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  • 【特別座談会】目指すべきは仕組み重視か理念重視か!? 士業事務所の組織づくり

    税理士試験受験者数や業界への流入人口の減少が課題となっている会計業界。事務所の成長や生産性向上のためには、人材確保や組織づくりが大きなカギを握っています。では、組織づくりや職員の定着・育成において、重要なこととは?仕組み重視派と理念重視派、それぞれを代表する事務所所長の座談会で、組織づくりのポイントや所長の役割を考えます。【仕組み派代表】税理士法人阿比留会計事務所阿比留一裕氏/エクセライク会計事務所伊藤温志氏【理念派代表】清家巧貴税理士事務所清家巧貴氏/税理士法人SS総合会計鈴木宏典氏 組織づくりは目的から落とし込む──本日は、ビジネスモデルや仕組みを重視した組織、経営理念やビジョンを重視した組織、それぞれを代表する事務所の対照的な部分、共通する部分などを探りながら、組織づくりを考えていければと思います。まずは、組織をつくるにあたり、何から決めたのかを教えてください。伊藤組織づくりは「目的志向」で考えることが大事です。「こういういう組織をつくりたい」ではなく、「こういう目的があるから、こういう組織が必要だ」という順番です。うちの目的は、「高品質で低価格の税務顧問サービスを提供すること」。そのためには、絶対に無駄が許されない。そうすると、スタッフに求めるものはパワーとスキル。つまり、体力と処理能力です。コミュニケーション能力はいりません。目的自体は開業当初から変わりませんが、2年ほど前までは属人的で効率が悪く、問題のあるスタッフもいたので苦しみました。今は、ITツールで効率化し、在宅勤務もうまくいっているので、職員が安心感を持って働いている実感があります。阿比留私も伊藤先生と同じで、個人事業主の美容室・飲食店に特化した、できる限りシステム化したビジネスモデルを決めてから、必要な人を考えました。ビジネスモデルを固めるまでの話をすると、私は開業前、監査法人と地方銀行に勤めたのですが、この経験がとても活きています。監査法人は、ものすごく頭のいい人の集まりで、組織というより個人のパワーで回している。一方で銀行は、仕組みがしっかりしているから、異動や転勤が定期的にあっても、きちんと仕事が回る。でも、地方では選りすぐりの人が採用されているとはいえ、監査法人と比べると普通のサラリーマンなんです。となると、自分が独立したあと、街の小さな会計事務所で採用できるのは、すごく普通の人だろうと思いました。そこで、善良な普通の人ができるビジネスモデルを考えたのです。鈴木その言い回しは、いかにも阿比留先生らしいですね(笑)。私の場合は2代目なので、先代の思いを大事にしようと考えました。先代は、事業計画で会社を良くすることに取り組んできて、それが地域ですごく認められていた。だから、そこに対する使命感はありましたね。あとは、「成長組織」にしたい。正社員も準社員もパートも、お客様に価値を提供することに熱量を持って取り組んでもらうためにはどうするか、ということを考えています。ITを使った効率化やサービスのパッケージ化もしつつ、全体で成長していこうという組織を目指しています。清家私は、まずは「地元の大分県佐伯市をなんとかしたい」という思いだけでした。佐伯市を良くするために何が必要かを考えて、キャッシュフローコーチや理念策定支援など、外で学んだことをサービスにしています。ただ、佐伯市は人口が7万人弱で、大学もなく、人が採れない。職員を事務所のなかで成長させるしかないので、時間はかかります。これは地方の限界なのかもしれませんね。 
  • 【新春座談会】DX士業が語り合う!新たな士業像とは?2022年、士業の大変革 Vol.2

    コロナ禍で加速したDXの波。士業事務所にとっても、業務の幅が広がり、顧問先のDX支援が可能になるなど、大きなビジネスチャンスといえます。このDX時代に取り残されないために、士業が行うべきこととは?自社でシステム開発に取り組む朝倉歩氏(サン共同税理士法人)磨和寛氏(司法書士法人トリニティグループ)柴垣和也氏(社会保険労務士法人クラシコ)角田望氏(株式会社LegalForce)の士業4名が、その極意を語り尽くします!ファシリテーター/髙見史弥(株式会社アックスコンサルティング)Vol.1はこちら DXは、付加価値を生み出して業界のトップに立つ好機になる――DXで士業の定義が変わるという話がありましたが、士業事務所はどのような心構えが必要になるのでしょうか?