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  • 遺贈寄付を広めて思いとお金を循環させる

    開業以来、相続専門の司法書士として活躍する三浦美樹氏。現在は、一般社団法人日本承継寄付協会の代表理事として、遺贈寄付の普及にも尽力しています。これまで士業が踏み込んでこなかった遺贈寄付に注目した理由や、遺贈寄付を広める活動について聞きました。 お客様の最期の遺志をお金に乗せて届ける一般財団法人日本継承寄付協会は、遺贈寄付を中心に、さまざまな承継方法を支援する窓口です。遺贈寄付とは、亡くなった時に残った財産の一部または全部を、遺言などによって非営利活動法人をはじめとする団体に寄付すること。遺言書に「どこどこに寄付します」と1行追加するだけで、自分の思いをお金に乗せて届けることができるのです。いわば、人生最期の自己表現です。私たちは、そのための遺言書作成や寄付先選びのお手伝い、士業の先生のご紹介などをしています。私が日本承継寄付協会を立ち上げようと決心したのは2019年7月15日。その日、たまたまお寺に行ったのですが、「私が今こうして生きていられることは、先人たちの努力の結果なんだな」と感謝の気持ちがすごく湧いてきて、「私も困っている人に何か手助けをしたい」と思ったのです。私は司法書士として開業してからずっと、相続を専門にしています。相続は非常にやりがいのある仕事ですが、お金が絡むことなので、ドロドロとした部分もあるのが現実。相談に来られるお客様のなかには、「子どもに財産を全額は継がせたくない」「子どもがいないから財産をどうしたらいいか」と悩んでいる方もいます。その方たちに遺贈寄付という選択肢を提案できれば、お客様のためになるのはもちろん、困っている人たちの助けにもなると考えました。そこで実際にお客様に提案してみたところ、お客様の目が輝いたのです。その表情をみて「これだ!」と確認しました。自分が亡くなった時のお金の行き先を決めておくことで、「誰かの役に立てる」と思いながら、残りの人生を豊かに過ごせる。遺言書をつくったことで変わる未来があるのは、すごいことだと思うのです。そこから約1年間、寄付に関する勉強や、寄付を受ける側の活動内容調査、遺贈寄付に関する市場調査を行いました。そして、多くの司法書士や税理士の先生、企業の協力のもと、2020年9月11日に遺贈寄付調査結果報告のリリースを出すことができました。 認知度が低い理由は寄付に対する誤解遺贈寄付に関する調査をするなかで、多くの人が誤解していることが見えてきました。まず一つは、「遺贈寄付はお金持ちが行うことだ」という誤解。私たちの調査では、45.7%の人がそう回答しています。また、相続の専門家へのアンケートでも、遺贈寄付の遺言書を作成する際、寄付の最低金額は100万円という人が多くいました。寄付先に聞いても、100万円以下の寄付での問い合わせは少ないそうです。ですが実際は、寄付金額は5万円でも10万円でもいいのです。次に、「老後資金がなくなってしまうのではないか」という誤解。寄付に興味はあっても、老後の医療費や生活費が不安でためらう人が多いという現状がわかりました。しかし、遺贈寄付は亡くなったあと、最終的に残った資産のなかから行います。遺言書に金額を書いたからといって、絶対にその金額を寄付しなければいけないわけではないので、老後資金への影響はほとんどありません。そしてもう一つ、遺贈寄付が認知されてこなかった要因は、「寄付をビジネスにしてはいけない」という風潮にあると思います。日本ではなんとなく、寄付が〝聖域〞になっている気がします。でも、寄付を必要とする団体にお金を届けないと、困る人が大勢います。できるだけたくさんのお金を回すためには、社会貢献とビジネスを両立して、みんなが参入できるようにすることが大事です。実際、私たちの調査では、2割の人たちが「遺贈寄付に興味がある」と答えています。一人ひとりは少額だとしても、この人たちが遺贈寄付を行えば、未来の社会に大きなお金が流れることになります。