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サスティナブル時代にESG経営を実現するためのポイント

サステイナブル経営の時代とESGの拡大

企業経営の根幹となる重要な概念として、
大手企業を中心に「ESG」が注目されています。
持続可能な企業経営の支援を担う士業事務所だからこそ、
知っておきたいESG経営の概要から具体的アドバイスまで、
税理士・杉井俊文氏が解説します。


 

【ESG経営の概要】サステイナブル経営の時代とESGの拡大

長期的な利益拡大思考で重視されるESG経営

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)
の頭文字をとったものです。
昨今、大企業がこれらの項目を重視した経営を行う傾向にありますが、
これには投資家の意識の変化が大きく影響しています。
そもそもESGは、2006年に国連主導で提唱されたESG投資の
プラットフォームである責任投資原則(PRI)に基づいています。
それ以前の投資家は、短期的な利益を重視する傾向にありました。
しかし、このような思考が2008年のリーマンショックを
引き起こす原因となってしまったのです。

未曾有の金融危機を招いた短期的利益主義への反省や、
経済活動に伴う地球環境への悪影響、あるいは貧富の格差拡大など、
さまざまな現状を考慮した多くの投資家の意識が、
ESG経営を重要視する思考へとシフトしているのです。
そして、世界においてESG投資は年々拡大していて、
2020年における投資総額は35兆ドル(約3900兆円)になり、
18年比で15%増加。投資全体に占める割合は、
3分の1を超える35.9%となっています。
(日本経済新聞2021年7月19日付より)

日本においても、ESG投資は拡大傾向にありますが、
最大の要因は2016年の
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のPRI署名です。
世界最大の運用資産を誇るGPIFによる署名は、
日本のESG投資に大きな影響を与えたといえます。
このように、日本は世界に対して多少の遅れはあるものの、
ESGは世界経済において重要な考え方の一つになったといえます。

社会的背景から士業が考えるべきこと
ESGは、投資家が考えるべき中長期的な利益拡大の概念といえます。
士業事務所の多くは、
未上場の中小企業や個人事業主がクライアントであるため、
ESGは無関係と考えるかもしれません。
しかし、企業に求められるESGへの対応は、
投資家への対応という側面だけではない段階に差し掛かっています。
今後は、企業経営をとりまくあらゆる関係者から
ESGへの対応が求められるようになると考えられます。
投資家と縁遠い中小企業であっても、
取引先の大手企業や金融機関のESGに連動する形で
対応を求められる可能性が大いに存在するからです。
それだけではなく、顧客である消費者や、従業員、地域社会も、
同じようにESGへの対応を求めてくるようになるでしょう。

いまさら聞けないESGの3要素と時代背景


現在の学習指導要領では、小学校から高校に至るまで、
SDGsに関する事項が多く盛り込まれています。
この世代が社会人となり、経済活動の主体となった場合には、
ESGに対応できていない企業の商品やサービスは
選択してもらえなくなるでしょう。

また、このような若者が就職先を選択する際の指標として、
ESGの観点が重要になるため、
対応できていない企業は就職先の候補となり得ない可能性も大きいのです。

このように、今後は中小企業であっても、
ESGを無視した経営を継続することは困難になっていくと考えられます。
ESGやSDGsと企業の「稼ぐ力」の両立を図り、
持続可能性を重視する経営の在り方を
SX(サステイナビリティ・トランスフォーメーション)といいます。
このSXによる変化や変革をどのようなものとして捉え、
企業経営に活かすかによって、
その企業の今後が決まるといっても過言ではありません。

これまでの、大資本を集約して効率的に同じ品質の商品を大量生産し、
大量消費するという時代から、
環境や地域社会に配慮した原材料を用いて丁寧に製造された、
独自の商品やサービスが好まれる多様性に富んだ時代に変化しつつあります。
大量生産では大企業と競争できないけれど、
独自性や地域色などをうまく出せるのであれば、
中小企業でも十分に太刀打ちできる好機ではないでしょうか。

つまり、ESGの視点を経営に取り入れることは、
中小企業にとって飛躍への大きなチャンスなのです。
このように考えると、ESGは中小企業にとって、
経営の中心に置くべき項目であり、
士業事務所はクライアント企業を
ESG経営へと導く参謀となる必要性があります。
次に、SDGsとの違いやESGを盛り込んだ
経営サポートの指南について触れていきたいと思います。


