診療科目ごとの特徴把握がカギ!ルールブックを入り口に医療業界の人事労務改善をサポート
- 2023.03.30
- プロパートナーONLINE 編集部
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医師の働き方改革や潜在看護師など、「働く人」にまつわる課題が取り沙汰される医療業界。
「ルールブックを活用することで、社労士は多方面からのアプローチが可能になります」と話すのは、
熊本と東京・虎ノ門に拠点を構える社会保険労務士法人みらいパートナーズのメンバーです。
今、医療業界が抱えている労務課題と、社労士が提案するべきこととは?
代表の三浦修氏、労務管理部の武田大亮氏、上村尚史氏、人財開発事業部の根上真由美氏に聞きました。
病院・クリニックの開業支援は
人事労務の基礎固めと助成金がポイント
私たちは、2008年の事務所開業以来、クリニックの開業支援や病院の人事労務サポートを継続的に行っています。
医療分野のお客様を多くサポートしているのは、私が以前、会計事務所に勤めていたときに、
病院やクリニックを多く担当していたことがきっかけです。
人事労務はもちろん、医療業界特有の会計に関しても知識があったことで、
開業後は医療、介護、福祉業界を中心にお客様を拡大してきました。
医療業界にも介護業界にも共通する特徴が、まず“箱物”からスタートする点です。
そして、人員規定をもとに必要なスタッフを採用し、
就業規則をはじめとした人事労務の基礎固めを行います。
さらに、小規模な事業所の場合は助成金のニーズも高いので、
社労士としてはそのサポートもできます。
私たちが多くの医療・介護事業所からご依頼をいただけるのは、
この人事労務の基礎固めと助成金の2点を継続的にサポートできるからだと思います。
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みらいパートナーズ
三浦修氏
2003年社会保険労務士試験に合格。
会計事務所に入所し社労士業務の傍ら監査業務や医療法人設立のコンサルティング業務に携わる。
2008 年に開業。医療・介護事業所を中心に労務管理を行っている。
https://mirai-ptns.jp
アナログ、ハラスメント、福利厚生や給与制度への不満……
規模が異なる病院とクリニックでは、労務課題も異なる
医療法における病院とクリニック(診療所)の違いは、入院用の病床数です。20床以上あれば病院、19床以下であればクリニックとなりますが、
大半のクリニックは病床がほとんどありません。
必然的に施設の規模、患者数、スタッフ数に差が出ますから、
病院とクリニックでは労働環境や働く人の意識も大きく変わります。
社労士がサポートする際は、まずは両者の相違点や課題を押さえておくことが大切です。
■病院における労務課題やトラブルの特徴
・アナログ管理が多い
病院は歴史が長く、院長がご高齢というところも珍しくありません。
そのため、デジタル化が進んでいない病院も多く、
なかには紙のタイムカードすらない場合もあります。
実際、私たちが今まで見てきた病院のなかには、カレンダーのようなものに
手書きで「誰が出勤したか」という情報だけが書き込まれているため、
勤務時間がわからない状態になっていたところもありました。
歴史の長い病院では、顧問の税理士・公認会計士や社労士が長期間変わっていないことも多く、
外部から新しい提案を受けていないという点も、デジタル化が進まない要因の一つです。
地域での認知度が高く、新しいことをしなくても売上が確保できるため、
デジタル化の必要性を感じないということもあるでしょう。
・ハラスメントが多い
病院では、治療にあたる際の関与者が多いぶん、
ハラスメントが起こりやすいという課題があります。
たとえば薬剤師から看護師、医師から看護師へのパワハラもありえますし、
患者からハラスメントを受けることもあります。
努力をして国家資格を取得した専門家が集まっていますから、
自分の仕事にプライドを持っていたり、
信念が強い人が多かったりという背景もあるかもしれません。
また、デジタル化が進まないのと同じように、旧態依然の環境下であることが多いため、
こういった状況が改善されにくいという実情もあります。