「思いやりが循環する社会へ」。これが、私たちが掲げる理念です。この理念を実現するためには、信頼性が高く、法務や税務の専門知識があり、中立な立場で相談を受けられる人が必要で、それこそが士業なのです。 士業が窓口となり思いやりを循環させる日本承継寄付協会では、遺贈寄付の相談窓口となる『承継寄付診断士』を増やすため、士業などの相続の専門家を対象に研修会や認定講座を開催しています。9月に開催した講座には、約90名もの参加者が集まりました。参加した方からは、「やりがいのある仕事が見つかりました」「自分の残された人生をこの仕事に使いたい」といった感想をいただいて、多くの方に興味を持っていただける手応えを感じました。また、私自身、この活動を始めてから感じていることは、「遺贈寄付の提案をすると経営者から〝モテる〞」ということ。経営者は、「人を喜ばせたい。社会のためになることをしたい」という気持ちが強い方も多く、遺贈寄付という方法があること、寄付を通じて次の世代に何を残すかということを話すと、とても興味を持たれます。ですから、この資格をそういった経営者と接点を持つきっかけになると思っています。経営者との接点が多い士業が窓口となることで、より多くの方の「人の役に立ちたい」という思いを叶えられるのではないでしょうか。何より、お金だけではない価値を提供できることが、私たち自身のやりがいにもつながります。実は、9月13日は『国際遺贈寄付の日』。2020年には、日本でも初めて『遺贈寄付ウィーク2020』というキャンペーンが開催されました。しかし、遺贈寄付はまだまだ知られていません。まずは認知度を高めることが必要です。私自身も積極的にメディアに出るなどして、広報活動に力を入れています。また、今後は経済界で活躍されている方たちとも連携して、教会の理念を広めていきたいと考えています。そして、私たちの理念に共感してくださる士業の先生たちとともに、思いやりが循環する社会を作っていきたいと思います。 ※月刊プロパートナー2021年1月号より抜粋いかがだったでしょうか?『プロパートナーONLINE』は、士業のための「明日役立つ」記事やセミナー動画などオンラインのコンテンツに加え毎月1冊、士業専門雑誌「月刊プロパートナー」をお届けするサービスです。月額3,000円のサービスを今なら14日間無料でお試しいただけます。▼14日間の無料体験はこちらから▼ 2021.04.08
  • 【日本経済と会計事務所の未来を考える】今こそ会計人が中心となり中小企業を支えるとき!

    近年、企業の成長戦略としても活況を見せていたM&A。コロナ禍を機に、どのような変化が起きたのか?また、多くの企業の「出口戦略」に携わってきたスペシャリストが考える会計事務所の役割とは?株式会社日本M&Aセンターの金子義典氏に聞きました。 リスク分散のために多角的なM&Aが増加コロナ禍を機に、相談を含めてM&Aの件数は増えています。理由の一つは、今後の経営への不安。先行き不透明な経済状況のなか、「自分の経営力で会社を継続できるのか」「後継者にこのまま引き継いでいいのか」と考える経営者が増えているのです。一方、会社を存続させるためのM&Aにも変化が起きています。以前は、企業の成長速度を早めるため、同業や類似業種の企業をグループ化するM&Aがメインでした。しかしコロナ禍により、事業ポートフォリオの拡充、事業の多角化を目的にしたM&Aが増えています。これは、一つの事業や一つの顧客に依存していると、想定外の事態が起きたときに売上90%減のような大きなダメージを受けると実感したためです。実際に、駅前限定で出店していた飲食店が郊外でレストランを展開している企業を買収する、アパレル会社が日用雑貨を扱う会社を買収するなど、これまであまり見られなかったM&Aが増えはじめています。 出口戦略の支援はまだまだ足りない2025年には、中小企業の経営者の約64%が70歳以上になるといわれています。そのため、後継者がいる118万社に向けて、2018年から事業承継税制の特例措置が始まりました。