柴垣社労士業界は税理士業界と似ていて、高齢の先生も多く、まだまだDXが進んでいません。でも、お客様やスタッフのためにも、社労士はどんどん進化していくべきだと、私は思います。DXに取り組まないということは、古い車でレースをしているようなものです。古い車は故障も多く、メンテナンスも大変です。その対応に時間をかけるなら、最新の車に乗り換えて、余剰の時間を創意工夫に注ぐ方がいい。そういう社労士や企業が増えれば、よりイノベーティブな社会になっていくはずです。朝倉本当にその通りで、DXによって良質で価値の高いサービスが提供できれば、一気に業界の上に行くことができるタイミングだと思います。DXについていけないという先生もいますが、FAXがメールになったり、手書きで作成していた申告書がパッケージソフトやクラウドソフトで自動化されたりと、以前からITで生産性が上がるという変化は起きています。DXで全体の生産性が上がるのであれば、その流れに取り残されないことを気にかけたほうがいい。DXできていないことに恐怖を感じている先生は、生き残れる可能性が高いと思います。
  • 【新春座談会】DX士業が語り合う!新たな士業像とは?2022年、士業の大変革 Vol.1

    コロナ禍で加速したDXの波。士業事務所にとっても、業務の幅が広がり、顧問先のDX支援が可能になるなど、大きなビジネスチャンスといえます。このDX時代に取り残されないために、士業が行うべきこととは?自社でシステム開発に取り組む朝倉歩氏(サン共同税理士法人)磨和寛氏(司法書士法人トリニティグループ)柴垣和也氏(社会保険労務士法人クラシコ)角田望氏(株式会社LegalForce)の士業4名が、その極意を語り尽くします!ファシリテーター/髙見史弥氏(株式会社アックスコンサルティング) システム開発を進めるポイントは、負けを認めること――本日ご参加の先生方は、士業でありながら、積極的にシステム開発にも取り組まれています。まずは、DXやシステム開発に取り組み始めたきっかけ、開発の苦労などを聞かせてください。朝倉税理士業界のことからお話すると、中小の事務所は危機意識を持ってはいるものの、ブランド力や資本力で大手には勝てないという現実があります。そこを打破するカギが、DXだと考えています。業界全体で見れば、私が独立した6年前に比べてDXが進んでいて、コロナ禍でその動きは加速しています。ただ、そもそも平均年齢が高い業界なので、まだ広く浸透していないと感じています。――朝倉先生は他事務所にDXの支援もされているそうですね。朝倉はい、当社では勤怠管理や帳票作成、決算業務などに自社開発のシステムを使用しているので、DX関連でご相談を受けることも多くあります。とはいえ、最初から他事務所の支援を考えていたわけを認めることけではなく、自分たちに必要なものを開発して、使い勝手が良ければノウハウを共有していくという流れです。朝倉歩氏/サン共同税理士法人代表柴垣既存のシステムでは手の届かない領域をカバーするために、自分たちで開発したという感じですよね。私たちも同じで、給与計算や手続き業務、ビジネスチャットなどはSaaS(※)を導入して効率化できましたが、労務相談業務の効率化が課題でした。これを解決するために、情報共有や規程作成ができるシステム『HRbasePRO』を、COOとして参画している会社で開発しました。朝倉先生はシステム開発にどのくらいの期間がかかりましたか?※SaaS:SoftwareasaService。クラウドにあるソフトウェアを、インターネットを経由して利用できるサービス朝倉4年くらい前からコツコツと進めてきました。開発に関しては、磨先生のお話も聞きたいです。磨先生は2020年に新会社を設立して、もうサービスをリリースされています。そのスピード感の秘訣を知りたいです。磨それは完全にCTO(最高技術責任者)を中心としたエンジニアの力です。私の仕事は能力の高い人を集めてくることで、開発に関しては最初からほとんど任せています。〝自分の負けを認めること〞が大事だと思っていますので。
  • 【特別座談会】ビジネスチャンスを広げるブランディングのためのメディア戦略 Part2

