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  • 【特別座談会】目指すべきは仕組み重視か理念重視か!? 士業事務所の組織づくり

    税理士試験受験者数や業界への流入人口の減少が課題となっている会計業界。事務所の成長や生産性向上のためには、人材確保や組織づくりが大きなカギを握っています。では、組織づくりや職員の定着・育成において、重要なこととは?仕組み重視派と理念重視派、それぞれを代表する事務所所長の座談会で、組織づくりのポイントや所長の役割を考えます。【仕組み派代表】税理士法人阿比留会計事務所阿比留一裕氏/エクセライク会計事務所伊藤温志氏【理念派代表】清家巧貴税理士事務所清家巧貴氏/税理士法人SS総合会計鈴木宏典氏 組織づくりは目的から落とし込む──本日は、ビジネスモデルや仕組みを重視した組織、経営理念やビジョンを重視した組織、それぞれを代表する事務所の対照的な部分、共通する部分などを探りながら、組織づくりを考えていければと思います。まずは、組織をつくるにあたり、何から決めたのかを教えてください。伊藤組織づくりは「目的志向」で考えることが大事です。「こういういう組織をつくりたい」ではなく、「こういう目的があるから、こういう組織が必要だ」という順番です。うちの目的は、「高品質で低価格の税務顧問サービスを提供すること」。そのためには、絶対に無駄が許されない。そうすると、スタッフに求めるものはパワーとスキル。つまり、体力と処理能力です。コミュニケーション能力はいりません。目的自体は開業当初から変わりませんが、2年ほど前までは属人的で効率が悪く、問題のあるスタッフもいたので苦しみました。今は、ITツールで効率化し、在宅勤務もうまくいっているので、職員が安心感を持って働いている実感があります。阿比留私も伊藤先生と同じで、個人事業主の美容室・飲食店に特化した、できる限りシステム化したビジネスモデルを決めてから、必要な人を考えました。ビジネスモデルを固めるまでの話をすると、私は開業前、監査法人と地方銀行に勤めたのですが、この経験がとても活きています。監査法人は、ものすごく頭のいい人の集まりで、組織というより個人のパワーで回している。一方で銀行は、仕組みがしっかりしているから、異動や転勤が定期的にあっても、きちんと仕事が回る。でも、地方では選りすぐりの人が採用されているとはいえ、監査法人と比べると普通のサラリーマンなんです。となると、自分が独立したあと、街の小さな会計事務所で採用できるのは、すごく普通の人だろうと思いました。そこで、善良な普通の人ができるビジネスモデルを考えたのです。鈴木その言い回しは、いかにも阿比留先生らしいですね(笑)。私の場合は2代目なので、先代の思いを大事にしようと考えました。先代は、事業計画で会社を良くすることに取り組んできて、それが地域ですごく認められていた。だから、そこに対する使命感はありましたね。あとは、「成長組織」にしたい。正社員も準社員もパートも、お客様に価値を提供することに熱量を持って取り組んでもらうためにはどうするか、ということを考えています。ITを使った効率化やサービスのパッケージ化もしつつ、全体で成長していこうという組織を目指しています。清家私は、まずは「地元の大分県佐伯市をなんとかしたい」という思いだけでした。佐伯市を良くするために何が必要かを考えて、キャッシュフローコーチや理念策定支援など、外で学んだことをサービスにしています。ただ、佐伯市は人口が7万人弱で、大学もなく、人が採れない。職員を事務所のなかで成長させるしかないので、時間はかかります。これは地方の限界なのかもしれませんね。 
  • 士業温故知新/伝統×革新で新時代に羽ばたく! 集合天才で挑む事務所改革とは

