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  • 「人事制度の7割は等級制度で決まる!」士業事務所の給与・評価をコンサルタントが解説。

    職員の定着・育成には、公平感や納得感のある人事評価制度の構築が重要です。なかでも、最も重要といえるのが「等級制度」。では、専門スキルが求められる士業事務所において、どのような等級制度が有効なのでしょうか?制度構築のポイントを、コンサルタントが解説します。 同時並行型の等級制度でキャリアを可視化する人事制度は大きく、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」に分けられますが、7割が等級制度で決まるといっても過言ではありません。職員のキャリアを可視化し、事務所の方針に対して頑張っている人を正しく評価するためには、基準となる等級制度が必要だからです。評価制度は、あくまでこの基準に基づいて評価するための手段でしかありません。また、報酬制度は、給与の原資や昇給のルールを決めれば、あとは等級に当てはめて適正な額を決めていくだけです。私が人事制度のコンサルティングを行う際も、最も時間をかけるのが等級制度の作成です。特に士業事務所の場合、実務スキルをレベルアップしていく「ジョブグレード」と、マネジメント能力をレベルアップしていく「マネジメントグレード」の2軸を同時並行で動かす等級がおすすめです。同時並行型の特徴は、①管理職を目指す②スペシャリストを目指す③プレイングマネージャーを目指すという3つのコースを選べること。専門スキルが求められる士業事務所では、スペシャリストを望む職員が多くいます。また、小規模な事務所では、管理職をマネジメントに専念させるより、プレイングマネージャーとして活躍してもらう方が現実的です。同時並行型の等級制度は、管理職、スペシャリスト、プレイングマネージャーのどのコースを選んでも、スキルと給与を上げていくことができます。また、管理職としての職務も実務も同時にスキルアップしていくため、途中で管理職が向いていないと判断した場合も、スペシャリストに移行しやすいのです。マネジメントグレードとジョブグレードの2軸で動かす同時並行型の等級制度がおすすめ一定レベルまでは全員に同じ等級制度を適用し、途中からマネジメントコースとスペシャリストコースに分かれる方法もありますが、この場合、管理職はマネジメントスキルを重視されるため、実務スキルの向上がおろそかになりがちです。すると、管理職が向いてなかった場合や個人の事情でスペシャリストコースに移行するとなった場合に、等級が一気に下がってしまい、給与の減額幅も大きくなってしまいます。同時並行型の等級制度であれば、実務スキルも常に向上していく必要があるため、管理職を外れた場合も給与の減額が少なく、離職防止にもつながります。 等級制度の策定には、ジョブディスクリプションが有効そして、等級制度をつくるために重要なのがジョブディスクリプション(職務記述書)です。ジョブディスクリプションとは、従業員に求める職務内容や責任の範囲、難易度、業務上必要となるスキルなどを詳しく記載した書類のこと。部署や職種、職位ごとに作成することで、人事評価や人材育成、採用活動などに活用できます。ジョブ型雇用が中心の欧米の企業では、主に採用における重要な雇用管理文書として浸透しています。日本でも、働き方の多様化によるジョブ型雇用への移行や同一労働同一賃金を背景に、大手企業を中心に導入が進んでいます。ジョブディスクリプションを作成すると、職務、責任、役割という等級ごとの人事像が明確になります。すると、事務所の望む方針とずれることなくキャリアアップが可能になるのです。また、ジョブディスクリプションがあることで、職務内容を成し遂げたかの「成果」で評価することができます。あらかじめ事務所側と従業員側で求められる職務範囲と成果について共有認識を持てるため、食い違いが起こりづらく、公正な評価を行うことができるのです。ただし、ジョブディスクリプションも等級制度も、つくって終わりではありません。