また、後継者のいない127万社に対しても、マッチング支援の強化や第三者承継促進税制の創設など、国をあげて抜本的な改革が進められていて、10年間で60万社の第三者承継実施を目指しています。ところが、事業承継税制の特例措置を活用するために必要な特例承継計画の2019年度の申請件数は約3800件。2019年のM&A件数は約4000件。どちらも圧倒的に足りていません。株式会社日本M&Aセンターでは、日本M&A協会というネットーワークで全国の会計事務所と連携し、M&Aの支援をしていますが、会員数は約900事務所。60万社の中小企業をサポートしていくためには、まだまだ少ないのです。 中小企業を救うのは会計人のコンサルシフトここで立ち上がるべきは会計人の先生方だと思っています。もっとも経営者から信頼されていて、公平公正かつ客観的立場で経営のサポートができるのが、会計人だからです。そのためにまずは、経営者へのヒアリング、経営相談が入り口になると思います。企業がこれから先も成長を目指すのであれば、経営計画の策定はもちろん、経営通りに進めるためにはどんな手を打つべきかの選択・決断のサポートをする、経営計画のマネジメントが必要です。そして、経営者が選択・決断をするためには、管理会計に踏み込むことが重要です。どの部門、どの時期、どのサービスが利益を上げていて、どこを改善すべきかを数字で出す。コロナ禍で当面の資金繰りを支援している今こそ、会計事務所が資金繰りだけではなくコンサルティングにシフトしなければ、日本の経済は縮小する一方です。借りた資金をきちんと返済していくためには、どのような計画が必要なのか?経営者が真剣に危機と向き合ったタイミングだからこそ、今後の戦略を話しやすいと思うのです。そのコンサルティングのなかでM&Aやそのほかの専門知識が必要になれば、専門業者と連携していただく。先生方が中心となり、さまざまな専門業者と力を合わせて中小企業のサポートしていくことで、日本の経済を救えるのではないでしょうか。 ※月刊プロパートナー2020年11月号より抜粋 ★【先着20名様】「書籍」特別プレゼント★事業承継対策やM&A支援にご関心をお持ちの方に朗報です!先着20名様限定で、人気書籍『M&A思考が日本を強くする JAPAN AS NO.1をもう一度』をもれなくプレゼントします!プレゼントをご希望の方は下記の申込フォームより必要事項を記載の上お申込み下さい!↓↓↓  2021.03.04
  • 案件数300件超のスペシャリストに聞く! 民事信託の最新トレンド

    2030年には認知症により200兆円規模の金融資産が凍結するといわれています。その対策として有効なのが「民事信託」です。そこで、これまで300件超の民事信託に対応してきた司法書士法人トリニティグループの磨和寛氏に、最新のマーケット動向と顧客へ提案する際のポイントを聞きました。 中小企業のBCPは民事信託を入り口にブームが始まり、5年ほど経ちました。マーケットには、どのような変化があると感じていますか?民事信託が普及し始めた当初は、相続税節税や遺留分請求を消滅させるスキームなど、突飛なスキームが目立ちましたが、2018年9月に家族信託の一部無効判決が出たことなどを要因に、「安全性のある民事信託」が求められるフェーズに移行したと感じます。また、当初からあるニーズですが、認知症対策としての信託のニーズは普遍で、直近でも熱を帯びているように感じます。セミナーなどでも「認知症対策」と打ち出すと非常に反響があります。民事信託はさまざまなスキームがある分、いろいろな打ち出しができますが、入り口を難しくしないことが重要です。その点認知症は誰にでも起こりうることで、想像しやすいのです。この数カ月はコロナ禍で不安感が高まったこともあり、問い合わせは増えています。当社はオンライン面談でも対応しているため全国から相談が来ていて、6〜7月は過去最高の問い合わせ数でした。特に中小企業の経営者からの相談が増えています。