2023.09.25
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応に関するお知らせ

2023年10月01日(日)より、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されますので、弊社の同制度への対応についてお知せいたします。

弊社ではインボイス制度の対象となる課税取引のご利用について、
2023 年10月以降の決済分より、同制度の要件に対応できるようにいたします。

【当行適格請求書発行事業者登録番号のご案内】
株式会社アックスコンサルティングの登録番号をご案内いたします。

適格請求書発行事業者登録番号
T9011001004344
 

成功者に学ぶ!独立・開業テクニック〜森下敦史税理士事務所【後編】〜

東京・銀座『森下敦史税理士事務所』のケース 【後編/3年目~】

前回、森下敦史先生の開業の準備期間から開業1周年、2周年と事務所黎明期のハウツーをご指南頂きました。
後編となる今回は、3年目以降の安定期に事務所はどういった展望を見据えて動いていくのか? 現在の成功をつかんだヒストリーを、一つ一つ具体的に教えて頂きます。

 

本当の勝負は3年目から! イチから企業営業を開始!

事務所経営が3年目に突入し、リスティング広告と紹介会社の利用によって新設法人設立の顧客数は順調に伸びていきました。しかし、新規の法人というのは当然これから事業を始めるため、経営は不安定。それゆえ、顧問料諸々も安価になりやすい傾向があり、薄利多売の業務構造を作ってしまうことになります。今後の事務所経営を考えると単価の安定した収益が必要不可欠でもあります。
森下先生はこうした問題をクリアするため新たな営業方法にとりくみました。


Q.新たな営業方法とはなんですか?

A.今までは新規の法人の設立案件が多かったのですが、既存の法人に対して営業を開始しました。売上が大きい企業はやはり安定感が違います。なのでそういったところの顧問に収まるのは、非常に魅力的なんです。顧問料の額も、それなりに大きくなります。方法としては、まず、電話でのアポ取りをします。これは企業リストを購入して、アポ取りを行い、そのアポを元に私が企業へ伺うという流れです。一般の企業営業だと思っていただければわかりやすいかと。


Q.営業の結果はどうですか?

A.これはかなり難易度が高く最初のうちは大変でした。今までの営業方法は形は違えど、“お客様の方から、税理士が必要で声を掛けて頂いている”という状態でのものでした。なので成約率は常に50%以上ありました。面談をして、すぐに依頼というパターンの繰り返しです。
しかし、今度はまるで違います。そもそも要求がないところに飛び込んで……そこから始まるわけですから。最初のころは全く契約が取れず、何度も止めようかと思いました。とはいえ、粘り強く続けてみたところ、半年を過ぎた頃にようやく契約が取れるようになってきました。この方法だと、今までのように“すぐに契約”ということはまずありません。何年も営業している会社ですから、既存の顧問税理士が付いている例もありますし、従業員の生活や社会的に背負っているものなど新設の法人とは背景が違うんです。
そこで重要になるのが信頼関係なんです。古典的かもしれませんが、まずは何度も足を運んで私という人間性を知って頂き、そこではじめて具体的な税理士としてのスキルや、費用といった話ができるんです。
最近ようやくコンスタントに契約を頂くことができました。こういったお客様は企業規模も大きいので、単価も年額80万円、経理も含めたパッケージになると年額150万円の案件もあります。
今の税制は起業がしやすい環境なので、新設法人のサポート業務を主体として税理士事務所を開業するのはひとつの方法だと思いますが、既存企業も多くの不安を抱えており、税理士が必要となるケースも多々あります。よくあるパターンが経営者が高齢になっており、事業継承や生存贈与、相続など将来的に考えている、というもの。時流にあった有意義な業務だと思っています。


Q.顧客を一件獲得するのにかかる費用(営業費、広告費など)はいくらですか?
A.事務所運営の時期に応じて費用は異なりますが、3年目~はリスティング広告と既存法人の営業費用に毎月約100万円かけています。リスティング広告は、Yahooやgoogleなどに投じる額によって1件の問い合わせを受ける費用も変わってきます。現在はそれほど力は入れていないため1件の問い合わせに対して2~3万円のコストといったところ。ちなみに売上でいうと新設法人の設立を受任した時点では“手数料をゼロ”にしているため、差引で1件あたり10万円ぐらいマイナスになります。つまり、新設法人はある程度の月日が経たないと、プラスにならず、最初のうちは案件を取ればとるほどマイナスになります。そういった点からも、既存法人の獲得は魅力的なのです。現在は先程お話した既存法人に充てる費用の割合が全広告・営業費の8割ぐらいになっています。


Q.毎月の出費はどういったものが、どれくらいありますか?

A.人件費はもちろんですが、会計ソフトの使用料もライセンスごとに必要なので結構かかります。1ライセンス増やすたびに18~20万円ぐらい、ならすと月10万円ぐらい掛かっていると思います。また、気を付けなければいけないのがソフトの“更新”です。5年契約なのですが、追加したライセンスも含め、一括で支払わなければならず、数百万円になる場合もあります。これは……恐ろしいですね(笑)。


Q.メインで扱っている会計ソフトはなんですか?

A.ミロクと弥生がメインですが、お客様によってはソフトも色々なので、それに応じられるスタイルを取っています。ソフト代以外にもそれなりに費用がかかります。1人雇うたびに、ライセンスとPCの購入代で約30万円程度はかかっています。


Q.現在の従業員の構成は?

A.全体で10人。うち半分はパートです。


Q.従業員を雇った後の変化は?

