• 【ビッグファーム】企業が本業に集中できる環境づくりをサポート

    大阪、東京、兵庫、福岡に拠点を構える社会保険労務士法人協心。経営企画本部長の吉村徳男氏に、職員一人ひとりを伸ばす秘訣を聞きました。 4拠点が協力し合い、難局を打開して一致団結社会保険労務士協心は1976年、兵庫県で労働保険事務組合として近畿労務管理協会を設立したのがはじまりです。それに続いて大阪・東京・福岡でも労務管理協会を設立。創業者は同じだったため、大阪が本社的な機能を担いつつも、それぞれ別法人として事業展開していました。私が入社したのは2012年。社労士として会社の役に立ちたいという理由からです。それから一年半ほど経った頃、創業者が不慮の事故に遭遇してしまうという出来事が起こりました。絶対的なカリスマである創業者の不在によって、大阪は危機的な状況に陥りました。当時は12〜13名の規模でしたが、次々と職員が退職。慌てて採用するものの、入社しても試用期間中に辞めてしまうなど、自転車操業のような状態になってしまったのです。そんななか、私に白羽の矢が立ち、大阪の所長を任されることになりました。その後、この難局を乗り越えるには、各拠点が心を一つにしなければいけない。まさに「協心」しないといけないということで、2016年に4拠点がまとまって社会保険労務士法人を立ち上げることになりました。それぞれ独自の進化を遂げていた拠点を一つにまとめることは、いわばM&Aのようなもの。間違いなく、法人化は大きなターニングポイントでした。私は、法人化した当初は4人いる役員のうちの一人でしたが、大阪が本社機能を持つ最も大きな組織だったこともあり、現在では、経営企画本部長として全体をまとめる立場を担っています。 日報を活用して、理念と情報を共有法人全体としての組織づくりの根本は、経営理念「四方笑顔」にあります。ここには、協心、顧客、家族、社会の4つの笑顔を叶えたいという思いが込められており、理念を具体的な目標や人事制度に反映させることで、質の高いサービスをスピーディーに提供できるようにしています。組織づくりにおいて気をつけていることは、いかに理念を共有し、心を一つにするかということ。職員交流と情報共有は重要なテーマですが、そのために日報が欠かせない存在となっています。日報は全職員が毎日書きます。さらに、kintoneでほかの支店の職員も見られるようにしています。すると、誰が何をしているのかが一目瞭然。その日の「所感」を書く欄もあり、「顧問先でこんな対応を受けた」「今日は調子が悪かった」といった書き込みに対し、他支店の職員から助言や励ましのコメントが寄せられることもあります。また、プライベートの話題を交える職員もいて、お互いの雰囲気や人となりが自然とわかるのです。全員分の所感を毎日読んでいると、現在成長中の人や、仕事に不安を抱えている人など、職員が置かれている状況がよく伝わってきます。もちろん、私自身も毎日500字程度で必ず日報を書くようにしています。私がどんなことを考えているのかを、職員に知ってもらうことが大切だと考えているからです。テーマは、業務に関することよりも、事業への向き合い方や社会情勢、業界を取り巻く動き、社労士はこれからどうあるべきかなど、広い視野で書くことを心がけています。私たちは単に、給与計算や手続きがうまくできれば良いわけではありません。社会的に、いかに意義の広い仕事をしているかを伝えたい。仮に、いつか職員が退職したとしても、どこに行っても恥ずかしくない人材として送り出したいのです。士業という狭い世界に閉じこもらず、大きな視野を持ち、自分の仕事が世界とどうつながっているのかを知ってもらいたいと考えています。 個人や支店の個性を重視。適した環境で成長する私は自然農法で農業に取り組んでいるのですが、植物は種を植える場所さえ間違えなければ、ある程度放っておいても自然に育ちます。人も同じで、その人に合った仕事やチームに配属すれば、おのずと特性や良さが引き出されてくるように思います。そのために私ができることといえば、一人ひとりの状態を徹底的に見ておくこと。日報や面談などを通して、何を考えているのか、どんな人なのかを理解できるよう努めています。ある程度の自由な環境が確保されてこそ個性を発揮できるというのは、法人においても同様です。協心は別の組織が集まってできたという独特の経緯があるため、法人全体が同じ方向を向きつつ、各支店の独自性や裁量も保っています。一例として、売上など法人全体の目標は設定しているものの、それに応じた支店の目標設定や進捗管理、職員の教育方法などは、各支店長に任せています。拠点それぞれの独立色が強い、カンパニー制に近い組織形態です。また、支店ごとに地域性や顧客層、企業の規模も異なるため、注力する業種や戦略をひとくくりに設定することはできません。大阪支店であれば、社員20〜50人規模の企業を対象に「社長の右腕コース」を設定。人事や教育分野のニーズに対応できるサービスに力を入れています。最近は小規模な企業でも採用や定着のために人事制度を整えたいというニーズが増えており、メインターゲットの一つを50人規模に設定しています。 士業の連携と拡大で日本企業を応援したい画一的なやり方は時代的にも合わないですし、それぞれの特性を引き出せる環境が大切。現在、法人全体で共通する人事制度をつくっているのですが、それも現場に即した管理が支店で可能になるよう調整したいと思っています。法人全体としてのインフラが整いつつある今、各支店の連携を強化しながら、「攻め」に出たいと思っています。全国的に見れば、社労士事務所が近くにない地域もまだありますから、新たな支店展開も考えていきたい。もちろん、過去とまったく同じことの繰り返しではいけませんが、4拠点をまとめてきたノウハウは、今後支店が増えた場合にも活かせるのではないかと思います。また、これからの時代に欠かせないのはデジタル化です。当社でも、kintoneのほか、RPAやBox、KiteRaなど、ひと通りのシステムを導入しています。ただ、業務を効率化するにはデジタル化が必須なのですが、それと同時にアナログ面のさらなる充実も求められているような気がします。私たちの仕事で最も注力するべきことは、お客様と向き合う時間の確保です。社長にとって身近な存在となり、精神的な拠り所として信頼されなければいけない。そのためには、デジタルとアナログの両方を強化していく必要があると思います。私は、すべての日本の会社から、人事・労務機能を引きはがしたいと思っています。さまざまな法改正で給与計算も複雑になるなか、それぞれの会社が自前で給与や労務の担当者を置くのは非効率です。もっと士業を活用してもらうことで、企業が本業に集中できる環境をつくり、国全体を盛り上げていきたい。そのためには、社労士業界全体の気概と、力の結集が必要です。ほかの事務所はライバルでもありますが、それ以上にパートナーだと思っています。方向性が合えば一緒の旗でやっていきたいですし、士業の垣根を越えて会計事務所などとの連携も強化していきたいと考えています。  2021.11.11
  • 【特別対談】社労士生き残りのカギは人事・労務DX

    加速するDX (デジタルトランスフォーメーション)の波。多くの中小企業を顧問先に抱える士業が、DXに取り組む意義とは。社会保険労務士法人スマイングの成澤紀美氏に、株式会社SmartHRの小杉和明氏が聞きます。 社労士がDXに取り組む3つのメリット1. DXを進めることで業務の効率化はもちろん、     場所を問わずに勤務できるようになるため、     事務所と顧問先の働き方が変わる!     また、事務所のBCP対策としても有効2. デジタル化に移行している企業が多く、    「このシステムに対応してくれる士業を探したい」というニーズが増加。     企業側と同じシステムを使えることで新規獲得のチャンスが広がる3.  効率化により、高単価業務への移行が可能に。      また、顧問先の人事・労務担当者の業務も効率化すれば、      人事評価コンサルティングや人材開発の提案がしやすくなり、      サービスの幅が広がる DXを推進することで、戦略的な業務に移行する小杉 私たちSmartHRでは、士業事務所がDXを推進していくことで、顧問先の企業に新しい価値提供ができるのではないかと考えています。成澤先生は顧問先にIT企業を多く抱えて、ご事務所でもさまざまなクラウドシステムを活用されていますが、士業事務所がデジタル化を進めていく意義、また顧問先のデジタル化をサポートするメリットは、どういうところにあるとお考えですか?成澤 一番大きいメリットは、〝働き方が変わる〟ことですね。私は、事務所の職員も顧問先の従業員も、みんなが楽しく仕事をしてほしいと考えています。楽しく仕事をするためには、時間とお金が必要です。時間は1日24時間で全員に平等ですから、時間を生み出すには業務の効率化が必須です。士業事務所も顧問先も、効率することで時間が生まれると、さらに価値の高い新たな業務が見えてきます。私は、そこに意義があると思っています。また、コロナ禍で在宅勤務が普及するなど、働き方が大きく変わりましたよね。実は当社でも、以前から在宅勤務を取り入れていたものの、なかなか根付いていませんでした。だけど、5年分くらいの変化が一気に起きて、みんなの意識が変わり、自分の生活スタイルを見直す人が増えました。多様な働き方を実現するためにも、DXは絶対に必要だと感じます。