目線を貫くことが、事務所の規模、業績拡大につながっていったのです。――拡大戦略に舵を切ることに、お父様や職員さんの反対はなかったのでしょうか?正樹 ありませんでした。これは、父がずっと言ってきたことなのですが、「うちは“集合天才”でやっていくんだ」と。集合天才というのは、つまり集合知です。少人数だけれど、みんなの知恵を集めて、みんなで考えて、みんなで対処していく。このスタイルが、うちの伝統です。悠樹の目指す形も、規模が違うだけで根本は同じ。ただ、外から見れば「まだ足りない部分があるから、改革をしましょう」ということなんです。また、悠樹は、しっかり計画書をつくり、数字をすべて出したうえで提案します。それが、すべてお客様目線なので納得できるのです。職員から反対がなかったのは、父に対しての信頼が根底にあったからではないでしょうか。知性があり、職員への思いもあり、非常に人望があったので、「父の判断なら間違いない」と、職員も私や悠樹のことを受け入れてくれたのだと思います。写真左から、辰巳悠樹氏、辰巳修偉氏、辰巳正樹氏 蓄積された知見を活かし、若い経営者をサポートする――現在は、正樹さんが代表社員、悠樹さんがCOO、お父様の修偉(のぶひで)さんがパートナー税理士として経営に関わっています。それぞれどのような役割を担っているのか教えてください。正樹 私が代表社員に就任したのは、法人化した2021年の2月。まだまだ経験値は足りないので、物事の真髄を知る父が相談役です。また、長くお付き合いしているお客様も多いため、当社のように事業承継した企業の会長さんたちにとっても、父は良き相談役です。一方で私は、近年の取り組みで増えた新しいお客様、若手の経営者の相談役を担っています。そして、組織のマネジメント、利益の最大化という経営の一番重要なポストを担うのが、悠樹です。私が「こんなことをしてみたい」と出したアイデアも、彼が具現化してくれます。――事務所を拡大すると決めて、強化したサービスなどがあれば教えてください。悠樹 まずは、個人事業主のお客様を増やそうと決めました。AIによって税理士の仕事はなくなると言われていますが、テクノロジーが発達すれば、必ず“アナログ難民”も増える。だから、AIが浸透する前に、あえて記帳代行を取りにいこうと考えました。そのために取り組んだのは、「私を紹介してくれる人を全国につくる」ことです。例えば、POSレジの会社の営業マンに、確定申告とはどういうものか、POSレジにすると、個人事業主は青色申告に必要な帳簿作成がどのくらい楽になるのか、といったことを教える勉強会を開きました。すると彼らは、POSレジを売るだけではなく、その先のメリットをワンセットでお客様に提案できます。そして、その情報を教えてくれた会計事務所を紹介してくれるのです。また、そのタイミングでMFクラウド会計を導入。MFクラウド会計はインターネットバンキングやクレジットカードと連携できるので、お客様も私たちも効率化できます。その際、「個人的な支出と事業の支出は必ず分ける」といったアドバイスもします。個人事業主の方は混在させてしまう方がとても多いので、「個人事業でも経営者である」というマインドセットもしていきます。こうした面談は、全国どこであっても、必ず直接会って行います。今はオンライン面談も普及していますが、長く付き合っていただくためには、まず私の人柄をよく知ってもらい、信頼関係を築くことが重要だと考えています。実際、2016年からスタートして、2年で100件、3年目からは毎年70件ほどのペースでお客様が増えていますが、解約率は1%未満です。正樹 さらに、個人事業主のお客様のうち、7〜8%ほどは事業を拡大して法人成りするお客様がいます。そこからは私にバトンタッチして、顧問税理士としてサポートします。個人事業主のお客様を増やし、成長をサポートすることが、法人顧問の見込み客育成にもつながっているのです。――なるほど。長期的な目線でサポートできる体制ができているのですね。お客様は順調に増えていると伺いましたが、「お客様から選ばれる理由」はどんなところにあると考えていますか?正樹 当社には長い歴史があり、お客様もさまざまな困難を乗り越えてきた方ばかり。多くのお客様を見てきたことで蓄積された、経験値や知見という財産を持っていることが強みです。今まで、日本の経済には4回、大きな荒波がありました。バブル、ITバブル、リーマンショック、そして、今回のコロナ禍。この荒波や困難を乗り越えてきた経営者たちの知見を私たちなりに解釈し、それを若い経営者に伝えることができます。若い経営者や企業に圧倒的に足りないのは、「困難な局面でどう対応するか」という経験値です。私たち兄弟には、まだ経験値は足りませんが、これまで事務所に蓄積された経験値があったからこそ、今回のコロナ禍でも、「何をしておかないといけないのか」を伝えることができました。それにプラスして、今はMBAホルダーのCOOがいますから、説得力のあるコンサルティングができる。そういう面でも、伝統と革新の相乗効果があると考えています。悠樹 私の考える他社との差別化は、傾聴力です。私たちは、お客様の悩みや問題を解決する存在です。たとえば、「これは会社にとって必要な経費です」と話すお客様に、いち税理士が「税務署に怒られるからダメです」というのはおかしな話だと思います。決して、ゆるい処理をするということではありません。お客様の話に耳を傾け、真意を測り、「それならこういう形にしましょう」と提案する。それが私たちの役割だと考えています。 分業制を成功させるためには、調整役の配置がカギ――そのほか、事務所内で改革していったことはありますか?悠樹 一番は、連絡のスピードアップです。