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  • 士業温故知新/伝統×革新で新時代に羽ばたく! 集合天才で挑む事務所改革とは

     1976年、京都府京都市で開業したM&N辰巳税理士法人。2021年には、3代目の辰巳正樹氏が代表に就任。弟の辰巳悠樹氏とともに、伝統と革新を融合した経営戦略で急拡大しています。3世代で変わらないこと、変えてきたこととは?正樹氏と悠樹氏に聞きます。 撮影/株式会社アド・リビング  “集合天才”を礎に、規模拡大に踏み切る――M&N辰巳税理士法人は、創業45年の老舗事務所でありながら、ここ5年ほどで規模が急拡大したと聞きました。転機になったことは何でしょうか?辰巳正樹氏(以下、正樹)2014年に悠樹が参画してくれたことが大きいですね。それまでは、2代目である私たちの父と、ナンバーツーである事務長が二人三脚で経営し、私は事務所を継ぐ予定で勤務していました。しかし、事務長が病で突然亡くなってしまい、大きな柱がぽっかり空いてしまったのです。当時、悠樹は大手企業で営業職に就いていたのですが、事務所の危機だということで、転職してきてくれました。辰巳悠樹氏(以下、悠樹)税務会計のことは何もわからなかったので、最初の3年は月次の記帳から確定申告まで、ひと通りの実務を勉強しました。まずは業務を理解することで、会計事務所にとって何が一番大事なのか、どんなお客様を獲得することが重要なのかを知ることができると思ったので。また、私の強みである営業力をより活かせるように、MBA(経営学修士)を取得しました。正樹 アメリカのローファームなどでは、弁護士さんがいて、経営実務はMBAホルダーのCOO(最高執行責任者)が行うというところが多いのですが、これを当てはめてみようという流れでした。このMBAが、彼にすごくハマったんです。もともとの行動力とアイデアに理論が加わり、事務所に足りていなかった部分をすべて補ってくれました。――別の業界から入った悠樹さんから見て、事務所の良い点、改善すべき点というのは、どのようなところだったのでしょうか?悠樹 私が入社した当時は、職員は8名ほど。資料の郵送から税務まで、一人ひとりがすべてを行っていました。それまでは大企業にいたこともあり、「みんなが当たり前にすべてのことができる」というのは強みだと感じました。ただ、それぞれが自分の担当を持っていて、担当外の顧問先のことはあまり知らないというのは、組織としては弱いと感じました。お客様から見れば、「一人の職員しか頼れない」ということになってしまうからです。そこで、正社員もパートも業務委託の職員もワンチームになり、「組織として強くなる」「みんなでクライアントを守っていこう」という考え方にシフトしました。そうすれば、仮に誰かが休んだとしても、お客様には迷惑をかけません。そうした組織をつくるためには、ある程度規模を拡大していくことが必要で、ひいてはそれがお客様を増やすことにもつながると思いました。徹底的なお客様目線を貫くことが、事務所の規模、業績拡大につながっていったのです。――拡大戦略に舵を切ることに、お父様や職員さんの反対はなかったのでしょうか?正樹 ありませんでした。これは、父がずっと言ってきたことなのですが、「うちは“集合天才”でやっていくんだ」と。集合天才というのは、つまり集合知です。少人数だけれど、みんなの知恵を集めて、みんなで考えて、みんなで対処していく。このスタイルが、うちの伝統です。悠樹の目指す形も、規模が違うだけで根本は同じ。ただ、外から見れば「まだ足りない部分があるから、改革をしましょう」ということなんです。また、悠樹は、しっかり計画書をつくり、数字をすべて出したうえで提案します。それが、すべてお客様目線なので納得できるのです。職員から反対がなかったのは、父に対しての信頼が根底にあったからではないでしょうか。知性があり、職員への思いもあり、非常に人望があったので、「父の判断なら間違いない」と、職員も私や悠樹のことを受け入れてくれたのだと思います。写真左から、辰巳悠樹氏、辰巳修偉氏、辰巳正樹氏 蓄積された知見を活かし、若い経営者をサポートする――現在は、正樹さんが代表社員、悠樹さんがCOO、お父様の修偉(のぶひで)さんがパートナー税理士として経営に関わっています。それぞれどのような役割を担っているのか教えてください。正樹 私が代表社員に就任したのは、法人化した2021年の2月。まだまだ経験値は足りないので、物事の真髄を知る父が相談役です。また、長くお付き合いしているお客様も多いため、当社のように事業承継した企業の会長さんたちにとっても、父は良き相談役です。一方で私は、近年の取り組みで増えた新しいお客様、若手の経営者の相談役を担っています。そして、組織のマネジメント、利益の最大化という経営の一番重要なポストを担うのが、悠樹です。私が「こんなことをしてみたい」と出したアイデアも、彼が具現化してくれます。――事務所を拡大すると決めて、強化したサービスなどがあれば教えてください。悠樹 まずは、個人事業主のお客様を増やそうと決めました。AIによって税理士の仕事はなくなると言われていますが、テクノロジーが発達すれば、必ず“アナログ難民”も増える。だから、AIが浸透する前に、あえて記帳代行を取りにいこうと考えました。そのために取り組んだのは、「私を紹介してくれる人を全国につくる」ことです。例えば、POSレジの会社の営業マンに、確定申告とはどういうものか、POSレジにすると、個人事業主は青色申告に必要な帳簿作成がどのくらい楽になるのか、といったことを教える勉強会を開きました。すると彼らは、POSレジを売るだけではなく、その先のメリットをワンセットでお客様に提案できます。そして、その情報を教えてくれた会計事務所を紹介してくれるのです。また、そのタイミングでMFクラウド会計を導入。MFクラウド会計はインターネットバンキングやクレジットカードと連携できるので、お客様も私たちも効率化できます。その際、「個人的な支出と事業の支出は必ず分ける」といったアドバイスもします。個人事業主の方は混在させてしまう方がとても多いので、「個人事業でも経営者である」というマインドセットもしていきます。こうした面談は、全国どこであっても、必ず直接会って行います。今はオンライン面談も普及していますが、長く付き合っていただくためには、まず私の人柄をよく知ってもらい、信頼関係を築くことが重要だと考えています。実際、2016年からスタートして、2年で100件、3年目からは毎年70件ほどのペースでお客様が増えていますが、解約率は1%未満です。正樹 さらに、個人事業主のお客様のうち、7〜8%ほどは事業を拡大して法人成りするお客様がいます。そこからは私にバトンタッチして、顧問税理士としてサポートします。個人事業主のお客様を増やし、成長をサポートすることが、法人顧問の見込み客育成にもつながっているのです。――なるほど。長期的な目線でサポートできる体制ができているのですね。お客様は順調に増えていると伺いましたが、「お客様から選ばれる理由」はどんなところにあると考えていますか?正樹 当社には長い歴史があり、お客様もさまざまな困難を乗り越えてきた方ばかり。多くのお客様を見てきたことで蓄積された、経験値や知見という財産を持っていることが強みです。今まで、日本の経済には4回、大きな荒波がありました。バブル、ITバブル、リーマンショック、そして、今回のコロナ禍。この荒波や困難を乗り越えてきた経営者たちの知見を私たちなりに解釈し、それを若い経営者に伝えることができます。若い経営者や企業に圧倒的に足りないのは、「困難な局面でどう対応するか」という経験値です。私たち兄弟には、まだ経験値は足りませんが、これまで事務所に蓄積された経験値があったからこそ、今回のコロナ禍でも、「何をしておかないといけないのか」を伝えることができました。それにプラスして、今はMBAホルダーのCOOがいますから、説得力のあるコンサルティングができる。そういう面でも、伝統と革新の相乗効果があると考えています。悠樹 私の考える他社との差別化は、傾聴力です。私たちは、お客様の悩みや問題を解決する存在です。たとえば、「これは会社にとって必要な経費です」と話すお客様に、いち税理士が「税務署に怒られるからダメです」というのはおかしな話だと思います。決して、ゆるい処理をするということではありません。