小杉 私たちも、士業の先生方が顧問先とともにDXを進めていくことで、双方に新たに生まれた時間を働き方改革や人事評価のコンサルティング、人材開発など戦略的な業務に使っていただきたいと考えていて、そのために、クラウドサービスで一号業務の効率化に貢献したいと思っています。ところで、成澤先生からご覧になって、士業事務所、特に社労士事務所では、デジタル化はどのくらい進んでいるものなのでしょうか?成澤 都心部と地方での違いもあると思いますが、すごくデジタル化できている事務所、ほとんどできていない事務所で、二極化しているように感じます。もちろん、給与計算や電子申請で何かしらのクラウドサービスを導入している事務所は多いのですが、「使いこなせているか」「クラウドサービスのメリットをしっかり活かせているか」という点で見ると、まだまだ活用や改善の余地がある事務所も多いのではないでしょうか。 効率化で時間が生まれると、より価値の高い業務が見える。そこにDXの意義があります(成澤氏) デジタル化することで BCP対策も可能になる小杉 成澤先生は、士業事務所向けにもクラウドサービス導入のコンサルティングをされていますが、デジタル化が進んでいない事務所は、どんなところがボトルネックになっていることが多いですか?成澤 士業事務所はミスの許されない業務が多いこともあり、トライアンドエラーを嫌う人が多いんです。最初から完璧なものを求める。でも、クラウドサービスは日々バージョンアップを繰り返していくものです。突然サービスがなくなってしまうこともあれば、気がついたら既存のシステムよりも良い機能がたくさん装備されていることもあります。ただ、その感覚に戸惑いを感じる人は多いのかもしれません。また、業務フローが変わることに不安を覚える職員は一定数います。所長が旗を振っても、なかなか動かないケースもあります。小杉 そういった場合、どのようにサポートするのですか?成澤 大事なのは、不安感を取ってあげること。同時にその人たちに「仕事は無くならない」という安心感を与えてあげることです。例えば地方の場合、お客様がまだデジタル対応できていないこともあります。その場合、アナログ専門のチームとして活躍してもらうことも一つの方法です。とはいえ、デジタル化は進んでいきますから、「お客様とのデータ共有の仕方、チェックの仕方が変われば、あなたたちも楽になるんだよ」ということを知ってもらう。そして、「どうしていきたいか?」を自分たちで考えてもらうことも大切です。小杉 答えを見せるのではなく、考えてもらうことが大事なんですね。ほかにも、デジタル化すべき理由はありますか?成澤 繰り返しになりますが、圧倒的に業務が効率化できることです。情報をお客様が入力し、その情報を預かって社労士事務所で入力し、また同じ情報を会計事務所でも入力している。それを1カ所に集約すれば、今まで100だった業務が25くらいになります。また、「BCP(事業継続計画)対策になりますよ」ということもよく話します。士業はお客様から重要なデータを預かっていますから、ローカルで管理するのは絶対にダメ。セキュリティのしっかりしたクラウド上で管理することが必要です。セキュリティ対策ができていることをアピールできれば、お客様にも安心してもらえます。 SmartHRは 人事DBとしても有効小杉 先ほど、効率化することで新たなサービスが生まれるという話がありましたが、士業事務所のビジネスチャンスを広げるという意味で、デジタル対応していることのメリットはありますか?成澤 あると思います。特に最近の傾向として、お客様の方が先にクラウドサービスを使っているケースが多いんです。実際当社にも、「SmartHRを導入したいので、対応できる社労士事務所を探しています」というお問い合わせが増えています。すべてが成約になるわけではありませんが、月に10件くらいは来ますよ。小杉 そうですか! それは想像していたよりも多いですね。実際にお問い合わせが来た際やお客様に提案される際に、他社のシステムとも比較されると思うのですが、SmartHRが向いている企業かどうかというのは、どこで判断されていますか?成澤 「従業員に使ってもらいたいか」というのは一番のキーワードです。SmartHRはUI(ユーザーインターフェース/サイトの使いやすさ)が良いので、「従業員に自分で情報を入力してほしい」「管理を簡単にしたい」という場合は特におすすめしています。人事・労務を専門に担当する社員がいない企業や、人事担当者の労務周りの業務を効率化して人材開発や採用に力を入れたい企業などにはハマりますよ。また、最近では人事・労務領域のクラウドサービスがたくさん出てきていますが、多くの企業が悩んでいるのが、「人事データベースの核をどうするか」ということ。その点、SmartHRは勤怠管理や給与計算などでAPI連携しているシステムが多いので、人事データベースの基盤としても使いやすいと思います。小杉 ありがとうございます。私たちも、人事情報の収集のしやすさ、使い勝手の良さという点に関しては、強みを感じています。逆に、SmartHRのデメリットはどのあたりにあると感じていますか?成澤 士業事務所としての視点ですが、電子申請のバリエーションでしょうか。申請の内容によっては、他社のシステムの方が使い勝手が良いこともあります。その場合は、SmartHRからデータを落として、他社のシステムで申請しています。 ただ、公文書などはすべてクラウドサーバー上で管理して、二重管理にならないようにしています。特に当社の場合はいろいろなシステムを使っているので、管理するデータは1箇所に集約することで効率化しています。 事務所で運用するなら UIの良さは絶対必要小杉 ご事務所内での使い方について、もう少し教えてください。SmartHRはUIが良いというお話がありましたが、職員さんからの評判はいかがでしょうか?成澤 とても良いですよ。当社の場合、未経験で入社する職員も多いんですね。それこそ、「事務職は初めてです」という場合もあります。採用する基準は、〝華があること〟と〝自立していること〟なので、実務経験は問いません。もちろん、基本的なパソコン操作ができるかどうかは確認していますが、「労務関係のシステムは使ったことがありません」という人もいます。さらに、使っているシステムの数もかなり多いと思います。だからこそ、UIが良いというのは絶対です。そうでなければ、事務所のなかで根付かなくて、職員からブーイングが出ます(笑)小杉 なるほど。未経験の方でも使いやすいというのは、システムを導入して運用するうえでも重要なポイントですね。評判が良くて安心しました(笑)成澤 あとは、必須入力項目が多いシステムだと、情報が100%集まっていなかったときに業務が止まってしまうんです。それはかなりのストレスです。でも、SmartHRの場合は比較的自由に設定できるので、そういった点でもストレスは少ないですね。小杉 ありがとうございます。おかげさまで、SmartHRは少しずつ認知が広がっているのですが、まだまだ努力が必要です。社労士の先生方が新たな領域に挑戦できるよう、ご事務所へのサポートはもちろん、顧問先企業の人事・労務担当者の効率化にも貢献していきたいと思います。DXを進めることで戦略的な業務に移行できる。そのための効率化に貢献したいと考えています(小杉氏) クラウド達人・成澤氏に聞く! SmartHRのメリット&デメリット●メリットUIが良いため、未経験者でもすぐに使いこなすことができる。また、入力項目なども比較的に自由に設定できるため、操作へのストレスが少なく、事務所でも顧問先でも運用しやすい●メリット勤怠管理システムや給与計算ソフト、タレントマネジメントシステム。採用管理システムなど、多くのサービスとAPI連携しているため、人事データベースの基盤になるシステムとして使える●デメリット電子申請の内容によっては、他社のシステムの方が使い勝手が良いことも。その場合は、SmartHRからデータを落とし、別システムで申請。ただし、公文書などの管理場所は一つにすることがポイント登録社数4万社以上。人事・労務の大幅な業務効率化を実現。SmartHRの詳細はこちらから※社会保険労務士の方は、下記より資料請求が可能です。社労士専用問い合わせフォーム  2021.10.29
  • 【ビッグファーム】〝社会事業家〞として地域に元気を発信する