管理・運用することで、その意義が最大限発揮されます。職務内容は社会や市場の変化で日々変わっていきますから、その都度職務分析をして、ジョブディスクリプションや等級制度を見直すことが大切です。 2021年版「士業事務所の給与評価」好評発売中!月刊プロパートナー2021年11月号(10月20日発売)では、毎年恒例となった「士業事務所の給与・評価」にまつわる全国アンケート調査を実施。3回目となる今回は、人材の定着と最適化にフォーカスし、盤石な組織をつくるための取り組みも大調査します。さらに、従業員の成長を支援する士業事務所の人事制度の運用事例も大公開!士業業界の「給与・評価」事情から人事制度設計の仕組み、最新トレンドまですべてがわかる1冊です。月刊プロパートナー2021年11月号の詳細・お申込みはこちら 
  • 【広瀬元義の勝手に士業業界トレンド】新時代に最適な評価方法のカギは職責・職務を明確にすること

    リモートワークの導入や働き方の変容によって、最適な評価方法が問われています。経験をベースにした職能給を採用するべきか?それとも、業務の専門性を重視した職務給か?そのヒントについて、人事制度と生産管理のスペシャリスト・株式会社メディンの西村聡氏に、本誌編集長・広瀬元義が迫ります! 士業事務所こそ職務ベースの評価を!広瀬 昨今、職務内容を明確にしたジョブ型の働き方を導入する企業が増えています。ジョブ型は職務給が基本ですが、実際には多くの企業が年功序列による職能給に近い形の給与体系になっていると思います。西村さんは職能給と職務給についてどうお考えですか?西村 職能給とは、企業が個人の能力や経験に対して評価し、支払われる賃金です。しかし、能力の価値は目に見えません。ですから、職能給だと年功序列にならざるを得ないのが、日本企業の現状です。しかし、仕事に対する責任や実行力を理解・向上させるには、職務給がいいと私は考えています。職務給を簡単に説明すると、リンゴの値段と同じ原理です。市場における、その個体(=人材)の価値=値段、つまり給料になります。その考え方でいけば、リンゴそのものの価値(=仕事ができること)があることが前提になるため、個々の能力は関係ありません。広瀬 なるほど。では、職能給から職務給へ移行するには、何に注意して行うべきでしょうか?西村 基本的に、職務給は〝企業内における仕事の価値〞によって決まりますから、自社内における価値序列が明確であれば、合理的な職務給を導入できるはずです。しかし、多くの日本企業には明確な職務のくくりがないのが実態です。たとえば、経営陣が「誰が何をするべきか」ということを明文化していない企業では、従業員の連携不足が生じて、無駄な業務が発生したり、ミスも起きやすくなります。職務とは、あくまで「目標や目的を前提にして、そこから展開される機能が〝仕事〞として発生して、はじめて個人に与えられる」という考え方に基づいたものです。日本の製造業の生産現場では、個人に対して無駄を省いた最適な職務を割り当てている場合も少なくありません。それにもかかわらず、職能給という日本独特の文化に固執してしまっているのが実情です。広瀬 〝ねじれ〞現象が生じているのですね。しかし、業務経験のない新卒を採用する場合、3年くらいは職能給にして、仕事を覚えてきたら職務給へ切り替えるというようなハイブリッドが良いのではないでしょうか?西村 日本の社会構造からすると、ハイブリッドにならざるを得ないのかもしれませんが、私は、新卒社員などの若手であるほど、職務給のほうが適していると思います。職務給は仕事の基本構造を理解させるために有効ですから。職務給の本質は、職責の理解にあります。職責には、どれだけの量か(量的基準)、どれだけの正確さ・出来栄えか(質的基準)、いつまでにまたはどれだけの時間の範囲で仕上げるのか(時相基準)、どのような方法でなされるのか(方法基準)、という4つの基準があります。これらを職位ごとに明確にして、仕事やビジネスの基本構造・本質を理解させることで、「自分が何をするべきか」を明確にします。すると、理想と現実を埋める目標設定がしやすくなるので、プロフェッショナルが育ち、生産性も上がります。