• 専門家が教えるESG経営を実現するためのポイント

    企業経営の根幹となる重要な概念として、大手企業を中心に「ESG」が注目されています。持続可能な企業経営の支援を担う士業事務所だからこそ、知っておきたいESG経営の概要から具体的アドバイスまで、税理士・杉井俊文氏が解説します。 【ESG経営の概要】サステイナブル経営の時代とESGの拡大長期的な利益拡大思考で重視されるESG経営ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字をとったものです。昨今、大企業がこれらの項目を重視した経営を行う傾向にありますが、これには投資家の意識の変化が大きく影響しています。そもそもESGは、2006年に国連主導で提唱されたESG投資のプラットフォームである責任投資原則(PRI)に基づいています。それ以前の投資家は、短期的な利益を重視する傾向にありました。しかし、このような思考が2008年のリーマンショックを引き起こす原因となってしまったのです。未曾有の金融危機を招いた短期的利益主義への反省や、経済活動に伴う地球環境への悪影響、あるいは貧富の格差拡大など、さまざまな現状を考慮した多くの投資家の意識が、ESG経営を重要視する思考へとシフトしているのです。そして、世界においてESG投資は年々拡大していて、2020年における投資総額は35兆ドル(約3900兆円)になり、18年比で15%増加。投資全体に占める割合は、3分の1を超える35.9%となっています。(日本経済新聞2021年7月19日付より)日本においても、ESG投資は拡大傾向にありますが、最大の要因は2016年の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のPRI署名です。世界最大の運用資産を誇るGPIFによる署名は、日本のESG投資に大きな影響を与えたといえます。このように、日本は世界に対して多少の遅れはあるものの、ESGは世界経済において重要な考え方の一つになったといえます。社会的背景から士業が考えるべきことESGは、投資家が考えるべき中長期的な利益拡大の概念といえます。士業事務所の多くは、未上場の中小企業や個人事業主がクライアントであるため、ESGは無関係と考えるかもしれません。しかし、企業に求められるESGへの対応は、投資家への対応という側面だけではない段階に差し掛かっています。今後は、企業経営をとりまくあらゆる関係者からESGへの対応が求められるようになると考えられます。投資家と縁遠い中小企業であっても、取引先の大手企業や金融機関のESGに連動する形で対応を求められる可能性が大いに存在するからです。それだけではなく、顧客である消費者や、従業員、地域社会も、同じようにESGへの対応を求めてくるようになるでしょう。現在の学習指導要領では、小学校から高校に至るまで、SDGsに関する事項が多く盛り込まれています。この世代が社会人となり、経済活動の主体となった場合には、ESGに対応できていない企業の商品やサービスは選択してもらえなくなるでしょう。また、このような若者が就職先を選択する際の指標として、ESGの観点が重要になるため、対応できていない企業は就職先の候補となり得ない可能性も大きいのです。このように、今後は中小企業であっても、ESGを無視した経営を継続することは困難になっていくと考えられます。ESGやSDGsと企業の「稼ぐ力」の両立を図り、持続可能性を重視する経営の在り方をSX(サステイナビリティ・トランスフォーメーション)といいます。このSXによる変化や変革をどのようなものとして捉え、企業経営に活かすかによって、その企業の今後が決まるといっても過言ではありません。これまでの、大資本を集約して効率的に同じ品質の商品を大量生産し、大量消費するという時代から、環境や地域社会に配慮した原材料を用いて丁寧に製造された、独自の商品やサービスが好まれる多様性に富んだ時代に変化しつつあります。大量生産では大企業と競争できないけれど、独自性や地域色などをうまく出せるのであれば、中小企業でも十分に太刀打ちできる好機ではないでしょうか。つまり、ESGの視点を経営に取り入れることは、中小企業にとって飛躍への大きなチャンスなのです。このように考えると、ESGは中小企業にとって、経営の中心に置くべき項目であり、士業事務所はクライアント企業をESG経営へと導く参謀となる必要性があります。次に、SDGsとの違いやESGを盛り込んだ経営サポートの指南について触れていきたいと思います。 【ESGと経営計画書】ESG経営実現のための計画策定ポイントとはいま注目のSDGsとESGの本質を理解するSDGsの知名度は、この1年間で一段と上がったように思えます。2022年は、具体的な取り組みが日本各地で実施され、さらなる盛り上がりを見せると予測できます。ESGが誕生した社会的背景については前回ご紹介しましたが、SDGsも同様と考えてよいでしょう。しかし、ESGが企業活動にかかわる投資と経営という視点であるのに対し、SDGsはもっと広範にわたり、国際社会や各国政府、自治体や企業、各種団体、そして私たち市民一人ひとりが取り組んでいくという点で異なっています。SDGsは2015年の国連総会で採択された、2030年までに国際社会が協力して達成すべき持続可能な開発のための目標ですが、SDGsとESGは切っても切れない関係となっています。SDGsの達成のためには、その取り組みを支える金銭的な支援が必要です。また、投資家がESG評価を行う際に、SDGsの指標を活用するという状況も増えてきました。ESGにとって、SDGsは格好の評価基準となったのです。SDGsに取り組むことが、ESGに取り組むことにつながることから、現在においてSDGsは多くの企業で取り組みがなされています。ただし、ESGとSDGsの大きな違いは、SDGsが2030年までの目標であるのに対して、ESGはそれ以降も経営の中心課題であり続けるという点です。SDGsのブームに乗るのも良いのですが、ESG経営を推進するのであれば、本質を見失わないよう注意が必要です。 ESG経営実現のための経営計画策定とはでは、士業事務所が顧問先企業のESG経営あるいはSDGsの取り組みをサポートするにはどうすればよいのか。導入段階から順を追ってみていきましょう。第一に、ESG経営に取り組むには、経営者がその意義を理解することが重要です。多くの中小企業経営者は、ESGあるいはSDGsを社会貢献活動ととらえている傾向にあります。慈善活動と考えてしまうと、資金的に余力のない中小企業では「できそうにない」と考えてしまいます。しかし、ESGは経営の中心課題であることはすでに述べた通りです。次に、ESGを経営課題として考えるということは、経営戦略との整合性も必要ですし、経営計画に盛り込んでいく必要もあります。経営戦略との整合性という点から、もう少し具体的に考えると、例えばメーカーの工場において、毎週一回従業員による工場周辺の清掃活動を実施するとします。これは社会貢献活動であり、経営戦略との整合性は見えません。それよりも、工場周辺の環境問題や労働問題などについて考える方が重要です。