2023.09.25
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応に関するお知らせ

2023年10月01日(日)より、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されますので、弊社の同制度への対応についてお知せいたします。

弊社ではインボイス制度の対象となる課税取引のご利用について、
2023 年10月以降の決済分より、同制度の要件に対応できるようにいたします。

【当行適格請求書発行事業者登録番号のご案内】
株式会社アックスコンサルティングの登録番号をご案内いたします。

適格請求書発行事業者登録番号
T9011001004344
 

後継者問題を解決!会計事務所M&Aの最新事情&進め方【セミナーレポート】

後継者問題を解決!会計事務所M&Aの最新事情&進め方【セミナーレポート】

税理士の高齢化が進むなか、会計事務所を存続させるためには、
将来を見越した体制をつくって後継者問題を解決し、
顧問先や職員を守ることが必要です。
そこで、2022年12月に行われたセミナーから、
辻・本郷税理士法人シニアパートナー未来戦略室室長・人事本部長の
外谷光晴氏が解説した「会計事務所のM&A最新事情」、
株式会社アックスコンサルティングの前田浩輝氏による
「会計事務所M&Aの勘所」をレポートします。



 

外谷光晴氏(辻・本郷税理士法人)が解説!
会計事務所のM&A最新事情

税理士の高齢化を背景に事業を継続させるためのM&Aが主流に

会計事務所のM&Aは後継者不足による事業継承型が多く、
当法人で扱うM&Aも、事業承継がトリガーになっているものがほとんどです。
また、合併という形を取ることは稀で、事業譲渡という形をとることが一般的です。
M&Aによって、売主側は買主側に従業員や顧問先を承継できるほか、
従業員の雇用継続やサービス継続が可能となります。
一方で買主側は、売主側から事業を引き継ぐことによって従業員規模や
顧問先件数といった規模拡大が可能になるというメリットがあります。


 

多岐にわたる会計事務所のM&Aの要因

会計事務所がM&Aを行う理由のなかで圧倒的に多いのが、
所長先生の高齢化によるものです。
現在、税理士の高齢化が進んでおり、
当法人でも事業譲渡を依頼される税理士の先生の8割以上が、
60歳以上となっています。




ほかにも、弊法人に最近M&Aを依頼する税理士事務所の
所長先生が増えている理由の一つとして挙げられるのが、
「マネジメントの限界」です。
従業員規模が拡大するなかで、
先生お一人でマネジメントできる人数には限りがあります。
私自身の経験も含めていえば、
一人で10名以上をみるとなると厳しくなってくるようです。
実務もマネジメントも行っていくなかで
所長の時間を確保することが困難となってしまい、
やがて所長先生から「マネジメントに限界があるので譲渡を検討している」
とご相談をいただくケースも増えてきています。
実際、5~10名の職員数の所長先生からのご相談が多い傾向にあります。
そのほかにも、採用難や人材教育の必要性から、
人材確保に限界があるというケースがあります。

また、昨今は決算書作成や記帳といった基幹業務のほかに、
インボイス対応に向けたツール導入や
DX対応にともなうコンサルティングなど、
いわゆる付加価値業務を必要とされるお客様が増えてきています。
このような要望に対応できるように、ノウハウや知識、
実績を持つ事務所とM&Aを行う、というケースも増えてきています。

 

会計事務所のM&Aの多くは「小規模事務所の事業譲渡」

会計事務所のM&Aを実施するにあたって、
まずは士業ならではの特徴を考慮する必要があります。
会計事務所ならではの特徴として、所長がプレーヤーや営業マン、経営者……と、
一人で何役もこなしていることが挙げられます。

また、顧問先とは担当者と属人的につながっていることが多く、
事務所内での顧問先情報の共有ができていないというケースをよく耳にします。
また、士業という職業柄、
資格取得や経験をある程度積んで育ったら独立してしまうケースも多く、
その度に業務の引き継ぎが発生して現有職員が疲弊するという相談もよくいただきます。
加えて、当法人にM&Aを依頼される所長先生の大半は、
従業員数10名以下の個人事業主で、
自事務所よりも規模が大きい会計事務所を事業譲渡先に希望される傾向があります。




 