お客様を一人にしないということですね。「お客様から電話があったが、商談中で出られない。そうこうしているうちに、お客様自身、何を聞きたかったか忘れてしまった」ということもあります。だから、お客様をお待たせしない。そのために社内でチャットワークなど色々なツールを入れて、担当者が対応できないときは、ほかのスタッフが返信できる体制にしました。これは、社内の連絡も同様です。こういった改革を進めるために重要視したのが、「仕事の見える化」です。一人一人の担当者が、どの顧問先にどのくらいの時間をあてていて、経営者からどういう話を聞いてきて、どういう提案をしたのかを、すべて可視化させました。「訪問しているのに記録がない」などがあれば、すべてチェックし、職員にヒアリング。膿を出そうとすると、隠したくなるのが人間の心理ですが、責めるのではなく、「私たちは味方です」「一緒に良くしていきましょう」というスタンスで接しました。急にやり方が変わり、戸惑った職員もいると思いますが、それでも、「今までのやり方を変革していかなければ、私たちの未来はない」と思ってやってきました。ーーお客様の数が急増して、所内の受け入れ体制構築も大変だったのではないかと思いますが、そこはどう変えたのでしょうか?悠樹 分業制を取り入れました。いわゆる製販分離です。ただ、分業制の難点は、業務の全体像が見えないことによる責任感の欠如です。分業しているからこそ、「自分の仕事はここまでです」という感覚になってしまうんですね。責任感が欠如すると、クオリティは下がります。当然ですが、それは税理士事務所としてダメなことです。分業制にすれば、クオリティは必ず下がります。クオリティを考えれば、担当者が一貫して受け持つ方がいい。そこで当社では、分業制の効率と業務のクオリティ、どちらも担保するため、「調整役」を配置しました。記帳、決算書作成、検算、最終申告、それぞれの間をつなぎながら、業務量の配分はもちろん、クオリティのチェックも行います。分業で業務を縦に分けて効率化しつつ、調整役が横をつないで全体の底上げをしていく。全体を見る調整役を置くことで、品質を維持しながら業務量を増やすことができました。正樹 分業制と合わせて、MFクラウド会計の導入や、業務管理のための自社システムの開発に取り組んだことで、どこでも仕事ができる環境をつくることができました。ちょうどコロナ禍だったこともあり、求人で「在宅勤務可能」と打ち出したところ、応募も激増しました。分業していったことで未経験者の採用もできるようになり、採用は順調に進んでいます。 CXを軸に、伝統と革新を融合した組織改革を進める――サービス名も『記帳MEN』などインパクトがあります。事務所のある京都は、少し保守的なイメージもありますが、苦労はなかったのでしょうか?正樹 確かに、交通の便の悪さや、一見さんお断りの紹介文化が根付いていることなどから、保守的な面はあります。実際、私たちも京都府内のお客様は、ほとんどが紹介いただいた方です。ただ、現在は全国をマーケットにしているので、むしろ「京都にあること」は強みです。ほかの地域から見れば、「京都」というのは、一つのブランドですから。情報発信力のある街なので、営業面でのメリットは大きいと思います。また実は、京都には「美しい街で働きたい」と起業した若手の経営者も多くいるのです。ですから、「歴史のある事務所」と「新しいことに挑戦している事務所」というイメージの相乗効果が、大きな強みになっています。「保守的な土地と言われる京都にありながら、こんなにもオープンで新しいことをやっている事務所があるんだ」と思ってもらえる点は、採用でも応募が増えている要因の一つになったのではないかと思います。――さまざまな面で、伝統と革新がうまく融合していますね。最後に、これから挑戦したいことを教えてください。悠樹 CX(カスタマーエクスペリエンス/顧客体験)を軸にした変革を行うことです。今、会計業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、DXを取り入れる前に、CXが重要だと考えています。顧客がどのようなことを考えていて、その顧客に対してどのような価値を生んでいくのか――。もし600社お客様がいたら、600通りの価値を見出していかないといけないのです。また、お客様の数も増えたので、今後はM&Aも含めたお客様同士のマッチングにも取り組みたいと考えています。A社の強味が、B社の弱みを補う、その間に我々が立ちたいと思っています。それぞれの強みと弱みを補い合うことは、厳しい経済状況のなかで会社を救うことにもつながります。正樹 私は、社内で税理士が誕生するような環境をつくりたいと考えてます。幸いにも、現在採用はうまくいっていますが、次は、職員がうちの事務所を使ってどうステップアップしていけるのか、どんな人生を描けるのか?そういった視点からの仕組みづくりが重要だと思っています。ほかの事務所と連携する方法もありますが、自社でキャリアアップして、給料という投資に対してしっかりリターンを上げてくれる職員を育てたい。そのためには、業務量が増えても、各々がきちんと勉強の時間を確保できるように、残業をしなくても業務が終わる体制づくりも重要だと考えています。悠樹 税理士は、個人事業主や中小企業の一番の味方です。経営者が困っているときに、最初の相談窓口を担うのが税理士です。今後、士業や税理士の在り方というのは、「どれだけ人の話を聞いてあげられるか」になってくると思います。それができるキャパシティーを確保して、もっとお客様の声に耳を傾けて、伴走していかないといけない。今以上にお客様に寄り添っていくことが必要だと思います。