    誰もが情報を発信できる今、士業業界でも発信力や影響力を高めるためにメディアを使ったブランディングが主流になりつつあります。本の出版やテレビ出演、SNSの活用などでブランド化に成功しているFSG税理士事務所の藤田耕司氏、社会保険労務士法人ビルドゥミー・コンサルティングの望月建吾氏、行政書士法人GOALの石下貴大氏、株式会社西原不動産鑑定の西原崇氏の4名が、これまでの活動を踏まえながら、メディアとのつき合い方や効果的な活用方法のあるメディアなどについて語り合います。〔司会〕株式会社アックスコンサルティングコンサルタントPart1はこちら 発信を止めないためのネタの制限と習慣化――SNSはどのように活用されていますか?望月一通りのアカウントはありますが、あまり使っていません。昔は積極的に意見を発信していたのですが、その内容が結果的に〝成功者による、ぐうの音も出ない正論〞になってしまって。お客様にも「先生は向いてない」と言われてから、あまり投稿していません。それからはメディア出演の告知がほとんどです。西原私も同じですね。何かネタがあるときは投稿しますが。石下私は割と活用しているほうかもしれません。SNSはそれぞれの特性に合わせた運用の仕方があり、Facebookはグループをつくったり、人とつながったりするような既存の知り合いとの関係を深くしていくものです。一方で、Twitterは新たな人間関係をつくる場ですね。2〜3年前からビジネスユーザーが増えていて、「ビジネスマンの社交場」になっていると感じています。藤田私も石下先生にすすめられて一昨年の12月からTwitterをはじめましたが、ほかのSNSよりも新しい出会いの機会があると感じています。講演後はフォロワーも10〜20人くらい増えますし、それだけ接点も多くなります。 石下例えば、当社は他士業の先生からお客様を紹介いただくことが多くて、少し前から士業の先生との関係づくりに力を入れているのですが、ツイートを見て気が合いそうな先生には、何回かコメントしたうえで、「一度ごあいさつさせてください」とメッセージを送っています。SNSは自分の考えを発信しているので、ミスマッチが起きづらいのです。
  • 【特別座談会】ビジネスチャンスを広げるブランディングのためのメディア戦略 Part1

    誰もが情報を発信できる今、士業業界でも発信力や影響力を高めるためにメディアを使ったブランディングが主流になりつつあります。本の出版やテレビ出演、SNSの活用などでブランド化に成功しているFSG税理士事務所の藤田耕司氏、社会保険労務士法人ビルドゥミー・コンサルティングの望月建吾氏、行政書士法人GOALの石下貴大氏、株式会社西原不動産鑑定の西原崇氏の4名が、これまでの活動を踏まえながら、メディアとのつき合い方や効果的な活用方法のあるメディアなどについて語り合います。〔司会〕株式会社アックスコンサルティングコンサルタント 一度オファーを受けると依頼が連鎖していく――はじめに、メディア露出のきっかけを教えてください。藤田私は日経新聞の記事ですね。事業継承について話した講演会に日経新聞の記者さんが参加されていて、取材をさせてほしいと。その記事を読んだ中央経済社の方から、本を書いてほしいという依頼を受けました。石下私は本の出版が最初でした。当時、法改正で社団法人や財団法人がつくりやすくなっていて、関連書籍がたくさん出ていました。ただ、実際に起業を考えているお客様の声を聞くと、社団法人かNPO法人にするかで迷っている方が多かった。その比較をしている本は誰も出しておらず、知り合いの社会保険労務士の先生から「出版社が書ける人を探している」とご紹介いただいて執筆することになりました。ニッチなテーマではありましたが、私の本のなかでは一番売れていて、先日13刷が決まりました。藤田13刷はすごいですね。石下その本を持って事務所に来られるお客様もいて、仕事につながることも少なくありません。実務本は強いと実感しています。――望月先生もさまざまな本を出版されていますよね。望月私は2013年5月に初めて本を出したのですが、最初は自分で企画書を書いて出版社に持ち込みました。もともと本の出版にはあまり興味がありませんでした。ただ、ここまで仕事に邁進して経験は積んでいたので、お客様から「書けるんじゃないの?」という声もよくいただいていたのです。それに、仕事につながらなかったとしても、お客様の信頼感を得ることになるのではと。2012年春頃から出版に向けて動き始めて、企画書を持ち込んだ30社中5社から良い反応をもらい、そのなかの1社から出しました。最初に書いた本は『残業ゼロの労務管理』。これが全然売れなくて(笑)。ただ、3年後に同じテーマの本をブラッシュアップして出したら、3刷となり、今も絶賛発売中です。▲望月建吾氏/社会保険労務士法人ビルドゥミー・コンサルティング代表――時代が早かったのですね。望月良いことを書いても読者側に受け入れる土壌ができていないと売れないのかもしれません。あとは、わかりやすい・読みやすい、という視点も大切だと思います。西原私もこれまで共著で相続関連の本を3冊出していますが、一番売れたのは、漫画家さんとコラボした本でした。