M&Aのプロセスとスケジュール

他の事務所との統合でシナジー効果を生み出して、
成長を加速させる効果が期待できるM&Aですが、
「誰に」「いつ」「どうやって」引き継いでいくかを決めることが重要です。
実際に、M&Aを実施する際の基本的なスケジュールは以下のようになっています。

 

会計事務所のM&Aのスケジュール

M&Aを実施するには、適切な相手先とのマッチングと順序立てたプロセスが重要となります。




譲渡先を決定する際のポイント
  1. 相性・変化への対応見込み
  2. 従業員の継続雇用と条件
  3. 顧問先の継続見込みと報酬
  4. 所長税理士の待遇・譲渡対価
相性に関しては、私どもが経営統合のマッチングをお手伝いさせていただく際には、
必ず譲渡先の事務所でトップ面談をさせていただいています。
実際に先生方の事務所を訪問して、どんなお考えなのか確認させていただき、
M&A実施後の対応の見込みを判断し、
合うかどうかのお話をさせていただくことが大事だと考えています。
また、従業員の給与や雇用条件が大きく異なる場合は、
職員が不安になってしまい、離職につながる可能性もあります。
M&Aによって顧問先が離れてしまうケースも少なくないことから、
顧問先の継続が見込めるか、
報酬はどうなるのかといったことを事前にヒアリングしておく必要があります。


譲受事務所の所長先生の処遇
  1. 一定期間は社員税理士・所長として継続し、その後に退職
  2. 一定期間は顧問として継続し、その後に退職
  3. M&Aと同時に退職
  4. 期間を設けず、社員税理士・所長として継続
という4つのパターンがあります。
所長の譲渡後の処遇についてはヒアリングを行い、
希望や状況に合わせた対策や手法を決定していきます。

 

譲渡対価と支払い方法

譲渡対価は、事務所の売上高をベースに考えていくことになります。
多くの会計事務所では一般的に売上高の約2割が事務所の利益となる傾向にあるので、
その利益の3~5年分を対価として考えます。
このように計算すると、結果として売上と対価がほぼ等しいことになります
支払方法は、一括と分割の2種類があり、
普段スポット契約が多い先生はクロージング時に一括支払うことが一般的です。
一方で、顧問契約が多い先生は、顧問契約を継承した場合、
M&Aの後に解約があるかもしれないということをふまえて、
クロージング時に一部を支払い、
残金を1年後に支払うといった分割の形を取るケースもあります。
ちなみに、M&Aで売却した利益については、雑所得扱いとなります。

 

M&A後の統合プロセス

M&Aのマッチング決定した後は、
PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を
見据えた実務を行うことがポイントとなります。
PMIは経営統合、業務統合、意識統合の3段階からなり、
混乱を招かないようにまず、従業員や顧問先へ適切な説明をすることが求められます。
従業員に向けての説明では、M&Aによって統合するものとしないものを明示します。

(統合するもの・明示するものの例)
・働き方や就業ルール
・バックオフィス業務で使用するツール(総務・経理・請求・契約など)
・社内ルールや定義の可視化
・職務権限規程(誰にどのような権限があるか)
・定期的な情報共有 など

事務所の方針を明文化したり、情報共有を小まめに行うことが、
従業員の安心感を醸成することにつながります。




 

事例に見る!M&A後の実務の課題

統合後の実務については、短期的と長期的な目線で考えることがポイントです。
主な課題は以下の3点です。

・会計ソフトは統合すべきか?
・事務所は統合すべきか?
・後任のメンバーとの世代格差

最初のうちは混乱を防ぐために、
会計ソフトも事務所の方針も基本的には変えない方が得策といえるでしょう。
しかし、データ集約の面や経営面からも、いずれは統一すべき事案ですので、
期日を決めて着実に統合できるように進めておきましょう。

お客様からすると、急に担当者が変わるのは、やりづらいと感じてしまうものです。
しかし実際には、50代、60代の先生から、
20代の若いメンバーに引き継ぐケースが少なくなく、
このような場合は、できるだけ早く業務のバトンタッチをして、
混乱を最小限にして、利益を上げる体質を目指しておくことが重要です。

 