お客様の話に耳を傾け、真意を測り、「それならこういう形にしましょう」と提案する。それが私たちの役割だと考えています。 分業制を成功させるためには、調整役の配置がカギ――そのほか、事務所内で改革していったことはありますか?悠樹 一番は、連絡のスピードアップです。お客様を一人にしないということですね。「お客様から電話があったが、商談中で出られない。そうこうしているうちに、お客様自身、何を聞きたかったか忘れてしまった」ということもあります。だから、お客様をお待たせしない。そのために社内でチャットワークなど色々なツールを入れて、担当者が対応できないときは、ほかのスタッフが返信できる体制にしました。これは、社内の連絡も同様です。こういった改革を進めるために重要視したのが、「仕事の見える化」です。一人一人の担当者が、どの顧問先にどのくらいの時間をあてていて、経営者からどういう話を聞いてきて、どういう提案をしたのかを、すべて可視化させました。「訪問しているのに記録がない」などがあれば、すべてチェックし、職員にヒアリング。膿を出そうとすると、隠したくなるのが人間の心理ですが、責めるのではなく、「私たちは味方です」「一緒に良くしていきましょう」というスタンスで接しました。急にやり方が変わり、戸惑った職員もいると思いますが、それでも、「今までのやり方を変革していかなければ、私たちの未来はない」と思ってやってきました。ーーお客様の数が急増して、所内の受け入れ体制構築も大変だったのではないかと思いますが、そこはどう変えたのでしょうか?悠樹 分業制を取り入れました。いわゆる製販分離です。ただ、分業制の難点は、業務の全体像が見えないことによる責任感の欠如です。分業しているからこそ、「自分の仕事はここまでです」という感覚になってしまうんですね。責任感が欠如すると、クオリティは下がります。当然ですが、それは税理士事務所としてダメなことです。分業制にすれば、クオリティは必ず下がります。クオリティを考えれば、担当者が一貫して受け持つ方がいい。そこで当社では、分業制の効率と業務のクオリティ、どちらも担保するため、「調整役」を配置しました。記帳、決算書作成、検算、最終申告、それぞれの間をつなぎながら、業務量の配分はもちろん、クオリティのチェックも行います。分業で業務を縦に分けて効率化しつつ、調整役が横をつないで全体の底上げをしていく。全体を見る調整役を置くことで、品質を維持しながら業務量を増やすことができました。正樹 分業制と合わせて、MFクラウド会計の導入や、業務管理のための自社システムの開発に取り組んだことで、どこでも仕事ができる環境をつくることができました。ちょうどコロナ禍だったこともあり、求人で「在宅勤務可能」と打ち出したところ、応募も激増しました。分業していったことで未経験者の採用もできるようになり、採用は順調に進んでいます。 CXを軸に、伝統と革新を融合した組織改革を進める――サービス名も『記帳MEN』などインパクトがあります。事務所のある京都は、少し保守的なイメージもありますが、苦労はなかったのでしょうか?正樹 確かに、交通の便の悪さや、一見さんお断りの紹介文化が根付いていることなどから、保守的な面はあります。実際、私たちも京都府内のお客様は、ほとんどが紹介いただいた方です。ただ、現在は全国をマーケットにしているので、むしろ「京都にあること」は強みです。ほかの地域から見れば、「京都」というのは、一つのブランドですから。情報発信力のある街なので、営業面でのメリットは大きいと思います。また実は、京都には「美しい街で働きたい」と起業した若手の経営者も多くいるのです。ですから、「歴史のある事務所」と「新しいことに挑戦している事務所」というイメージの相乗効果が、大きな強みになっています。「保守的な土地と言われる京都にありながら、こんなにもオープンで新しいことをやっている事務所があるんだ」と思ってもらえる点は、採用でも応募が増えている要因の一つになったのではないかと思います。――さまざまな面で、伝統と革新がうまく融合していますね。最後に、これから挑戦したいことを教えてください。悠樹 CX(カスタマーエクスペリエンス/顧客体験)を軸にした変革を行うことです。今、会計業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、DXを取り入れる前に、CXが重要だと考えています。顧客がどのようなことを考えていて、その顧客に対してどのような価値を生んでいくのか――。もし600社お客様がいたら、600通りの価値を見出していかないといけないのです。また、お客様の数も増えたので、今後はM&Aも含めたお客様同士のマッチングにも取り組みたいと考えています。A社の強味が、B社の弱みを補う、その間に我々が立ちたいと思っています。それぞれの強みと弱みを補い合うことは、厳しい経済状況のなかで会社を救うことにもつながります。正樹 私は、社内で税理士が誕生するような環境をつくりたいと考えてます。幸いにも、現在採用はうまくいっていますが、次は、職員がうちの事務所を使ってどうステップアップしていけるのか、どんな人生を描けるのか?そういった視点からの仕組みづくりが重要だと思っています。ほかの事務所と連携する方法もありますが、自社でキャリアアップして、給料という投資に対してしっかりリターンを上げてくれる職員を育てたい。そのためには、業務量が増えても、各々がきちんと勉強の時間を確保できるように、残業をしなくても業務が終わる体制づくりも重要だと考えています。悠樹 税理士は、個人事業主や中小企業の一番の味方です。経営者が困っているときに、最初の相談窓口を担うのが税理士です。今後、士業や税理士の在り方というのは、「どれだけ人の話を聞いてあげられるか」になってくると思います。それができるキャパシティーを確保して、もっとお客様の声に耳を傾けて、伴走していかないといけない。今以上にお客様に寄り添っていくことが必要だと思います。
  • 北海道から全国へ! 会計業界を改革せよ Vol.3

    2021年6月15日、元株式会社マネーフォワードビジネスカンパニー執行役員の平野龍一氏が、税理士法人マッチポイントと税理士法人フューチャークリエイト(旧税理士法人シマ会計)に参画したというニュースが飛び込んできました。急成長中の企業を飛び出し、地方のベンチャー事務所とタッグを組んだ理由とは?平野氏、税理士法人マッチポイントの小島匡彦氏、税理士法人フューチャークリエイトの植島悠介氏の3名が目指す「新たな会計業界」について聞きました。撮影:山本 晃与(HATch.img)>>Vol.2はこちら 会計事務所に“非連続の成長”をもたらす――ここまで、中小企業をサポートするためには、会計事務所がさらに幅広い視野を持ち、自らさまざまな取り組みを実践していくことが必要だという話を聞いてきました。会計事務所が変化していくために、平野さんは、マッチポイントとフューチャークリエイトにどのように関わっているのでしょうか?平野 CSO(最高戦略責任者)として、経営会議を一緒にやっています。事業計画の立て方、採用計画の立て方はもちろん、ミッションやビジョンも再作成しました。また、評価制度の再構築なども、これまでの会社で得た知見を活かして行っています。植島 平野さんが入って一番大きく変えたのが、採用計画です。これまでも毎年経営計画を立てて、採用する人数は決めていました。ただ、これまでは「何人採用します」だったのですが、「どういう戦略で、どんな人を採るのか」まで落とし込むようになりました。今までは、あまり具体的な計画ではなかったので、スタッフも「どうせ採用できないよ」という気持ちがあったと思うのですが、理論に基づいた具体性のある計画になったことで、安心できると思います。平野 今回改めて思ったのは、フューチャークリエイトもマッチポイントも優秀な事務所であることは間違いないんです。ただし、それはあくまでクラウド対応ができるとか、紹介でどんどんお客様が増えていっているという部分で、基本的には旧来型のやり方です。だから、新しいやり方をどんどん導入して、いわゆる“非連続の成長”をつくっていきたい。会計業界は、今までなかなか非連続の成長がありませんでした。なぜかと言うと、外部の血が入ってこないからなんです。地方は特に。東京以外の地方すべてで、おそらくそういう課題感があると思うのですが、私がこれまで培ったものを含めて、さまざまな外部の知識や経験を取り入れて、非連続の成長をつくっていきたいと考えています。