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■クリニックにおける労務課題やトラブルの特徴
・福利厚生への不満
クリニックに勤務する看護師は、病院から転職してくるケースが多くあります。
最初は病院でがむしゃらに働き、結婚や出産を機に
夜勤のない仕事を希望してクリニックに転職するというパターンです。
そこで何が起こるかというと、福利厚生への不満です。
病院の場合は、旧態依然なところが多いとはいえ、
歴史があり経済的な体力もあるため、手厚い福利厚生が可能です。
でも、規模の小さなクリニックで同じようなことができるかというと、
そう簡単ではありません。
病院勤務を経験してきた看護師は、このギャップに不満を感じてしまうのです。
私たちの経験上、こういった不満が出ているからといって、
クリニックの労務管理がずさんなわけではありません。
むしろ、「やれることはやっている」というケースがほとんどです。
それでも、「前に勤めていた病院は退職金があったのに……」
「忌引などの特別休暇が少ない」といった不満が出てしまう。
もちろん、看護師に限らず、病院からクリニックへの転職者は、
福利厚生への不満を抱きやすいように思います。
さらに、クリニックは病院に比べてスタッフの数が少ないため、
一人が退職することの影響が大きく、ス
タッフが権利を主張しやすい(=主張を通しやすい)という側面もあると考えられます
・評価や給与への不満
福利厚生と同様、クリニックは病院と比べて人事評価や昇給などのルールが
整っていないところが多くあります。
そもそも5〜10人ほどの規模のところが多いので、
細かな評価や昇給のルールを入れてもあまり機能しません。
私たちも、「院長のさじ加減をある程度残しておいたほうがうまくいきます」という
アドバイスをすることもあります。
ただ、それが順調に回っているときはいいものの、
さじ加減を間違えて不公平感が出てしまったり、
当たり前に定期昇給があるものだと思っているスタッフがいたりすると、不満につながります。
また、クリニックでは診療ができるのが院長だけという場合もあります。
そうなると、院長がいなければ売上は上がりませんから、院長に圧倒的な権力があるわけです。
さらに、院長の奥様が事務長を務めていることも多くあります。
すると、小さな組織のなかで絶対的なヒエラルキーができる。
こういった部分もスタッフの不満につながりやすい背景です。
医療業界向けルールブックを活用することで
「労務」と「教育」の両面からサポートが可能になる
このように、病院やクリニックには、働く人にまつわる課題が多くあります。そこで、社労士がアプローチする際に有効なツールが『働き方のルールブック』です。
就業規則よりも簡易的に職場のルールを周知でき、
経営理念やハラスメント対策に関する項目も盛り込めるルールブックは、
労務面と教育面の両方からアプローチできる点においても効果的です。
〔病院・クリニック向けルールブックでできること〕
●職場でのルール整備や院長の考え方などの周知徹底
●採用定着や教育のツールとして活用する
●医師が苦手なコミュニケーションをサポートするツールとして活用
ルールブックを作成する際には、
就業規則を含めて現在の労務管理、労働環境を見直す必要があります。
しかし、クリニックで働く人は、スタッフだけではなく院長も病院出身の人が多く、
「厳しいのが当たり前という労働環境で働いていた」というケースが多々あります。
すると、労務管理の必要性にピンと来ないことが多いのです。
そこで、まずはルールブックの作成を通して
院長が労務管理について知ることができるという利点があります。
昨今、多くの病院・クリニックでは、看護師の採用と定着が課題になっています。
看護師が定着しないために、紹介手数料だけで年間数千万円かかっているところもあります。
紹介手数料にコストがかかると、定着させるための施策まで手が回らないという悪循環に陥ります。
職場のルールが明確でないと、人間関係を悪化させる原因にもなり、離職の引き金となります。
ルールブックは規則だけではなく、仕事に対する考え方やそれぞれの役割なども明文化できるため、
働きやすい環境づくりに取り組んでいるというアピールになり、採用定着にもつながります。