また、地域の雇用推進地や、地元企業とのコラボレーションなどを検討する方が効果的であり戦略的です。清掃活動が意味を成さないのではありません。ESGと社会貢献を混同しないことが肝心なのです。もちろん、経営戦略である限りは、ESGの目標をもって取り組む必要があります。よく見逃されていることですが、SDGsは2030年に向けた目標ですので、達成を目指す必要があります。取り組んでいるという単なるアピールでは意味がなく、到達目標を定めることが重要です。この点からも、経営計画との関連付けに意味があるのです。経営計画は、将来の売上や経費についての数値目標が中心となります。しかし、ESGの目標の多くは、数値化するのが非常に困難です。では、数値にするのが困難な目標をどのように計画すればよいのでしょうか。これを考える際に知っておきたい概念に、インプット、アウトプット、アウトカム、インパクトの4つがあります。まず、インパクトは社会が達成すべき目標であり、例えばSDGsの各ゴールに置き換えて考えることができます。この目標をもう少し企業に近いステークホルダーが抱える課題の解決として考えるのが、アウトカムです。そして、そのアウトカムを達成するには具体的にどのような活動・行動をすべきか、というものがアウトプットです。アウトプットまで考えると、具体的な数値目標を立てることができます。このアウトプットを達成するために必要な資源(インプット)は何かというような順番で考えることになります。次は、この4つの概念をさらに深堀していきたいと思います。 【ESGと経営提案】ESG・SDGs経営への具体的な提案方法とは中小企業への提案は4ステップで考えるESG経営についてこれまで紹介してきましたが、中小企業に対して、士業事務所は具体的にどのように提案し、進めていけばよいのでしょうか。最後に、具現化、対話、理解、実行の4つのステップに分けて解説していきたいと思います。最初のステップは「理解」です。理解はさらに導入、提案、検討の3つの段階に分かれます。導入とは、経営者に知ってもらうことを指しますが、経営者がESGについて十分に理解を得られた後に、提案を行って、企業での対応方法を検討することになります。次のステップである「対話」は、4つの中で最も重要なもの。ここで考えることは、企業にとってのマテリアリティ(重要課題)が何であるのかということです。事業が社会に与える影響の度合いを判断して、何を優先すべきかということを決定します。このステップを「対話」としているのは、3つの対話によりマテリアリティを決定する必要があるからです。3つの対話の相手は、社外、社内、企業理念。社外と社内をまとめると、ステークホルダーということになります。社外といっても、株主や顧客、地域社会など多岐にわたります。社内は従業員です。経営理念との対話を忘れがちになりますが、これは自社の経営戦略との整合性をとる意味もあります。ステークホルダーにとって重要な社会課題であっても、自社の経営との整合性がないものをマテリアリティとして上位に置くことはできません。3つ目のステップは、「具現化」です。ここでは、ESGの経営計画への導入時に考えるべき4つの概念を参考にして進めます。まずはインパクトから考えていきますが、このインパクトの設定はマテリアリティと合致させる必要があります。もう少し具体的に考えてみましょう。例えば飲食店の場合、どのようなマテリアリティが考えられるか。顧客というステークホルダーを考えた場合、食の安全というテーマがあがります。無添加無農薬や、トレーサビリティ(※1)が重要課題にあげられるでしょう。地域について考えれば、地産地消や、地域生産者を応援したいという考え方が出るでしょう。地域生産者の応援とトレーサビリティは結合するテーマです。(※1)その食材がいつ、どこで、だれによってつくられたかを明らかにするつまり、これをこの企業のマテリアリティとすることもできるでしょう。SDGsでは目標15(※2)あたりが該当します。一方で、食品によっては輸入に頼らざるを得ないものもあります。こうしたものは、食の安全のほかにも、生産地における労働搾取などがないかというテーマと結びつくでしょう。(※2)「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」をテーマに掲げているまた、フードロスという社会問題をマテリアリティとすることもできます。これは顧客に食べ残しを減らしてもらう努力のほか、仕入れの調整方法などの検討にもつながります。フードロスの解決に寄与することは、地球環境の保護につながるだけでなく、経営においては各種経費の削減にもつながり、経営の効率化にも資するのです。このフードロスを自社のマテリアリティとした場合、アウトカムは、フードロスのない社会の実現になります。最後のステップである「実行」は、前のステップで定めたアウトカムを達成するために、自社で取り組める具体的な指針についての定量目標を考えます。これがアウトプットということになります。例えば、残飯の廃棄を前年比80%減にするなどの目標です。その具体的方法として、自社で投入できる経営資源のことをインプットといいます。仕入れ担当や調理担当は何ができるかと具体的に考え、実行し、達成度合いを毎期判断します。 持続可能な経営のために士業ができることこれまで解説したように、社会環境は大きく変化しています。しかし、中小企業経営者の多くは、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)に対応できないどころか、知らない方が大半です。なかには、SDGsブームに乗って対外的にPRする企業も少なくありません。中小企業に寄り添う士業事務所は、経営者にESG経営の全体像を正しく伝えて、具体的に何を行うべきか提案し、SXに対応する手助けをする時代が来ているのではないでしょうか。サステナビリティの時代は、自社だけが継続すれば良いわけではありません。社会全体がどのように持続可能に発展していくかということを真剣に考える必要があるのです。 NEW 2022.01.28
  • 【特別座談会】目指すべきは仕組み重視か理念重視か!? 士業事務所の組織づくり