  • 【所長たちのホンネ座談会 Part2】経営者がやるべきことは仕組みづくりと人材創出

    職員の先頭を走り、自ら道を切り拓いていく所長たち。「経営者としてのモチベーションは何か?」「モチベーションが下がったらどうする?」「所長の仕事とは?」など、普段は聞けないホンネに迫る座談会を開催。税理士法人SS総合会計の鈴木宏典氏、社会保険労務士法人リライエの石田隆利氏、税理士法人阿比留会計事務所の阿比留一裕氏、スクエアワン株式会社の石川和司氏の4名が語り合います。〔司会〕株式会社アックスコンサルティング コンサルタントPart1はこちら 所長のモチベーション自分の運命に責任を持つ独立した存在が楽しい司会 時には、「今日は仕事をしたくないなぁ」と感じたり、気持ちの浮き沈みもあると思います。 どのようにケアしていますか?石川 〝自分の運命をコントロールできる状態〞にあることが、すごく重要だと思っています。経営者は、「嫌なら断ればいい」「信条に合わないから断る」というのが、自分の責任でできる。私の場合、そういった独立した存在であることが、自分を解放してくれて、楽にいられるので、仕事へのモチベーションが上がる要素になっている気がします。鈴木 多くの人は、自分に降りかかった困難を外部のせいにしてしまうと思うんです。石川先生はすごくハードルの高いことを実践されていて、素晴らしいですね。石田 私自身は、モチベーションが下がろうが、「仕事だからやる」 という感じですが、職員が成長したり、変わった瞬間を見ると、やる気は出ます。阿比留先生のモチベーションも聞いてみたいです。阿比留 私は子どもの頃から、やる気のなさに定評がある人間でして......。〝モチベーションややる気に依存しない仕組みをつくる〞 という路線で生きています。例えば集客も、自分が頑張らなくても提携先から自動的に紹介がくる仕組みになっています。スタッフの仕事も仕組み化しているので、こと細かに指示は出しません。むしろ、「所長の工程、早く終わらせてください」と職員から圧がかかるくらいです。案件も業務も、来てしまったらやるしかないので、 やります(笑)。モチベーションによって成果がぶれるという状態が嫌なので、機能的な仕組みを構築するプロセスが好きなんです。なので、モチベーションを上げるとか維持するという発想がそもそもないですね。司会 モチベートが必要な人、仕組みがあれば自然にできる人、両方のタイプがいますよね。鈴木先生は、どのように情熱を持ち続けているのですか?鈴木 私は、仕事そのものが好きなんです。お客様と話したり、経営塾の塾生に響いている感じだったり、自分が役に立って、みんなの関係性が変わる仕事そのものがモチベーションになっています。もちろん眠い朝もありますが、 やっているうちに楽しくなっちゃうんですよね。お客様への価値提供そのものを、魅力に感じているのだと思います。石川 経営者は、仕事とプライベートの境目があまりない人が多いように思います。仕事のことを考えないようにする方が、かえってストレスなのかもしれません。 組織と人材の育て方顧客満足を軸に従業員満足を考える司会 経営者として、職員さんの成長や動機づけについてはどのように考えていますか?石田 以前、お客様から「あなたはもう来なくていい。スタッフさんが来てくれたら十分だから」と評価されたときには、これを繰り返せたら業界も地域も良くなっていくだろうという希望につながりました。司会 一方、阿比留先生は......阿比留 育てる気がないですから(笑)。それぞれの調子や個性による振れ幅をなくして、常に一定のクオリティを提供し続けられる仕組みにしています。なので、採用のときは、「何も教えないし、成長させる気もない」ということを伝えます。妙にやる気のある人ではなく、毎日決まった仕事をこなすことにモチベーションを感じられる人を採用したいので。石川 一貫した姿勢がすごいですね。私自身は「飲みながら話そうか」など、ある意味昭和的な感情マネジメントをしている傾向があるのですが、「果たしてそれが本当にお互いのためになっているのか」と、いま思いました。リー ダーって孤独な面があって、それを会社や事務所で埋め合わせしているような気がします。こちらがよかれと思ってやっていることが、実は自分の満足にしかなっていないこともありそうです。司会 鈴木先生は、パートさんを担当者レベルに成長させていく、ということをされていますね。