     1976年、京都府京都市で開業したM&N辰巳税理士法人。2021年には、3代目の辰巳正樹氏が代表に就任。弟の辰巳悠樹氏とともに、伝統と革新を融合した経営戦略で急拡大しています。3世代で変わらないこと、変えてきたこととは?正樹氏と悠樹氏に聞きます。 撮影/株式会社アド・リビング  “集合天才”を礎に、規模拡大に踏み切る――M&N辰巳税理士法人は、創業45年の老舗事務所でありながら、ここ5年ほどで規模が急拡大したと聞きました。転機になったことは何でしょうか?辰巳正樹氏(以下、正樹)2014年に悠樹が参画してくれたことが大きいですね。それまでは、2代目である私たちの父と、ナンバーツーである事務長が二人三脚で経営し、私は事務所を継ぐ予定で勤務していました。しかし、事務長が病で突然亡くなってしまい、大きな柱がぽっかり空いてしまったのです。当時、悠樹は大手企業で営業職に就いていたのですが、事務所の危機だということで、転職してきてくれました。辰巳悠樹氏(以下、悠樹)税務会計のことは何もわからなかったので、最初の3年は月次の記帳から確定申告まで、ひと通りの実務を勉強しました。まずは業務を理解することで、会計事務所にとって何が一番大事なのか、どんなお客様を獲得することが重要なのかを知ることができると思ったので。また、私の強みである営業力をより活かせるように、MBA(経営学修士)を取得しました。正樹 アメリカのローファームなどでは、弁護士さんがいて、経営実務はMBAホルダーのCOO(最高執行責任者)が行うというところが多いのですが、これを当てはめてみようという流れでした。このMBAが、彼にすごくハマったんです。もともとの行動力とアイデアに理論が加わり、事務所に足りていなかった部分をすべて補ってくれました。――別の業界から入った悠樹さんから見て、事務所の良い点、改善すべき点というのは、どのようなところだったのでしょうか?悠樹 私が入社した当時は、職員は8名ほど。資料の郵送から税務まで、一人ひとりがすべてを行っていました。それまでは大企業にいたこともあり、「みんなが当たり前にすべてのことができる」というのは強みだと感じました。ただ、それぞれが自分の担当を持っていて、担当外の顧問先のことはあまり知らないというのは、組織としては弱いと感じました。お客様から見れば、「一人の職員しか頼れない」ということになってしまうからです。そこで、正社員もパートも業務委託の職員もワンチームになり、「組織として強くなる」「みんなでクライアントを守っていこう」という考え方にシフトしました。そうすれば、仮に誰かが休んだとしても、お客様には迷惑をかけません。そうした組織をつくるためには、ある程度規模を拡大していくことが必要で、ひいてはそれがお客様を増やすことにもつながると思いました。徹底的なお客様目線を貫くことが、事務所の規模、業績拡大につながっていったのです。――拡大戦略に舵を切ることに、お父様や職員さんの反対はなかったのでしょうか?正樹 ありませんでした。これは、父がずっと言ってきたことなのですが、「うちは“集合天才”でやっていくんだ」と。集合天才というのは、つまり集合知です。少人数だけれど、みんなの知恵を集めて、みんなで考えて、みんなで対処していく。このスタイルが、うちの伝統です。悠樹の目指す形も、規模が違うだけで根本は同じ。ただ、外から見れば「まだ足りない部分があるから、改革をしましょう」ということなんです。また、悠樹は、しっかり計画書をつくり、数字をすべて出したうえで提案します。それが、すべてお客様目線なので納得できるのです。職員から反対がなかったのは、父に対しての信頼が根底にあったからではないでしょうか。知性があり、職員への思いもあり、非常に人望があったので、「父の判断なら間違いない」と、職員も私や悠樹のことを受け入れてくれたのだと思います。写真左から、辰巳悠樹氏、辰巳修偉氏、辰巳正樹氏 蓄積された知見を活かし、若い経営者をサポートする――現在は、正樹さんが代表社員、悠樹さんがCOO、お父様の修偉(のぶひで)さんがパートナー税理士として経営に関わっています。それぞれどのような役割を担っているのか教えてください。正樹 私が代表社員に就任したのは、法人化した2021年の2月。まだまだ経験値は足りないので、物事の真髄を知る父が相談役です。また、長くお付き合いしているお客様も多いため、当社のように事業承継した企業の会長さんたちにとっても、父は良き相談役です。一方で私は、近年の取り組みで増えた新しいお客様、若手の経営者の相談役を担っています。そして、組織のマネジメント、利益の最大化という経営の一番重要なポストを担うのが、悠樹です。私が「こんなことをしてみたい」と出したアイデアも、彼が具現化してくれます。――事務所を拡大すると決めて、強化したサービスなどがあれば教えてください。