    税理士試験受験者数や業界への流入人口の減少が課題となっている会計業界。事務所の成長や生産性向上のためには、人材確保や組織づくりが大きなカギを握っています。では、組織づくりや職員の定着・育成において、重要なこととは?仕組み重視派と理念重視派、それぞれを代表する事務所所長の座談会で、組織づくりのポイントや所長の役割を考えます。【仕組み派代表】 税理士法人阿比留会計事務所 阿比留 一裕氏/エクセライク会計事務所 伊藤温志氏【理念派代表】 清家巧貴税理士事務所 清家巧貴氏/税理士法人SS総合会計 鈴木宏典氏 組織づくりは目的から落とし込む──本日は、ビジネスモデルや仕組みを重視した組織、経営理念やビジョンを重視した組織、それぞれを代表する事務所の対照的な部分、共通する部分などを探りながら、組織づくりを考えていければと思います。まずは、組織をつくるにあたり、何から決めたのかを教えてください。伊藤 組織づくりは「目的志向」で考えることが大事です。「こういういう組織をつくりたい」ではなく、「こういう目的があるから、こういう組織が必要だ」という順番です。うちの目的は、「高品質で低価格の税務顧問サービスを提供すること」。そのためには、絶対に無駄が許されない。そうすると、スタッフに求めるものはパワーとスキル。つまり、体力と処理能力です。コミュニケーション能力はいりません。目的自体は開業当初から変わりませんが、2年ほど前までは属人的で効率が悪く、問題のあるスタッフもいたので苦しみました。今は、ITツールで効率化し、在宅勤務もうまくいっているので、職員が安心感を持って働いている実感があります。阿比留 私も伊藤先生と同じで、個人事業主の美容室・飲食店に特化した、できる限りシステム化したビジネスモデルを決めてから、必要な人を考えました。ビジネスモデルを固めるまでの話をすると、私は開業前、監査法人と地方銀行に勤めたのですが、この経験がとても活きています。監査法人は、ものすごく頭のいい人の集まりで、組織というより個人のパワーで回している。一方で銀行は、仕組みがしっかりしているから、異動や転勤が定期的にあっても、きちんと仕事が回る。でも、地方では選りすぐりの人が採用されているとはいえ、監査法人と比べると普通のサラリーマンなんです。となると、自分が独立したあと、街の小さな会計事務所で採用できるのは、すごく普通の人だろうと思いました。そこで、善良な普通の人ができるビジネスモデルを考えたのです。鈴木 その言い回しは、いかにも阿比留先生らしいですね(笑)。私の場合は2代目なので、先代の思いを大事にしようと考えました。先代は、事業計画で会社を良くすることに取り組んできて、それが地域ですごく認められていた。だから、そこに対する使命感はありましたね。あとは、「成長組織」にしたい。正社員も準社員もパートも、お客様に価値を提供することに熱量を持って取り組んでもらうためにはどうするか、ということを考えています。ITを使った効率化やサービスのパッケージ化もしつつ、全体で成長していこうという組織を目指しています。清家 私は、まずは「地元の大分県佐伯市をなんとかしたい」という思いだけでした。佐伯市を良くするために何が必要かを考えて、キャッシュフローコーチや理念策定支援など、外で学んだことをサービスにしています。ただ、佐伯市は人口が7万人弱で、大学もなく、人が採れない。職員を事務所のなかで成長させるしかないので、時間はかかります。これは地方の限界なのかもしれませんね。  2022.01.20
  • 士業温故知新/伝統×革新で新時代に羽ばたく! 集合天才で挑む事務所改革とは

     1976年、京都府京都市で開業したM&N辰巳税理士法人。2021年には、3代目の辰巳正樹氏が代表に就任。弟の辰巳悠樹氏とともに、伝統と革新を融合した経営戦略で急拡大しています。3世代で変わらないこと、変えてきたこととは?正樹氏と悠樹氏に聞きます。 撮影/株式会社アド・リビング  “集合天才”を礎に、規模拡大に踏み切る――M&N辰巳税理士法人は、創業45年の老舗事務所でありながら、ここ5年ほどで規模が急拡大したと聞きました。転機になったことは何でしょうか?辰巳正樹氏(以下、正樹)2014年に悠樹が参画してくれたことが大きいですね。それまでは、2代目である私たちの父と、ナンバーツーである事務長が二人三脚で経営し、私は事務所を継ぐ予定で勤務していました。しかし、事務長が病で突然亡くなってしまい、大きな柱がぽっかり空いてしまったのです。当時、悠樹は大手企業で営業職に就いていたのですが、事務所の危機だということで、転職してきてくれました。辰巳悠樹氏(以下、悠樹)税務会計のことは何もわからなかったので、最初の3年は月次の記帳から確定申告まで、ひと通りの実務を勉強しました。まずは業務を理解することで、会計事務所にとって何が一番大事なのか、どんなお客様を獲得することが重要なのかを知ることができると思ったので。また、私の強みである営業力をより活かせるように、MBA(経営学修士)を取得しました。正樹 アメリカのローファームなどでは、弁護士さんがいて、経営実務はMBAホルダーのCOO(最高執行責任者)が行うというところが多いのですが、これを当てはめてみようという流れでした。このMBAが、彼にすごくハマったんです。もともとの行動力とアイデアに理論が加わり、事務所に足りていなかった部分をすべて補ってくれました。――別の業界から入った悠樹さんから見て、事務所の良い点、改善すべき点というのは、どのようなところだったのでしょうか?悠樹 私が入社した当時は、職員は8名ほど。資料の郵送から税務まで、一人ひとりがすべてを行っていました。それまでは大企業にいたこともあり、「みんなが当たり前にすべてのことができる」というのは強みだと感じました。ただ、それぞれが自分の担当を持っていて、担当外の顧問先のことはあまり知らないというのは、組織としては弱いと感じました。お客様から見れば、「一人の職員しか頼れない」ということになってしまうからです。そこで、正社員もパートも業務委託の職員もワンチームになり、「組織として強くなる」「みんなでクライアントを守っていこう」という考え方にシフトしました。そうすれば、仮に誰かが休んだとしても、お客様には迷惑をかけません。そうした組織をつくるためには、ある程度規模を拡大していくことが必要で、ひいてはそれがお客様を増やすことにもつながると思いました。徹底的なお客様目線を貫くことが、事務所の規模、業績拡大につながっていったのです。――拡大戦略に舵を切ることに、お父様や職員さんの反対はなかったのでしょうか?正樹 ありませんでした。これは、父がずっと言ってきたことなのですが、「うちは“集合天才”でやっていくんだ」と。集合天才というのは、つまり集合知です。少人数だけれど、みんなの知恵を集めて、みんなで考えて、みんなで対処していく。このスタイルが、うちの伝統です。悠樹の目指す形も、規模が違うだけで根本は同じ。ただ、外から見れば「まだ足りない部分があるから、改革をしましょう」ということなんです。また、悠樹は、しっかり計画書をつくり、数字をすべて出したうえで提案します。それが、すべてお客様目線なので納得できるのです。職員から反対がなかったのは、父に対しての信頼が根底にあったからではないでしょうか。知性があり、職員への思いもあり、非常に人望があったので、「父の判断なら間違いない」と、職員も私や悠樹のことを受け入れてくれたのだと思います。写真左から、辰巳悠樹氏、辰巳修偉氏、辰巳正樹氏 蓄積された知見を活かし、若い経営者をサポートする――現在は、正樹さんが代表社員、悠樹さんがCOO、お父様の修偉(のぶひで)さんがパートナー税理士として経営に関わっています。それぞれどのような役割を担っているのか教えてください。正樹 私が代表社員に就任したのは、法人化した2021年の2月。まだまだ経験値は足りないので、物事の真髄を知る父が相談役です。また、長くお付き合いしているお客様も多いため、当社のように事業承継した企業の会長さんたちにとっても、父は良き相談役です。