鈴木 私は阿比留先生と逆ですよ。成長やお客様への価値提供こそが、エンゲージメントを高める要素だと思っています。CS(顧客満足) を軸にしたES(従業員満足)じゃないと意味がない。お客様に価値提供するための型があって、それを乗り越えて成長することが一番のモチベーションになるんです。自立型人材の育成には3つの要件があって、まずはしっかりした型をつくること。次に、目的・理念をはっきりさせること。最後に、できたら承認、できなかったらダメだったことをきちんとフィードバックする。お客様への価値提供が一番崇高で、それを実現する仕組みを会社としてつくる、モチベーションとシステムを両立することが重要です。司会 人としての関わりだけでは依存関係になってしまうので、仕組みやレベルアップの目安をつくるということですね。鈴木 人は結局、仕事ができるようになればモチベーションも上がるのだと思います。単に昇給や福利厚生を充実すればいいのではなく、自分の業務と組織の理念が結びついていることが大切だと考えています。 所長の役割ビジネスモデルの構築と最後の砦としての安心感司会 経営者は、プレーヤーとして困難な局面を乗り越えたり、ビジネスの仕組みをつくったり、仕事の幅が本当に広いですね。そのなかでも、所長として絶対に外せない仕事とは何でしょうか?阿比留 ビジネスモデルをつくることです。誰をターゲットに、どんな付加価値を提供し、どういう仕組みで実行するか。そして、お客様やスタッフとして、どんな人を受け入れて、排除するか。その部分は経営者にしかできません。所長が頑張って申告書を書くより、事務所に合わないお客様を1件解約してくれた方が、スタッフは喜ぶ気がします。石川 志を同じくする、優秀な人財を集めることでしょうか。高収益な体質をつくるためにも、人財は重要です。石田 私が従業員だったら、経営者には最後の砦であってほしい。心が折れそうなとき、「あの人がいれば大丈夫」という存在。そういう意味で、私も早く本当の経営者になりたいです。鈴木 やはりビジネスモデルの策定でしょう。そして、理念策定と浸透。私の場合はプレーヤーも兼務しているので、一つくらいは誰にも負けないものがあってもいいと思っています。石田先生がおっしゃっていたように、「さすが所長」と頼られる存在になりたいです。司会 最後に、ほかの先生に聞いておきたいことはありますか?鈴木 石田先生に、社労士としてのビジョンを聞いてみたいです。石田 地方は若者の減少が顕著です。コロナ禍で、さまざまな変化もありました。「全国の田舎の労働環境を変える先導者になる」というのが、最近の経営理念です。いまは、学びの場を提供する学校も開催しています。鈴木 うちも社労士をかかえていますが、それぞれ特徴が出るものですね。阿比留先生は、次の計画は何かありますか?阿比留 税理士を雇おうかな、と思っています。私の実務を引き継ぎたいのと、将来父が引退して税理士が減ると、法人でなくなりますから。あまり心踊る計画ではありませんが(笑)。司会 これからも定期的に、皆さんの動向を知りたいですね。今日は起業家としての力強い原動力を垣間見ることができました。ありがとうございました。※月刊プロパートナー2021年5月号より抜粋 
  • 【所長たちのホンネ座談会 Part1】独立、承継、職員の一斉退職…所長の苦労を語る

    職員の先頭を走り、自ら道を切り拓いていく所長たち。「経営者としてのモチベーションは何か?」「モチベーションが下がったらどうする?」「所長の仕事とは?」など、普段は聞けないホンネに迫る座談会を開催。税理士法人SS総合会計の鈴木宏典氏、社会保険労務士法人リライエの石田隆利氏、税理士法人阿比留会計事務所の阿比留一裕氏、スクエアワン株式会社の石川和司氏の4名が語り合います。〔司会〕株式会社アックスコンサルティング コンサルタント 独立・事業承継の思い継ぐか? 独立か?最初の決断のきっかけ司会 まず、いつ頃から独立しよう、所長になろうと考えていたかを聞かせてください。阿比留 私は、小学6年生のときに父が税理士事務所を開業したので、「継いだらラクができる」と思ったのがきっかけです。親の助言もあり、「大学4年で公認会計士試験に合格して、修行を5年してから帰ろう」と、その当時に決めました。と言っても結局、法人として申告は一緒にしていますが、実質的には別事務所です。石川 私の場合、学生時代から資格を取って事務所を開こうと考えていたので、就職活動もしていません。結果、試験に合格するのに6年かかってしまいましたが。石田 私は20歳のときに悪徳不動産会社から痛い目に遭い、法律に興味を持ったのがきっかけです。