経営者の場合、どのような切り口で提案するのでしょうか?経営者に関しても認知症対策です。特に、BCP(事業継続計画)の入り口として、まずは「経営者自身の認知症対策」を提案しています。中小企業はBCPを策定しているところは少ないのですが、コロナ禍を機に必要性を感じている経営者は多くいます。トップのマンパワーが大きい分、経営者に万が一のことがあったときのダメージも大きいですから。そこで、民事信託と保険を組み合わせたBCPを提案しています。まずは、経営者個人のリスク対策としての民事信託。その後、IPOやM&Aの準備、事業承継での出口戦略へとつなげます。これから民事信託に取り組む士業事務所であれば、まずは顧問先の経営者、特に 歳以上の経営者に案内するのがおすすめです。また、2019年頃から認知症保険の販売が始まったこともあり、保険の営業マンから「民事信託とセットで提案したい」という声も増えています。民事信託と保険は万が一の「対策」という意味で、とても親和性が高いと思います。 インフラの整った今こそ参入のチャンス民事信託はさらに広がっていくと思いますが、士業事務所が取り組むうえで気をつけなければいけないことはありますか?受託者が信託の目的に従い、受益者のために財産管理をすることが民事信託の目的です。ですから当社では、民事信託本来の目的から外れるもの、例えば相続税の節税を目的とした受益権の複層化、差押回避目的や遺留分の回避などを目的にした信託はお受けしません。これらは税務署や裁判所に否認され、クライアントに損害を与えてしまうからです。こういった点からも、法務と税務どちらの領域も理解したうえで提案することが重要です。だからこそ、専門分野を持ち、倫理観の高い士業が積極的にサポートするべきだと考えています。民事信託は提案型のサービスです。市場での認知度が上がり、ニーズはありますから、きちんと提案できるプレーヤーがいれば案件を増やすことはできます。地方でまだ民事信託案件が少ないのは、ニーズがないからではなく、提案できる人が少ないからです。また、顧客と継続的な関係を築けることで、不動産の売却など関連した提案も出てきます。こういったクリエイティブな提案を楽しめることも重要だと思います。スキームも増え、委託者が亡くなり相続が発生した事例も出始め、行政の対応も見えてきました。ある程度インフラが整った今こそ、参入のチャンスといえます。そのためには、実務を体系的に学ぶ場を用意することも必要です。民事信託を事務所の強みの一つにできれば、さらにお客様のニーズに応えられるようになるはずです。※月刊プロパートナー2020年10月号より抜粋弊社アックスコンサルティングが、磨先生監修のもと発売した、『実務視点から見た民事信託最新論点マスター講座(全3巻)』も必見です。・これから民事信託に取り組みたい・民事信託での案件獲得がうまくいっていないという先生方には特におすすめです。民事信託対応時のフレームワークから、法務・税務のリスクポイントまでを解説したこのDVDとツールで、他事務所との差別化をはかることが可能になります。▼詳細はこちらから▼いかがだったでしょうか?『月刊プロパートナー』2020年10月号では士業事務所のデジタルマーケティング手法や、田舎で伸びる士業事務所の経営戦略法などを詳しく解説しています。『プロパートナーONLINE』は、士業のための「明日役立つ」記事やセミナー動画などオンラインのコンテンツに加え毎月1冊、士業専門雑誌「月刊プロパートナー」をお届けするサービスです。月額3,000円のサービスを今なら14日間無料でお試しいただけます。▼14日間の無料体験はこちらから▼ 2021.02.04
  • 数字は語る!"人材"を重要視する企業が増加 顧問先の将来像を再確認しよう