 

【ESGと経営計画書】ESG経営実現のための計画策定ポイントとは

いま注目のSDGsとESGの本質を理解する

SDGsの知名度は、この1年間で一段と上がったように思えます。
2022年は、具体的な取り組みが日本各地で実施され、
さらなる盛り上がりを見せると予測できます。
ESGが誕生した社会的背景については前回ご紹介しましたが、
SDGsも同様と考えてよいでしょう。
しかし、ESGが企業活動にかかわる投資と経営という視点であるのに対し、
SDGsはもっと広範にわたり、国際社会や各国政府、自治体や企業、各種団体、
そして私たち市民一人ひとりが取り組んでいくという点で異なっています。

SDGsは2015年の国連総会で採択された、
2030年までに国際社会が協力して達成すべき
持続可能な開発のための目標ですが、
SDGsとESGは切っても切れない関係となっています。
SDGsの達成のためには、その取り組みを支える金銭的な支援が必要です。
また、投資家がESG評価を行う際に、
SDGsの指標を活用するという状況も増えてきました。
ESGにとって、SDGsは格好の評価基準となったのです。
SDGsに取り組むことが、ESGに取り組むことにつながることから、
現在においてSDGsは多くの企業で取り組みがなされています。

ただし、ESGとSDGsの大きな違いは、
SDGsが2030年までの目標であるのに対して、
ESGはそれ以降も経営の中心課題であり続けるという点です。
SDGsのブームに乗るのも良いのですが、ESG経営を推進するのであれば、
本質を見失わないよう注意が必要です。

 

ESG経営実現のための経営計画策定とは

では、士業事務所が顧問先企業のESG経営あるいは
SDGsの取り組みをサポートするにはどうすればよいのか。
導入段階から順を追ってみていきましょう。

第一に、ESG経営に取り組むには、
経営者がその意義を理解することが重要です。
多くの中小企業経営者は、ESGあるいはSDGsを
社会貢献活動ととらえている傾向にあります。
慈善活動と考えてしまうと、資金的に余力のない中小企業では
「できそうにない」と考えてしまいます。
しかし、ESGは経営の中心課題であることはすでに述べた通りです。

次に、ESGを経営課題として考えるということは、
経営戦略との整合性も必要ですし、
経営計画に盛り込んでいく必要もあります。
経営戦略との整合性という点から、もう少し具体的に考えると、
例えばメーカーの工場において、
毎週一回従業員による工場周辺の清掃活動を実施するとします。
これは社会貢献活動であり、経営戦略との整合性は見えません。
それよりも、工場周辺の環境問題や労働問題などについて考える方が重要です。
また、地域の雇用推進地や、地元企業とのコラボレーションなどを
検討する方が効果的であり戦略的です。
清掃活動が意味を成さないのではありません。
ESGと社会貢献を混同しないことが肝心なのです。

もちろん、経営戦略である限りは、
ESGの目標をもって取り組む必要があります。
よく見逃されていることですが、
SDGsは2030年に向けた目標ですので、達成を目指す必要があります。
取り組んでいるという単なるアピールでは意味がなく、
到達目標を定めることが重要です。
この点からも、経営計画との関連付けに意味があるのです。

経営計画は、将来の売上や経費についての数値目標が中心となります。
しかし、ESGの目標の多くは、数値化するのが非常に困難です。
では、数値にするのが困難な目標をどのように計画すればよいのでしょうか。
これを考える際に知っておきたい概念に、
インプット、アウトプット、アウトカム、インパクトの4つがあります。

まず、インパクトは社会が達成すべき目標であり、
例えばSDGsの各ゴールに置き換えて考えることができます。
この目標をもう少し企業に近いステークホルダーが
抱える課題の解決として考えるのが、アウトカムです。
そして、そのアウトカムを達成するには
具体的にどのような活動・行動をすべきか、というものがアウトプットです。
アウトプットまで考えると、具体的な数値目標を立てることができます。
このアウトプットを達成するために必要な資源(インプット)は
何かというような順番で考えることになります。
次は、この4つの概念をさらに深堀していきたいと思います。

ESG 目標を経営計画に落とし込む考え方


 

