危機に負けない事務所をつくる12STEP
- 2022.02.17
- プロパートナーONLINE 編集部

未曾有の経済危機のなか、顧問先を守るためには
士業事務所も従来型の業務やサービスからの脱却が必要です。
業務効率化と顧客満足度向上を両立させた事務所をつくるために必要なことを、
士業コンサルタントが解説します。
STEP1.顧問先の状況を把握する
新型コロナの影響は、飲食業や観光業に限らず、さまざまな業界に波及しています。まずは、顧問先にどのような変化が起きているのか、
今後どのような影響が考えられるのかをヒアリングしましょう。
STEP2.支援が必要な顧問先を分類する
STEP1のヒアリングをもとに、今までのように事業継続ができるかできないかで、クライアントを分類します。
事務所からの対策、支援が必要か必要でないかを分類の目安にすると良いでしょう。
STEP3.コロナ対策プロジェクトの立ち上げ
所長をリーダーに、支援が必要な顧問先を担当している職員全員が参加してプロジェクトチームを立ち上げます。
資金調達や調達後の事業計画策定のほか、
事務所でサポートできることがないかを話し合いましょう。
また、事務所で対応できない場合も専門家を紹介するなどの支援をします。
月次の業務に加える形でコロナプロジェクトの業務を担当させることで、業務管理をしていきます。
STEP4.業務管理をクラウド化する
社内サーバーや個々のパソコン内での資料保管、Excelでの顧客管理はリモートワークに向かないほか、
業務の属人化にもつながるため、クラウドで管理するようにしましょう。
①顧問先にある文書、事務所内の書類のデータ化
②業務ソフトのデジタル化、もしくは遠隔ソフトで外部からのアクセスを可能にする
③事務所および自宅のインターネット環境を整備する
④機密保持ルールを整備する
STEP5.クラウド化に対応した業務標準化
データを共有する場合、個人での保管ルールのままでは、ほかの人がファイルを探しにくいなど、非効率です。
ファイル名の付け方やフォルダ分けのルールなどの整備を行いましょう。
STEP6.成果管理ルールの設定
「何をもって仕事をしたと判断するのか?」のルールを決めます。アウトソーシング業務のように、
「何時間でこの業務を終える」というルールを決めることで、成果を管理しやすくなります。
STEP7.リモートワークを導入する
STEP1~6を実施せずにリモートワークを導入しても、うまく進みません。本格導入を考えているのであれば、再度見直しをしてみましょう。
STEP8.顧客セグメントの再設定
有事の際にも対応品質を落とさずにフォローできる顧客や、有事の際に伸びた業種をターゲットに設定します。
例えば、日常のフォローを訪問ではなくチャットで行う場合、
それに対応できる顧客を増やすことで、有事の際も同品質のフォローが可能です。
また、ユーチューバーに特化した税務会計サービスなどは、今後ニーズが高まると考えられます。
STEP9.マーケティング方法の再検討
STEP8で設定したターゲットに合わせたマーケティングを検討します。今回、対面での営業ができない状況になったように、もはやWebマーケティングは必須です。
独自のメディア構築には時間もコストもかかるため、
所長や職員の人脈を活用できるSNSやレポート活用が有効です。
①事務所のSNSページを作成。顧客、提携先など、
すでにあるネットワークに友達申請し、Web上で常につながっている状態をつくる
②無料でダウンロードできるレポート(例「特別融資の申請方法完全マニュアル」など)を
事務所サイトやSNSにアップし、問い合わせが来たら無料相談のアポを入れる
STEP10.事務所の強みの再構築
顧客にとって、「なぜこの事務所に依頼するのか?」の理由が明確であることが重要です。例えば、新型コロナを受け、資金調達、資金繰りサービスは、
もはやスタンダードなサービスであると認識する顧客が多いでしょう。
PLの改善よりBSの改善提案ができることなど、顧客が自社を選ぶ理由を明確にし、
新たな強みを構築しましょう。
STEP11.2軸のビジネスで価値提供
例えば、アウトソーシング業務は固定費削減の対象になりやすいですが、日頃から経営相談にも対応していれば、解約される可能性は低くなります。
また、アウトソーシング業務を受任していれば、
試算表をすぐに作成できて融資の計画表作成にも素早く対応できるため、
コンサル業務に加えてスポットの売上も見込めます。
収益の柱を複数持つことで、有事の際のリスクヘッジができるのです。
提供できるサービスをメニュー化し、
アウトソーシングと付加価値業務の2軸でビジネスを進めましょう。
STEP12.定期的な情報発信網を用意する
メルマガやSNSなど、有事の際でもすべてのお客様に情報を発信できる手段を準備しましょう。特にメルマガは、開封率や開封履歴がわかるシステムであれば、
追加で個別の連絡が必要かどうかもわかります。
しっかり活用するためには、常に顧客データーベースの管理、
メルマガの配信管理をしていることも重要です。
実は、STEP12の定期的な情報発信網があれば、STEP1~11もスムーズに進みます。
例えば、顧問先に「現状を教えてください」とアンケートをメルマガで配信することで、
ヒアリングが効率化できます。
顧客データベースの構築とアップデートは、必ず取り組んでください。

顧問先を支援するならまずは事務所改革を
新型コロナの影響を受け、IT化推進を決意した先生も多いと思います。IT化を効率良く、高品質で進める近道は、「成功した人のやり方を真似ること」です。
業務効率化のためのITツールは豊富にあるため、
自分で勉強してから導入しようとすると、なかなか進みません。
ですから、成功した人が使っているツールを取り入れて使ってみる。
そして、詳しい人に聞きながら慣れていくのが一番です。
IT化支援サービスを使うのもおすすめです。
また、アンケートのなかで、「顧問先がオンライン面談に納得してくれるか」
「既存の方法を変えることに不満を持つのではないか」という声がありました。
しかし、成長している会社は、新しいツールや仕組みを上手に活用しています。
これからリモートワークはさらに浸透していくでしょうから、
「会社を伸ばすためには、こういったツールを取り入れることが必要です」と提案し、
時代に合わせた変化を促すことが、顧問先の成長にもつながるのです。
今後、新型コロナ以外にも、競合他社の出現や人材流出など、
顧問先1社1社に異なる危機が訪れます。
そのとき、顧問先にとって価値ある士業事務所とはどんな事務所なのか?
価値あるサービスとは何なのか?
もはや、資金調達や資金繰り改善は、
顧問先にとって「当たり前」のサービスになっていくでしょう。
それに加えて、より経営戦略に踏み込んだ提案や、
今後を見据えたビジネスのヒントを与えてくれる士業事務所へのニーズが高まるはずです。
そのニーズに応える体制は整っていますか?
顧問先をしっかりサポートするためには、STEP1〜12を繰り返し、
まずは士業事務所から変化することが重要です。
今こそ、事務所のビジネスのあり方を見直すタイミングではないでしょうか。
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