悠樹 まずは、個人事業主のお客様を増やそうと決めました。AIによって税理士の仕事はなくなると言われていますが、テクノロジーが発達すれば、必ず“アナログ難民”も増える。だから、AIが浸透する前に、あえて記帳代行を取りにいこうと考えました。そのために取り組んだのは、「私を紹介してくれる人を全国につくる」ことです。例えば、POSレジの会社の営業マンに、確定申告とはどういうものか、POSレジにすると、個人事業主は青色申告に必要な帳簿作成がどのくらい楽になるのか、といったことを教える勉強会を開きました。すると彼らは、POSレジを売るだけではなく、その先のメリットをワンセットでお客様に提案できます。そして、その情報を教えてくれた会計事務所を紹介してくれるのです。また、そのタイミングでMFクラウド会計を導入。MFクラウド会計はインターネットバンキングやクレジットカードと連携できるので、お客様も私たちも効率化できます。その際、「個人的な支出と事業の支出は必ず分ける」といったアドバイスもします。個人事業主の方は混在させてしまう方がとても多いので、「個人事業でも経営者である」というマインドセットもしていきます。こうした面談は、全国どこであっても、必ず直接会って行います。今はオンライン面談も普及していますが、長く付き合っていただくためには、まず私の人柄をよく知ってもらい、信頼関係を築くことが重要だと考えています。実際、2016年からスタートして、2年で100件、3年目からは毎年70件ほどのペースでお客様が増えていますが、解約率は1%未満です。正樹 さらに、個人事業主のお客様のうち、7〜8%ほどは事業を拡大して法人成りするお客様がいます。そこからは私にバトンタッチして、顧問税理士としてサポートします。個人事業主のお客様を増やし、成長をサポートすることが、法人顧問の見込み客育成にもつながっているのです。――なるほど。長期的な目線でサポートできる体制ができているのですね。お客様は順調に増えていると伺いましたが、「お客様から選ばれる理由」はどんなところにあると考えていますか?正樹 当社には長い歴史があり、お客様もさまざまな困難を乗り越えてきた方ばかり。多くのお客様を見てきたことで蓄積された、経験値や知見という財産を持っていることが強みです。今まで、日本の経済には4回、大きな荒波がありました。バブル、ITバブル、リーマンショック、そして、今回のコロナ禍。この荒波や困難を乗り越えてきた経営者たちの知見を私たちなりに解釈し、それを若い経営者に伝えることができます。若い経営者や企業に圧倒的に足りないのは、「困難な局面でどう対応するか」という経験値です。私たち兄弟には、まだ経験値は足りませんが、これまで事務所に蓄積された経験値があったからこそ、今回のコロナ禍でも、「何をしておかないといけないのか」を伝えることができました。それにプラスして、今はMBAホルダーのCOOがいますから、説得力のあるコンサルティングができる。そういう面でも、伝統と革新の相乗効果があると考えています。悠樹 私の考える他社との差別化は、傾聴力です。私たちは、お客様の悩みや問題を解決する存在です。たとえば、「これは会社にとって必要な経費です」と話すお客様に、いち税理士が「税務署に怒られるからダメです」というのはおかしな話だと思います。決して、ゆるい処理をするということではありません。お客様の話に耳を傾け、真意を測り、「それならこういう形にしましょう」と提案する。それが私たちの役割だと考えています。 分業制を成功させるためには、調整役の配置がカギ――そのほか、事務所内で改革していったことはありますか?悠樹 一番は、連絡のスピードアップです。お客様を一人にしないということですね。「お客様から電話があったが、商談中で出られない。そうこうしているうちに、お客様自身、何を聞きたかったか忘れてしまった」ということもあります。だから、お客様をお待たせしない。そのために社内でチャットワークなど色々なツールを入れて、担当者が対応できないときは、ほかのスタッフが返信できる体制にしました。これは、社内の連絡も同様です。こういった改革を進めるために重要視したのが、「仕事の見える化」です。一人一人の担当者が、どの顧問先にどのくらいの時間をあてていて、経営者からどういう話を聞いてきて、どういう提案をしたのかを、すべて可視化させました。