それで、この先10年で10個の国家資格を取って独立しようと決めて、一番独立しやすそうだった社会保険労務士として開業しました。顧問契約書のつくり方も知らない状態からのスタートだったのですが、当時は頼れる人がいなくて、二代目の経営者をうらやましいと思ったこともあります。司会 鈴木先生は二代目ですよね。鈴木 はい。親からは「自分の好きなことをしてほしい」と言われていましたが、大学が法学部で、大学院にも行き、やっぱり税理士になろうかな、と。あと、父の影響はあります。仕事熱心で、「あれだけ情熱をかけられる仕事ならいいな」と思いました。また、もともと講師業や教師に憧れていたので「税理士は経営の先生だよ」という母の言葉も大きかったですね。実際には領収書ばかりの世界でびっくりしましたけど(笑)。石川 なかには継ぐのが嫌な方もいらっしゃるのでしょうか?阿比留 継ぐのは難しいですよね。私の場合、父の事務所の職員は私が生まれたときから知っている方ばかりで、一緒に働くのはなかなか難しいなと思って。それもあり、物理的には分けています。鈴木 うちは親子でぶつかった経験があるので、継いだ人の気持ちはよくわかります。小さなことにこだわりすぎず、潔癖になりすぎないことが大事ですよね。 開業後の苦労まさかの全員退職…二代目ならではの悩みも司会 独立後は、大変な苦労もあったのではないでしょうか?石川 縁もゆかりもない所で開業したので、「大変だったね」とよく言われますが、自分とお客様のために100%の力を出せることがすごく楽しくて。日々良くなっていくだけなので、簡易書留を出す作業も楽しかったですね。守るべきものが増えた今のほうが、何かと恐怖があるかもしれません。例えば、開業して5年目の頃、ある不動産会社による売上げが全体の7割を占めるようになったんです。1社に依存しているのが怖くて、別の不動産会社や銀行と取引しようと動いたのですが、すでに先輩の先生方が固めていて。そこで、お付き合いの多かった税理士の先生とタイアップする『会計事務所サポートサービス』を始めました。私はすぐに調子に乗ってしまうタイプなのですが、不安や恐怖に直面することで、成長へとつながっているように思います。司会 石田先生も、ベースがないなかでの独立だと思いますが、特に苦労した時期はありますか?石田 仕事は順調に増えていたのですが、開業3年目のある日、4名いた職員全員が一斉に退職してしまったんです。退職届を突きつけられて、引き継ぎもなく、パソコンのデータも……。鈴木 すごいですね……。どうやって乗り切ったんですか?石田 すぐにハローワークからパートさんを紹介してもらい、今では記憶がないくらいに働きました。あまり社労士のいない地域で、私が辞めたらお客様が困ると考え、「やるしかない」という気持ちです。事業拡大のために広い事務所に移転を決めた矢先の出来事で、さみしい日々を過ごしました。司会 ほかの先生方は、つらいときにどのように思考を切り替えてこられたのでしょうか?阿比留 私は開業当初、事業再生やM&A業務だけをするつもりでした。でも、一人目のスタッフを雇った直後に民主党政権になり、金融円滑化法が出て事業再生の仕事がゼロになったんです。このときはきつかったですね。それで、「まじめにやらなきゃ」と税理士業務へ方針転換して、美容院と飲食店に特化しました。もともと、自分じゃなくても良い「その他大勢」になるのが嫌で、特徴のある存在でいたいという気持ちが強いため、思い切った方針転換ができたのかもしれません。鈴木 皆さんは開業という不退転の決意があったと思いますが、私は決意しきれない、自立しきれない二代目特有の悩みがありました。「まったく性格の違う父と一緒にやっていけるのか」「税理士として自分のスタイルをつくりたい」と悩み、父に反発していた頃が一番つらかったですね。恵まれているのに感謝できなくて、職員を不安にさせていました。司会 どのように気持ちを切り替えたんですか?鈴木 一般社団法人才能心理学協会の北端康良先生にプロファイリングをしてもらったことで変われました。自分の思いを理解して、父にきちんと話せるようになったことで、引き継ぎもしてもらえるようになりました。結局のところ、二代目で一番重要なのは〝二代目であることを受け入れて、親の土俵で踊れるか〞だと思います。某家具会社のように親を公の場で公開処刑するなんてもってのほか。やっぱり、親に認められないと、高く飛ぶことはできないんですよ。今では後継者向けの経営塾をやっていますが、そこでもこの話をしています。Part2へ続く※月刊プロパートナー2021年5月号より抜粋