そしてもう1つ、予実の管理をすること。これは、戦略をしっかり立てるということができていないからこそ起こりうる現象なのですが、予実の管理ができていないんです。例えばマネーフォワードで言えば、予実の管理を毎月しっかりやっています。それは売上だけではなくて、コストも採用計画も含めてです。年間を通して、いつまでに、どの部署で何人採用するという計画を立てていて、それに対してちゃんとできているかどうかを管理している。会計事務所は、計画を立てて、最終的に誰が責任を持ってやるかという管理ができていないところが大きな課題としてあります。それができるようになれば、お客様に対しても同じように価値提供できるようになります。小島 これまでの会計事務所は、所長と職人しかいないところが多かったと思います。車の製造に例えるなら、社長と工場しかない。でも、サービスを売る人、情報を発信する人、お客様のメンテナンスをする人など、税務会計以外のことを行う部署をつくっていくことが必要だと考えています。一般企業であれば、専門部署ができて、自社内でうまく回せるようになるところまでで終わるのですが、会計事務所の場合は、その先に顧問先がいます。自社内でうまく回せたことを、顧問先に提供できて、顧問先の成長につながるコンサルティングができるのです。それが会計事務所の強みでもあり、面白いところだと思います。平野 この魅力が正しく伝わってないんですよね。コンサルタントは年収が高いイメージがありますが、なぜ年収が高いかというと、付加価値が高いからです。だけど、今の会計事務所の仕事は、“帳簿をつけてくれる人”というイメージを持たれていると思うんです。会社の経営の相談に乗ってくれる相手ではない。特に職員の人たちは。実際に、会計事務所の職員さんが顧問先に月次の訪問に来たところに遭遇したことがあるのですが、黙々と帳簿をチェックしただけで帰って行ったんです。これって、すごくもったいないですよね。小島 税理士の資格を持っていない人がコンサルタントとして活躍しているのだから、資格を持っていない職員だって、コンサルティングができるはずなんです。やったことがないだけなんですよね。平野 そのくらいのポテンシャルがある業界だからこそ、中から変える必要があると思ったのです。(写真左から)税理士法人フューチャークリエイト 代表税理士 植島悠介氏税理士法人マッチポイント 代表税理士 小島匡彦氏平野龍一氏 取り組みを公開し、会計業界のビジョンを再構築する――多くの会計事務所がそういった取り組みを実践していけば、その先にいる中小企業にも広がっていきますね。小島 そうですね。ただ、今私たちがアクションを起こしても注目されません。業界を変えていくためには、自分たちが影響力を持つ事務所にならないといけない。そのためには規模感も必要です。当社は開業から2年で28名規模になりましたが、まだまだ足りないので、3年後に100人を目指しています。植島 私たちも、4年後に100人、売上10億円という目標を立てました。最初は7年後に100人と言っていたのですが、平野さんに修正されました(笑)平野 事業計画を立てるときに、「今のペースだったらできるね」というのは、戦略でも計画でもないですから。自分たちの意思を入れることが大事です。4年先のことなんてわからない。でも、ワクワクする未来を自分たちで入れていくことが事業計画なんです。植島 夜中に一人で事業計画を立てたのですが、ワクワクしました。平野 結局、クラウドサービスを導入して業務効率化ができたとしても、そこにワクワクはないんですよ。なんでワクワクするのかっていうと、やっぱり一番は成長なんです。成長を実感できることが一番なので、そこをつくっていくことが業界にとってすごく大事です。小島 会計事務所は、業務効率化して時間が空いても、ワクワクしない方向に行きがちなんです。空いた時間で倍の数の担当を持ちます、みたいな。そうすると職員も「だったら新しいことはやらずに、今のままでいいです」となってしまいます。平野 それって理由は明確で、会社としてのミッションやビジョンがないからです。例えば、フューチャークリエイトであれば、「日本中の中小企業を強くする」というメッセージを掲げています。そういったメッセージがあれば、職員もそこに向かって進んでいけます。――マッチポイントとフューチャークリエイトに関しては、明確なビジョンとともに、100人規模を目指すという具体的な目標もあります。では、北海道全体、さらには全国的に業界を改革していくために、どんなことが必要だと考えていますか?平野 まずは、北海道の会計事務所のトップ3を入れ替えること。北海道の会計事務所って、トップ3が30年間変わっていないそうなんです。30年あれば、日本の時価総額ランキングはガラッと入れ替わります。なのに、この業界は変わっていない。だから絶対に、この2事務所を北海道のトップ3に入れます。「北海道はすごく勢いがある! 挑戦していくんだ」という文化をつくっていきたい。小島 トップ3を入れ替えることが、一つの楔を打つことになると思います。北海道は、全国より10年早く労働人口が減っていくと言われています。つまり、私たちがやったことが、全国のお手本になるはずなんです。平野 これから、高齢化で会計事務所が少なくなっていくなかで、若い事務所には自動的にお客様が流れてきて、伸びてくると思います。ただ、業界に人を流入させることができなければ、いつかは受け入れられなくなるときがきます。だとしたら、業界の魅力度を上げて、事務所の魅力度を上げて、コンサル業界に行きたい人や、中小企業を元気にしたいという思いを持っている人がどんどん入ってくるようにしなければいけません。そういう思いがあれば、デザイナーでもいいし、マーケッターでもいい。いろいろな人が働けて、中小企業をトータルで支援できる組織をつくっていくこと。そのために、「魅力のある業界なんだ」という発信をしていく必要があります。植島 誰でも働ける会社をつくることは必要です。「簿記2級を持っていないと受けられません」ではなくて、「中小企業を良くしたい」という思いがあるなら働けるという状況にしないといけません。平野 まずはマッチポイントとフュチャークリエイトとともに北海道での活動に注力しますが、この2事務所だけが伸びればいいというわけではありません。業界全体を良くしていく、業界のブランドをつくっていくために、事業計画の立て方、人事評価制度のつくり方、情報発信の仕方など、今後取り組んでいくことは、プロセスを含めて良かったことも悪かったこともオープンにしていきます。小島 真似できるところは、どんどん真似をしてもらいたいと思っています。こんなに楽しそうに働いている30代40代の会計事務所の職員は、そんなにいないと思いますから。平野 私は、絶対に業界を変えられると思っています。マネーフォワードでの仕事を通して、中小企業にとって士業が重要なパートナーであることは実感していましたし、士業に対する信頼の厚さも肌身で感じていました。一方で、今の業界に対するブランドの低さ、認知度の低さ、会計事務所として求められているもののレベルの低さに対する課題も感じています。だから、この2事務所とともに会計業界の課題をクリアにしていって、新しい業界をつくっていきたいと思います。 
  • 北海道から全国へ! 会計業界を改革せよ Vol.2