【ESGと経営提案】ESG・SDGs経営への具体的な提案方法とは

中小企業への提案は4ステップで考える

ESG経営についてこれまで紹介してきましたが、
中小企業に対して、士業事務所は具体的にどのように提案し、
進めていけばよいのでしょうか。
最後に、具現化、対話、理解、実行の
4つのステップに分けて解説していきたいと思います。

最初のステップは「理解」です。
理解はさらに導入、提案、検討の3つの段階に分かれます。
導入とは、経営者に知ってもらうことを指しますが、
経営者がESGについて十分に理解を得られた後に、
提案を行って、企業での対応方法を検討することになります。

次のステップである「対話」は、4つの中で最も重要なもの。
ここで考えることは、企業にとってのマテリアリティ(重要課題)が
何であるのかということです。
事業が社会に与える影響の度合いを判断して、
何を優先すべきかということを決定します。
このステップを「対話」としているのは、
3つの対話によりマテリアリティを決定する必要があるからです。
3つの対話の相手は、社外、社内、企業理念。
社外と社内をまとめると、ステークホルダーということになります。
社外といっても、株主や顧客、地域社会など多岐にわたります。
社内は従業員です。経営理念との対話を忘れがちになりますが、
これは自社の経営戦略との整合性をとる意味もあります。
ステークホルダーにとって重要な社会課題であっても、
自社の経営との整合性がないものを
マテリアリティとして上位に置くことはできません。

3つ目のステップは、「具現化」です。
ここでは、ESGの経営計画への導入時に
考えるべき4つの概念を参考にして進めます。
まずはインパクトから考えていきますが、
このインパクトの設定はマテリアリティと合致させる必要があります。

もう少し具体的に考えてみましょう。
例えば飲食店の場合、どのようなマテリアリティが考えられるか。
顧客というステークホルダーを考えた場合、
食の安全というテーマがあがります。
無添加無農薬や、トレーサビリティ(※1)が重要課題にあげられるでしょう。
地域について考えれば、地産地消や、
地域生産者を応援したいという考え方が出るでしょう。
地域生産者の応援とトレーサビリティは結合するテーマです。
(※1)その食材がいつ、どこで、だれによってつくられたかを明らかにする

つまり、これをこの企業のマテリアリティとすることもできるでしょう。
SDGsでは目標15(※2)あたりが該当します。
一方で、食品によっては輸入に頼らざるを得ないものもあります。
こうしたものは、食の安全のほかにも、
生産地における労働搾取などがないかというテーマと結びつくでしょう。
(※2)「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、
砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」をテーマに掲げている


また、フードロスという社会問題をマテリアリティとすることもできます。
これは顧客に食べ残しを減らしてもらう努力のほか、
仕入れの調整方法などの検討にもつながります。
フードロスの解決に寄与することは、
地球環境の保護につながるだけでなく、
経営においては各種経費の削減にもつながり、
経営の効率化にも資するのです。
このフードロスを自社のマテリアリティとした場合、
アウトカムは、フードロスのない社会の実現になります。

最後のステップである「実行」は、
前のステップで定めたアウトカムを達成するために、
自社で取り組める具体的な指針についての定量目標を考えます。
これがアウトプットということになります。
例えば、残飯の廃棄を前年比80%減にするなどの目標です。
その具体的方法として、
自社で投入できる経営資源のことをインプットといいます。
仕入れ担当や調理担当は何ができるかと具体的に考え、
実行し、達成度合いを毎期判断します。

中小企業経営者へ提案するための4つのステップと「重要課題」

 

持続可能な経営のために士業ができること

これまで解説したように、社会環境は大きく変化しています。
しかし、中小企業経営者の多くは、
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)に
対応できないどころか、知らない方が大半です。
なかには、SDGsブームに乗って対外的にPRする企業も少なくありません。

中小企業に寄り添う士業事務所は、
経営者にESG経営の全体像を正しく伝えて、
具体的に何を行うべきか提案し、
SXに対応する手助けをする時代が来ているのではないでしょうか。
サステナビリティの時代は、
自社だけが継続すれば良いわけではありません。
社会全体がどのように持続可能に発展していくかということを
真剣に考える必要があるのです。
プロフィール
杉井俊文氏
杉井俊文税理士事務所
大手税 理士事務所にて事業承継コンサルティングを行ったのち、2021年独立。
また、中小企業のESG経営と事業承継について立教大学大学院研究所にて研究を行っている。
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