「訪問しているのに記録がない」などがあれば、すべてチェックし、職員にヒアリング。膿を出そうとすると、隠したくなるのが人間の心理ですが、責めるのではなく、「私たちは味方です」「一緒に良くしていきましょう」というスタンスで接しました。急にやり方が変わり、戸惑った職員もいると思いますが、それでも、「今までのやり方を変革していかなければ、私たちの未来はない」と思ってやってきました。ーーお客様の数が急増して、所内の受け入れ体制構築も大変だったのではないかと思いますが、そこはどう変えたのでしょうか?悠樹 分業制を取り入れました。いわゆる製販分離です。ただ、分業制の難点は、業務の全体像が見えないことによる責任感の欠如です。分業しているからこそ、「自分の仕事はここまでです」という感覚になってしまうんですね。責任感が欠如すると、クオリティは下がります。当然ですが、それは税理士事務所としてダメなことです。分業制にすれば、クオリティは必ず下がります。クオリティを考えれば、担当者が一貫して受け持つ方がいい。そこで当社では、分業制の効率と業務のクオリティ、どちらも担保するため、「調整役」を配置しました。記帳、決算書作成、検算、最終申告、それぞれの間をつなぎながら、業務量の配分はもちろん、クオリティのチェックも行います。分業で業務を縦に分けて効率化しつつ、調整役が横をつないで全体の底上げをしていく。全体を見る調整役を置くことで、品質を維持しながら業務量を増やすことができました。正樹 分業制と合わせて、MFクラウド会計の導入や、業務管理のための自社システムの開発に取り組んだことで、どこでも仕事ができる環境をつくることができました。ちょうどコロナ禍だったこともあり、求人で「在宅勤務可能」と打ち出したところ、応募も激増しました。分業していったことで未経験者の採用もできるようになり、採用は順調に進んでいます。 CXを軸に、伝統と革新を融合した組織改革を進める――サービス名も『記帳MEN』などインパクトがあります。事務所のある京都は、少し保守的なイメージもありますが、苦労はなかったのでしょうか?正樹 確かに、交通の便の悪さや、一見さんお断りの紹介文化が根付いていることなどから、保守的な面はあります。実際、私たちも京都府内のお客様は、ほとんどが紹介いただいた方です。ただ、現在は全国をマーケットにしているので、むしろ「京都にあること」は強みです。ほかの地域から見れば、「京都」というのは、一つのブランドですから。情報発信力のある街なので、営業面でのメリットは大きいと思います。また実は、京都には「美しい街で働きたい」と起業した若手の経営者も多くいるのです。ですから、「歴史のある事務所」と「新しいことに挑戦している事務所」というイメージの相乗効果が、大きな強みになっています。「保守的な土地と言われる京都にありながら、こんなにもオープンで新しいことをやっている事務所があるんだ」と思ってもらえる点は、採用でも応募が増えている要因の一つになったのではないかと思います。――さまざまな面で、伝統と革新がうまく融合していますね。最後に、これから挑戦したいことを教えてください。悠樹 CX(カスタマーエクスペリエンス/顧客体験)を軸にした変革を行うことです。今、会計業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、DXを取り入れる前に、CXが重要だと考えています。顧客がどのようなことを考えていて、その顧客に対してどのような価値を生んでいくのか――。もし600社お客様がいたら、600通りの価値を見出していかないといけないのです。また、お客様の数も増えたので、今後はM&Aも含めたお客様同士のマッチングにも取り組みたいと考えています。A社の強味が、B社の弱みを補う、その間に我々が立ちたいと思っています。それぞれの強みと弱みを補い合うことは、厳しい経済状況のなかで会社を救うことにもつながります。正樹 私は、社内で税理士が誕生するような環境をつくりたいと考えてます。幸いにも、現在採用はうまくいっていますが、次は、職員がうちの事務所を使ってどうステップアップしていけるのか、どんな人生を描けるのか?そういった視点からの仕組みづくりが重要だと思っています。