    社会保険労務士の枠を超えた活動で中小企業を支援し、25名規模の事務所へと成長させた村松貴通氏。〝社会事業家〞と呼ばれる村松氏の志を紐解きます。 両親や職人の思い出が、社労士を志した原点私の実家は造園業を営んでいて、幼少期からいつも電話番をしながら、懸命に働く職人たちや父の姿を見ていました。毎日、泥だらけで汗まみれ。働くことの大変さを目の当たりにするとともに、子ども心に「いつか自分も働く人の役に立ちたい」と感じていました。社会保険労務士という資格を知り、社労士になろうと決めたのは、高校2年生のとき。少子高齢化や年金、外国人労働者といった社会問題は、当時から取りざたされていました。人が好きで、働く姿に魅力を感じていた私は、「社労士は会社も労働者も、みんなを幸せにできる仕事だ」と考え、この道を志したのです。東京の大学で法律を学んだ後は、地元・静岡県浜松市の信用金庫にUターン就職。すぐに社労士にならなかったのは、さまざまな企業を見て視野を広げたかったからです。その点、信用金庫は地域の中小企業をくまなく回り、経営者や従業員と膝を交えて付き合うことができます。また、「地元の企業のために頑張りたい」という思いもありました。社労士として独立開業したのは、2002年、25歳のとき。若くして開業した方が、より多くの出会いに恵まれ、より多くの企業を救うことができると考えたのです。 徹底した現場主義と、士業の枠を超えた支援開業時、具体的な経営計画はありませんでしたが、「一代で職員20名くらいの事務所にできたらいいな」という青写真は描いていました。おかげさまで、この目標は開業から10年ほどで達成することができました。お客様ゼロ、売上ゼロからのスタートでしたが、ここまで成長できた原動力は、徹底した〝現場主義〞です。開業当時は今ほどインターネットが普及しておらず、集客の主流はDMかFAX。しかし、そんな資金はありませんから、できることといえば飛び込み営業でした。そこで、雨の日も風の日も、スーパーカブのハンドルを握り、2年間で約1万件を訪問。門前払いもたくさんありましたが、信金で学んだ根性で回り続けた結果、だんだんと経営者から相談を受けるようになりました。現場主義の原点である企業への訪問は、現在も定期的に続けていて、その様子は事務所のホームページで『現場リポート』として紹介しています。当社は今年、開業20周年を迎えます。常に心の根底にあるのは、「世の中に元気とインパクトを与えたい」という思い。自営業者の息子というルーツと、人が好きで、働く人にエネルギーを与えたいという気持ちが、私を突き動かしてきました。多くの企業を見てきて実感したのは、経営者のニーズに応えるには、手続きや給与計算業務だけでは不十分だということ。そこで、当社が労務環境を審査し、一定の水準を満たした企業に認定マークを付与する『プラチナホワイト企業認定』、独自カリキュラムで若手経営者や後継者を育成する経営塾、全国の人事制度の成功事例を地元に紹介する『浜松人事フォーラム』の開催、文部科学省人材確保支援事業の実行委員に就任するなど、士業の枠にとらわれない事業も積極的に行っています。また、より幅広くアドバイスできるよう、2015年から2年間大学院に通い、MBAを取得。2020年には、SDGs公認ファシリテーターも取得しました。最近、私は社会保険労務士ではなく、〝社会事業家〞という肩書きを使っています。これまで以上に顧問先の役に立ち、社会に元気を与えるためには、「社労士という肩書きをなくしたときに何ができるか」が重要だと考えているからです。そして、これまでとは違う世界に一歩踏み出したときに、逆に社労士という資格が価値を帯びてくるのではないでしょうか。 働きやすい環境を整備し、女性の活躍をサポート事務所の職員は現在25人ほどいますが、全員女性です。私の苦手な細かい計算や書類作成を的確に遂行してくれるおかげで、私は労働トラブル対応やコンサルティング、従業員教育などに集中でき、新たな挑戦にも安心して取り組めています。「女性ばかりだと、まとめるのが大変では?」と言われることもありますが、職員が力を発揮できる職場づくりは、経営者の大切な仕事です。例えば、基本的な労働時間は設定しつつ、ライフスタイルによって出勤や退勤時間は自由、中抜けもOKなスーパーフレックスタイムを導入。さらに、年間休日は125日で、有休取得率はほぼ100%。しっかりと休日を確保しているからこそ、自然とチームのなかで調整しながら、助け合って業務を進めてくれます。子育てなどで同じ苦労してきた女性同士ですから、お互いの大変さが理解できるのです。また、半期に一度は全員と面談しますが、業務の細かいことには口出しせず、現場に任せるという方針がうまく機能しているのかもしれません。もちろん、職員同士で何かあった場合は、私がクッション役になって話を聞きます。要所要所で懇親会を開催したり、誕生日や仕事の節目にはケーキを全員にプレゼントしたり、基本的な気遣いも大切にしています。 社会に元気を与える、名実共に輝く事務所へ現在は、日本全国からオンラインで相談が来ますが、すぐに現地訪問が必要な場合は、各地の信頼する社労士事務所と提携してサポートしています。事務所を大きくして支店展開することは考えていません。浜松にしか拠点がないことで、事務所のカラーが濃くなり、ブランド力を高めると思うからです。規模や売上を追い求めるのではなく、「事務所があることで、みんが元気になる存在」になること。そして、それを継続することが私の責任です。訪れた人に元気を与えられるよう、事務所の玄関には私の原点であるスーパーカブを展示しています。また、絵画などで美術館のような空間を演出。サービス面や事務所の空間、職員の接客、どれを取っても「人を呼べる事務所」であることを目指しています。事務所が輝いていれば、おのずと人が引き寄せられますから。事務所の価値を強固にするには、地道な努力を継続しなければなりません。経営に近道などなく、自己研鑽、健康管理、社会貢献すべてが不可欠。世の中の改革に挑む経営者が増えるよう、お客様と共に、「負けてたまるか」という根性で頑張りたいと思います。 【村松流オフィスづくり】〝見せる〟オフィスで訪問者に元気を発信!社会保険労務士法人村松事務所では、サービス面だけではなく、オフィスに来ただけで元気になれる事務所を目指し、村松氏の原点であるスーパーカブや絵画を展示。1万件の飛び込み営業を実行した村松氏のエピソードに「勇気をもらいました」と話す人も多いという。1万件におよぶ飛び込み営業の〝相棒〟スーパーカブ美術館のような空間を目指し、絵画なども展示している  2021.10.28
  • 【士業事務所のエンゲージメント革命】権限移譲とマトリクス組織で“所長のいらない事務所”に変革

    これからの士業事務所経営には、職員と事務所が相互に成長をサポートする関係「エンゲージメント」が重要となります。今回は、権限委譲によって職員が自発的に動く組織へと変革中の社会保険労務士法人イデアの取り組みに迫ります。 組織変革のきっかけは「諦め」と「感謝」当社は創業して25年になりますが、4〜5年前から組織改革に取り組み始めました。目指したのは〝所長がいるのかいないのかわからない組織〞。職員が自分のやるべきことを自分で考えて、所長がいないときでも自ら判断して業務を進めることができる組織です。私は今年で59歳。体力的にも最前線で働き続けるのは限界があると考えていました。また、業務を職員に任せたほうが事務所の将来のためにもなります。といっても、以前の組織は「所長とその他大勢」という構造でした。私には「お客様に対して完璧でありたい」という理想があり、創業当時から熱意を持って仕事をしてきました。それこそ、朝は一番早く事務所に来て、最後に帰る日々です。ただ、この熱意が職員にはなかなか伝わらなかった。私が口うるさく言っても、当然ながら職員との温度差はあり、業務を任せても「忙しいから」となかなか進まない……。現在、当社には職員が27名ほどいるのですが、実は3年前まではパートスタッフを含めて8名ほどの規模でした。採用に力を入れて拡大していこうと考えても、そんな状態ですから、育てられる環境もない。大きなトラブルや絶体絶命のピンチはないけれど、職員との距離に一人で悩む日々でした。組織改革が進み始めたきっかけは、「諦め」です。「20年以上経営してこの状態なら、自分も大したことはない」「もう、自分で走り回るのはやめよう」「私が職員に対して注いだ愛情の、1割でも2割でもお客様に向けてくれたら」と、皆を後ろから応援することにして、「頑張ってね」「ありがとう」と伝え始めました。すると皮肉なことに、職員が頑張り始めたのです。私が無理やり引っ張っていたことが、職員の自主性を奪っていたのですね。「なんで気づかなかったのだろう」と愕然としたのを覚えています。 売上予算を持たないマトリクス組織へ移行職員に権限委譲することで、責任感が生まれ、進んで仕事をするようになりました。例えば、それまで新規のお客様との面談は私が行っていたのですが、職員に任せました。私が同行しないので、どうやってお客様に提案すればいいか、必死に考えるようになったのです。当社はユニット制なのですが、ユニット長には新規顧客開拓のほか、メンバーの労務管理や教育、セキュリティ対策などに関する権限も与えています。一方で、ユニットを横断する形でミッションチームを設け、マトリクス組織をつくりました。ミッションチームは、RPA、CS向上、給与計算、業務改善の4つがあり、事務所全体の改革を担います。各チームにリーダーを置き、予算も渡し、好きなように取り組んでもらう。自分たちの権限で会議を開いていいし、必要な情報を得るためにセミナーやイベントに参加したり、新しいソフトを購入したりしてもいい。ミッションチームのリーダーはユニット長とは別の職員なので、業務を進めるためのリーダーと、事務所全体の改革を行うためのリーダーがいるイメージです。こうして権限を委譲したことで、各チームから自発的にさまざまな提案やアイデアが出てくるようになり、事務所が活性化しました。権限を委ねると同時に、「年間の売上予算を持たない経営」に移行しました。これは株式会社セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文名誉顧問がおっしゃっていたのですが、「売上予算の達成ではなく、お客様に良い商品を適正な価格で届けることが目標だ」と。売上はあくまで結果であって、そこを目標にはしないという意見にとても共感しました。私も、事務所を経営していくうえで、目の前のお客様に対して最善を尽くし、顧客満足度を100%にすることが目標であるべきだと考えたのです。一生懸命仕事をしてお客様の琴線に触れることができれば、自然と紹介は増えますし、仕事が増えたら人を入れればいいだけの話ですから。 