     経営者の理想を目指しつつ企業の発展をサポートする全国4413社の調査対象のうち、10年後は「従業員が働きがいのある企業」にしたいと回答した企業が、76・3%で最多でした(図1)。この数字は20年前、10年前の同調査結果よりも増加しています。そのほか「収益性の高い企業」や「技術やサービス面で特に評価の高い企業」という回答が続きましたが、これらは減少傾向にあります。 図1 また、「10年後に向けて重要となる経営課題は何か」という問いに対しては「ヒト(人材)」と回答した企業が圧倒的首位の93・0%(図2)。この数字もまた、20年前、10年前の同調査結果よりも増加しています。これらの事実から、経営において〝人材〞を重要視する企業が増えていることがわかりました。 図2  図3 将来の「事業の発展が見込める」企業は増えてきています(図3)。その基盤をさらに盤石にするためにも、従業員の働きがいを高めて定着を促すことは、効果的な策の一つです。今後士業には、経営者が理想とする企業像の実現をサポートすることが求められます。  2018.12.26
  • すべて自分たちで決めるから 当事者意識が生まれる

    『働きがいのある会社ランキング』(GreatPlacetoWork)小規模部門で三度の1位に輝いたアクロクエストテクノロジー株式会社。経営方針や給与まで全社員で決めるというIT企業です。型破りとも思えるこの仕組みが機能する風土とは?取締役副社長の新免玲子氏にお聞きました。 誰が言ったかではなく何を言ったかが大事弊社には、〝MA(MeetingofALL staff)〞と呼んでいる月に一度の全社員会議があります。会社の方針からルールまで、現在取り組んでいるさまざまな施策はMAで決まりました。MAは、〝多数決をしないこと〞〝役職で発言内容の良い悪いを判断しないこと〞が特徴で、最後の一人が納得するまで話し合います。また、〝誰が言ったか〞ではなく〝何を言ったか〞が大事なので、社長の発言も新人の発言も同等に扱われます。社長である私の夫はヘビースモーカーでしたが、MAで〝全社禁煙〞と決まったことで、たばこをやめました。社長が喫煙者だろうが、自分たちが良いと思えばそれを貫くのです。弊社は技術者集団ですから、自分が良いと思った技術を提案したい人が多い。それが、上の人の意見だけで進むのではなく、社員全員で決めるという社風につながっています。こういった方針は、創業時から変わりません。「技術者が楽しく働ける会社をつくりたい」という思いが基本にあります。社長も技術者ですが、前職で経営者とのコミュニケーションがうまくいかない経験をしましたので、「ワンマン社長にならないためには、全員で話しながら物事を決めることが必要」と考えたのです。  成果を数値化して給与も全員で決める全員で話し合って決める最たるものが、〝ハッピー査定360〞という全体査定です(サイト下部参照)。社員の給与を、全社員で話し合って決めます。よく、「ギスギスしませんか?」と聞かれますが、自分と周囲の実力の現状を正しく見ることができれば、オープンにして悪いことは何もありません。もちろん、自己評価と周りからの評価が違うことはあります。このときも、最後の一人まで、全員が納得するまで話します。これができるのは、エンジニアの集まりだということも大きいかもしれません。理系集団なので、論理的で、すべて数字で根拠を求められます。例えば、新人が「このプロジェクトは大変でした」と言えば、「どのくらい大変だったか数値化して」となる。するとグラフが出てきて、「あなたがやった部分は5%だけど、先輩は20%やっている」と言われて、納得せざるを得ない。ギスギスする余地がないんです。また、〝特性領域主義〞が基本です。欠点はマイナスなので、直してもプラスにならない。ならば、長所を伸ばしてプラスを大きくした方が、はるかに価値がある。特性も成長曲線も人によって違いますから、それぞれで伸びていけばいいのです。弊社が目指しているのは、オーケストラです。ピアノもいれば、バイオリンやチェロもいる。自分の担当楽器で一番を目指せばいい。みんながリーダーである必要はありません。全員が集まった時にどんな音色を奏でるのかが、会社としての実力だと思うのです。 ちょっとした受け答えで会社との距離がわかるこの文化をつくってきたのは社員たちです。