    2021年6月15日、元株式会社マネーフォワードビジネスカンパニー執行役員の平野龍一氏が、税理士法人マッチポイントと税理士法人フューチャークリエイト(旧税理士法人シマ会計)に参画したというニュースが飛び込んできました。急成長中の企業を飛び出し、地方のベンチャー事務所とタッグを組んだ理由とは?平野氏、税理士法人マッチポイントの小島匡彦氏、税理士法人フューチャークリエイトの植島悠介氏の3名が目指す「新たな会計業界」について聞きました。撮影:山本 晃与(HATch.img)>>Vol.1はこちら まずは、会計事務所が変わることが必要――中小企業を良くしていくためには、パートナーである会計事務所のサポートが欠かせません。どのようなサポートをしていくべきでしょうか?小島 当社は、マネーフォワードを使うために立ち上げた会社ではありますが、顧問先にクラウド会計ソフトを使ってもらうことが目的ではありません。「これを機に、社内の効率の悪い経理を改善しませんか?」というのが本題です。中小企業の経理って、必要のない資料をいっぱいつくっていたりします。誰も見てない資料を、良かれと思ってつくっているケースが結構あるんです。だから、「それをクラウド化したり、ほかのシステムと連携させたりすることで、経理業務自体を変えるきっかけにしましょう」という話をしています。まずは効率化して、本業に集中できる環境をつくる。そのサポートができますよね。平野 ただ、業務の効率化だけをやっても中小企業は良くならない。売上を伸ばしたり、従業員の待遇を良くしたり、組織をしっかりつくっていくこと。さらに、会社のサービスを知ってもらう活動などもやっていかない限り、中小企業や地方はなかなか伸びないんです。私は、マネーフォワード時代に個人的にその支援をしていたのですが、この仕事はやっぱり、本来は士業がやってしかるべき仕事です。そのためには、まずは士業事務所が伸びないといけない。植島 例えば、事務所規模の拡大という点でいうと、私たちの事務所は1年で5人くらいのペースで職員が増えていました。これは、会計事務所としては比較的多い方なので、自分たちでは「すごく増えている」と感じていたのです。でも、一般企業から見ると少ないんですよね。この“枠にとらわれている”という点も、業界の課題だと感じています。だからこそ、一般企業の感覚や価値観を取り入れて、枠を取り払うことが必要だと思います。会計事務所は、経営に関して「会計事務所だから仕方ない」と諦めている部分がある気がしています。でも、自分たちができないこと、やったことがないことは、顧問先にもアドバイスできません。だから、会計事務所はまず、一般企業と同じ水準にならないといけないと思います。普通の企業がやっていることを自分たちもやって、それをお客様に提供できるようになるのが、中小企業を発展させることにつながる。そのためには、平野さんのように一般企業の感覚をぶつけてくれることは非常にありがたいんです。今、平野さんとやっていることが私たちの武器になって、その武器を使って中小企業を強くすることができるのではないかと思っています。(写真左から)税理士法人フューチャークリエイト 代表税理士 植島悠介氏平野龍一氏税理士法人マッチポイント 代表税理士 小島匡彦氏 会計事務所が中小企業のCxOを担っていく――会計業界に人材が入ってくるようになるために、会計業界が魅力的にならないといけないという話がありました。そのために、どのような取り組みをしていこうと考えていますか?平野 中長期的に絶対に実現したいと思っていることが、会計事務所の職員が中小企業のCxOを担っていくこと。CFO(最高財務責任者)やCSO(最高戦略責任者)、システム周りを担うCTO(最高技術責任者)など、職員が中小企業の重要なポジションを兼務していく。中小企業が、「財務担当をおきたい」「経営戦略を練りたい」「技術面を強化したい」といった計画を立てたとして、その担当者を採用するのは困難です。だったら、会計事務所がその役割を担い、しっかり支援していく。そうすれば、もっと多くの中小企業を支援できるし、会計事務所もサービスの単価も上げていくことができます。そのためには、今までと同じサービスの提供の仕方ではダメだし、今までと同じ学び方ではダメ。固定観念を壊して、さまざまな知見をどんどん取り入れて、まずは自分たちが実践していくことが必要です。植島 最近、「会計事務所は税務をやる」という当たり前自体がおかしいと感じるんです。私がやりたいのは、「中小企業を強くすること」。税務の申告書を完璧につくっても、中小企業は強くならないですよね。当社は、2021年8月から社名をシマ会計からフューチャークリエイトに変えたのですが、それは税務会計にとらわれたくないという思いからです。社名に“会計”が入っていると、税務会計しかやっていないイメージを持たれてしまうのではないかと感じたのです。地域では「シマ会計」という名前はある程度浸透していましたから、かなりチャレンジではありました。でも、ここで変えないと、これからやりたいことができなくなってしまうのではないかと思いました。小島 会計業界は今、人材流出を止めることと流入を増やすこと、どちらもやらなければいけません。サービスの単価を上げて給与水準を上げたり、資格がなくてもコンサルタントとして活躍できるように人材を育てることも大切です。私たちは『マッチポイントカレッジ』という学びの場を主宰しています。税理士法人マッチポイント、税理士法人フューチャークリエイト、伊東祐生税理士事務所の3事務所が合同で行っている組織学習の場です。マッチポイントカレッジでは、コンサルティングなどの付加価値業務を提供できるよう、実務以外にも提案力や交渉力などのコミュニケーションスキルを身につけるカリキュラムを実践しています。植島 会計事務所はこれまで、「背中を見て覚えなさい」という指導が多かったと思います。また、「人によって教えることが違う」ということも多くありました。実務に関するマニュアルはあっても、商談や営業スキルを体系的に学ぶ機会は少なかったのです。マッチポイントカレッジは他事務所と合同で組織学習を行うので、視野も広がりますし、ほかの事務所の職員が実践したことを共有することで、疑似体験が増えていきます。「やってみたらできた」という成功体験を積み重ねることで、職員のモチベーションが上がるのを実感しています。小島 付加価値業務を提供できるようになれば、会計事務所の価値はさらに高まります。会計事務所への顧問料は、会社を維持するための必要経費ではなく、会社を成長させるための“投資”であるべきです。マッチポイントカレッジ以外でも、私たちが取り組むことが今後の業界のスタンダードになるように、方向性を示したいと思っています。植島 でも、発信が下手なんです。それも平野さんに怒られましたね(笑)平野さんが参画すると決まって、プレスリリースを出したのですが、初めてのことでした。平野 自分たちができないのに、中小企業にアドバイスはできないですからね。例えば、顧問先が良いサービスを持っていて、「新しい店舗を出します」となったときに、「プレスリリースを出しましょう!」というようなアドバイスをできるかどうかはすごく大事だと思っています。だから、自分たちがどんどん外部のやり方を取り入れて、変えていくことをやっていかないといけない。マッチポイントとフューチャークリエイトは、それができる事務所だと思っています。>>Vol.3に続く 
  • 北海道から全国へ! 会計業界を改革せよ Vol.1

    2021年6月15日、元株式会社マネーフォワードビジネスカンパニー執行役員の平野龍一氏が、税理士法人マッチポイントと税理士法人フューチャークリエイト(旧税理士法人シマ会計)に参画したというニュースが飛び込んできました。急成長中の企業を飛び出し、地方のベンチャー事務所とタッグを組んだ理由とは?平野氏、税理士法人マッチポイントの小島匡彦氏、税理士法人フューチャークリエイトの植島悠介氏の3名が目指す「新たな会計業界」について聞きました。撮影:山本 晃与(HATch.img) 中小企業を救うには、いま動くしかない――平野さんがマネーフォワードの執行役員という立場を離れて会計業界に参画するというニュースを知り、驚きました。どのような経緯があったのでしょうか?平野 私はマネーフォワードに入社後、北海道支社長として会計事務所や中小企業にクラウド会計ソフトを導入してもらう活動をしていました。まずは札幌をメインに、ほとんどの会計事務所を回りました。次に、中小企業への認知を広げるため、いろいろな会に所属して、たくさんの経営者とつながりをつくっていったのです。そのなかで、中小企業の経営者から「マネーフォワードを入れたいけれど、顧問税理士が対応してくれない」という話を聞くことが多くありました。士業は、経営者からものすごく信頼されています。なのに、企業が変わろうとしているときに士業がボトルネックになっている。その結果、「30万円でも40万円でもいいから、平野さんに売上を伸ばしたり組織を強くしたりするコンサルティングをしてほしい」という相談をされることが増えてきました。ただ、これは本来、士業が担うことができる仕事です。多くの会計事務所が3万円、4万円で税務顧問を請け負っていますが、30万円、40万円でもコンサルティングを受けたいという会社がたくさんある。「それだけのポテンシャルがあるんですよ」ということを、税理士の先生方に言い続けていました。