研修や未来会議でエンゲージメントを向上組織を変えていくにあたって、メンバー一人ひとりがルールを理解して意思決定するティール組織、そしてエンゲージメントについて勉強しました。ただ、何冊か本を読んでみたのですが、私自身、具体的に何をしたらいいのかわからなかったのです。また、職員にもエンゲージメントを理解してもらうことが必要ですから、アックスコンサルティングのエンゲージメント研修を受講しました。研修を受けたことで、ユニット長たちが自分のユニットはもちろん、事務所をどういう形にしていくか、誰にどんな声をかけるべきかなどを考え始めたのは、とても大きな収穫だったと思います。ほかにも、エンゲージメントを高めるために、今期から未来会議というものを始めました。未来会議は、事務所の方針や理念に関わる話し合い、SDGsの取り組みなどについてアイデアを出し合う場です。2020年の秋に第二新卒で入った職員と、新卒3年目の職員という、事務所で一番若い2名に運営を任せています。彼女らが毎月テーマを決め、全職員からアイデアを募るのです。職員が持っている情報を交換する場やコミュニケーションの場としても機能しています。さらに、福利厚生を充実させるためのTAF(タフ)チームも設置。例えば職員の子どもを連れてきて、お父さん、お母さんの仕事を見てもらう親子参観日や、阪急電車のクイズラリーをチームで解いて回るゲーム大会などを企画しています。TAFチームの発案で、さまざまな福利厚生を2万円の範囲で補助するカフェテリアプランもつくりました。2万円の範囲であれば、旅行に行く際の足しにしたり、人間ドッグや歯科検診の受診、社労士試験の受験料など、好きに使えます。また、福利厚生の一貫として、職員の配偶者の健康診断の費用も一部負担しています。 一番であることを捨て、否定せずに任せる私は、「日本で一番面白い、日本で一番自由度の高い社労士事務所」をつくりたいと思っています。そのためには、所長の権限を大幅に委譲していくことが必要です。その際、大切なことは、「トップが口を出さないこと」。もし職員のアイデアがイマイチだと思っても、否定せず、一緒に考えることが重要です。そして、「所長が一番でなければいけない」という考えを捨てること。所長は職員よりも法改正に詳しくないといけない、お客様への対応もしないといけないというプレッシャーやプライドもあります。しかし、そういったことに追われると、事務所のなかを見る時間が後回しになってしまう。私は、法改正の本を読んだり、勉強のためにセミナーに行くことを思い切ってやめました。営業もしませんから、今では私のスケジュール帳は空欄ばかりです(笑)。もちろん、すぐに切り替えられたわけではありません。組織改革を始めて2年くらいは我慢の日々でした。でも、個々の職員が自立し、所長よりも目立つ存在になるくらいでなければ、事務所はもちろん、士業業界全体も成長しないと思っています。  2021.10.26
  • 危機管理のプロが教えるリスクマネジメント

     第1章 天災などの緊急事態下でも危機管理対策で事業継続経営活動には、コンプライアンス遵守といった法整備や、自然災害・感染症への対策と備えが不可欠。〝何か〟が起こってからでは、取り返しのつかない場合も。そこで危機管理対策のプロである田中直才氏が、事業を継続するための危機管理対策の重要性とポイントを解説します。 危機管理対策が今後ますます重要に新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが世界を席巻しています。2020年3月にWHOがパンデミックを宣言してから1年以上経過しましたが、これほど長期間、コロナ禍が続くとは誰も思っていなかったのではないでしょうか。2009年に新型インフルエンザが一部で猛威を振るいました。このときが感染症蔓延という災害に対する危機管理を検討する絶好の機会でした。この世界的なパンデミックという災害に際し、万全とはいかないまでも、ある程度の備えをされていた事務所はどれだけあったでしょうか。新型コロナウイルス蔓延という大災害によって、感染症対策が焦眉の急となっています。対策には万全を期すべきですが、我々が警戒すべき災害は感染症だけではありません。日本で業務をする限り、地震や台風などの自然災害に遭遇するリスクも、避けることはできません。特に地震は、日本中どこにいても被災する可能性があります。とりわけ、発生確率が高いとされている東海地震や東南海地震、南海地震、首都直下地震などで甚大な被害が発生すると予測されている地域では、特に注意が必要です。いつ発生するかわからない地震は、施設などの物的被害だけでなく、従業員や顧客などに死傷者が発生することもありえます。従業員とその家族に対する安否確認手段の整備など、応急対応に関する体制の確立が求められます。また、火山学者の間では、富士山はいつ噴火してもおかしくないといわれています。噴火に伴う溶岩の流出や火砕流などによる被害は限定的ですが、火山灰によって、大きな被害が発生すると想定されています。噴火の規模、風向きによっては、関東地方でも10㎝の降灰があると想定されており、停電や交通機関の麻痺などの被害が長期間にわたるともいわれています。 不測の事態に備えた事業計画策定が肝感染症蔓延や地震などの災害により事務所の業務が中断することは、なんとしても避けたいところです。そのような事態に陥ることがないよう、BCP(BusinessContinuity Plan/事業継続計画)を策定することが求められます。BCPとは、会社・事業所が自然災害や大規模テロなどの緊急事態に直面しても、事業を絶えることなく継続させていくための手段や手法などを取り決めておく計画のことです。緊急事態は突然発生します。策定したBCPにもとづき、有効な手立てを講じないと、事務所機能が中断し、顧問先をはじめとする関係各所に迷惑をかけてしまうことになりかねません。BCPを策定していない事務所は、ぜひともこの機会にBCP策定を検討してみてください。2020年の帝国データバンクの調査によると、BCPを策定している会社は、現在策定中も含めると、調査対象約2万2000社中26・3%です。まだまだBCPを策定していない会社が多く存在します。先生方の顧問先においても、BCPを策定されていない会社が多いのではないでしょうか。いつ襲ってくるか分からない自然災害に備え、顧問先などに対してもBCPの策定を奨励することで、顧問先を守ることができます。災害に遭遇した際、何も備えをしていない会社では、事業の復旧が大きく遅れて事業の縮小を余儀なくされたり、廃業に追い込まれたりする恐れがあります。一方、BCPを導入している会社では、緊急時でも中核事業を維持・早期復旧することがきるうえ、その間の対応が取引先などから評価され、緊急事態前よりも業績が向上したとの例もあります。このように、BCPを導入しているかどうかで災害時の事業存続や業績に大きく影響します。自らの事務所はもちろん、顧問先を守るうえでも重要ですので、ご興味がある先生は、ぜひ当事務所までご連絡ください。今回は、災害などの外部要因に対する危機管理の必要性について、BCPの策定を中心に言及しましたが、備えるべきリスクは外部要因だけではありません。所内のハラスメント、不適切なSNSの発信による炎上、重大なコンプライアンス違反などの内部要因から発生するリスクについても、具体的な危機管理策を講じておく必要があります。第2章では、内部要因から発生するリスクについて取り上げ、そのリスクに対して講ずべき対策について言及します。 第2章 規程・罰則・教育の徹底でSNS炎上を回避TwitterやFacebook、YouTubeといったSNSは、認知拡大やブランディング、ファンづくりにおいて、士業事務所でも不可欠の時代に。その一方で、何気ない投稿が命とりになる恐れもあり、「炎上」してからでは、取り返しのつかない場合も。SNS上での炎上防止策を解説します。 便利なツールだからこそ利用ポリシーを明確に第1章では、事務所経営上の外部リスクとして、地震や台風、感染症などの自然災害を取り上げて、その対応策について言及しました。安定した事務所経営をしていくうえでは、このような外部リスクだけではなく、セクハラ・パワハラなどのハラスメントや、能力や素行に問題がある従業員に対する対応など、社内に潜むリスクへの備えが必須です。内部リスクは多岐にわたるため、各種リスクに応じた対策を講じる必要があります。今回は、昨今問題視されているSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の、「従業員による発信に関するリスク」について言及します。SNSの発展は目覚ましいものがあります。手元にスマートフォンさえあれば、誰でも気軽に自分の考えを世の中に発信することができるようになりました。プライベートで差し障りのない発信をしているうちは問題ありませんが、世間から反感を買うようなモラルを逸脱した発信をすると、いわゆる「炎上」という状態になり、世間からバッシングの集中砲火を浴びることになります。特に士業業界のビジネスでは、「信用・信頼」が大事な要素ですから、SNSでの炎上トラブルは死活問題です。万が一、事務所と関わりがないところで一個人が炎上してしまい、その個人の所属先が特定されてしまうと、世間からの非難の目が所属先にも向けられることになります。また、顧客の経営数字や給与情報など、重要な個人情報を多く扱う士業事務所においては、従業員によるSNSの発信によって個人情報が流失するといった事態は、絶対に避けなければいけません。