2022.11.29NEW!
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激変する経済状況下で顧問先企業の資産を守るための分散投資と税務(法人編)

激変する経済状況下で顧問先企業の資産を守るための分散投資と税務(法人編)

日本経済の回復に向けて動き出した2022年。
しかし、ウクライナ情勢の悪化や円安進行による物価上昇が強まったことで、
実質的な賃金上昇と消費回復の兆しは見えてきていません。
この状態が継続すると、中小企業や個人にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
激変する経済状況下で、士業が顧問先企業の資産を守るために必要な視点について、
日本公認会計士協会租税政策検討専門委員会副専門委員長を務める峯岸秀幸氏が解説します。

峯岸秀幸氏が解説!
顧問先を守るために士業が持つべき視点についてはコチラ





 

円安・物価高で目減りする円建て資産

円安の進行が止まりません。
6月時点で、為替相場はおよそ20年ぶりの円安・ドル高水準にあります。
去る6月11日、財務省・金融庁・日本銀行の3者会合において、
急速な円安の進行を憂慮する旨の声明が出されたことは記憶に新しいでしょう。
新型コロナウイルス感染症拡大が落ち着きを見せるにつれ、
衆目は新型コロナとウクライナ情勢がもたらした
劇的な物価変動の影響に向きつつあります。
この変動がどれほど激しいものであるのか、事実を確認しておきましょう。

金融資産の価格動向に目を向けると、
日本で新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って
初めての緊急事態宣言が発出された2020年4月7日、
対ドルレートは約109円、日経平均株価は約18,950円、
NYダウ平均株価は約22,653円でした。
それが2022年6月時点で、それぞれ、約134円、約27,000円、約31,400円になっています。

資源価格や不動産価格についても見ておきましょう。
同じ2020年4月7日の金小売価格は約6,500円/gだったものが、
現時点では約8,700円/gで推移しています。
また、2020年度の東京都の都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の
住宅地の平均価格は1,466,100円。
対して2022年度は、1,501,100円/㎡となっています。
(それぞれ東京都財務局公表の地価公示価格に関する情報を参照)
公表情報上は、不動産価格の上昇傾向は他の資産ほどではないように見えます。

さて、これらの物価高は、既に資産を有する人をますます富ませ、
経済格差を拡大させたといわれます。
しかし、この状況を士業の顧問先に引き付けて考えると、
「円建て資産を有する人を貧しくさせた」
と表現する方が実態に即しているように思われます。
ドル建てで資産を保有する人に比べ、
円建てで資産を保有する人の資産価値はコロナ禍前後で20%も目減りしてしまった、
ということです。仮に、今後一層の円安・物価高傾向を予測するのであれば、
それはすなわち、円建て資産の価値がますます棄損することを予測することにほかなりません。


 

円建て資産の保有が経営上のリスクになる時代が到来か?

士業の主要顧客である中小企業に目を向けると、
日本が好況であった時代を走り抜けた社歴の長い会社であればあるほど、
内部留保も相応に蓄積されているものですが、多くの場合、
それは円建て預金か事業用の国内不動産に化体しているのではないでしょうか。
また、そのオーナーである経営者個人の資産の多くも、
自社株式、自宅やアパートなどの国内不動産、
そして円建て預金として保有されていることが一般的でしょう。

そのような中小企業、特に資産の多くを円建て預金で保有している会社とオーナーにとって、
円高や物価高の継続は資産の減少に直結します。
それは、中長期的には会社とオーナーの信用力の低下につながりかねず、
事業の継続にすら影響を与えかねない問題です。

 

士業は顧問先の資産構成を把握せよ

そういった危機感から、資産防衛のために保有資産のポートフォリオの見直しを検討する経営者が、
この2年くらい特に増えている実感があります。
円建て預金や国内不動産資産に偏っている資産構成を見直し、
例えば円建て預金の一定割合を金融商品や不動産に振り替えて
円建て資産の価格下落リスクに備えているのです。

顧問先と共存共栄すべき士業のなかでも、
特に税理士は顧問先の財産内容を把握しています。
彼らの大切な資産が価格変動リスクにさらされていると考えるなら、
資産の組み替えの必要性について示唆し、
一緒になって検討する姿勢を示せるかどうか。
顧問先との付き合いの深度が問われる局面かもしれません。

峯岸秀幸

 

資産ポートフォリオの見直しへ。税務が与える影響

では、顧問先の資産ポートフォリオの見直しに際して、
士業が特に注意しなければならないことは何でしょうか。
税務についていえば、円建て預金を組み替える先の資産の種類により、
課税関係が異なるということです。

円建て預金を他の種類の資産に組み替えた場合の課税は、
法人税・所得税について、組み替え後の資産の
(1)評価益
(2)売却益
(3)利回り

について生じ得ます。
また、取引する資産の種類に応じて消費税の課非が異なります。
資産の種類によって課税関係が異なるということは、資産の選択に影響を及ぼします。
特に法人が保有する資産について特筆すべき課税関係を以下に簡潔に整理しますので、
ぜひアドバイス前の頭の整理にお使いください。
個人の保有する資産については、所得税・消費税のほかに、
相続税を考慮に入れる必要があり、検討すべき論点が一層多くなるため、
別稿で検討したいと思います。