一方で私は、近年の取り組みで増えた新しいお客様、若手の経営者の相談役を担っています。そして、組織のマネジメント、利益の最大化という経営の一番重要なポストを担うのが、悠樹です。私が「こんなことをしてみたい」と出したアイデアも、彼が具現化してくれます。――事務所を拡大すると決めて、強化したサービスなどがあれば教えてください。悠樹 まずは、個人事業主のお客様を増やそうと決めました。AIによって税理士の仕事はなくなると言われていますが、テクノロジーが発達すれば、必ず“アナログ難民”も増える。だから、AIが浸透する前に、あえて記帳代行を取りにいこうと考えました。そのために取り組んだのは、「私を紹介してくれる人を全国につくる」ことです。例えば、POSレジの会社の営業マンに、確定申告とはどういうものか、POSレジにすると、個人事業主は青色申告に必要な帳簿作成がどのくらい楽になるのか、といったことを教える勉強会を開きました。すると彼らは、POSレジを売るだけではなく、その先のメリットをワンセットでお客様に提案できます。そして、その情報を教えてくれた会計事務所を紹介してくれるのです。また、そのタイミングでMFクラウド会計を導入。MFクラウド会計はインターネットバンキングやクレジットカードと連携できるので、お客様も私たちも効率化できます。その際、「個人的な支出と事業の支出は必ず分ける」といったアドバイスもします。個人事業主の方は混在させてしまう方がとても多いので、「個人事業でも経営者である」というマインドセットもしていきます。こうした面談は、全国どこであっても、必ず直接会って行います。今はオンライン面談も普及していますが、長く付き合っていただくためには、まず私の人柄をよく知ってもらい、信頼関係を築くことが重要だと考えています。実際、2016年からスタートして、2年で100件、3年目からは毎年70件ほどのペースでお客様が増えていますが、解約率は1%未満です。正樹 さらに、個人事業主のお客様のうち、7〜8%ほどは事業を拡大して法人成りするお客様がいます。そこからは私にバトンタッチして、顧問税理士としてサポートします。個人事業主のお客様を増やし、成長をサポートすることが、法人顧問の見込み客育成にもつながっているのです。――なるほど。長期的な目線でサポートできる体制ができているのですね。お客様は順調に増えていると伺いましたが、「お客様から選ばれる理由」はどんなところにあると考えていますか?正樹 当社には長い歴史があり、お客様もさまざまな困難を乗り越えてきた方ばかり。多くのお客様を見てきたことで蓄積された、経験値や知見という財産を持っていることが強みです。今まで、日本の経済には4回、大きな荒波がありました。バブル、ITバブル、リーマンショック、そして、今回のコロナ禍。この荒波や困難を乗り越えてきた経営者たちの知見を私たちなりに解釈し、それを若い経営者に伝えることができます。若い経営者や企業に圧倒的に足りないのは、「困難な局面でどう対応するか」という経験値です。私たち兄弟には、まだ経験値は足りませんが、これまで事務所に蓄積された経験値があったからこそ、今回のコロナ禍でも、「何をしておかないといけないのか」を伝えることができました。それにプラスして、今はMBAホルダーのCOOがいますから、説得力のあるコンサルティングができる。そういう面でも、伝統と革新の相乗効果があると考えています。悠樹 私の考える他社との差別化は、傾聴力です。私たちは、お客様の悩みや問題を解決する存在です。たとえば、「これは会社にとって必要な経費です」と話すお客様に、いち税理士が「税務署に怒られるからダメです」というのはおかしな話だと思います。決して、ゆるい処理をするということではありません。お客様の話に耳を傾け、真意を測り、「それならこういう形にしましょう」と提案する。それが私たちの役割だと考えています。 分業制を成功させるためには、調整役の配置がカギ――そのほか、事務所内で改革していったことはありますか?悠樹 一番は、連絡のスピードアップです。お客様を一人にしないということですね。「お客様から電話があったが、商談中で出られない。そうこうしているうちに、お客様自身、何を聞きたかったか忘れてしまった」ということもあります。だから、お客様をお待たせしない。そのために社内でチャットワークなど色々なツールを入れて、担当者が対応できないときは、ほかのスタッフが返信できる体制にしました。これは、社内の連絡も同様です。こういった改革を進めるために重要視したのが、「仕事の見える化」です。一人一人の担当者が、どの顧問先にどのくらいの時間をあてていて、経営者からどういう話を聞いてきて、どういう提案をしたのかを、すべて可視化させました。「訪問しているのに記録がない」などがあれば、すべてチェックし、職員にヒアリング。膿を出そうとすると、隠したくなるのが人間の心理ですが、責めるのではなく、「私たちは味方です」「一緒に良くしていきましょう」というスタンスで接しました。急にやり方が変わり、戸惑った職員もいると思いますが、それでも、「今までのやり方を変革していかなければ、私たちの未来はない」と思ってやってきました。ーーお客様の数が急増して、所内の受け入れ体制構築も大変だったのではないかと思いますが、そこはどう変えたのでしょうか?悠樹 分業制を取り入れました。いわゆる製販分離です。ただ、分業制の難点は、業務の全体像が見えないことによる責任感の欠如です。分業しているからこそ、「自分の仕事はここまでです」という感覚になってしまうんですね。責任感が欠如すると、クオリティは下がります。当然ですが、それは税理士事務所としてダメなことです。分業制にすれば、クオリティは必ず下がります。クオリティを考えれば、担当者が一貫して受け持つ方がいい。そこで当社では、分業制の効率と業務のクオリティ、どちらも担保するため、「調整役」を配置しました。記帳、決算書作成、検算、最終申告、それぞれの間をつなぎながら、業務量の配分はもちろん、クオリティのチェックも行います。分業で業務を縦に分けて効率化しつつ、調整役が横をつないで全体の底上げをしていく。全体を見る調整役を置くことで、品質を維持しながら業務量を増やすことができました。正樹 分業制と合わせて、MFクラウド会計の導入や、業務管理のための自社システムの開発に取り組んだことで、どこでも仕事ができる環境をつくることができました。ちょうどコロナ禍だったこともあり、求人で「在宅勤務可能」と打ち出したところ、応募も激増しました。分業していったことで未経験者の採用もできるようになり、採用は順調に進んでいます。 CXを軸に、伝統と革新を融合した組織改革を進める――サービス名も『記帳MEN』などインパクトがあります。事務所のある京都は、少し保守的なイメージもありますが、苦労はなかったのでしょうか?正樹 確かに、交通の便の悪さや、一見さんお断りの紹介文化が根付いていることなどから、保守的な面はあります。実際、私たちも京都府内のお客様は、ほとんどが紹介いただいた方です。ただ、現在は全国をマーケットにしているので、むしろ「京都にあること」は強みです。ほかの地域から見れば、「京都」というのは、一つのブランドですから。