軽い気持ちでSNSに投稿したことで、これまで事務所が築き上げてきたブランドイメージが一瞬にして崩れ去ってしまうリスクが、どの事務所にも内在しています。「SNSはプライベートなことだから」と、個人の自由に任せるのではなく、危機管理の観点から、事務所として何らかの対策を講じることが強く求められます。これらの対策として、大きく二つあげられます。対策①ソーシャルメディア利用ポリシーなど規程を整備する顧客情報や人事情報など、事務所内で保有している機密情報は、事務所の公式アカウントはもちろん、個人アカウントでも発信を全面禁止とする規程を策定し、抵触する行為をしたものは懲戒処分と明示しておきます。また、ソーシャルメディア利用ポリシーなどを定めて、SNS使用に関する事務所としての考え方を明確にしておきます。対策②従業員に向けた研修の実施一昔前に話題になりましたが、某外食店のアルバイト社員が、客に提供する料理をゴミ箱に入れる動画をSNSで公開し、炎上しました。これをきっかけに、ほかの外食店でも同じような動画が次々と発掘され、投稿される度に炎上し、報道されたりと、社会的に物議を醸しました。誰が見てもおかしいと感じることであっても、人はSNSに投稿してしまいます。それは、理性より承認欲求が勝ってしまうことが大きな要因の一つと考えられます。従業員に対してリスク研修をする際には、この点も念頭におき、一時の承認欲求を満たすために行った行為が、自分や事務所にどう跳ね返ってくるか想像できるように説明することが重要です。また、研修の際には事務所が策定したSNS使用に関する規程内容について、十分な時間をとって説明します。違反した際の懲戒処分の内容についても説明し、事務所として違反者に対して厳しい姿勢で臨むことを明確にしておきます。以上、従業員の不適正SNSの発信に絞り、必要なリスク管理について言及しましたが、先述のとおり、内部要因に関するリスクは、不適切SNSだけではありません。事務所に内在するリスクをすべて洗い出し、それらに適切に対応していくことが求められます。―――――――――――――田中直才氏の著書『中小企業の危機管理がわかる本』を抽選で5名様にプレゼント!下記アンケートに回答いただいた方のなかから抽選で5名様に、リスクマネジメントのプロフェッショナル・田中直才氏の著書『中小企業の危機管理がわかる本』をプレゼント!アンケート回答はこちら↓↓https://forms.gle/rAsFxZZ8JTEa2tB59『中小企業の危機管理がわかる本』単行本:176ページ出版社:セルバ出版発行日:2021年6月9日自然災害への対応、社員の不適切SNS対策、トラブルメーカー社員に対する対応など中小会社に影響のあるリスクとその対応策を実務的に解説。机上の空論ではなく、理論と経験をミックスすることで得られた独自の見解を踏まえ、具体策を提示しています。  2021.10.22
  • 【広瀬元義の勝手に士業業界トレンド】新時代に最適な評価方法のカギは職責・職務を明確にすること

    リモートワークの導入や働き方の変容によって、最適な評価方法が問われています。経験をベースにした職能給を採用するべきか?それとも、業務の専門性を重視した職務給か?そのヒントについて、人事制度と生産管理のスペシャリスト・株式会社メディンの西村聡氏に、本誌編集長・広瀬元義が迫ります! 士業事務所こそ職務ベースの評価を!広瀬 昨今、職務内容を明確にしたジョブ型の働き方を導入する企業が増えています。ジョブ型は職務給が基本ですが、実際には多くの企業が年功序列による職能給に近い形の給与体系になっていると思います。西村さんは職能給と職務給についてどうお考えですか?西村 職能給とは、企業が個人の能力や経験に対して評価し、支払われる賃金です。しかし、能力の価値は目に見えません。ですから、職能給だと年功序列にならざるを得ないのが、日本企業の現状です。しかし、仕事に対する責任や実行力を理解・向上させるには、職務給がいいと私は考えています。職務給を簡単に説明すると、リンゴの値段と同じ原理です。市場における、その個体(=人材)の価値=値段、つまり給料になります。その考え方でいけば、リンゴそのものの価値(=仕事ができること)があることが前提になるため、個々の能力は関係ありません。広瀬 なるほど。では、職能給から職務給へ移行するには、何に注意して行うべきでしょうか?西村 基本的に、職務給は〝企業内における仕事の価値〞によって決まりますから、自社内における価値序列が明確であれば、合理的な職務給を導入できるはずです。しかし、多くの日本企業には明確な職務のくくりがないのが実態です。たとえば、経営陣が「誰が何をするべきか」ということを明文化していない企業では、従業員の連携不足が生じて、無駄な業務が発生したり、ミスも起きやすくなります。職務とは、あくまで「目標や目的を前提にして、そこから展開される機能が〝仕事〞として発生して、はじめて個人に与えられる」という考え方に基づいたものです。日本の製造業の生産現場では、個人に対して無駄を省いた最適な職務を割り当てている場合も少なくありません。それにもかかわらず、職能給という日本独特の文化に固執してしまっているのが実情です。広瀬 〝ねじれ〞現象が生じているのですね。しかし、業務経験のない新卒を採用する場合、3年くらいは職能給にして、仕事を覚えてきたら職務給へ切り替えるというようなハイブリッドが良いのではないでしょうか?西村 日本の社会構造からすると、ハイブリッドにならざるを得ないのかもしれませんが、私は、新卒社員などの若手であるほど、職務給のほうが適していると思います。職務給は仕事の基本構造を理解させるために有効ですから。職務給の本質は、職責の理解にあります。職責には、どれだけの量か(量的基準)、どれだけの正確さ・出来栄えか(質的基準)、いつまでにまたはどれだけの時間の範囲で仕上げるのか(時相基準)、どのような方法でなされるのか(方法基準)、という4つの基準があります。これらを職位ごとに明確にして、仕事やビジネスの基本構造・本質を理解させることで、「自分が何をするべきか」を明確にします。すると、理想と現実を埋める目標設定がしやすくなるので、プロフェッショナルが育ち、生産性も上がります。それが職務給の大きなメリットなのです。広瀬 つまり、一人ひとりの業務の可視化が重要となるという訳ですね。では、職務給を導入するために必要なことを教えてください。西村 現場の状況を見て、まずは職務分析をすることが大切だと思います。その理由は、実際の現場での標準作業や標準時間の設定ができて、はじめて改善可能な状態にできるからです。海外では、標準作業や標準時間をそのまま人事制度にあてはめるというシンプルな構造の企業が多いですね。日本でも、特に大手企業では、現場で標準作業書や標準時間を設定している企業も多いと思います。しかし、人事が現場を理解していないために、〝ねじれ〞が起きているケースも少なくありません。一方、中小企業は現場と人事が乖離しにくい環境なので、そのような規模間の企業こそ、職務分析をして業務内容やレベルを可視化することをおすすめしています。そうすれば、人員の割り振りも容易になります。広瀬 職務分析を行うにあたって、「職務記述書(ジョブディスクリプション)」の作成が役に立つと思いますが、いかがでしょう?西村 そうですね、特に給与設定や評価、教育に効果的です。もし、従業員が職責を理解していない状態で就業させているようなら、生産性の向上や企業の成長は実現できません。ですから、職務記述書作成を通して「仕事が変れば賃金が変わる」「結果を出さないと昇給や賞与がない」など、職責について従業員に教えることは重要です。広瀬 職務記述書を作成する際の注意点はありますか?西村 課業と作業、動作の3点を明確にすることが重要です。「キャベツを切る」という仕事を例に挙げると、動作とは「包丁を探す」「握る」「切る」などに当たります。そして、作業とは個々の動作の積み重ねです。さらに、課業とはタスクのことで、個人がなすべきこととして割り当てられた〝作業〞をすべてまとめた業務を指します。これらのちがいを明確にして、動作ではなく作業を書き出して、それらを課業としてくくることがポイントです。適切な職務分析による職務記述書は、目標設定やプロフェッショナルの育成、そして生産性向上のカギになります。近年、このような職務給に関する取り組みを実践する中小企業も増えたと感じています。広瀬 最近は、士業業界でも定型業務よりも付加価値業務が求められてきています。個々の仕事の幅が広がるなかでも、職務での評価は可能でしょうか?西村 職務評価を実現するためには、企業がクリアすべき二つの課題があります。一つは、従業員に対して職務や職責に関する教育を行うことです。もう一つは、職務を考えるうえで「1日8時間の仕事しか与えてはいけない」という原則を守ることです。8時間以上必要な場合は、「職務を行う人材がもう一人必要」と考えなければいけません。これらはすべて経営サイドの問題ですから、職務分析を通じて、まずは自社の職務構造やビジネスモデルなどを見直し、適切に対応することが不可欠です。職務給に関する取り組みは、小企業や、事務作業が多くて職務評価・職務分析がしやすい税理士や社労士などの士業業界で行いやすい取り組みといえます。ですから、まずは事務所で取り入れてみて、そして、顧問先にもサポートとして提案していただきたいと思っています。広瀬 働き方の多様性によって、ますます年功的な評価よりも職務をベースとした評価が主流になってくると確信しています。まずは、士業業界から中小企業へ、時代にマッチした評価制度を取り入れて生産性向上を促進させたいですね。 ―――――――――――――【2021年版「士業事務所の給与評価」好評発売中!】月刊プロパートナー2021年11月号(10月20日発売)では、毎年恒例となった「士業事務所の給与・評価」にまつわる全国アンケート調査を実施!3回目となる今回は、人材の定着と最適化にフォーカスし、盤石な組織をつくるための取り組みも大調査します。さらに、従業員の成長を支援する士業事務所の人事制度の運用事例も大公開!士業業界の「給与・評価」事情から人事制度設計の仕組み、最新トレンドまですべてがわかる1冊です。月刊プロパートナー2021年11月号の詳細・お申込みはこちら  2021.10.20