社長や私がどれだけ言っても、社員が動かなければ意味がない。社長や私のポリシーに社員が賛同し、実行してきたのです。当事者意識が高いんですね。例えば、弊社の玄関は明るい色のカーペットと木目調のドアで、温かい雰囲気にしています。以前はグレーの無機質な玄関でしたが、MAでリフォームが決まりました。私たちのような小企業にとって、そこに数百万円かけるというのは大きいですが、「お客様に良い印象を持ってもらうことの方が大切」と全員が考えた結果です。この玄関を見たお客様が、「きれいですね」と言ってくださったとき、社員が「はい、頑張りました」と答えたのです。普通は「ありがとうございます」だと思うのですが、「自分たちが頑張って、お金を出してきれいにした」という意識が、そう言わせたのでしょう。また、創立記念日にホテルで開く会食は、全員自腹です。5〜7000円しますので、「会社から出そう」と言ったこともありますが、断られてしまいました。「こんな小さな会社が何年も続いているのを喜んでいるのは社員ですから、お金は自分たちで払いたい」と言うんです。感動しました!「それなら、経営者としては別のところで還元しよう」と決めたのです。こんなちょっとした受け答えでも、会社との距離がわかります。例えば、会社のビジョンやポリシーを聞かれて、社員が「会長がつくった社是がありまして……」と言った時点で違いますよね。会長の社是を綿々と守っていくことに当事者意識は出てきません。 経営者に必要なのはポリシーを貫くこと「なぜ、こういう会社になるんですか?」と聞かれることがありますが、会社が変わらないのは、経営者の考え方が原因です。  2018.08.09
  • 難しい会社の相続!事業承継のトラブル

     相次ぐ上場企業の事業承継のトラブル最近でも大戸屋、大塚家具、ロッテ、などの上場企業でさえ、事業承継のトラブルで他の一般株主を巻き込んだ大騒動となっている事例はあります。議決権争奪戦(プロキシーファイト)、取締役の解任等等、公開されているからこそ世間の耳目を集めることになります。上場企業であるためには、上場維持のために必要なコストも高く、何より株主への配慮に注力せざるを得ず、敵対的買収先とも戦い、安定株主対策に翻弄されることになります。創業家にとっては、一旦公開したら、自分の会社ではなくなるので当然とは言え、創業者が経営に携わっている限り、株式を市場で売り抜けることもままならず、厳しいインサイダー規制の対象となります。 未上場ゆえの悩み一方、未上場企業は非公開とはいえ、数多くトラブルがあるものと思われます。未上場企業の事業承継の難しさは、まず相続するものが未上場株式であることに起因します。未上場株式には譲渡制限がついている場合が多く、流動性もないので、簡単に株式を売却して換金することはできません。 2018.05.30
  • このままでは100%潰れる!車検の常識を変えた「ハンバーガーの教え」

    株式会社コバックの小林憲司社長は「革新的経営者」として知られる。町の自動車工場を全国に知れ渡る一大車検チェーンに育て上げた。顧客満足を第一に掲げ、常に新しいアイデアで新しい道を拓いてきた小林社長が次に向かう先には何があるのか?タケ小山が迫った。 「自分の代では潰せない!」一念発起で町工場を大改革トヨタ自動車の城下町豊田市で父と母が二人三脚で始めた自動車工場「小林モータース」。それが「車検のコバック」のはじまりだった。いかにしてファミリービジネスが車検の全国チェーンに発展していったのか?タケの興味はまず、その「小林モータース」時代のことにさかのぼる。オイルの匂いを嗅いで育った小林少年は、当然家業を継ぐものと思っていた。地元の豊田工業高校で自動車整備を学び、しばらく他所で修行したのち、実家が経営する「小林モータース」に入社。整備工をするつもりでいたが、父である社長から思わぬ命令が。「お前は整備はやらんでいい、仕事を増やせ」と言うんですよ。車検営業をやれというんです。営業なんて右も左もわからない。