A.様々な変化がありましたが、プライベートの時間を作ることができるというメリットは生活の上で大きな変化です。従業員を雇う前は、繁忙期の確定申告の時期になると毎日始発で帰るような日が続きました。現在も繁忙期は土日も仕事をしていますが、休日も設けていますし、世間の連休に連動して旅行に行くこともできます。また、時間に余裕ができると、心にも余裕が生まれ、精神的にもメリットがあると思います。


Q,従業員に関して、考えていることを教えてください。

A.従業員の教育に力を入れていまして、入所して半年で決算処理ができるように育てます。ただ、社員教育はそれなりに時間がかかるし、おざなりにすると社員の成長も遅くなります。なので、人材獲得の順番としては“経験者”を入れた後に、“未経験者”を入れるといったサイクルを検討しています。
業務的にお客様からのご依頼を獲得した後、それをこなしていくだけの人的資源が必要になりますので、事務所の成長スピードはその時々に応じた人材を獲得できるか否かにあると思います。顧客数ばかり増えても、従業員に対して過負担を強いることになるので、バランスが大切です。また、職員のモチベ―ションを維持するため、「やりがい」のある業務を与えることも必要だと思っています。
人材の採用に関して言えることは、会計事務所は確定申告で2月~3月が繁忙期になるので、一般的にポピュラーな就職活動期となる時期は外したい方がいいと思います。かなりバタバタしていますので、面接の時間も惜しく感じます。


Q.従業員の採用媒体をおしえてください。

A.税理士試験の受験者数および求職者の母数が近年減っており、それに連動してか求人媒体に依頼した際の反応も悪くなっています。求人媒体としてよく使っていたのがハローワークですが、最近は例にもれず反応はイマイチです。税理士と直結するかと思い大手資格予備校にも求人をお願いしましたが、意外にも、“ゼロ”でした。現実的に有料の採用媒体を使わないとなかなか難しい状態になっていると思います。


Q.事務所に対しての営業はどういったものがありますか?

A.求人媒体を取り扱う企業からの営業は結構あります。憶測ですがハローワークで求人を呼びかけたので、それを見て営業に訪れているのかもしれません。他にも様々な営業が来ます。現在、行っている既存法人への営業も、その一つです。試しにやってみたら、ハマったという形です。ほかにもWeb媒体の掲載アプローチなど常にあります。


Q.開業から今に至るまで、その過程で後悔していることはありますか?

A.正直ありません。あの時にこうしていれば、というのを突き詰めれば出てくるかもしれませんが、私は他の会計事務所に比べ恵まれていた方じゃないかと思います。


Q.開業に踏み切れた理由は何ですか?

A.事業を開始する上で、リスクは必ずあります。私も最初の事務所が転貸で割安になったとはいえ“銀座”でスタートしていますし、以前に勤めていた事務所から顧客を引き継ぐようなこともなかったので、一件も依頼がなく廃業になるリスクもありました。理由を探すとすれば、様々な成功事例をセミナーなどで見聞きしたことが大きいと思います。これは性格かもしれませんが、あまり悲惨なことは考えませんでした。むしろ、これならうまく行くんじゃないか! と、希望を抱いていました。


Q.お客様と接する際に考えている点は?

A.人はお会いして数秒の印象が、その後においても非常に大切だと思っています。なので、初対面は非常に大切にしています。見た目の印象で信用できる人をいかにアピールできるか、ちゃんと話の間を持たせ、スムーズに業務の話につなげていくか、といった点はしっかりと組み立てた上で、話をしています。契約に関しては、従業員もいる境遇なので、価格交渉で値段を下げてまで仕事を取る! という方針は取っていないです。粗利の出ないリスクの高い業務をあえて受ける必要は感じていません。


Q.失敗談を聞かせてください

A.もっとも大きな失敗は、WebサイトのSEO対策業者と契約をした時です。まるで効果がなく解約を試みました、が実は2年縛りといったルールがあって、解約した後の期間の料金を50%違約金で支払わなければならなかったということがありました。金額は100万円以上の損害がでました。


Q.家族に業務を手伝ってもらいましたか? また、その際に役に立つ資格など教えてください。

A.私の場合、家族に業務のフォローをお願いしたことはありません。が、もし手伝ってもらえる人がいれば、当たり前なのですが簿記の勉強が一番役に立ちます。事務所を始めたばかりの時期にそういった人がいると心強いですね。


Q.今後のビジョンを聞かせてください。

A.単純に案件数を追うようなことは控えたいと考えています。お客様のフォローがしきれなくなりますので、やはり単価の高い案件を獲得できるように、と考えています。事務所の規模についてですが、しっかりと教育や管理体制を整えた上で将来的には50人〜100人ぐらいに拡大したいとは考えています。



いかがでしたでしょうか。
東京だけでも2万人以上の税理士がいる現在、開業の手法は、それこそ星の数ほどあると言えます。すべては「先人に学べ」です。開業して数年で、10名を超えるスタッフを抱えるまでに成長した森下先生のハウツゥーは、まさに成功者の轍! すぐに実践できるテクニックが十二分にあったかと思います。これから独立を考えている方、また、すでに独立して事務所経営に悩んでいる方、ぜひとも本企画の手法を取り入れてみてくださいね。


 
プロフィール
森下 敦史(もりした あつし)氏
森下敦史税理士事務所
代表

生年月日:1976年10月13日
血液型:O型
出身地:東京都練馬区
学歴:平成12年3月 帝京大学経済学部卒業
職歴:大学卒業後3年間の受験専念期間を経て、一般企業で営業職に従事。その後、個人の会計事務所から中堅規模の税理士法人まで、計8年間の実務経験を積み、平成25年9月、独立開業。
スポーツ経験:柔道(黒帯)
趣味:野球観戦・読書
尊敬する人:両親
関連コンテンツ