ほかの事務所と連携する方法もありますが、自社でキャリアアップして、給料という投資に対してしっかりリターンを上げてくれる職員を育てたい。そのためには、業務量が増えても、各々がきちんと勉強の時間を確保できるように、残業をしなくても業務が終わる体制づくりも重要だと考えています。悠樹 税理士は、個人事業主や中小企業の一番の味方です。経営者が困っているときに、最初の相談窓口を担うのが税理士です。今後、士業や税理士の在り方というのは、「どれだけ人の話を聞いてあげられるか」になってくると思います。それができるキャパシティーを確保して、もっとお客様の声に耳を傾けて、伴走していかないといけない。今以上にお客様に寄り添っていくことが必要だと思います。
  • 【ベンチャーファーム】相続業務の効率化と高品質な対応で急成長

    年間300件以上の相続案件を受託している税理士法人ともに。2018年に創業して、わずか3年で40名規模に急成長している秘訣は、相続業務を効率化することで実現する高品質な対応にあった。 信頼の積み重ねが紹介につながっていく税理士法人ともには、2018年に創業しました。独立のきっかけは、私と一緒に代表社員税理士を務める星 暁洋からの言葉です。もともと私たちは、前職の相続専門・税理士法人レガシィの先輩・後輩でした。一緒に仕事をしているなかで、彼から「入江さんは絶対に成功するから、独立してください。私はついて行きます」と言われたのです。当時の私は2人目の娘が生まれたばかり。子育てをしながら共働きをしていました。しかも、仕事は評価してもらっていたので、給料も待遇も居心地もいい。辞める理由なんてありません。それでも、彼の熱心さが自分の人生を賭けた訴えにも感じたので、私も真剣に考えてみました。このままレガシィにいれば将来は安泰。一方で、自分が死ぬときに人生を振り返って後悔しないのは、独立の道だとも感じました。これは後から聞いたことですが、営業が得意な私と実務が得意な彼が組んでうまく機能すれば、ある程度の規模までは成長できると考えていたそうです。正直、私にはまったく戦略がなかったので、今思えば、よく独立に踏み切ったものだと思います(笑)。今でこそ40名規模にまで成長しましたが、特別なことは何ひとつしてきていません。あえて成長の要因をあげるとしたら、「目の前の仕事に真摯に向き合う」「嘘やごまかしを一切しない」「できないことをできるように錯覚させるようなことを言わないし、やらない」という誠実な姿勢を、私を含めた事務所メンバー全員が体現し続けていることです。とはいえ、これを言い切れることは意外と難しいことだと個人的には思っています。現在、受注案件の80%以上が相続で、新規案件は相談ベースで毎月50件ほど。受注ベースでは月20~35件で、年間300件以上になります。ただ、集客に関しても、新規の営業活動はほとんどしていません。他士業の先生や葬儀会社、お客様など、これまでつながりのある方からの紹介がほとんどです。一つひとつの仕事と実直に向き合ってきた結果が少しずつ信頼の積み重ねになり、受注につながっていると考えています。お客様の立場に立ってみるとわかりますが、やはり大切な相続の申告や手続きは信頼できる人に任せたいですから。 業務を効率化してお客様対応に集中する信頼の担保は、顧客対応をメインとする精鋭揃いの主担当です。高度な知識や経験を要する主担当を弊社で担うためには、責任者全員の承認を必須としています。そんな彼らが安心して本来の業務に集中できるよう、業務の大半をExcelのマクロで自動化しています。使い方はとても簡単で、アシスタント(AS)が被相続人、配偶者の有無、相続開始日などの情報をシートに打ち込むと、相続概要書や見積書が自動的に完成します。主担当は、案件ごとに調整を加えていくだけ。契約後の受注処理やお客様からお預かりした資料整理などもASが行います。その後も相続関係図や地図などの作成、そのほかの評価資料の作成・申告システムへの打ち込みなど、オペレーションの70%以上をASが担います。作業は細分化されているため、子どもの発熱などの急な休みでも、ほかのASがカバーできます。ASは、出社したらその日割り振られたタスクを確認して作業。このタスクは一覧表で共有されているので、抜け漏れを防ぎながら進捗管理もできます。