 

法人が保有する資産別の課税関係

法人が保有する資産の課税関係を確認します。
当然のことながら、円建て預金をそのまま保有し続ける限り、
利息が付けばそれに課税されるのみで、その他の課税関係は生じません。
それを他の種類の資産に変えた場合には以下のような課税関係に注意しましょう。
 

(1)外貨建て預金

為替リスクに備えるという目的で最初に思い当たる組替え先の資産は外貨建て預金でしょう。
しかし、現下のような円安進行局面では、外貨建ての普通預金は、
毎事業年度末に原則として期末時レートで換算替えし、
為替差益を益金の額に算入しなければならないことに注意が必要です。
すなわち、円安の進行により発生した為替換算差益に課税されたとしても、
納税に充て得る円貨での資金流入がないため、
その分、手元の円貨の資金を減らさなければならないという問題が生じます。
この問題は期末換算の方法として発生時換算法を選択することにより回避可能ですが、
事前の届け出が必要であるため、即応性に欠けます。
 

(2)金融商品

為替リスクや価格変動リスクに備える意味では、
上場株式をはじめとした金融商品に組み替えることは有力な選択肢です。
上場株式の個別銘柄はボラタリティが高いと考えるのであれば、
比較的リスクが低いインデックス型の投資信託が選択肢になるのではないかと考えられます。
いずれも法人税においては、売買目的有価証券に該当させない限り、
評価益への課税がなく、基本的には実際に売却して初めて売却益に課税がされます。
これは、円安・物価上昇局面にあって前述の外貨建て預金よりも優れている点といえるでしょう。
ただし、消費税の課税売上割合の計算上、
有価証券の譲渡価額の5%が非課税売上に加算されます。
将来売ることで消費税の納税額が増える可能性は念頭に置いておくべきかもしれません。
 

(3)金

実は最近、円建て預金を金に組み替えている例をしばしば目にします。
金についても、短期売買商品等に該当させない限り、
評価益への課税がなく売却の際に売却益に課税されるのは前述の金融商品の場合と同様です。
ただし、金の購入・売却ともに消費税の課税取引である点が異なり、
金への組み替えが購入時と将来の売却時の消費税の納税額に影響する可能性があるため、
特に恒常的に課税売上割合が低い法人では事前の慎重な検討が必要でしょう。
このような可能性は、金現物ではなく金価格に連動する投資信託を購入した場合には
回避できるかもしれず、検討に値すると思われます。
 

(4)不動産

近時の一部不動産の価格高騰に伴い、高級居住用物件など、
不動産への組み替えを検討する経営者が増えているのではないでしょうか。
居住用の不動産の場合、注意を要するのは、やはり消費税の課税関係でしょう。
居住用賃貸建物の場合、購入時には仕入税額控除の適用が制限されます。
継続保有する期間中の賃料収入は非課税売上となり、課税売上割合を低下させます。
投資を終了して土地と建物を売却する際には、土地の譲渡対価が非課税売上にあたり、
やはり課税売上割合を低下させます。
課税売上割合の低下は、それぞれの課税期間で、仕入控除税額を減少させ、
納税額を増加させる可能性があります。
このように、居住用物件への組み替えは
思わぬ消費税負担を呼び込む可能性があり、十分な注意が必要です。
その意味で、不動産への組替えを検討するのであれば、
REIT(不動産投資信託)の購入でも不動産への分散投資効果が得られることを
考慮に入れるべきであろうと思います。

なお、個人で保有する資産に関する課税関係との対比において、
法人で保有する資産について全般的にいえる特徴は、
所得計算において損益通算に制限がないことと、所得に課される税率が一定であることです。
このことは、資産への投資を法人で行うか、個人で行うかの選択に影響する可能性があります。


 

個人・法人間の資産移転は慎重に

個人が保有する資産の組み替えについて、
仮に個人資産を法人に移して保有し続けたいと考える場合には、
差し当たって注意すべきことが2点あります。
1点は、なじみのある論点ですが、個人から法人への移転に際して、
所得税法59条を睨みながらその移転方法や売買価額を決定しなければならないということです。

そしてもう1点は、近い将来に法人税率を引き上げる改正があるかもしれないということです。
以前の記事でも触れましたが、最近、自民党税調会長の宮沢洋一氏が
実務誌のインタビュー記事で法人増税の可能性を示唆しています。
税率が多少変わったとしても、資産防衛という本質が失われない助言が求められるのではないでしょうか。
個人が保有する資産の組み替えについては別稿にて詳しく検討していきます。

 
プロフィール
峯岸秀幸氏
公認会計士・税理士・税理士法人峯岸パートナーズ 代表社員
準大手監査法人と大手税理士法人に勤務後、2012年開業。
業務の傍ら税務における法律を大学院で学ぶ(修士「ビジネスロー」)。
日本公認会計士協会租税政策検討専門委員会副専門委員長などを務める。
https://minegishi-accounting.com/
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