  • 仕事を通じて仲間を持ち働くのが楽しい会社をつくる

    これからの事務所経営には、職員と事務所が信頼しあい、相互に成長をサポートする関係、つまりエンゲージメントが重要となります。今回は、プロジェクトチームで組織改革に挑むTOMAコンサルタンツグループの取り組みに迫ります。 新たな時代に合わせてTOMAをシフトせよ――まずは、TOMAコンサルタンツグループが目指す組織像を教えてください。陣内 昔から、「明るく・楽しく・元気に・前向き」という経営理念を掲げていて、この理念をベースにしたチームワークを大切にしています。士業は専門性が高い仕事なので、会計事務所なら一人が何十件も担当を持って、自分のやり方で仕事をしているのが従来のスタイルでした。しかし、それなら独立して一人でやればいい。私たちは、士業の枠にとどまらず、仲間として一緒に何かを成し遂げていきたい。「中小企業の経営を成功させる、社長や社員を幸せにする」という信念を共通の価値観として、共にお客様を支援していけるような組織にしたいと考えています。特に現在、中小企業は非常に厳しい状況です。そこで、「いかに新たなビジョンを持って、そこに共感してくれる社員と一緒に働きがいのある仕事ができるか」、「みんなが満足して働ける会社をつくれるか」というのをテーマにしています。 ――そういった組織を目指すうえで、課題になっていたことはありますか?陣内 近年、士業の枠にとどまらない業務を増やしていますが、従来型の業務も忙しいのが現状です。社員個人個人のマインドも、経営上の施策も、改革したくても既存事業が忙しいというイノベーションのジレンマがありました。さらに、デジタルシフトが起きて、会計業界でも若い世代の先生たちがすごく伸びてきた。ビッグと新興事務所の間で、自社のポジショニングを考え直さないといけないと感じたのです。市丸 また、これも士業事務所に多い課題なのですが、新人が入っても「仕事は先輩の背中を見て覚えなさい」という指導だったりします。当社も以前は即戦力の中途採用のみでしたから、教育の必要性はそれほど感じていませんでした。しかし、5〜6年前から新卒採用を始めたことで、育成体制を見直す必要が出てきました。TOMAのマインドや価値観の共有、上司が部下をきちんとフォローできる体制をつくらなければいけないと感じたのです。陣内 当社は現在約200名の規模ですが、コスト的な兼ね合いから、人事部や人材開発部門を置いていません。そこで、2017年に『SHIFT TEAM』(シフトチーム)というプロジェクトを立ち上げました。代表である市原和洋直轄のチームです。「TOMAをシフトせよ」というキャッチフレーズのもと、社内向けに10年後のビジョンとして『シフトビジョン』を掲げて、社内体制もサービスも、新しい時代に即したものにシフトしようと活動しています。 他部門との交流で 自社の価値を再確認―― SHIFT TEAMは、どのような活動をしているのでしょうか?市丸 大きく2つのチームがあります。1つは、人材育成の管理や新卒社員の対応などを行う社内対応チーム。もう1つは、私たちの強みを活かしたお客様向けのサービスを考えるチームです。それと並行して、社内にシフトビジョンを浸透させる活動を継続的に行っています。SHIFT TEAMで発案した企画は代表がチェックし、その場で決裁されるものもありますし、大きなものは経営会議にあげられます。 ――実際に始まった取り組みには、どのようなものがありますか? 市丸 人材育成に関しては、半年に一度、一般的なビジネススキル研修を受講し、必ず上司がフィー ドバックするようになりました。社員はそれぞれ優秀ですが、足りない部分もありますから、それを埋めるのが目的です。また、他部門の仕事に同行して体験するということを仕組み化しました。これまでも他部門の仕事を経験することを推奨はしていましたが、若手社員からはなかなか言い出しにくいようでした。ですが、他部門の仕事を知ることは、長い目で見ると役に立つはずです。陣内 当社は、税理士をはじめ、司法書士、社会保険労務士、行政書士など、士業のワンストップサービスを提供できる事務所であることが強みであり特徴です。他部門の仕事に同行することは、知識や経験が増えるだけではなく、TOMAで働くことの価値、ワンストップの価値も感じてもらえるのではないかと思います。ほかにも、IT部門と士業部門のコラボ商品なども、SHIFT TEAMが中心となって企画しています。市丸 各チームのメンバーは5〜6名で、社歴や部門、意欲などのバランスを見て、毎年違う人を選んでいます。現在のメンバーは、特に全社的な視点で意見をしてくれる人が多く、上司に聞くと、部門内での発言も前向きになったなど、良い変化があるようです。また、「管理職の人たちが、若手社員のことを一生懸命考えていることがわかった」と話してくれる社員もいます。 システムを使って社員に光をあてる――中途社員に対しては、価値観を共有したり、マインドセットをする取り組みはありますか?陣内 そこが課題なんです。同じ業界にいた人でも、やり方や価値観は全然違います。新卒は時間と手間をかけて育てていくことで変わりますが、中途は難しい。これは業界特有かもしれませんが、非常にシャイで、自分から組織になじめない人も多いんです。また、 当社のマネージャーは全員プレイングマネージャーなので、こまめに部下のケアをすることまでは、なかなか手が回らなかったのです。 そこで2019年に、アックスコンサルティングの「MotifyHR」を導入しました。特に、オンボーディングコースという機能に興味がありました。これは、例えば入社1週間したら、「他部署の人と食事に行きましたか?」というようなアラートが出るんですね。すると、上司や教育担当者が気づいて声をかけてくれます。アプリからリマインドがくるのが便利だな、と思ったんです。 ――ほかにはどのような機能を活用していますか?市丸 社内のお知らせを投稿するニュースフィードはよく使っています。特に、社員紹介が好評です。毎月、月間表彰があるのですが、受賞者にインタビューして記事を投稿しているんです。コロナ禍になってから全員の前で表彰される機会がなくなってしまったのですが、表彰は、頑張った人を褒めてあげて、みんなが「次は自分が」と励みにできる機会なので、受賞者にちゃんと光をあててあげたい。在宅勤務で社員同士もあまり会えない状況なので、インタビューでは意外な一面を引き出したり、未来の展望を話してもらうことを心がけています。陣内 共通の趣味があったりすると、話すきっかけになりますよね。当社のビジネスモデルからしても、 専門分野が違う人をどうつなぐかが大切。そのためには、気軽に相談できる風土をつくることが重要です。あとは、毎日の体調チェック機能やエンゲージメントサーベイは、社員とコミュニケーションを取る際に参考にしています。日々の言動などと合わせて観察していると、もともと性格的に低めの点数をつけるタイプなのか、本当にモチベーションが落ちているのかがわかります。何もない状態で上司に「大丈夫?」と確認しても、とりとめのない話で終わってしまうことがあるのですが、データがあることで問題が見え、SHIFT TEAMから上司に働きかけることができるのです。 会社や仕事を通じて仲間をつくってほしい――従業員のエンゲージメント向上のために、これから取り組んでいきたいことはありますか?市丸 まずはマネージャーには人に興味を持ってもらうことが大事だと考えています。まだまだこまめに部下のケアができているとはいえませんが、時間をかけなくても、日々のちょっとした挨拶や声かけだけでも変わってくると思うんです。私たちも、MotifyHRなどを活用しながら働きかけていきたいですね。陣内 業界的には資格を取ったら独立するという世界ですが、私は本気で「定年まで働いてほしい」と思っています。そのために、働きがいがあって、チームで仕事をするのが楽しいという会社にしたい。仕事を通じて仲間を持ち、いろいろな専門家と付き合って仕事の幅を広げてほしい。TOMAのビジネスのコンセプトは、社員のやりがいのためのコンセプトでもあるのです。シフトビジョンは、2029年がゴール。新卒で入った社員が、10年後にTOMAのマインドを持ったマネージャーとして活躍できるように教育しているつもりです。少しずつ前進していますが、まだ改革途中。改善しながら継続していきます。※月刊プロパートナー2021年2月号より抜粋いかがだったでしょうか?『プロパートナーONLINE』は、士業のための「明日役立つ」記事やセミナー動画などオンラインのコンテンツに加え毎月1冊、士業専門雑誌「月刊プロパートナー」をお届けするサービスです。月額3,000円のサービスを今なら14日間無料でお試しいただけます。▼14日間の無料体験はこちらから▼ 2021.10.12