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写真右から、根上真由美氏、三浦修氏、武田大亮氏、上村尚史氏
また、私たちが採用定着支援を行うなかで感じる根本的な課題に、
関係者それぞれの考え方の違いという点も挙げられます。
たとえば、院長と事務長である奥様の間、院長とスタッフの間などで、
患者さんに対する接遇の考え方も異なります。それぞれ専門の領域が異なるため、
各自の「当たり前」が違うのです。
ここでも、ルールブックが活用できます。院長の「当たり前」を言葉として明確にしていくことで、
たとえば「受付の人たちに、接遇研修を受けてほしい」とか、
「このテーマは全体で取り組んだほうがいいから、研修を行おう」といった施策につながっていきます。
特に、医師には寡黙でコミュニケーションに苦手意識のある人もいるため、
スタッフに対して「言ってもわかってもらえないから、
自分の言葉で発するのをやめてしまった」というケースもあります。
そのようななかで、「先生の思いをこのルールブックで伝えてみてはどうですか?」と提案すると、
賛同してくださる方も多いのです。
医療業界にアプローチする際には
診療科目ごとの特徴を把握しておくことがポイント
社労士が病院やクリニックにアプローチする際に注意するべきことは、「診療科目ごとに病院・クリニックを取り巻く状況が全く異なる」ということを知っておくことです。
診療科目によっては、医師、看護師、医療事務スタッフだけでなく、
検査技師や作業療法士、理学療法士なども必要となります。
開業時に募集する人員も違いますし、いわゆる組織内のヒエラルキーも異なります。
たとえば、内科の場合は基本的に医師と看護師、医療事務スタッフで構成されます。
眼科の場合は、看護師は一人いれば回ることもありますが、
その代わりに視能訓練士を多く確保する必要があります。
整形外科の場合は、作業療法士や理学療法士も診療報酬の点数を稼ぐことができるため、
医師しか売上を立てられない科目とは収益構造が異なります。
このように、診療科目ごとに必要な資格者や収益構造を知っていることで、
より適切なサポートが可能です。
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また、現在、医療業界で話題になっていることの一つに、宿日直許可があります。
病院は、医療法によって夜間も医師を常駐させなければいけないと定められています。
このため、民間の病院では、大学病院などから若手医師を派遣してもらっているところが多くあります。
この宿日直手当は、若手医師の副業としても大きな収入源であるようです。
しかし、2024年4月から医師の働き方改革が施行され、
残業の上限規制が適用されるようになると、総勤務時間が上限を超えないように、
副業先を含めた勤務時間の管理が求められるようになります。
宿日直許可のない医療機関で勤務した場合、
宿日直もすべて労働時間に組み込まれてしまうことになり、
許可を得ていない民間病院などでは宿日直医師の確保に
大きなハンデを背負ってしまう可能性があります。
※参考:厚生労働省「医療機関における宿日直許可 ~申請の前に~」
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/20210720_02.pdf
こういった事情を知っているかどうかも、医療機関にアプローチする際のポイントといえます。
社労士は、社会保険等の手続きや給与計算だけをやっていればよい時代ではありません。
病院やクリニックに合わせたルールブックや就業規則の作成、教育、採用コンサルティングを行えると、
「人事労務に強い社労士」というアピールができるようになると思います。
みらいパートナーズが監修!
医療機関へのアプローチに活用できる『働き方ルールブック』が
アックス社会保険労務士パートナーズのサポートツールに登場!
アックス社会保険労務士パートナーズでは、社労士事務所の営業活動に“すぐに使える”チラシや提案書の雛形、
セミナー開催キット、職員研修ツールなどを提供しています。
そのサポートツールに、みらいパートナーズが監修した
医療機関向け『働き方のルールブック』が登場しました!