主担当が事務作業に忙殺されることなく、本来の仕事に集中できることで、良質なサービスを提供できる。弊社以上のサービスクオリティが出せる事務所はなかなかないと自負しています。同時に、社員教育にも力を入れてきました。特に幹部には、私と同じように「経営者目線で考えること」を求めています。これまでかなり厳しいことも言いましたが、彼らがついてきてくれたのは、信頼関係があったことと、「間違ったことを言っていない」と理解してくれていたからだと思います。事務所メンバー全員に求めていることは、「元気に挨拶する」「電話にすぐ出る」など、誰でもできる“当たり前”のことをきちんとやること。お客様は、スキルよりもそういう部分を見ていますし、信頼関係を築くうえでも非常に大切です。そのため、採用は人格重視です。「素直」「胆力がある」「感謝の気持ちを持てる」「事務所の雰囲気に馴染む」のなかで2つ以上を満たしていること。考え方が偏らないように、多種多様な経験を積んだ「面白そうな人」を採用し、将来を見据えて新卒採用も積極的に行っています。 社長業は好きではないがやってよかった私は、開業時から「代表権を10年で返上し、いち税理士に戻る」と決めています。私以降の代表は「5年交代」が組織を盤石にする最善手だと考えていますが、それは後の人たちが状況に応じて判断すれば良いと思っています。その局面において間違った判断をしない後継者教育をすることが、私の代表としての最後の仕事だと考えています。私は社長業に「向いている」と思いますが、「嫌いじゃないけど好きでもない」のです。「好き」という感情が入らないからこそ、常にクレバーで客観的な経営判断ができていることが強みともいえますが、経営者は四六時中、組織のことを考えなくてはいけない。私はもっと、自分や家族のこと、自分のお客様のことだけを考えたいタイプなのですが(笑)それでも社長業をやって良かったと思えるのは、メンバーが幸せな気持ちで仕事をしている光景を、近い位置から見られること。もう一つは、優秀な彼らがこれからどうなっていくのか、事務所をどう舵取りしていくのか。創業者としてワクワクしながら見られることです。将来の目標は、そんな組織を少しでも長い間、元気な姿で見続けられるよう長生きすること。そのために毎日健康に気を付けて規則正しい生活をしています(笑)。税理士法人ともに成長の3原則 誠実で真摯な仕事ぶりが結果的に多くの紹介を呼び込む 作業細分化で主担当の負担軽減 良質なサービス提供につながる 即戦力に依存しない採用体制で組織の基礎体力が向上
  • 注目の税理士・島根猛氏が行く!高品質な相続サービスを安定して提供する極意とは?

    拡大する相続市場で士業事務所に求められるものは何なのか?いま注目の税理士・島根猛氏が相続のトップランナーたちと語り合う特別対談企画です。資産税特化で拡大し、 現在では100名以上の職員を有する税理士法人深代会計事務所の深代勝美氏、花島宣勝氏と、高次元でクオリティを維持するための社内教育について話します。 法人・資産税部門を超えた協力体制がカギ花島宣勝氏、以下:花島2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、4月から2カ月弱はお客様の所へ訪問することができませんでした。深代勝美氏、以下:深代ラインツールも導入しましたが、 それでも限界があります。ただ、 緊急事態宣言の解除後は、少しずつ訪問を再開できるようになってきました。もちろん、感染対策を講じつつですが。島根 猛氏、以下:島根私のところも同じです。やはり直接お会いしないと話せないことも多いですしね。花島 相続では遺産分割協議などもあるので、皆様に集まっていただかざるを得ないですから。深代 相続に関しては、コロナ前からですが、新規の金融機関や不動産業者との取引が増えてきていますね。要するに相続というものを皆さんが真剣に考えるようになってきた。 専門的な知識を持っている会計事務所との仕事を希望されている潮流のようなものは感じています。花島 昔は個人のお客様が中心でしたが、最近では法人のお客様からの相談も増えていますね。島根 わかります。私のところも金融機関や不動産の仲介会社、ハウスメーカーとの取引が中心です。