けれども、積極的に取り組んでいない事務所がほとんどです。さらに、こんなに魅力的な仕事なのに、優秀な人材がなかなか入ってこない。それは、業界のブランディングができていないからだと思います。情報がしっかり発信できていないんです。実際、「魅力的な業界だ」と言いながら、大手会計ソフトベンターなどから会計業界に入る人は少ないですよね。これは、マネーフォワードでもみんなで話をしていたことなのですが、人材が入ってこないというのは、大きな課題です。そこを解決できれば、会計業界はもっと良くなるし、顧問先である中小企業はもっと前に進むことができる。これから労働人口が減っていくと言われています。これは北海道にいると実感するのですが、地方の中小企業はすでに採用が厳しい状況です。さらに、コロナ禍で追い討ちがかかり、オリンピック後の経済も不透明。中小企業にとって重要なパートナーである会計事務所が、しっかり支えていかないといけません。もはや、待ったなしの状態です。しかも、税理士業界はただでさえ平均年齢が高いですから、5年、10年先なんて待っていられない。だったら、「誰かがやるのを待つのではなく、自分がやろう」と決めました。中小企業にとってもマネーフォワードにとっても大切なパートナーである会計業界を、さらに魅力的な業界にして、ブランド化する。これは、挑戦する価値があると感じました。(写真左から)税理士法人マッチポイント 代表税理士 小島匡彦氏税理士法人フューチャークリエイト 代表税理士 植島悠介氏平野龍一氏 中小企業を支えるのが、会計事務所の仕事――会計業界に入ると決意したときに、小島さん、植島さんと一緒に挑戦しようと思った決め手は何だったのでしょうか?平野 小島さん、植島さんに出会ったのは2016年頃ですが、出会った当初から「北海道のために一緒にやっていこう」という話をしていて、実際に積極的にアクションを起こしてくれていました。だから、「絶対に責任を持って支援する」と決めていました。小島 実は、マッチポイントは元々、「平野さんと一緒に仕事をしたい」「そのためにマネーフォワードを使いたい」という理由で、社内ベンチャーのような形で立ち上がった事務所なのです。先ほど、平野さんが札幌の事務所はほとんど回ったと話していましたが、当時私が所属していた事務所には来ていなかったんですね。ただ、平野さんのセミナーを聞く機会があって、ぜひ一緒にやりたいと感じました。北海道や中小企業を良くするためには、会計事務所がちゃんとサポートしなければいけないという考えが、私たちと共通していたのです。でも、当時の事務所はマネーフォワードを導入する予定がなかった。そこで、現在マッチポイント株式会社の代表を務めている鈴木(洋平氏)と、「マネーフォワードを導入することで事務所の顧問先も増やしますから、新しい会社をつくらせてください」と所長に事業計画を出し、できた会社がマッチポイント株式会社です。植島 うちの事務所は、平野さんが入る以前からマネーフォワードを使っていたので、入社したての平野さんが上司と一緒に来たのを覚えています。当時はまだ今みたいなアツい感じは出ていなくて(笑)、すごくメモをとっていた印象です。その後、セミナーに誘われて、マネーフォワードをどう活用していくか、中小企業をどう良くしていくかなどを学ぶなかで、「これはやるしかない!」と。私たちの事務所は、誰かに動かされないと動かないタイプですが、動き出したら「よし、やろう!」と一気に進むんです。それで、「全部マネーフォワードにします」と平野さんに伝えました。その本気度を感じてくれていたのかな、と思います。平野 マッチポイントとフューチャークリエイトには、「北海道の中小企業を良くしていこう。会計事務所を良くしていこう」というコミットメントをすごく感じていました。そのために「自分たちが変わっていこう」という気概を感じたんです。それが私にとっては一番大きかったですね。>>Vol.2に続く 
  • 提案資料の標準化でアップセル&新規獲得を実現

    「フィット感」を重視し、人事労務にまつわるクライアントの課題解決のためにオーダーメイドのコンサルティング支援を強みとする人財さいだい戦略化.firm。標準化に取り組み、さらなる成長を目指す秘訣について、代表の壽谷将隆氏に聞きました。 脱属人化の実現で人材の定着も図る「経営者と一体となって人事面から経営に参画していく」ことを信条に開業したのが、2014年頃。創業当初は、異業種交流会などに参加して紹介を獲得することが主な営業活動だったのですが 、契約件数が増えるにつれて、顧問先をフォローする時間と新規獲得のための営業活動に割く時間のバランスがとりづらくなってきていました。また、職員を採用したこともあって、事務所を組織的に運営する必要があると考え、『社労士パートナーズ(以下、社P)』の導入を決意しました。まず、課題となっていたのが、属人化でした。例えば、サービスを提案するためのプレゼン資料のつくり込みが担当者によって異なる、資料作成に時間をかけすぎて業務を後回しにしている、顧問先へのコミュニケーションスキルに差があるなど、標準化ができていない部分が多数ありました。社Pのツールには、業務提案のためのパンフレットやチラシのベースが豊富に用意されているため、資料作成の時間を大幅に短縮することに成功。提案の際もツールに沿って説明することで一定のレベルを保つことも可能となりました。また、私たちは市場に合わせて、〝七福神メニュー〞と称した7つのサービスを取り揃えているのですが、これらのサービスから派生した新たな提案も、ツールを活用することでしやすくなりました。今後は同一労働同一賃金による人事労務監査や、リモートワークのためのクラウド導入支援を求めるお客様が増えてくると想定されます。人事労務面から経営者を柔軟に支援していくため、社Pを活用しながら社内標準化を推進していきたいと思っています。 ※月刊プロパートナー2021年3月号より抜粋いかがだったでしょうか?『プロパートナーONLINE』は、士業のための「明日役立つ」記事やセミナー動画などオンラインのコンテンツに加え毎月1冊、士業専門雑誌「月刊プロパートナー」をお届けするサービスです。月額3,000円のサービスを今なら14日間無料でお試しいただけます。▼14日間の無料体験はこちらから▼
  • 危機に負けない事務所をつくる12STEP

    未曾有の経済危機のなか、顧問先を守るためには士業事務所も従来型の業務やサービスからの脱却が必要です。業務効率化と顧客満足度向上を両立させた事務所をつくるために必要なことを、士業コンサルタントが解説します。 STEP1.顧問先の状況を把握する新型コロナの影響は、飲食業や観光業に限らず、さまざまな業界に波及しています。まずは、顧問先にどのような変化が起きているのか、今後どのような影響が考えられるのかをヒアリングしましょう。 STEP2.支援が必要な顧問先を分類するSTEP1のヒアリングをもとに、今までのように事業継続ができるかできないかで、クライアントを分類します。事務所からの対策、支援が必要か必要でないかを分類の目安にすると良いでしょう。 STEP3.コロナ対策プロジェクトの立ち上げ所長をリーダーに、支援が必要な顧問先を担当している職員全員が参加してプロジェクトチームを立ち上げます。資金調達や調達後の事業計画策定のほか、事務所でサポートできることがないかを話し合いましょう。また、事務所で対応できない場合も専門家を紹介するなどの支援をします。月次の業務に加える形でコロナプロジェクトの業務を担当させることで、業務管理をしていきます。 STEP4.業務管理をクラウド化する社内サーバーや個々のパソコン内での資料保管、Excelでの顧客管理はリモートワークに向かないほか、業務の属人化にもつながるため、クラウドで管理するようにしましょう。①顧問先にある文書、事務所内の書類のデータ化②業務ソフトのデジタル化、もしくは遠隔ソフトで外部からのアクセスを可能にする③事務所および自宅のインターネット環境を整備する④機密保持ルールを整備する STEP5.クラウド化に対応した業務標準化データを共有する場合、個人での保管ルールのままでは、ほかの人がファイルを探しにくいなど、非効率です。ファイル名の付け方やフォルダ分けのルールなどの整備を行いましょう。 STEP6.成果管理ルールの設定「何をもって仕事をしたと判断するのか?」のルールを決めます。