情報発信力のある街なので、営業面でのメリットは大きいと思います。また実は、京都には「美しい街で働きたい」と起業した若手の経営者も多くいるのです。ですから、「歴史のある事務所」と「新しいことに挑戦している事務所」というイメージの相乗効果が、大きな強みになっています。「保守的な土地と言われる京都にありながら、こんなにもオープンで新しいことをやっている事務所があるんだ」と思ってもらえる点は、採用でも応募が増えている要因の一つになったのではないかと思います。――さまざまな面で、伝統と革新がうまく融合していますね。最後に、これから挑戦したいことを教えてください。悠樹 CX(カスタマーエクスペリエンス/顧客体験)を軸にした変革を行うことです。今、会計業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、DXを取り入れる前に、CXが重要だと考えています。顧客がどのようなことを考えていて、その顧客に対してどのような価値を生んでいくのか――。もし600社お客様がいたら、600通りの価値を見出していかないといけないのです。また、お客様の数も増えたので、今後はM&Aも含めたお客様同士のマッチングにも取り組みたいと考えています。A社の強味が、B社の弱みを補う、その間に我々が立ちたいと思っています。それぞれの強みと弱みを補い合うことは、厳しい経済状況のなかで会社を救うことにもつながります。正樹 私は、社内で税理士が誕生するような環境をつくりたいと考えてます。幸いにも、現在採用はうまくいっていますが、次は、職員がうちの事務所を使ってどうステップアップしていけるのか、どんな人生を描けるのか?そういった視点からの仕組みづくりが重要だと思っています。ほかの事務所と連携する方法もありますが、自社でキャリアアップして、給料という投資に対してしっかりリターンを上げてくれる職員を育てたい。そのためには、業務量が増えても、各々がきちんと勉強の時間を確保できるように、残業をしなくても業務が終わる体制づくりも重要だと考えています。悠樹 税理士は、個人事業主や中小企業の一番の味方です。経営者が困っているときに、最初の相談窓口を担うのが税理士です。今後、士業や税理士の在り方というのは、「どれだけ人の話を聞いてあげられるか」になってくると思います。それができるキャパシティーを確保して、もっとお客様の声に耳を傾けて、伴走していかないといけない。今以上にお客様に寄り添っていくことが必要だと思います。 2022.01.14
  • 【士業交流フェスタ2022】1月20日に恵比寿で開催!士業事務所の新たなビジネスを創る

    株式会社アックスコンサルティングでは、日頃のご支援に対する感謝を表する場として、毎年1月に『士業交流フェスタ』を開催しています。2022年も、1月20日(木)に東京都・恵比寿での開催が決定しました。 「人」を軸にした最新のビジネスモデルを紹介!新型コロナウイルスの影響が長引き、私たちの生活は目まぐるしく変化してきています。また、アフター・コロナの新しい生き方が模索されるなか、士業の在り方にも変化が求められています。このような激動の時代に対応し、2022年をより素晴らしいものにするために、最新の業界動向をいち早くお届けするとともに交流を深めるきっかけをご提供します。2022年の『士業交流フェスタ』は、「新しい士業事務所の人材ビジネスを創る」をテーマとして、豪華講師陣が「人」を軸にした最新のビジネスモデルについて発信します。また、参加者同士による「大・交流会」も実施。登壇した講師との名刺交換や、全国の士業との交流が可能です。「士業交流フェスタ2022」開催概要【日時】2022年1月20日(木)13:00-19:30【会場】 東京・恵比寿 EBiS303※会場での開催にあたり、新型コロナウイルス対策を行い、参加者および関係者の皆さまの健康・安全面に配慮した運営を行います。詳細・お申込みはこちら 信頼こそが価値となる。BtoFでビジネス展開15:00からのSection.2に登壇する南青山アドバイザリーグループ CEOの仙石 実氏には、「士業事務所の採用にも影響する、新しい資金調達コンサルティングとは」をテーマにお話いただきます。南青山アドバイザリーグループ CEO 仙石 実氏 〈以下、月刊プロパートナー2021年2月号より〉 開業からわずか1年で売上1億円を達成南青山グループは「専門性」「迅速性」「誠実性」という3つの理念を掲げながら、税理・公認会計士、税理士の専門家集団としてお客様に貢献する提案型の会計ファームです。正社員、税理・公認会計士、今でこそ業務委託のスタッフを含めて60名の規模となりましたが開業当初は、私ともう1人の税理士の2人だけ。アパートを改築した家賃10万円の事務所からスタートしました。2013年、監査法人時代の元後輩と一緒に「南青山税理士法人」と「南青山FAS」を立ち上げました。実は仙石家は、仙石秀久という戦国大名の血筋で、家紋は「永楽通宝」というお金の紋です。「戦国時代の侍のように、刀一本で戦える専門家、お客様に貢献できる提案型の会計事務所を目指そう」と意気込んでスタートしました。前職のつながりもあり、おかげさまですぐに大手企業から案件をいただいて業績も順調に伸びていき、1年目で税理士法人とFAS合わせて1億円の売上を達成することができたのです。開業間もない頃は、積極的に交流会やゴルフコンペなどに参加しましたが、「必ずお客様をつかまえて帰ろう!」と誓って行動しても、自分で自分を褒めることに違和感がありました。焦ってお客様を集めるより、じっくりと事務所の「ファン」を増やしていくことが大事だと学び、「専門性」「迅速性」「誠実性」を大事に地道にやっていこうと決意したのが2年目だったと思います。誠実にお客様と向き合うことでファンは増えていきますし、ファンが増えれば仕事も自然と集まってきます。当時、すでに10名ほどの規模になっており、成長が早かったので、最初から拡大路線だったと思われることが多いのですが、そうではありません。私は「少人数でいかに面白い仕事ができるか」を重視しています。大手とは異なり小回りが利くのでどんな案件にも迅速に対応できますし、スタッフも専門性を持っています。「量より質」という考え方です。ただそうは言っても、ありがたいことに仕事は増えていくので、いかに人材を確保するかが課題になってきました。まだ知名度もなく、応募者も来ないので、少ないリソースで仕事をこなしていかないといけない。開業したばかりの頃は、正社員はあまり採用せず、独立した監査法人の後輩たちに業務委託していました。しかし、1~2年すると彼らも自分の仕事が軌道に乗ってくるため、こちらの優先順位が低くなってくる。正社員を増やさないと、これ以上の成長が見込めないと思い、コアメンバーを正社員で固めていく方針に切り替えました。また、業務委託という立場では、経営理念をしっかり共有することが難しい。結局、自分の幸せと組織の幸せが一致している人でないと付いて来てはくれませんし、経営理念の本質も伝わらないと思うんです。ですから今では、私の思いを伝えながら〝理念浸透型〞の経営を心がけています。 