会計事務所のM&Aの失敗事例・成功事例

M&Aをするかどうかを専門家に相談したことで、
スムーズに事が運んだケースもたくさんあります。
事前準備を丁寧に行うことで、従業員にとっても顧問先にとっても、
より良い結果を生み出すことが可能です。
一方で事前準備が整わずに失敗してしまったというケースもなかにはあります。
ここでは、M&Aの失敗事例と成功事例をご紹介します。

失敗事例(1):契約締結がない段階で引退をほのめかしてしまい従業員が退職
とある5~10名規模の事務所の所長先生は、
M&Aの契約締結が完了していない段階で従業員にM&Aをほのめかす発言をしたことで、
従業員が不安に感じてしまい、一斉に退職してしまいました。
その事務所は当時5,000万円ほどの売上があったものの、
一斉退職によって2,500万円ほどになってしまったそうです。
M&Aの話しを従業員に切り出すタイミングは非常に重要で、
慎重に情報開示をする必要があります。
まずは、ある程度準備をするためにキーパーソンとなる、
信頼のおける職員には事前に相談しておきましょう。
ただし、情報漏えいを防ぐために慎重に人選することが大切です。

失敗事例(2)所長先生が急逝され、引き継ぎがままならず顧問先離れに
M&Aの相談をいただいてから所長が急逝されたある事務所。
このような場合、引き継ぎや情報共有がされていなければ、
「なぜこの請求金額なのか」「今までどういう処理をしていたのか」など、
残された従業員もどうすればいいのか何もわからないことが多く、
結果としてお客様が不安になってしまい、離れてしまうケースが多くあります。
税理士業務の営業権は、相続や譲渡などのできない本人だけがもつ一身専属のため、
相続人が事業譲渡の相手先になり得ないので、
どのように有償で引き受けるかといった点が悩みどころになってきます。

成功事例(1):M&Aの相談を進めるなかで所長業の継続を決意、引退を撤回
数年後の引退を前提にM&Aをされた所長先生がいましたが、
M&Aをしたことにより事務所経営の肩の荷が下りたのか、引退を撤回され、
90歳を超えても譲渡先の事務所で現役を続行する先生もいます。
このように、M&Aはあくまでも事業を継続するための一手段であり、
「ご本人が継続する決意をされた」ということも成功事例といえます。

成功事例(2):入念な事前準備のおかげでスムーズな統合に成功
ある所長先生は、3年ほど前から引退の準備をされていました。
業務の標準化や提供サービスのクオリティの均一化、
顧客管理の一元管理など進め、
従業員や顧問先企業への説明も混乱を招かないように
時間をかけて順序立てて進めたおかげで、何のトラブルもなく、
とてもスムーズに経営統合することができました。

成功事例(3):新たな環境下で、従業員の実務スキルが急成長
経営統合をしたことによって、
従業員が譲渡先の事務所で急成長を遂げたというケースです。
従業員の雇用が継続されただけでなく、
新たな環境で成長することができた成功例です。

 

辻・本郷流のM&Aとは?

当法人で行ってきたM&Aは、
「ゆるい統合」と「サービス内容の拡大」によって成り立っています。
M&Aを行ったからといって、これまでの業務のやり方も変えませんし、
使う会計ソフトなどのツールも変えていません。
また、顧問報酬も変えていません。
ただ見た目上は、看板が変わるだけの統合です。
その一方で、今までの譲渡事業所では提供できなかったサービスを
提供できるようにするための情報提供や営業支援をしています。
このために、社内で1on1ミーティングを行うなどして
担当者とのコミュニケーションを図っています。

これからの会計事務所のM&Aは、税務会計だけでなく、
周辺業務領域を補い合うための経営統合が増えていくことが予想されます。
たとえばDXへの対応、資産形成のためのコンサル(アセットコンサル)、
HR、アウトソーシング、M&Aコンサルという目線を持って、
M&Aを行うことが必要になってきます。
お客様のニーズは刻々と変化しているので、会計事業者との経営統合だけでなく、
周辺業務へのM&Aも考えるべきと言えます。


 