アウトソーシング業務のように、「何時間でこの業務を終える」というルールを決めることで、成果を管理しやすくなります。 STEP7.リモートワークを導入するSTEP1~6を実施せずにリモートワークを導入しても、うまく進みません。本格導入を考えているのであれば、再度見直しをしてみましょう。 STEP8.顧客セグメントの再設定有事の際にも対応品質を落とさずにフォローできる顧客や、有事の際に伸びた業種をターゲットに設定します。例えば、日常のフォローを訪問ではなくチャットで行う場合、それに対応できる顧客を増やすことで、有事の際も同品質のフォローが可能です。また、ユーチューバーに特化した税務会計サービスなどは、今後ニーズが高まると考えられます。 STEP9.マーケティング方法の再検討STEP8で設定したターゲットに合わせたマーケティングを検討します。今回、対面での営業ができない状況になったように、もはやWebマーケティングは必須です。独自のメディア構築には時間もコストもかかるため、所長や職員の人脈を活用できるSNSやレポート活用が有効です。①事務所のSNSページを作成。顧客、提携先など、 すでにあるネットワークに友達申請し、Web上で常につながっている状態をつくる②無料でダウンロードできるレポート(例「特別融資の申請方法完全マニュアル」など)を 事務所サイトやSNSにアップし、問い合わせが来たら無料相談のアポを入れる STEP10.事務所の強みの再構築顧客にとって、「なぜこの事務所に依頼するのか?」の理由が明確であることが重要です。例えば、新型コロナを受け、資金調達、資金繰りサービスは、もはやスタンダードなサービスであると認識する顧客が多いでしょう。PLの改善よりBSの改善提案ができることなど、顧客が自社を選ぶ理由を明確にし、新たな強みを構築しましょう。 STEP11.2軸のビジネスで価値提供例えば、アウトソーシング業務は固定費削減の対象になりやすいですが、日頃から経営相談にも対応していれば、解約される可能性は低くなります。また、アウトソーシング業務を受任していれば、試算表をすぐに作成できて融資の計画表作成にも素早く対応できるため、コンサル業務に加えてスポットの売上も見込めます。収益の柱を複数持つことで、有事の際のリスクヘッジができるのです。提供できるサービスをメニュー化し、アウトソーシングと付加価値業務の2軸でビジネスを進めましょう。 STEP12.定期的な情報発信網を用意するメルマガやSNSなど、有事の際でもすべてのお客様に情報を発信できる手段を準備しましょう。特にメルマガは、開封率や開封履歴がわかるシステムであれば、追加で個別の連絡が必要かどうかもわかります。しっかり活用するためには、常に顧客データーベースの管理、メルマガの配信管理をしていることも重要です。実は、STEP12の定期的な情報発信網があれば、STEP1~11もスムーズに進みます。例えば、顧問先に「現状を教えてください」とアンケートをメルマガで配信することで、ヒアリングが効率化できます。顧客データベースの構築とアップデートは、必ず取り組んでください。 顧問先を支援するならまずは事務所改革を新型コロナの影響を受け、IT化推進を決意した先生も多いと思います。IT化を効率良く、高品質で進める近道は、「成功した人のやり方を真似ること」です。業務効率化のためのITツールは豊富にあるため、自分で勉強してから導入しようとすると、なかなか進みません。ですから、成功した人が使っているツールを取り入れて使ってみる。そして、詳しい人に聞きながら慣れていくのが一番です。IT化支援サービスを使うのもおすすめです。また、アンケートのなかで、「顧問先がオンライン面談に納得してくれるか」「既存の方法を変えることに不満を持つのではないか」という声がありました。しかし、成長している会社は、新しいツールや仕組みを上手に活用しています。これからリモートワークはさらに浸透していくでしょうから、「会社を伸ばすためには、こういったツールを取り入れることが必要です」と提案し、時代に合わせた変化を促すことが、顧問先の成長にもつながるのです。今後、新型コロナ以外にも、競合他社の出現や人材流出など、顧問先1社1社に異なる危機が訪れます。そのとき、顧問先にとって価値ある士業事務所とはどんな事務所なのか?価値あるサービスとは何なのか?もはや、資金調達や資金繰り改善は、顧問先にとって「当たり前」のサービスになっていくでしょう。それに加えて、より経営戦略に踏み込んだ提案や、今後を見据えたビジネスのヒントを与えてくれる士業事務所へのニーズが高まるはずです。そのニーズに応える体制は整っていますか?顧問先をしっかりサポートするためには、STEP1〜12を繰り返し、まずは士業事務所から変化することが重要です。今こそ、事務所のビジネスのあり方を見直すタイミングではないでしょうか。※月刊プロパートナー2020年6月号より抜粋いかがだったでしょうか?『月刊プロパートナー』2020年6月号ではリモートワークの導入やビジネスモデル見直し、顧問先への新サービスなど、withコロナで士業事務所をどう変えるか、詳しく解説しています。『月刊プロパートナー』のバックナンバーも読み放題のプレミアム会員 14日間無料体験ならその他様々な記事もお楽しみいただけます。ぜひご事務所の経営にお役立てください。▼月刊プロパートナーバックナンバー読み放題はこちらから▼
  • 【税理士替えたい110番】レスポンスが遅すぎてもううんざり!

    顧問先の不満の声から、契約解消を防ぐヒントを紹介。今回は、日ごろの対応の遅さが解約につながってしまったケースです。 レスポンスが遅すぎてもううんざり!昨年4月に、Web制作会社を立ち上げました。顧問料が安くてスピーディーな対応が可能な税理士をネットで探し、クラウド会計ソフトに対応している近場の会計事務所を選びました。私は、クラウド会計ソフトについてまったく知識がなく、「クラウドならいつでも情報が共有できるから、やり取りが早いだろう」と、思っていました。しかし、その税理士とやり取りを始めると、対応の遅さにびっくり。クラウド会計ソフトを使えるからといって、仕事が速いわけではありませんでした。気づいたときにはもう、遅かったのです。記帳をすべて頼んでいるのですが、資料を送って2カ月くらい経ってからようやく、ソフト上の経営数字が更新されるようなありさまです。クラウド会計ソフトを使えば、ある程度リアルタイムで会社の数字を把握できると思っていたのですが......。こんなにゆっくりなら、クラウドの意味がないような気がします。また、あまりにも対応が遅いので「入力作業はこちらでやりましょうか?」と、提案したこともあります。しかし、「お客様に任せるのは不安なので、こちらでやります」の一点張り。忙しくてできないのであれば、任せてくれたらいいのに......。とにかく、こんなに時間がかかるとは思っていなかったので、今すぐにでも税理士を替えたいです。多少値段が高くても、スピーディーにやり取りできる方がいいですね。さらに、経営の具体的なアドバイスをくれたら、なお魅力的だと思います。 納期の期待値を確認し それを基準に効率化をクラウド会計ソフトを希望するお客様は、日ごろのやり取りにもスピードを求める傾向にあります。まずは、どれくらいのレスポンスの速さを希望するのか、相手の期待値を確認することが必要です。そして、その期待値に沿えるよう、事務所内部の業務効率化を進めていきましょう。やり取りのスピードを上げるためには『Chatwork』や『Slack』な どのチャットツールを活用すること、業務をより効率よく進めるためには『kintone』などの業務管理ツールを使うことをおすすめします。いろいろなツールを試し、事務所に合うものを見つけていきましょう。※月刊プロパートナー2019年9月号より抜粋いかがだったでしょうか?『月刊プロパートナー』2019年9月号では、上記税務相談に加え、助成金を入り口に顧問契約数を伸ばすテクニックをご紹介しています。『月刊プロパートナー』のバックナンバーも読み放題のプレミアム会員 14日間無料体験ならその他様々な記事もお楽しみいただけます。ぜひご事務所の経営にお役立てください。▼月刊プロパートナーバックナンバー読み放題はこちらから▼
  • コンサルタント野口が直撃!ムダをとことん省けば生産性がみるみるUP! 残業50%↓・生産性79%↑ 超効率化手法公開!