車検には値段がついていないし売りようがないと困りました」(小林さん、以下同)小林さんが仕事を始めた30年前の自動車修理業界は、かつて車が富裕層の贅沢品だったころの古い業態のままだった。その昔はタイヤ交換だけでも当時の大卒の初任給ほどの高額で、いわば「殿様商売」だったのだ。小林さんは振り返る。「例えば人間ドックで、検査前に治療代を見積もる医者はいませんよね?それと同じで、お客さんも工場も車検というとプロ任せで、前もって値段を知りたいという発想がなかったんですよ」もはや車は庶民の乗り物、いつまでも旧態依然のやり方では淘汰される。「『これまでと同じことをやっていたら100パーセント私の代で工場は潰れる!』と危機感でいっぱいになりました」小林さんが車検営業でぶち当たった壁は試練だったが、新しいビジネスのヒントでもあったわけだ。ピンチはチャンス!タケは思わず膝を打った。 汚くて薄暗い整備工場を、明るい車検専門店に!当時、値段のつかない車検ビジネスでは、予想外の高額請求や、頼んでいない部品の交換などへの不満、不払いなどお客さんとのトラブルがよくあった。整備工にしても仕事も5K(危険、汚い、きつい、暗い、臭い)で給料が安く、家庭を持てるような仕事ではなかったので離職率が高かった。「こんなに人が寄り付かない商売に未来はない。業態を変えて車検専門店をやろうと決心しました。車を買った店ではなく、車検は専門店に出しましょう、ということにチャレンジしたんです」 2018.04.09
  • 「大事なのは、勝ち方を知っていること」ネスレ日本社長が語るリーダーの資質

    大学卒業後、外資系企業のネスレ日本に新卒で入社し、トップまで上り詰めたネスレ社長の高岡浩三氏。父親も祖父も42歳でこの世を去ったことを知り、42歳という年齢をゴールとして意識するようなったという。実力主義の外資系で、ブランドでたくさんの人を幸せにできる仕事がしたいと考え、ネスレ日本に入社。40代になると「キットカット」を担当。しかし、CMを打っても売り上げが伸びる時代ではなく、考えた末に誕生したあの有名なフレーズは、強力なブランドイメージを作り上げた。今回は、高岡社長が考えるリーダーの資質と新しいビジネスが生まれる理由についてタケ小山が迫った。 21世紀のイノベーションとは~「ネスカフェアンバサダー」という挑戦目標の一つとして「マーケティングを広めるために力を尽くしたい」と高岡氏は考えている。「これは、社会に対する貢献という分野での目標です。日本は今後、少子高齢化によって国の力は縮小していくことになる。しっかりと稼ぐ方法をマーケティングから学ぶことが必要だ」という。「ネスカフェアンバサダー」という業界の枠を超えて大きな話題となったイノベーションを起こし、大成功を収めたプロジェクトを立ち上げたのも、高岡氏である。「ネスカフェは大きなブランドに育ち、カテゴリー内シェアは70%を占めるまでになったが、これ以上拡大するのは難しいだろうと思った」また、家庭では多くのひとに飲まれている「ネスカフェ」が、一歩外に出ると会社やレストランではほとんど目にしないということにも気づいていた。当時、ネスレには、一杯ずつのカプセルに入ったコーヒーと、それを抽出するマシンがすでに商品としてあった。「このマシンをオフィスに置いていただければ、缶コーヒーよりも安い価格でおいしく、かつ手軽に飲んでもらえる」と高岡氏は考えたが、問題はその仕組みの構築だった。ここで、日ごろから考え、学び続けていたマーケティングが大いに活きることとなった。オフィスに1人、「ネスカフェアンバサダー」という立場の人を作り、その人にマシンのメンテナンスやコーヒーカプセルの定期購入、代金の徴収・支払いなどをお願いする。「ただ、給料も払わずにそんなことをやってくれる人がどのくらいいるのか、全く読めなかった」ので、「北海道でテストを行いました」。その結果は驚くべきもので、1週間で1500人の応募があった。なぜ、無給で面倒なことを引き受けてくれるのか? 2018.04.05
  • “いつも通り”では見限られる!? 税理士が顧問契約を解除される要因とは?