信頼資産によって広がる外部パートナーの輪私は常々、人の信頼はお金では買えないと話しています。大事なのは、まずは自分たちの〝信頼資産〞を積み上げていくこと。その信頼が価値になり、お金として集まってきますし、ファンも増えていきます。また、顧問先はもちろん、すべてのパートナー企業が私たちのファンであると同時に、アライアンス企業であると考えています。お客様が知り合いの社長を紹介してくれる可能性もありますし、大手の証券会社が私たちのファンになり、つながりが持てたとしたら、それは数万人の優秀な営業マンを得たのと同じ。さらに、別の企業の協力を得ることで実現できるサポートがあるのなら、それぞれの企業を紹介することもできるわけです。信頼資産を積み上げてファンを増やすことで、私たちが紹介できる企業も増えますから、多岐にわたる経営者の悩みに、高度にそしてより広範囲に対応できるようになります。私たちは経営者のお悩み相談係として、悩みを整理し、ソリューションを提供する窓口です。アライアンスパートナーもスタッフのようなものですから、必ずしもコアは大きくなくていい。「本体は小さくファンは多く」が事務所のモットーでもありますし、アライアンスパートナーを活かしながら、お客様に最大限の満足を与える提案ができることがうちの強みだと思っています。ですから、すでに顧問税理士の先生が付いている企業であれば、その先生には顧問を続けていただき、あくまでアドバイザリー担当として関わることもあります。ほかの士業の先生にもアライアンスパートナーになっていただき、税務や会計を起点にしつつ、本業をサポートするための完全提案型のアドバイザリーファームを目指したいと思っています。「とりあえずあそこに聞いてみよう」という窓口として南青山グループが存在し、そこから私たちが最善だと思える方法を提案していく。お客様の目標にコミットすることにこだわりながら提案力を刀に、経営者の右腕的な存在を目指します。ーーーーーーーーーーーーーフェスタの講演では、士業事務所の採用にも大きく影響する資金調達コンサルティングについて、ここでしか聞けない話を語っていただきます。【士業交流フェスタ2022】◆豪華講師陣が登壇!特別講演には、さまざまなメディアでコメンテーターとしても活躍している慶應義塾大学大学院研究科教授の岸 博幸さんも登壇します!登壇者一覧(順不同)「中部地方に誕生!大型総合会計事務所の事業戦略を探る」矢野厚登氏(MAC&BPミッドランド税理士法人BP医業本部 代表 公認会計士・税理士)「1兆円の資産を扱った税理士が伝える、会計事務所の営業、見直すべきポイントとは」田中 誠氏(税理士法人エクラコンサルティング 代表社員 税理士)「社会保険労務士事務所の新・成長戦略~事務所の組織化を実現する6つのキーステップ~」五味田 匡功氏(キャンバス社会保険労務士法人 創業者兼顧問)「理念経営で目指す個性重視の組織作り&顧客ニーズを捉えるサービス構築手法」吉村徳男氏(社会保険労務士法人 協心 経営企画本部長)「紹介が相次ぐ人的マーケティング戦略手法~信託組成100件超、遺産整理190件に至るまでの過程~」池内宏征氏(司法書士法人リーガルエスコート 代表 司法書士)「注目の弁護士2人が初めての対談!営業、組織作り、これから伸びる事務所の法則とは?」田中 広太郎氏(弁護士法人品川国際法律事務所 代表弁護士)西明 優貴氏(森下総合法律事務所 代表弁護士)  「(仮)最新の士業ブランディングについて」久保 亮氏/圓尾紀憲氏M-1グランプリに出場!お笑い、会計、企業経営もやる「複業税理士」(KUMA Partners株式会社 代表社員 公認会計士 税理士)「(仮)士業業界の人材の未来」岸 博幸氏(慶應義塾大学大学院研究科教授・エイベックス株式会社顧問)「(仮)士業事務所の採用にも影響する、新しい資金調達コンサルティングとは」仙石 実氏(南青山アドバイザリーグループ CEO 公認会計士 税理士)「(仮)人事評価制度の獲得手法」須田修巳氏(ベンチャーパートナーズ社会保険労務士法人 取締役 社会保険労務士)「(仮)新しい士業事務所の人材ビジネスを創る」広瀬元義(株式会社アックスコンサルティング 代表取締役)※講演のテーマ、順番は変更になる可能性がございます 交流タイム講演の前後に、交流タイムを設けております。登壇した講師との名刺交換や、優秀賞を受賞した士業事務所、全国の士業と交流が可能です。昨年の「士業交流フェスタ」はオンライン開催であったため、face to faceの交流会は2年ぶりとなります。ぜひこの機会をご活用ください。▲過去の交流会の様子『士業交流フェスタ』開催概要【日時】2022年1月20日(木)13:00-19:30【会場】 東京・恵比寿 EBiS303※会場での開催にあたり、新型コロナウイルス対策を行い、参加者および関係者の皆さまの健康・安全面に配慮した運営を行います。詳細・お申し込みはこちら 2022.01.13
  • 未経験の職員が3カ月で即戦力に! 徹底した仕組み化で年間80件の相続案件獲得を実現

    2020年7月に開業し、現在4名のスタッフで年間80件の相続案件を受託している島根税理士事務所。独立以来、目標である年間100件の継続的な受注を目指し、士業との連携や社内体制の構築に着手します。代表の島根 猛氏がその秘訣を公開! 相続案件に絞って受託し、その他案件は連携先へ私たちの事務所は、主に相続に関わるあらゆる業務をワンストップで対応しています。顧問業務に関しては、基本的に受託しないのですが、金融機関や他士業の先生からの紹介で、将来的に相続や事業承継の案件に発展しそうであれば、受けることもあります。ただ、その場合はお客様に会計データを用意していただくことを条件にしていて、こちらで記帳業務は行いません。このようなルールを設定することで、顧問業務にかける時間をコントロールし、相続案件に対応する時間を捻出しています。当社は相続業務に特化し、それ以外の戸籍謄本の取り寄せ、金融機関の残高証明発行などの手続き業務に関しては、提携先の行政書士や司法書士の先生に対応してもらい、チームで仕事を回すようにしています。連携を取りながら、それぞれが得意分野を担当していけば、お互いにスムーズですし、生産性も向上していきます。この1年間は、特に士業の先生たちとの関係構築に力を注ぎ、現在は大手司法書士法人から月に3~4件の紹介を受けています。また、ほかの税理士や会計士の先生のお手伝いも5件ほどさせていただきました。「相続業務はあまり得意ではないけれど、お客様との結びつきが強い」という先生は、当社が実務を代行することで、お客様の信頼関係を損なわずに相続案件の受諾ができます。一方、私たちは相続案件を受任できるため、お互いにメリットのある関係性が構築できていると思っています。また、お付き合いのある金融機関からの紹介が月4~5件。不動産会社から自宅売買後の確定申告手続きが数件と、以前担当したお客様からの二次相続の依頼や身内の相続相談が年5件ほどあります。これらの案件を受任できたのは、コロナ禍であっても営業活動を続けてきたからです。直接の訪問は難しいため、今年はニュースレターやはがきを送ったり、電話のついでにお話をさせていただいたりといった活動が中心でした。