    一時期は所長自らが担当顧問先55件を抱え、業務に追われていたという税理士法人町田パートナーズ。劇的な業務効率化で残業50%カットを実現した秘訣に迫るべく、事務所へ直撃!! かつては申告書作成の一つをとってもやり方が統一されていない、職人集団だったと話す税理士法人町田パートナーズ代表の町田孝治氏。そこで2017年、町田氏が先陣を切って現場に立ち、無駄な工程を洗い出し、効率的なやり方に統一した。加えて、送付状の作成や発送履歴管理など、簡単にできるところはすべてシステムを構築。時間の使い方の見直しで残業時間を減らし、生産性を向上させた。「ツールの導入直後は慣習化させるのに時間はかかりますが、統一性のあるルールを守ることが結果的に生産性向上につながります」。●効率化による変化   Before After   残業(全体) 747時間 → 372時間 担当件数 27件 → 56件 ※2017年1月と2019年1月を比較残業↓生産性↑ 町田流  ITツールでかんたん&高品質&効率的に業務に集中1 顧問先の領収書を自動取込&自動仕訳で劇的に効率化 AI仕訳システム『ちあロボ』(現在、開発中)は「ScanSnap」と連動し、顧問先から送られてくる帳票を一気にクラウドに取り込み。自動で科目ごとに仕訳ができ、手書き帳票にも対応。   POINT!!ちあロボで人の10倍の速さで人よりも正確にデータ化します 「ScanSnap」 Wi-Fiでクラウドに直接保存可能なのも使い勝手が良い。POINT!!手書きの領収書も自動仕訳できる!!現在、月間で約2万仕訳を入力。『ちあロボ』の開発によって顧問先獲得の受け入れ体制も万全な状態に。 2 取込完了したデータを入力担当が項目チェック『ちあロボ』で自動仕訳した項目を入力担当者が確認。勘定科目で異常値がないか、不整合はないかしっかりチェック。POINT!!チェックはタスクアプローチで行います。取込信頼度の低い項目や間違いやすい仕訳を中心にチェック!3  進捗管理から必要書類の出力まですべて一元管理!Microsoft Accessで顧客データベース管理のシステムを構築。約300社の顧客情報や対応履歴を管理。請求書や送付状・発送履歴すべて管理つい後回しにしてしまうような、送付状作成もボタン一つで出力可能。発送時の送り状番号の履歴も残すことができる。POINT!!面倒な事務作業ほど機械化。アクセスのシステム開発担当の職員が、使い勝手の良いようにカスタマイズしてくれています。4  チェック項目を分担 トリプルチェックで完璧!書類がそろっているかなど、形式的なチェックは アシスタントが対応。 実質チェックは担当者、最後に税理士資格者が税務チェックを行う3段階でトリプルチェックを実行。必要書類と一緒に誰が、どの段階を、いつ確認したかがわかるチェックリストを回覧。ここもCHECK! ダラダラ会議抹消!会議招集者が司会進行会議をはじめる前に、目的と議題を共有。会議の主催者が司会を行う。プロジェクト会議での、「やる」「やらない」の判断は、理念に沿っているかどうか。軸があると判断に迷いがなくなり、効率的に物事が進む。会議残り5分は、行動する時間にあてる会議終了5分前は、議事録をまとめたり、関係者にメールを送るなど作業の時間にあてる。「会議で決まったのに実行しなかった」ということがないよう、必ず次につながる行動をとる。憶測で話を進めない「あの人だったら、難しいかもしれない」など、物事を推察しない。会議で決議されたものは、「誰が」「いつまでに」実行するか明確にして共有する。生産性↑ 町田流  顧客に元気を与える印象アップのワザPR施策グリーンカラーで統一HPや名刺、各ツールなど、クライアントの目に触れるものはグリーンカラーで統一し、安心感や健康的な印象を与える。エントランスのマットもロゴ入りでブランドイメージを訴求。 オフィス・ミーティングルームオフィス内にもグリーンをちょい足しオフィス家具もグリーンで統一。事務所のイメージがHPやDMなど、見る媒体で異ならないようにトーン&マナーをルール化。POINT!!「思ってた印象と違う…」ということがないように意識しています生産性↑ 町田流  職員に元気を与える気配りワザ1  性格特性を見極めてコミュニケーションを図る変化を好むタイプや、同一性を好むタイプなど職員の性格もさまざま。すべての職員に、同じように声掛けをしても効果的ではない。特性を知り、彼らに合わせたコミュニケーションをとること。 2 組織を意識づける登山研修で助け合いを体験社員研修として、屋久島登山に。自然の中で共にゴールを目指していると、役職・肩書関係なく自然と協力し合うように。到達したときの達成感はひとしお。夜はお酒を交えながら、本気で打ちとけられる場を設けて結束を図る。 3 飲み会や社外活動で普段聞けない考え方を知る代表も含め、職員同士がお互いのスキルを共有したり、関係性を深めた結果、事務所の利益に貢献することが、社内コミュニケーションの目的。業務時間ではかしこまって聞けない本音をフランクに聞き出し、改善できることは即対応する。 税理士法人町田パートナーズ 代表 町田氏とコンサルタント野口の対談 「業務効率化って何からはじめましたか?」の記事はこちら! 
  • 法律の分野でも進む「〜テック」

    最近、新聞やニュースなどで見ない日がない言葉の一つに、「~テック」という言葉があります。これは、ICT技術の急速な進展に伴い、それまでICTと距離のあった分野に、ICT技術を用いて時間やコスト、そして仕事そのものを省略化する技術のことを言います。現在、最も世間で注目されているのは、ブロックチェーン技術に代表されるようなフィンテック(FinTech)ではないでしょうか。一時期は名前を聞かない日がなかった、コインチェック株式会社も、日本におけるフィンテック分野の代表的な企業です。一方で、筆者および士業の皆様に身近な法律の分野でも、ICT技術を使って、裁判、行政、契約などの従来業務の省略化や、士業や企業法務に向けたサービスを提供するリーガルテック(LegalTech)が進展しておりますので、今回はその動向を紹介したいと思います。 日本の法律業務の現状リーガルテックの説明の前に、現在の一般的な法律業務の説明をします。裁判などの法律業務では、膨大な量の証拠を印刷した書面の形式でやりとりをしており、その中から適切な証拠を見つけ出すだけでも一苦労な状況です。 よくある離婚訴訟 ~膨大な書面資料が手間になる~例として、夫の不貞を原因とした離婚訴訟を考えてみましょう。不貞の証拠として妻があげるものには、LINEなどのSNSの履歴のスクリーンショットや、メール、写真などがあります。また、妻の考えなどをまとめた陳述書も証拠となります。さらには代理人弁護士が作成した書面などがあり、これらは全て、印刷した書面という形で裁判所および相手方に提供しなければいけません。半年以上続く訴訟手続きの中で、証拠の数は膨大なものになり、100を超える場合もあります。その中から提示したい証拠を見つけ出すのも難しい状態になりますし、裁判期日に、代理人弁護士の所属事務所から裁判所まで持参すること自体も一苦労です。また、そのような書面を裁判所へ提出する方法も、特に訴えを提起する段階では、直接裁判所に(もちろん平日の9時から17時の間に)持参するしか方法がなく、その際も訴状と膨大な証拠を複数の部数印刷をして持参する必要があります。 リーガルテックの出現で大幅な工数削減に一方で、リーガルテックとは、法律(リーガル)と技術(テクノロジー)を組み合わせた用語で、法律業務を支援するテクノロジーを総称します。リーガルテックが発展してきた原因は、いうまでもなく、IT技術の進化により、あらゆるデータがデジタル化して来たことです。先ほどの離婚訴訟で証拠として挙げられていたパソコンやスマートフォンでやりとりされる情報である、メール、チャット、Word、PowerPointやPDFなどの文書ファイルは、全てデジタルデータとして蓄積されます。これらのやりとりを、紙を使わずにやりとりできる技術、これもまさにリーガルテックです。 アメリカのリーガルテックの状況他の「~テック」の領域でもそうなのですが、リーガルテック分野でも、最も先進的なのはアメリカと言えるでしょう。すでに2006年には、民事訴訟における電子情報開示制度(一般的に「e-discovery」と呼ばれています)が整備されました。これは、民事訴訟における証拠開示(裁判所および訴訟の相手方への証拠を提出すること)を、電子的手続きによって行うことを意味します。対象となるのは、メールやインスタントメッセージを含むチャット、Word、PowerPointやPDFなどの文書、CADやCAMのファイル、ウェブサイトなど、全ての電子的に保存された情報であって訴訟の証拠になりうるものです。これらは先ほど挙げた離婚訴訟におけるほぼ全ての証拠が該当します。これらの証拠は、電子的に記録され、デジタルデータとして裁判所および相手方当事者に提出されるため、紙で印刷する必要はありません。