働き方のルールブックとは、従業員に知っておいてほしい基本ルールを、
就業規則よりも簡単な言葉で、わかりやすくまとめた小冊子です。
病院・クリニックで仕事をするうえでの姿勢・考え方なども書かれており、
院長の思いを職員に浸透させるためにも有効です。
〔記載事項〕
●当院の考え方について
●仕事の基本
・ホウ・レン・ソウ
・患者さまへの対応
・身だしなみ など
●業務ルール
・就業中のルール(1日のスケジュール、遅刻・早退・欠勤について など)
・業務外のルール(守秘義務 など)
・申請のルール(休暇・残業の申請、緊急連絡 など)
●連絡先
●こんなときどうする?
・怪我やトラブル
・院内のトラブル など
アックス社会保険労務士パートナーズでは、医療機関向けルールブックをはじめ、
さまざまなツールで社労事務所の売上拡大をサポートしています。
〔業種別ルールブック〕※今後提供予定のものを含む
●介護 ●飲食 ●保育 ●歯科 ●医療 ●美容 ●建設 ●運送
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「提携先をどうやって増やしたらよいかわからない」
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という先生は、ぜひお問い合わせください。
▼アックス社会保険労務士パートナーズの詳細・お問い合わせはこちら
https://bit.ly/3XubkWL
プロフィール
三浦修氏
みらいパートナーズ代表
2003年社会保険労務士試験に合格。
会計事務所に入所し社労士業務の傍ら監査業務や医療法人設立のコンサルティング業務に携わる。
2008 年に開業。医療・介護事業所を中心に労務管理を行っている。
根上真由美氏
人財開発事業部部長、ファイナンシャルプランナー(AFP)
中小企業を中心に、人事コンサルティング支援
募集採用・人事評価・研修などを中心に、人材育成担当者が抱える諸問題の解決に向けた取り組みを支援。
離職率ダウンの実現と自ら育つ育成の風土を目指して、企業様と共に本気の社内改革を進める。
武田大亮氏
労務管理部部長
2012年に入所以来、医療介護系を中心に延べ60件以上の開業支援を行う。現在は顧問先企業の担当者としての業務のほか、勤怠システム導入を始めとした企業のDX化支援も行っている。
上村尚史氏
労務管理部課長、社会保険労務士
2018年社会保険労務士試験に合格。2019年入所。
入所以来、企業労務を専門とし顧問先企業の手続き業務・給与計算、
労務相談、労務監査、就業規則作成、助成金申請等を担当。
現在は従業員1人の会社から東証プライム上場企業、公益財団法人等の労務相談窓口として幅広く従事。
みらいパートナーズ代表
2003年社会保険労務士試験に合格。
会計事務所に入所し社労士業務の傍ら監査業務や医療法人設立のコンサルティング業務に携わる。
2008 年に開業。医療・介護事業所を中心に労務管理を行っている。
根上真由美氏
人財開発事業部部長、ファイナンシャルプランナー(AFP)
中小企業を中心に、人事コンサルティング支援
募集採用・人事評価・研修などを中心に、人材育成担当者が抱える諸問題の解決に向けた取り組みを支援。
離職率ダウンの実現と自ら育つ育成の風土を目指して、企業様と共に本気の社内改革を進める。
武田大亮氏
労務管理部部長
2012年に入所以来、医療介護系を中心に延べ60件以上の開業支援を行う。現在は顧問先企業の担当者としての業務のほか、勤怠システム導入を始めとした企業のDX化支援も行っている。
上村尚史氏
労務管理部課長、社会保険労務士
2018年社会保険労務士試験に合格。2019年入所。
入所以来、企業労務を専門とし顧問先企業の手続き業務・給与計算、
労務相談、労務監査、就業規則作成、助成金申請等を担当。
現在は従業員1人の会社から東証プライム上場企業、公益財団法人等の労務相談窓口として幅広く従事。
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