不動産の仲介会社であれば、支店に電話をして、営業担当者と一緒にお客様のところへと足を運んでご挨拶をさせていただくというところから始まります。深代 弊社は基本的に受け身のスタイルでやっていまして、営業部門もないんです。「仕事は取りに行かない」というのが事務所の方針でして、お客様からご紹介いただいて、間接的に広がっていくことが多いですね。花島 受け身なので実際にお客様と話してみないとどんな仕事になるかは分かりません。法人化や遺言書づくり、確定申告まで、会計事務所ができることは何でもやるというスタンスです。弊社は資産税部門と法人部門に分かれているのですが、例えば法人部門の担当者が顧客の不動産管理会社に話を聞きに行ったら、実は相続の相談だったということもある。そうなると、資産税部門の出番になるわけです。島根 なるほど、仕事を受けてから各部門に割り振るのですね。花島 さらに今は法人部門が5部まであるので、仕事をもらってきたときに全体の仕事量を見て割り振り、偏りが出ないようにしています。深代 完全には分かれていないというか、資産税部門でも法人の確定申告を手伝ってもらったり、逆に法人部門の担当者が付き合いのあるお客様の相続を担当したりもします。お客様も馴染みの担当者が対応してくれる方が助かるはずですから。 チェック表と記録簿でクオリティを担保島根 深代先生のところは、売上高の数字目標を設定しないとお聞きしました。深代 そうですね、こなしてほしい件数などは指標として伝えていますが、売上高については設定していません。花島 おかげさまで業績も悪くないので、掲げる必要はないと思っています。全体的に業務は多いのですが、部門をまたいで流動的に仕事を割り振れば対応できる。同時に、仕事自体の質は300項目ほどあるチェックリストを使って担保するようにしています。深代 相続業務も細かい要点も記載した独自のチェックリストを活用することで高い品質を維持でき、 お客様に安心感を持ってもらえていると思います。花島 社内にチェックリスト委員会がありまして、年に1回更新を行うんです。過去のミスや税務調査で指摘されたことなどを盛り込んで、バージョンアップさせています。島根 規模が大きくなると、高次元でクオリティを維持するための標準化の体制は重要になりますよね。私のところは今、正社員と派遣社員を入れて3人で回しているので、まだチェックリストは必要ありません。相続の場合だとヒアリングのときにすべて書き出しますし、これまでに500件以上の相続問題を担当してきたので、レベルの低い仕事はしていないと思っているのですが。深代 なるほど、島根先生の経験が質の担保になっているわけですね。確かに相続案件は経験がものを言う場合もありますから。経験を積むことはとても大切です。島根 あと、細かい業務は社員がやりますが、最終的にはすべて私がチェックしているのも、質の担保につながっていると思います。花島 そうなんですね。弊社でも担当者のほかに、上司と審査部がチェックしています。もちろん、実務的な動きに関しては、ある程度、担当者に一任しています。島根 担当者がヒアリングからお客様に関わるということですよね。 とても素晴らしいですね。それを上司がフォローするイメージでしょうか?花島 そうですね。例えば、お客様にマストで聞くことなどもチェックリストの項目に入っていて、それを上司が毎回、確認していきます。また、お客様との打ち合わせ後は、どんな話をしたのかを複写の記録簿に付けてもらって、1枚は上司に、もう1枚はお客様に渡します。お客様にとってはそれが議事録代わりになりますし、上司にとっては報告書になる。それを確認することで、次回にプラスαで聞くことなどを指示できるというわけです。深代 お客様にも「今回はこういうご説明をしました」ということが記録に残るので、やりとりも遡ることができて好評なんです。島根 お客様と事務所の双方で記録簿を保管することで、過去のやりとりの記録を遡ることができますね。細やかなチェックリストと 記録簿があれば、経験が浅くても安心して業務を遂行できる体制になっているんですね。 知識が身につく研修で未経験でも実務に対応深代 弊社は新卒も採用しますし、もともと会計事務所にいたけれど、資産税を手掛けたことがないという人にも来てもらっています。花島 まず、入社1年目に行う研修では、簡単な仕訳や消費税、不動産収入の明細の見方など、すべてを教えるんです。