  • 自立したチーム制で安心と幸せを提供する

    これからの士業事務所経営には、職員と事務所が相互に成長をサポートする関係「エンゲージメント」 が重要となります。今回は、チーム制を導入し、自立した組織づくりに挑む税理士法人アンシアの取り組みについて代表の斎藤英一氏にお話を伺いました。 ユニット制に挑戦するも一体感のない組織に......当社は開業以来、私の名前が付いた事務所名(斎藤英一税理士事務所。2009年に税理士法人斎藤会計事務所に変更)でやってきましたが、2021年4月1日に名称変更し、『税理士法人アンシア』として新たなスタートを切りました。アンシアには、「お客様だけではなく、従業員に対しても『安心』と『幸せ』を提供したい」という思いを込めています。 この新たなスタートに向けて、数年かけて準備を進めてきました。実は、私は5年ほど前に一度、組織づくりに失敗しているんです。当時、職員は約25名いましたが、いわゆる職人集団で、所長対その他25名というような構造でした。全員が職人としてのプライドを持っていて、提供するサービスの品質は良い。けれど、労働時間を含めて各自の裁量に任せていたので、個人事業主の集まりといった雰囲気だったのです。タイムカードすらありませんでしたから。だから私が、「これからは経営計画の時代だ。経営計画をやろう!」と熱く語っても、反応がない。職員からすれば、「また所長がとんでもないことを言い出したよ」という感じです。しかも、私も業務に追われていて一人ではできませんから、勢いよく宣言をしても、2カ月後くらいにはトーンダウンしてしまう。そんなことの繰り返しだったのです。そこで、ユニット制を取り入れた体制に変更しました。ベテラン職員を核にしたユニットを組み、各ユニットで業務を進めてもらうことにしたのです。経験自体は豊富ですから、業務は滞りなく進みました。でも、ユニットごとにやり方はバラバラで、横の連携もない。全体的に統一感のない組織になってしまったのです。結果、ベテラン職員を含めて数名の退職者が出てしまいました。しっかりとした準備期間もなく、ユニット内に明確なリーダーを置くことができなかったことが原因だったため、次は有資格者をリーダーにすると決めて、税理士の採用を開始。私を含めて2名しかいなかった税理士を、2年間で8名まで増やしました。 チームの経営者としてリーダーを育てるリーダー候補が集まった段階で、1年半後の2021年4月に新体制をスタートさせると決め、準備を進めてきました。前回の失敗を受け、「核となるリーダーたちがまとまっていれば、 個々のメンバーに何かあっても全体は崩れない」と考え、リーダー候補が集まる会議を月に2回、2時間ずつ開催。どういうルールでチームを運営していくか、事務所全体でかかる経費を各チームがどの割合で負担していくかなどを話し合いました。もちろん、私が主導で決めなければいけないこともありますが、それ以外はリーダー全員で決定して、進めていく。売上予算もチームで立ててもらい、 そこから利益や自分たちの給料をどう出すのかまで任せています。「チームを経営する意識」を持ってもらいたいのです。実際は、予算が達成できなかったとしても、報酬をカットするようなことはしていません。2年以内に改善できる案を出してもらい、私を含めた幹部で指導をしていきます。お客様や従業員に安心と幸せを提供するという理念のもとに、チームをどう運営して、どんな行動をしていくのか。リーダーに裁量を持たせながら、サポートしていきたいと考えています。また、営業活動や採用も、リーダーにある程度の裁量を持たせています。これまでは私が事務所の看板としての役割を担っていましたが、これからはリーダーたちが自分の責任で動いてもらう。事務所名から斎藤という名前を外したのは、そのためです。 チームとは何か?研修で職員の意識が変化組織改革を進めていくうえで、 リーダーの育成・連携とともに課題だったのが、職員の意識改革です。リーダーたちは1年半の間、 膝を突き合わせてきましたから、 共通の意識は持っています。けれど、チームのメンバーたちとの温度差が気になっていました。そこで、いま事務所で起きていることを知ってもらうため、職員向けに毎日メルマガを書きました。業務連絡や実務の内容も混ぜながら全部で210回配信したので、私の熱量は伝わったと思います。また、「チームになることで自分にどんなメリットがあるのか」 を知ってもらうため、アックスコンサルティングのエンゲージメント研修を受講しました。グループに分かれて行うワークでは、若手職員も率直に発言していて、なかなか盛り上がりました。でも、研修後のアンケートで、私のチームに所属する職員から、「チームの意味がわかりません」 という意見が出たのです。「これまでは、自分の仕事をしっかりこなせばよかった。もちろん情報共有はするが、チームの実感がわかない」と。ただそれは、反抗的な意見ではなく、「自分のチームがチームとして機能しているのか?」を前向きに考えた結果だったのです。後日、その職員から、「新しい人を採用しませんか?」という提案をされました。私のチームは特に職人的なスタッフが多く、誰かの手を借りたり、ほかの人に仕事を振るのが苦手で、それぞれがキャパ一杯に仕事を抱えています。 そのため、現状の成績は良くても、伸びしろが少ない。「だったら採用して、チームのキャパを増やしましょう」と言うんです。「みんなで人を育てて、目標の数字を達成しましょう。それがチームですよね」と。どうすればチームになれるのか、自分たちのチームが事務所にどう貢献できるかをこんなに考えてくれたのかと、思わず目頭が熱くなりました。実際に採用の面談をチーム全員で行い、内定を出しました。この採用が成功すれば、ほかのチームにも良い影響が出るのではないかと思っています。 みんなの知恵を集めて良いサービスを提供する新しい体制になったからといって、劇的に違う組織になったわけではありません。組織づくりは、仕組みが2割、運用が8割。徐々にチーム力を高めていきながら、働きやすい職場をつくりたいと思っています。私たち士業を取り巻く環境は、 お客様に関与するスタイルも含めてどんどん変わっていくはずです。この激しい時代の潮流に自分一人で対応するのは厳しい。お客様に良いサービスを提供するためには、 みんなの知恵や知識を結集してつくりあげることが必要です。そのためには、組織として人を集めて、いろいろな意見を聞きながら進む集合体であることが大切です。当社は税理士を核にしたチームにすると決めました。採算性という意味では、正直難しいところはありますが、ある程度の規模があることでお客様も職員も心強さを感じてもらえるはずです。また、さまざまなタイプの税理士が増えれば、相乗効果でより良いサービスも生み出せると考えています。風通しの良い柔軟な組織で、お客様と職員の安心・幸せをつくっていきたいと思います。※月刊プロパートナー2021年5月号より抜粋いかがだったでしょうか?『プロパートナーONLINE』は、士業のための「明日役立つ」記事やセミナー動画などオンラインのコンテンツに加え毎月1冊、士業専門雑誌「月刊プロパートナー」をお届けするサービスです。月額3,000円のサービスを今なら14日間無料でお試しいただけます。▼14日間の無料体験はこちらから▼ 2021.10.11
  • 次世代幹部育成やOKRでチャレンジする組織に変革

    これからの士業事務所経営には、職員と事務所が相互に成長をサポートする関係「エンゲージメント」が重要となります。今回は、職員が経営に参加する仕組みをつくり、〝挑戦する組織〟へと変革した社会保険労務士法人アドバンスの取り組みを代表の伴芳夫氏に伺いました。 組織を縦と横につなぎ〝多能工化〞を目指す社会保険労務士法人アドバンスでは、「職員一人ひとりがプロフェッショナルになる」というテーマを掲げています。以前は、労働保険や社会保険の手続きなど、特定の分野を深堀りする傾向にありました。しかし、IT化により手続き業務はなくなる可能性がありますし、限られた分野に強いだけでは時代の変化に対応しきれません。そこで近年は、〝多能工〞なプロフェッショナル組織を目指すようになりました。組織全体を横につないで連携し、縦と横に人材が混ざり合うことで生まれるシナジーを大切にしています。創業して30年以上経つ事務所ですから、20年近く勤めている職員も多く、平均年齢も高い。福利厚生も比較的充実していますし、働き方改革も積極的に取り組んでいますので、40名超の規模にも関わらず、ここ3年間は退職者ゼロです。一方で、昔ながらの風土が根強く残っていて、変化に対応できない部分もありました。そのマインドを変えてもらう必要があったため、2015年に私が代表に就任し、拠点を統合する2017年のタイミングで、職員に求める『5箇条』を掲げました。「コミュニケーションの徹底」「変化を絶やさない」「助け合いの気持ちを持つ」など、当たり前のことなのですが、改めて宣言したのです。職員も、この5箇条をスムーズに受け入れてくれました。それぞれが問題意識を持っていましたし、私が事務所を承継したことで、「自分たちの事務所は変わっていくんだ」ということを理解してくれていたのだと思います。 参加型組織をつくりチャレンジを仕組み化組織を変えていくにあたり、一番の課題は「チャレンジ精神を持つこと」でした。その取り組みの一つが、2019年から始めた部長の公募制です。