それが職務給の大きなメリットなのです。広瀬 つまり、一人ひとりの業務の可視化が重要となるという訳ですね。では、職務給を導入するために必要なことを教えてください。西村 現場の状況を見て、まずは職務分析をすることが大切だと思います。その理由は、実際の現場での標準作業や標準時間の設定ができて、はじめて改善可能な状態にできるからです。海外では、標準作業や標準時間をそのまま人事制度にあてはめるというシンプルな構造の企業が多いですね。日本でも、特に大手企業では、現場で標準作業書や標準時間を設定している企業も多いと思います。しかし、人事が現場を理解していないために、〝ねじれ〞が起きているケースも少なくありません。一方、中小企業は現場と人事が乖離しにくい環境なので、そのような規模間の企業こそ、職務分析をして業務内容やレベルを可視化することをおすすめしています。そうすれば、人員の割り振りも容易になります。広瀬 職務分析を行うにあたって、「職務記述書(ジョブディスクリプション)」の作成が役に立つと思いますが、いかがでしょう?西村 そうですね、特に給与設定や評価、教育に効果的です。もし、従業員が職責を理解していない状態で就業させているようなら、生産性の向上や企業の成長は実現できません。ですから、職務記述書作成を通して「仕事が変れば賃金が変わる」「結果を出さないと昇給や賞与がない」など、職責について従業員に教えることは重要です。広瀬 職務記述書を作成する際の注意点はありますか?西村 課業と作業、動作の3点を明確にすることが重要です。「キャベツを切る」という仕事を例に挙げると、動作とは「包丁を探す」「握る」「切る」などに当たります。そして、作業とは個々の動作の積み重ねです。さらに、課業とはタスクのことで、個人がなすべきこととして割り当てられた〝作業〞をすべてまとめた業務を指します。これらのちがいを明確にして、動作ではなく作業を書き出して、それらを課業としてくくることがポイントです。適切な職務分析による職務記述書は、目標設定やプロフェッショナルの育成、そして生産性向上のカギになります。近年、このような職務給に関する取り組みを実践する中小企業も増えたと感じています。広瀬 最近は、士業業界でも定型業務よりも付加価値業務が求められてきています。個々の仕事の幅が広がるなかでも、職務での評価は可能でしょうか?西村 職務評価を実現するためには、企業がクリアすべき二つの課題があります。一つは、従業員に対して職務や職責に関する教育を行うことです。もう一つは、職務を考えるうえで「1日8時間の仕事しか与えてはいけない」という原則を守ることです。8時間以上必要な場合は、「職務を行う人材がもう一人必要」と考えなければいけません。これらはすべて経営サイドの問題ですから、職務分析を通じて、まずは自社の職務構造やビジネスモデルなどを見直し、適切に対応することが不可欠です。職務給に関する取り組みは、小企業や、事務作業が多くて職務評価・職務分析がしやすい税理士や社労士などの士業業界で行いやすい取り組みといえます。ですから、まずは事務所で取り入れてみて、そして、顧問先にもサポートとして提案していただきたいと思っています。広瀬 働き方の多様性によって、ますます年功的な評価よりも職務をベースとした評価が主流になってくると確信しています。まずは、士業業界から中小企業へ、時代にマッチした評価制度を取り入れて生産性向上を促進させたいですね。 ―――――――――――――【2021年版「士業事務所の給与評価」好評発売中!】月刊プロパートナー2021年11月号(10月20日発売)では、毎年恒例となった「士業事務所の給与・評価」にまつわる全国アンケート調査を実施!3回目となる今回は、人材の定着と最適化にフォーカスし、盤石な組織をつくるための取り組みも大調査します。さらに、従業員の成長を支援する士業事務所の人事制度の運用事例も大公開!士業業界の「給与・評価」事情から人事制度設計の仕組み、最新トレンドまですべてがわかる1冊です。月刊プロパートナー2021年11月号の詳細・お申込みはこちら