以前、相続案件をお手伝いしたお客様にも必ず年に1回はニュースレターを送るなどして、関係維持に努めています。相続案件の受任は、お客様との関係性を深めていくことが重要なので、これから積極的に案件を取っていきたいという先生は、まずはDMを送るなど、自らアプローチをして距離感を縮めていくことをおすすめします。 業務工程を見直すことで、スタッフの育成にも成功営業活動に付随して、効率的に業務をこなすために社内体制の再構築を考える必要がありました。現在、事務所では私が契約を行い、資料をお預かりして、準確定申告の書類をつくりますが、それ以外の計算ソフトへの入力や財産評価などは一次や二次のチェックも含めてスタッフに任せています。私が行うのは、最終チェックです。今年の4月からこのように業務フローを改善し、仕組み化することによって、私が受け持つ業務を減らしました。本来、私は人に任せることが得意ではなく、自分でやったほうが正確で早いと思っていました。しかし、思い切って任せてみたところ、スタッフも成長し、案件をたくさん受注しても上手く回せるようになりました。また、自分の手が空くわけですから、その分、新規案件の獲得にも動けるというメリットもあります。 徹底した業務管理と教育がプラスの相乗効果を生む受任案件が増えるに伴い、案件管理についての課題も出てきます。私たちの事務所ではMykomonで相続業務の進捗管理をしており、さらに1週間に1〜2回は進捗会議を行いながら、抜け漏れを確認。また、Chatworkで各担当者の行うToDoリストを全員が共有できるようにもしています。誰が今何をしているか把握することは、業務効率化の面でも大切なポイントです。スタッフの育成はOJTが中心で、初期段階で作業をしながら相続業務の大枠を掴んでもらっています。いきなり一から十まで覚えるのは難しいので、制度の理解も含めて、まずは3カ月間、徹底的に相続税の基礎を学んでもらいます。4カ月目からは細かい仕事も覚えてもらい、OJTでは伝えきれない部分などは外部研修に頼ることもあります。最初は戸惑うと思いますが、基本的に当社は相続税しか扱わないため、スタッフの成長スピードはかなり早いと思います。実際に相続の知識・経験がゼロの状態で入社したスタッフが、半年で完璧な申告書を作成できるレベルに成長しました。一つ何かができるようになると自信がつくので、まずは経験を積み、自信を養っていくことが大切です。業務の生産性を上げるためには、スタッフの成長が欠かせません。スタッフが育つことで事務所も発展していきますし、良い相乗効果を発揮できるはずです。2020年7月に事務所を立ち上げてから現在まで、お客様の数が増えた背景には、こうしたスタッフとの信頼関係構築も大きな要因としてあります。未経験のスタッフが時折立ち止まってしまうように、私もいまだに悩みながら、失敗ながら、まさに「トライアル・アンド・エラー」を繰り返しています。新しいことにチャレンジする時は、「一歩一歩前向きに、成長を急がない」ということを自分にも言い聞かせながら、未経験から相続業務に挑戦するスタッフと向き合っているつもりです。言うならば、横付きで子供の育つ過程を見守り、お互いに成長を喜ぶ感覚にも近いかもしれません。私もスタッフの成長に関しては、ついつい熱くなってしまうのですが、日々少しずつでも前進してくれる姿を見ると、本当に嬉しくなるものです。 【職員の声】マニュアル活用で、相続は「特別な業務ではない」と実感相続業務は、スタッフが直接関わることがめったになく、難易度も高いため、税理士の方にとっても“特別な業務”というイメージでした。最初は、「本当に3カ月で相続業務ができるようになるのか」という不安もありましたが、マニュアル通りに進めることで、未経験からでも一連の財産評価業務ができるようになります。また、島根先生や先輩方から丁寧に順を追って教えていただくことで、短期間でも基本的な評価業務を覚えられましたし、より理解を深めるために相続税や土地評価に関する本を読み、専門用語や特例・全体像を把握できるように努力しようという向上心も湧いてきます。当事務所のマニュアルには、お客様に対するきめ細やかな気配りのコツや、全体を俯瞰してプロとして対応できるようになるポイントが無駄なくまとめられています。作業環境についても、PC機器やソフトなども非常に操作性が良く、初心者でも使いやすいですし、短期間でも作業手順を覚えられます。一方で、分からないことはスルーせず、先生や先輩のアドバイスを受けながら継続的にノートにまとめて知識を定着させることも重要だと感じています。例えば、土地評価の際に使用するソフトの操作では、「何をどう計測するか」という業務の意義を理解することはもちろん、最初のうちは操作への慣れも必要です。セットバックなどの個別事情は、経験を重ねるうちに徐々に理解が深まってきていると実感していますし、入力の際のルールをしっかり定着させることが、チェックをする際にも重要だということが分かりました。作業内容を理解するだけでなく、誰が見ても同じクオリティーにまで仕上げることは簡単なようで難しいものです。マニュアルを理解しながら、4カ月以降も基本を怠らず、作業と知識を同時により定着させていくことが大切だと考えています。相続業務体制強化のポイント 他士業との連携による役割分担で得意分野を回し合う関係性を構築 業務フローの改善と業務管理で作業効率と受注件数が増加 業務を相続税に絞ることでスタッフの成長スピードがアップ 島根氏の相続業務ノウハウをマニュアル化!「相続業務を効率化したい」「相続業務に対応できる職員を育てたい」「相続チームの教育体制を整えたい」という事務所は必見!島根氏が培ってきた相続申告業務のノウハウがギュッと詰まっています。詳細はこちらから! 2022.01.13
  • 【お悩み所長の駆け込み寺】退職者の引継ぎが不十分だった場合どうすればいいの?引継ぎゼロでも困らない対処法とは

    事務所経営のあらゆるお悩みを専門コンサルタントが解決します!今回のご相談は、「退職者の引継ぎが不十分だった」というトラブルです。 退職者の業務を後任へ漏れなく引き継ぐには?前任が引き継ぎを正しく行わないまま退職し、業務記録や顧客との接触履歴も残っておらず、後任の職員があたふたしてしまうのは、ありがちなトラブルです。そのトラブルに対して、一から後任の職員に業務フローの説明をするのは、効率的ではありません。このような状況を防ぐために、日頃から行っておきたいことや、退職が決まったら行うべきことについて解説していきます。 上司と引継ぎについて相談し、退職日までのスケジュールを作成する退職することが決まったら、すぐに上司との面談を設けて、引継ぎについて相談するようにしましょう。引継ぎ方法は、体制や後任者によってさまざまですが、引継ぎが必要な「担当業務」を「誰に」「いつまでに」「どのように」引き継ぐのか決めておきます。次に行うべきことは、担当業務のリストアップです。退職者は、引き継ぐ必要のある業務をすべて洗い出したら整理します。ルーティン業務とイレギュラー業務を分類し、業務ごとにかかる所要時間や発生頻度を、リストに明記しておきます。