アックスコンサルティングの前田浩輝氏が解説!
会計事務の事業承継成功のための2つのポイント

会計事務所の事業承継成功のためのポイント(1):変化を最小限にする

会計事務所には、「人(所長)と人(顧問先)との結びつきが強い」という特徴があります。
「○○先生だからお願いしている」という強固な関係性があるケースが多いため、
単に商品、サービスだけ引き継げばいいわけではなく、
それまでの取引の歴史や関係性を引き継いでもらうことが重要です。
このため、引き継ぎに関わる変化を最小限にすることが成功のカギとなります。

「変化を最小限にして」引継ぎを成功させる4つのコツ
  1. 所長の待遇⇒役職、引退時期、引継ぎ業務
  2. 事務所環境⇒場所を残すか
  3. 職員待遇⇒継続雇用、給与、就業規則
  4. 顧問先への対応⇒サービス内容、料金、伝え方



会計事務所の事業承継成功のためのポイント(2):評価を高める

(1)業務の平準化と利益率の改善
誰でも継続可能な業務フローを構築しておけば、
譲渡後も混乱を招かずに永続的な利益を見込むことが可能です。
そのため、誰でも対応できるように業務を標準化しておく必要があります。
利益率については、顧問料や従業員への給与が適正かどうかを確認し、
問題があれば改善していきます。
10名以下の事務所であれば売上の3割、
10名以上であれば2割の利益率であれば、
一般的な相場から離れていないと思っておいて良いでしょう。

(2)売上推移が良いタイミングに進めること
売上推移が下がっていると、
今後も下がっていく前提でM&Aの話が進んでしまう可能性があるので、
売上推移が上がっているタイミングで話を進めることがポイントです。
また、職員が高齢の場合、評価に影響することがあります。
すぐに入れ替えをすることは難しいかもしれませんが、
職員の平均年齢は意識しておくと良いでしょう。
また、顧問先の経営状況が悪化している場合も評価が下がってしまう可能性があります。

(3)直接交渉はしない
譲渡する側、引き受ける側で利益関係が相反するため、
専門性の高い第三者に相談するほうが良いでしょう。
また、相手によって情報やリテラシーの格差があるため、
客観的で正当性のある評価をしてもらうためには、
相談相手は経験値の高い第三者を選んでください。

 

まとめ

会計事務所のM&Aを成功させるために必要な3つの秘訣
  • 顧問先からの信頼に応える
  • 経営戦略としての事業承継
  • 相手を選択できるときに進める
顧問先からの所長先生への信頼は絶大なものです。
その信頼に応えるためという視点でM&Aを行うことが重要です。
M&Aというと仕事を引退するというイメージを持っている先生も多いかもしれませんが、
事業を続けるための戦略の一つとして捉えていただきたいと思います。
実際にM&Aを実施するにあたっては、
相手を選択できる状況下で話を進めることが肝要です。
相手を多数募ったほうが条件交渉もしやすくなり、
条件を有利に進められます。
そして、最も重要なことは、所長先生自身が選択し、
決断するということです。
「従業員と顧問先のためにベストな選択をした」という自信が、
成功の大きな要因となります。


 

会計事務所M&A協会とは

「会計事務所M&A支援協会®」は業界で唯一の
会計事務所専門M&Aコンサルタント組織です。
専任コンサルタントが会計事務所の後継者問題や事業拡大、
所長先生のハッピーリタイア等のお悩みをM&Aを通じて解決いたします。
株式会社アックスコンサルティングが、
30年以上会計事務所業界に特化し培った経験と実績に基づいて、
最適な事業承継をご提案いたします。
詳細はコチラ

 
プロフィール

辻・本郷 税理士法人 税理士 シニアパートナー
未来戦略室室長 人事本部長
外谷光晴

上智大学卒業。
2005年辻・本郷 税理士法人に入社 。
新宿事務所・渋谷事務所において主に中小企業のお客様を担当するチームで担当者・管理職の立場を経験。
その後、渋谷エリアの責任者を経て、現在、未来戦略室室長・人事本部長を兼任。
経営戦略の実行支援・事務所の新規開設や経営統合、人事制度の策定・運用を行っている。


資産承継コンサルティング事業部 マネージャー
会計事務所M&A支援協会 運営統括
前田浩輝

2008年アックスコンサルティング入社。
個人資産家に対する不動産・相続のコンサルティングのほか、
会計事務所の事業承継や後継者問題の解消に向けて支援を行っている。
関連コンテンツ