また、データとして扱えることの特徴として、分類や整理、検索といった作業が非常に容易に可能です。アメリカの民事訴訟手続きのうち、当事者双方の証拠開示は、インターネット上で行われます。E-discoveryと呼ばれるこの手続きは、日系企業もアメリカで訴訟を抱えることが増え、一般的にも知られるようになりました。また、契約書の締結においても、日本よりも数年先んじて、ペーパーレスが進展しています。通常の契約書締結過程では、少なくとも契約書への捺印の時点で、契約書を印刷し、実際に捺印するという作業が発生します。また、社内フローとして、捺印のチェックを、印刷した紙を閲覧する形で行っている会社もまだ多くあります。このような一連の作業をすべてWeb上で完結するサービスが多く展開されています。 日本の行政手続き・司法手続きの電子化日本における行政手続き、司法手続きにおいても、電子化が進められています。これらも、特に司法手続きに関しては、リーガルテックの試みと言えます。行政手続きでは、総務省行政管理局が運営する総合的な行政情報ポータルサイトである電子政府の総合窓口(e-Gov)が、省庁横断的な電子化の取り組みとして注目されます。例えば、健康保険や厚生年金保険、雇用保険や育児休業給付金などに関する諸手続きを行う場合、申請者はe-Gov 電子申請に対応したソフトを利用して、申請データを作成し、必要に応じて電子署名も行います。その上で、一括申請システムを利用すると、全データが圧縮されたZIP形式で一括送信し、申請が可能です。そのほかにも、国税電子申告・納税システム(e-Tax)や地方税ポータルシステム(eLTAX)など、税務分野でも電子化が進んでいます。しかし、これらのインターネット上での電子上の手続きには、Windowsでしか利用できなかったり、利用時間が平日に限られていたりと、使い勝手に大きな問題があります。特に、e-Govについては利用率が1割に満たないなど、普及の点でも大いに問題があります。また、「未来投資戦略2017」(平成29年6月9日閣議決定)に基づいて、裁判手続等のIT化検討会が開催され、2018年3月30日に、「3つのe」の実現を骨子とするまとめが発表されました。「3つのe」とは、民事訴訟手続における① 提出(e-Filing)② e法廷(e-Court)③ e事件管理(e-Case Management)を指します。①e提出(e-Filing)は、アメリカにおけるe-discoveryの実現のみならず、裁判所に紙媒体で提出することが必要だった訴状についても24時間365日提訴を可能とすることを目指しています。電子的に提訴された裁判を、テレビ会議もしくはウェブ会議形式で行うことを内容とするのが②e法廷(e-Court)であり、その事件の進捗管理および証拠管理を行うのが③e事件管理(e-Case Management)です。これらが実現すれば、かなりの影響が出ると思われますが、残念ながら実現の時期・目処はこれからですので、まだしばらくアナログな時代が続くと思われます。 日本で進む、ベンチャー企業のリーガルテック行政・司法の状況と比較し、進んでいると思われるのが、主にベンチャー企業に主導されるリーガルテックです。先に述べたe-discoveryへの対応や、スマートフォンやパソコンに記録されたデジタルデータを復元するデジタルフォレンジック技術がまず発展しました。しかし、本記事執筆時の2018年6月現在において最も注目されているのは、知的財産・特許の出願や管理関係と、契約書の作成・管理関係と言えます。 特許まわりと契約書の作成・管理に着目した「弁護士ドットコム」前者については、特許庁のデータをAIが分析し、審査官の判断を学習することで、そのアイデアの特許出願が可能かどうかのシステム構築を進めている企業もあります。後者について、現在日本国内で最もシェアを得ているのが、弁護士ドットコムが運営する「クラウドサイン」と言うサービスです。これは、契約締結時に必要な「紙と印鑑」を「クラウド」に置き換え、契約締結作業をパソコンだけで完結させるものです。さらに、契約書締結自体がクラウド上で、ペーパーレスで行われるため、印紙税が課税されません。さらに、クラウドサインで合意締結されたすべての書類には、クラウドサインのみが発行可能な電子署名が付与されますので、それにより真正な書面かどうかを判別することができます。ちなみに、電子署名の仕組みには、強固な暗号化方式によって守られている公開鍵暗号方式に基づくデジタル署名を採用しているそうで、この署名方法のみならず、契約書のやり取りにおいても安全性に配慮されているとのことです。 クラウドサインの導入は2万社を超えるクラウドサインのサービスは、インターネットに接続できるパソコンがあればすぐにでも導入できるため、非常に手軽であり、導入企業も既に2万社を超えています。企業内で契約書に関連する業務を一手に担っていた経験からすると、完全なペーパーレス、印紙税非課税、収納場所不要、というのは、かなり大きな魅力です。 他社サービスとの連携体制も充実また、他に注目されるべきポイントは、他社・他業種との連携です。管理系システムを新たに導入する企業にとっての障壁で最もよく見られるものは、既存システムとの統合可能性ではないでしょうか。クラウドサインは、業務管理系アプリケーション最大手のsalesforceやサイボウズとのAPI連携を実現しているため、そのような障壁を超えることができました。導入により、契約締結についての社内りん議と締結後の文書管理を既存システムで行い、その間の契約締結作業をクラウドサインで行うことが可能です。 他業種との連携例 ~株式会社 LIFULLの例~他業種との連携において最も注目されるのは、不動産情報サイトを提供する株式会社 LIFULLとの提携です。2017 年 10 月から、これまで対面が原則とされていた不動産契約における重要事項説明について、賃貸分野ではオンラインでの実施(IT 重説)が解禁されるなど、ICT を活用した業務効率化の動きが出てきています。両社は、賃貸不動産の選択・ウェブカメラ等による内見・IT重説・契約締結の全てをオンラインで行える不動産会社向けの電子契約プラットフォーム構築を目指して、業務提携しました。自宅にいながら不動産が借りられる時代が、もうすぐそこまで来ています。 まとめまだまだ始まったばかりの日本におけるリーガルテックですが主に民間主導でますます進展していくと考えられます。それとともに、従来士業の仕事と思われていた業務も、そう言ったリーガルテック企業のサービスにますます代替されていくことが当然予想されます。旧態依然としたところが多い法律業界に大きな風穴を開け、利用者への利便性がより向上することは歓迎されるべきです。同時に、士業にとってはますますチャレンジングな時代になったと言えます。 
  • 【若手社長の開業日記】知人が抱えていた会社設立の悩みを解決できず悔しさをバネに突き進む

    「会社設立について知人から相談を受けたとき、すぐにアドバイスできなかったのが未だに心に残っています」と語るのは、野末和宏公認会計士・税理士。当時習っていた英会話の先生から「独立して自分の英会話スクールを設立したい」との相談がありましたが、税務や届出など具体的な実務がわからず、野末氏はアドバイスを言えませんでした。この経験を悔しく感じた野末氏は、会計のプロである“公認会計士”を基盤としながら包括的な経営のサポートができる“税理士”への道を歩み始めました。 責任者としての成長を目指し独立開業の道へ大手税理士法人に入社し、約20社の法人をサポートしていた野末氏。覚悟を決めて前向きに働いている経営者の影響を受け、自身も急速に成長しているように感じたといいます。独立開業に至ったのも、自身をより高めるためだったと野末氏は話します。「税理士法人に勤務していたときも、お客様から感謝の言葉を多くいただき、充実した日々を過ごしていました。ただ、一担当者としてではなく責任者となって、お客様が満足するサポートをしたいという思いが強くなり、独立を選んだのです」2016年に開業した野末公認会計士・税理士事務所は、若手経営者や不動産投資家へのサポートが売り。今後の目標を聞かれた野末氏は、「英会話教室の先生の相談を解決できなかった悔しさがあるので、これから当事務所に来てくださる方々には、満足のいくサポートを提供していきます」と力強く語ってくれました。 プロフィール野末 和宏(のずえ かずひろ)氏 1982年 埼玉県志木市で生まれる2008年 公認会計士試験に合格。有限責任あずさ監査法人に入社2013年 税理士登録2016年 野末公認会計士・税理士事務所を開業野末公認会計士・税理士事務所(東京都中央区)クラウド会計ソフトを積極的に導入するなど、ITに強い税理士事務所。開業支援や節税対策など、若手経営者や不動産投資家をサポートするサービスが充実している。
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