それまでは、いわゆる文鎮型の組織だったため部長職を置いていなかったのですが、「自分が部門を変えたい」「チャンジしたい」という思いがある人に立候補してもらい、任せることにしました。勤続年数に関係なく立候補できますので、なかには自分より先輩たちをマネジメントすることになった部長もいます。また、組織全体を横断的につなぐための仕組みとして、4つの委員会を設けています。そのうちの一つである「ジュニアボード委員会」は、管理職ではない職員を集めて、各現場からあがったさまざまな改革のアイデアを検討し、決定、実現していく委員会です。一定の権限を付与することで、経営に参加する意識を持ってもらうことが目的です。もちろん、ジュニアボート委員会に参加している職員以外も、全員が常に改善意識を持つことが大事です。そのため、半年に1個以上改善のアイデアを出さなければ賞与がもらえないルールにしています。このルールも、特定の人しか意見を出さない現状を受けて、ジュニアボート委員会が決定したことです。ほかにも、有給休暇とは別に、誕生日などにアニバーサリー休暇を取得したら5000円支払われる制度なども、この委員会から生まれました。毎月10個前後のアイデアを話し合うので、変化のスピードはかなり早くなりました。経営陣の会議では、現場ベースで出てくる細かいアイデアは後回しになってしまいがちなので、意思決定が早くなった効果はすごく感じます。 OKRを導入して個々の目標を見える化職員一人ひとりのチャレンジに関しては、2020年からOKRを取り入れました。お客様に人事評価制度構築のサービスを提供しているのですが、正直なところ、自社ではそれほど評価制度の必要性を感じていませんでした。それは、文鎮型の組織で、私がある程度全員の状況を把握できていたことが理由です。しかし、部長職を設けたことで、彼らが部下を評価できるようにならないといけない。評価はマイナスの部分も見なければなりませんが、そうしたものよりも、目標を立てて、その目標に向かう姿勢にフォーカスを当てたい。それがOKRだったのです。OKRを始めるために、アックスコンサルティングの『MotifyHR』を導入しました。導入の決め手は、UI/UX(※)が良かったことと、毎月のエンゲージメントサーベイがあることです。OKRは、まず私が事務所全体のO(目標)を立て、部長に共有し、部門の目標を立ててもらう。それを、各職員が自分の目標とKR(成果)に落とし込んでいきます。そして、月1回の1on1面談で部長と進捗を確認しています。部長たちは、「OKRで目標が明確になり、1on1が効率的にできるようになった」「部下とコミュニケーションが取りやすくなった」と話しています。また、職員も、日ごろ不安に思っていることや自分のやりたいことを話す場ができたことで、意見やアイデアをよく出すようになったと感じています。エンゲージメントサーベイは、働きがいに関する調査ができるため、職員がどこに不満や不安を抱いているのかを可視化できます。当社の場合、全体的に評価は悪くないのですが、これまでは年功序列的な昇進だったこともあり、キャリアップの部分を低く評価する職員が多くいました。ここはこれからの課題として、キャリアパスを整えているところです。※UI/UX:ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス。ユーザーの視覚に触れるデザインや、製品・サービスを通じて得られる体験のこと 士業事務所自らが顧客に誇れる組織になる当社は、スーパーフレックス制度や月曜〜土曜の間で好きな日を休みにできる選択休日制度などがあり、かなり働きやすい環境だと思います。さらに現在は、教育カリキュラムを整えて、個々の成長スピードを加速しながら、多能工化を目指しています。まずは、1年間でその部門の基本的な業務を覚えてもらえるようなカリキュラムをつくりつつ、希望者は閑散期に1週間程度、他部門の業務を経験する短期留学制度を取り入れています。また、クライアントのIT支援を行う株式会社を併設しているのですが、従業員はその株を買えるようにしているほか、若手社員を役員に抜擢しています。株主は利益が出れば恩恵がありますし、役員報酬をもらうためには株主の承認が必要です。経営的な視点を養うと同時に、チャレンジ精神のある職員のためのポストを用意し、将来的な幹部を育成しています。士業事務所はお客様をコンサルする立場ですが、実は自分たちはできていないことが多い。でも、もう〝先生商売〞は通用しない。自らが体現できている事務所にしか依頼は来ないと思っています。そのためには、早く一般企業と同じ土俵に乗ることが必要です。特に、私たち社労士が関わるHR分野は、まだまだブルーオーシャンで、規制緩和されれば大手の民間企業が参入してくる可能性も高い。そこに対抗できるようにしておくには、まず自分たちがクライアントに誇れる組織をつくることが重要だと考えています。※月刊プロパートナー2021年1月号より抜粋いかがだったでしょうか?『プロパートナーONLINE』は、士業のための「明日役立つ」記事やセミナー動画などオンラインのコンテンツに加え毎月1冊、士業専門雑誌「月刊プロパートナー」をお届けするサービスです。月額3,000円のサービスを今なら14日間無料でお試しいただけます。▼14日間の無料体験はこちらから▼ 2021.10.11
  • 人事評価制度お悩みQ&A Part2

    人事評価制度を導入し、実際に運用がスタートすると、思わぬトラブルや悩みが出てくるものです。そんなときどう対処すべきか、Q&A形式で解説します。 Q.売上が不安定ななか、どう賃金表を作成すればいい?A.労働分配率を加味した給与設定を明文化する賃金表は事務所のモデル年収を決定することで作成できますが、経済情勢による変動は反映されません。ですから基本の賃金表のほかに、労働分配率を加味した査定ルールをプラスする方法があります。事務所の経営がひっ迫しない労働分配率を設定して、年度毎の粗利をもとに、どこの範囲に当てはまるか変動の幅を持たせておきます。ほかにも、業務フローをもとに個々の年間売上と年収のバランスで調整できる幅を持たせておくなど、給与設計に調整できる項目を設計しておけば、職員からの不満も最小限に抑えることができるでしょう。 Q.成果給に移行するまでに時間がかかってしまう……A.ヒアリングをしたうえで成果に重点をおいた評価項目の策定を事務所の目指す組織像と合っていないのであれば、制度見直しが必要です。評価項目のウエイトを成果に重点をおくように変更します。新しい制度に移行する場合は、運用前に必ず給与シミュレーションをすること。万が一、給与が下がる場合は差額を加味して、調整手当を支給するのが良いでしょう。その場合、調整手当の支給期間を設けておくことを忘れずに。 Q.給与が低いという理由で職員が退職してしまったA.ヒアリングして低いと思った根拠を探るなぜ給与が低いと感じたのか、根拠をヒアリングしてみましょう。既存の職員に対して給与の満足度に関するアンケートを実施してみるのも有効な手段です。その結果をもとに、評価基準や査定ルールの見直し策を決定してください。 Q.既存の職員よりも、最近入社した職員の方が給与が高くなってしまう……A.職員への説明がすべて降給できるルール導入も必要既存職員には「入社時の給与に関しては、今後の期待値も加味して高くなるケースがある」ことを、新入社員には「入社後は実績と今後の期待によって降給の可能性がある」ことを理解してもらうことが必要です。また、トラブルを避けるためにも、給与は非公開にしておくことが大前提です。 Q.制度が必要だと思って策定したが、効果が見えない。どう見直すべき?A.大切なのは、策定後の運用&継続的な見直し効果が出てない場合、計画通りに運用できていないのかもしれません。複雑すぎる、項目が曖昧、評価の仕方がわからないなど、職員に課題をヒアリングして、継続的に見直しを行いましょう。 Q.評価・面談がスムーズに行く方法を教えて欲しいA.評価・面談ルールの策定と日ごろの関係性構築がカギまずは、評価するための素材が揃っていることが大切です。例えば、職員が作成した目標管理シートや、日頃の業務内容・ボリュームが見える管理シートなど。目標達成のためのプロセスや成果を客観的に判断できるものが必要です。次に、評価ルールの明文化。業務達成度や、業務に向かう意欲や意識など、評価項目が増えるほど、評価に時間を要します。また、評価者によって評価基準にバラつきがあると、全体の調整にも時間がかかります。ですから、評価面談のルールや評価のポイント、昇給・昇格のルールなどを明文化しておきます。そして、職員全員にルールを説明し、理解してもらうこと。運用後には見直しも必要です。もちろん、日ごろから部下との信頼関係を構築しておくことも、評価や面談がスムーズにいく方法の一つかもしれません。―――――――――――――【2021年版「士業事務所の給与評価」発売決定!】月刊プロパートナー2021年11月号(10月20日発売)では、毎年恒例となった「士業事務所の給与・評価」にまつわる全国アンケート調査を実施!3回目となる今回は、人材の定着と最適化にフォーカスし、盤石な組織をつくるための取り組みも大調査します。さらに、従業員の成長を支援する士業事務所の人事制度の運用事例も大公開!士業業界の「給与・評価」事情から人事制度設計の仕組み、最新トレンドまですべてがわかる1冊です。月刊プロパートナー2021年11月号の詳細・お申込みはこちら  2021.10.05
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