    長期にわたって企業の税務顧問を担当している税理士が、ある日突然、企業側から顧問契約解除を宣告されることがあります。「今までと変わらない形でサービスを提供し続けてきたのに……なんで?」今回は、そのような事態となる前に、“顧問先が契約を解除したがる要因”を探っていきます。 死活問題にもつながる税理士の乗り換えその理由で多いものとは……?経営者が事業を続けていくなかで顧問税理士を変更することは、あまり珍しい話ではありません。むしろ、事業が発展していくにつれ、税理士に求めることは変化していくため、その都度、最適なサービスを提供してくれる税理士に乗り換えていくことは、とても有効な手段だと言えるでしょう。しかし、税理士からすれば、顧客が離れていけば、ゆくゆくは死活問題にもつながりかねません。理由によっては仕方のない場合もあるかもしれませんが、自身の不注意によって招いた事故であれば、今後のためにも修正していきたいところです。そこで、まず知っておきたい、経営者が税理士を変更した理由で多いものは以下の通りです。経営者が税理士を変更した主な理由・税理士の態度が悪い・顧問契約料が高い・レスポンスが遅い・契約しただけで何も対応してくれない・自社事業への関心がない・契約先の税理士事務所が廃業した・担当税理士が亡くなった・経営者と税理士との年齢差があり、話が合わない・手続きや会計処理でのミスがあった上記の理由のなかで1つでも該当するものがあれば、気をつけましょう。 税理士変更のタイミングはいつ?「担当税理士が亡くなった」など、物理的に変更せざるをえない状況を除き、顧問先が「税理士を変更しよう」と考え始めるタイミングはいつなのでしょうか?そこで、税理士を変更しようと考え始めるタイミングはどんな時が多いのか、4つの例を見ていきましょう。 税理士を変更する4つのタイミング1.税理士に対するニーズの変化タイミングとして最も考えられるのが、経営者が当初求めていたサービスと、今求めるサービスが異なった時です。当然のことながら、事業を展開するにあたって、「経理担当が辞めてしまったので経理業務をアウトソーシングしたい」や、「経営が落ち込んでいるため的確なアドバイスがほしい」など、その企業のニーズは刻々と変化していきます。 2018.04.03
  • 10年後に仕事はある?『100万人に1人の存在』になれる方程式

    現在奈良市立一条高等学校の校長を務める藤原和博氏。民間企業のリクルートから東京都では初の事例となる公立中学校校長への転身した藤原さんが、マネジメント力で義務教育の場にさまざまな成果を残した足跡をたどりつつ、30代で発症したある病を機に働き方を見直したことについて振り返った。今回は、公立高校という新たな場での挑戦を選択した藤原さんが、ビジネスマン、そして生徒たちに伝えたいことについてタケ小山が迫る。 「10年後、君に仕事はあるのか?」藤原さんの新刊のタイトル『10年後、君に仕事はあるのか?』(ダイヤモンド社)を手にして、「ドキッとするタイトルですね」とタケは苦笑い。藤原さんは「これからの10年で、一番大きな社会変化は世界の50億人がスマホでつながるということです」と語る。「スマホでつながるということは、映像や動画でつながる、つまり脳がつながるということ。さらにそこにAIロボットがつながっていく」そうなると、今ある仕事の半分は無くなるか、あるいはAIと組んで進化していくことになるはずだ。「一方で、新しく生み出される仕事もある」という。それは、人間が本来しなければならない仕事に行きつくのではないか?そのようなテーマでの授業や講演を藤原さんは各地で行っている。「それって、どんな仕事なんでしょうね」と聞くタケに、「それは生徒たちにブレストさせて考えさせたいんですが…」と前置きをしたうえで、ヒントを与えてくれた。「高度に人間っぽい仕事でしょう。頭をやさしくなでたり、ぎゅっと抱きしめたり。保育や看護、介護の現場での対応という仕事は残っていくと思う」意外なことに、医者の診断業務は続々とAIに取って代わられているらしい。世界中の論文を読み込んで似たような症例を探し出して診断するといった仕事は、AIにはかなわないからだ。「知的な仕事は奪われて、人間的な仕事が残る」と説明する藤原さん。手を使ったものづくりや、インスピレーションやイマジネーションを必要とする編集的な仕事、芸術的なもの、プロスポーツなど「人間の限界を超えていく姿を見せるようなものも残っていくでしょう」と語る。「この本はね」と、藤原さんの目がいたずらっ子のように光る。「高校生に向けて書いたようなふりをして、実はビジネスマンに、あなたの仕事はどうなの?と問いかけているんですよ」。 100万人に1人の存在になろう藤原さんが、校長として生徒たちに一番伝えたいと思っている大事なことは「100万人に一人の存在になろう」ということだ。100万人に1人というのは、オリンピックのメダリスト級の希少性を持て、ということ。ただし、と、こう続ける。 2018.03.28
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