それも長いスパンではなく、2〜3週間で学び、あとは実務で経験を積んでもらう。1〜2年経つと、仕訳が完璧に理解出来るようになるので、そこからは資産税研修を別で行います。新卒でだいたい3年目から、資産税が未経験の中途社員は、入ったときから受けてもらいます。深代 この研修に関しては、外部講師ではなく、近くの先輩が教えるようにしています。 教わる立場の人に近い人が指導するのがいちばんだと思うんですよ。 島根 確かに年次の近い先輩が、自分自身がつまずいた要点を踏まえたうえで指導するのはとても効果的ですよね。研修は教育テキストがあるのでしょうか?花島 あります。相続税の基礎知識、土地の評価、非上場株式、法人シミュレーション、遺言書の5つが基礎として、これを実務と行して学んでもらいます。同時に月に数回ですが会議の前に勉強会なども行っていて、法改正があったときなどは、私や深代が講師になって教えたりもしますね。深代 全部を外部に任せることもできますが、やはり内部で行うことで意思統一もできるし、全体の能力も把握できる。個人のレベルアップにもつながっていくことなので、そこは力を入れていますね。島根 社員のレベルは顧客の満足度に直結しますからね。結局、どれだけお客様のニーズに応えられるのかが重要なのだと思います。私も経験しましたが、こちらの仕事に満足していただければ、何年も前に担当したお客様から連絡が来ることもありますから。深代 おっしゃる通りです。これからの会計事務所に求められているのは、小さな相談でも対応できる柔軟性だと思っています。「ここに相談すれば安心だ」と思ってもらえることが、生き残るうえで大切なのではないでしょうか。島根 そうですね。相続は次の世代へのバトンのようなもの。お客様の記憶に残る仕事ですから、満足していただけるよう柔軟な姿勢が大切です。花島先生、深代先生、 ありがとうございました。ー 対談を終えて ー100名を超える職員全員の知識の底上げや、業務の標準化が確実に行われていることに大変驚きました。また、職員の方の事務所や業務に対する満足度が高いことが、結果として、お客様へ質の高いサービスを提供することに繋がるということを、今回お話をお聞きして改めて実感しました。社員研修や社内体制など、私がこれから組織をつくっていく上で、参考になる事がとても多く、組織運営方法について大変勉強させていただきました。(島根氏) 【島根氏の相続業務ノウハウをマニュアル化!】「相続業務を効率化したい」「相続業務に対応できる職員を育てたい」「相続チームの教育体制を整えたい」という事務所は必見!島根氏が培ってきた相続申告業務のノウハウがギュッと詰まっています。詳細はこちら!
  • 【プロパートナー読者限定】4月特大号付録動画「士業業界ランキングTOP500」

    月刊プロパートナー2020年4月特大号をご購読いただいている方限定で、特別付録動画をこちらのページで閲覧できます。※閲覧には雑誌(P.66)に記載されているパスワードが必要です※動画右下のアイコンを押すと動画が全画面表示になります。全画面表示にしてご覧ください月刊プロパートナー4月特大号では、3度目となる大型企画「士業業界ランキング500」を特集しています。この企画は、全国の会計事務所31,208事務所の中から、従業員数ランキングTOP500にランクインする事務所を公開。会計業界を牽引するこのTOP500事務所に独自アンケートを実施し、そこから見えてきたTOP500の成功への取り組みを「売上・生産性」「営業・マーケティング」「組織づくり」の3カテゴリーに分けて分析しています。さらに、この特別付録動画では、誌面に掲載した分析結果から見えたTOP500の成功法則について、株式会社アックスコンサルティングのコンサルタント・野口陽司氏が解説しています。ぜひ、誌面と合わせてご覧ください。 【第1部】(約8分)『売上・生産性編』【第2部】(約16分)『営業・マーケティング編』【第3部】(約18分)『組織づくり編』 ダウンロード用のレジュメはこちら(※閲覧には雑誌(P.66)に記載されているパスワードが必要です)今回ご紹介した『月刊プロパートナー』の試し読みは以下から可能です。また、今月号に限り単号での販売もしておりますので、ぜひこの機会にお申し込みください!