担当業務のリストができたら、漏れがないか、上長や、社内の関係者に確認してもらうようにしましょう。引継ぎスケジュールを作成する際は、退職日から逆算して、引継ぎにかかる時間を算出しておきます。後任と引継ぎスケジュールを調整し、優先度の高い業務から引き継いでいきます。引継ぎは退職日の3日前までに終わるようにスケジュールを組んでおくことで、予定外の業務が発生するなどの不測の事態が起こったとしても、慌てずに対応することができるでしょう。 引継ぎマニュアルと顧客情報を作成しておくマニュアルがない業務の場合は、予め準備をしておくようにしましょう。引継ぎ用のマニュアルを日頃から作成しておくことは、担当業務を整理することで、業務効率化のメリットもあります。また、口頭での引継ぎで、漏れがあった場合や、後任者が理解していなかった場合など、退職後でも、文面でチェックすることができるので安心です。顧客情報においても、契約内容、取引内容、連絡先、注意点などを日頃からリスト化しておくことで、引継ぎの時間を短縮し、後のトラブルを防止することができます。後任も焦ることなく対応することができるでしょう。 業務の進捗を常に“見える化”で引継ぎ業務ゼロに常日頃から、業務内容を職員全体で共有できる環境であることも大切です。引継ぎが退職日までに終わらないといったトラブルを避けるためにも、日ごろの業務の進捗やお様客とのやり取りは、タスク理管ツールや日報で共有し、常に〝見える化〞するようにしましょう。こうすることで、当事者しかお客様情報や業務内容について把握していないという状況を解消できます。さらに、決算時の資料や、提案書などの成果物を日ごろから全員が見られるクラウドサーバーを用意する。月に一度、事例の発表会を行うなどすれば、職員全体で業務の共有ができると同時に、若手職員の参考になり、職員教育にもつながります。業務プロセスの可視化を徹底していくと、担当の配置換えがあったとしても引き継ぎ業務をゼロにすることも可能です。ジョブローテーションがしやすい状態になるため、人材の定着にもつながります。 引継ぎ業務の説明と関係者への挨拶案件の目的や経緯、業務フロー、トラブル発生時の対処法などはできるだけ詳しく伝えることが大切です。直接引き継ぐ必要のある業務は、タイミングが合えば、業務の一連の流れを後任と行い、前任が退職したあとに不明なことがないよう、細かく打ち合わせるようにしましょう。また、退職者は、社内外の関係者には必ず挨拶をしておくことも重要です。特に退職者が担当している顧客や、仕事上でやり取りをしている部署や取引先には、事前に後任者を伝えるようにします。突然、担当者が変わってしまうと、相手が困惑し、事務所の信用を失う恐れもあります。時間に余裕があれば、後任と一緒に挨拶をすることがベストです。 退職時は引継ぎのチェックリストを活用するほかにも、退職者が出た際に行うべきこととして、『退職時提出物チェックリスト』を用意しておきましょう。これは、お客様とのやり取りの記録など、引き継ぐべきものや、事務所に提出すべき書類を一覧にまとめたものです。退者職は、どうしても次の仕事や職場に意識が向いているため、退職者と後任職員だけに引き継ぎを任せると、引き継ぎが〝できているつもり〞になりがちです。退職後に「実は抜け漏れがあった」ということを防ぐためにも、引き継ぎにはチェックリストを活用し、必ず上司が立ち会いましょう。 退職後の緊急連絡先を確認しておく退職後、当事者にしかわからない業務内容や、トラブルの対処法など、引継ぎ漏れがあった場合に連絡がとれるよう、個人の携帯電話やメールアドレスを聞いておくと安心です。とはいえ、退職後の業務連絡になるため、すぐに対応をしてもらえるとは限りません。やはり、引継ぎを万全に行うことが一番。相手主導で引継ぎを行わず、上長、退職者、後任、それぞれが積極的に行い、引継ぎの進捗状況を確認しながら進めるようにしましょう。【この記事のまとめ】 退職が決まったら、上長と引継ぎについて打ち合わせをする 退職者は引継ぎスケジュールを作成する 引継ぎマニュアルと顧客情報を作成しておく 業務の進捗を常に“見える化”する 退職時は引継ぎのチェックリストを活用する 退職後の緊急連絡先を確認しておく 2022.01.13
  • 【新春座談会】DX士業が語り合う!新たな士業像とは?2022年、士業の大変革 Vol.1

    コロナ禍で加速したDXの波。士業事務所にとっても、業務の幅が広がり、顧問先のDX支援が可能になるなど、大きなビジネスチャンスといえます。このDX時代に取り残されないために、士業が行うべきこととは?自社でシステム開発に取り組む朝倉 歩氏(サン共同税理士法人)磨 和寛氏(司法書士法人トリニティグループ)柴垣和也氏(社会保険労務士法人クラシコ)角田 望氏(株式会社LegalForce)の士業4名が、その極意を語り尽くします!ファシリテーター/髙見史弥氏(株式会社アックスコンサルティング) システム開発を進めるポイントは、負けを認めること――本日ご参加の先生方は、士業でありながら、積極的にシステム開発にも取り組まれています。まずは、DXやシステム開発に取り組み始めたきっかけ、開発の苦労などを聞かせてください。朝倉 税理士業界のことからお話すると、中小の事務所は危機意識を持ってはいるものの、ブランド力や資本力で大手には勝てないという現実があります。そこを打破するカギが、DXだと考えています。業界全体で見れば、私が独立した6年前に比べてDXが進んでいて、コロナ禍でその動きは加速しています。ただ、そもそも平均年齢が高い業界なので、まだ広く浸透していないと感じています。――朝倉先生は他事務所にDXの支援もされているそうですね。朝倉 はい、当社では勤怠管理や帳票作成、決算業務などに自社開発のシステムを使用しているので、DX関連でご相談を受けることも多くあります。とはいえ、最初から他事務所の支援を考えていたわけを認めることけではなく、自分たちに必要なものを開発して、使い勝手が良ければノウハウを共有していくという流れです。朝倉 歩氏/サン共同税理士法人 代表柴垣 既存のシステムでは手の届かない領域をカバーするために、自分たちで開発したという感じですよね。私たちも同じで、給与計算や手続き業務、ビジネスチャットなどはSaaS(※)を導入して効率化できましたが、労務相談業務の効率化が課題でした。これを解決するために、情報共有や規程作成ができるシステム『HRbasePRO』を、COOとして参画している会社で開発しました。朝倉先生はシステム開発にどのくらいの期間がかかりましたか?※SaaS:Software as a Service。クラウドにあるソフトウェアを、インターネットを経由して利用できるサービス朝倉 4年くらい前からコツコツと進めてきました。開発に関しては、磨先生のお話も聞きたいです。磨先生は2020年に新会社を設立して、もうサービスをリリースされています。そのスピード感の秘訣を知りたいです。磨 それは完全にCTO(最高技術責任者)を中心としたエンジニアの力です。私の仕事は能力の高い人を集めてくることで、開発に関しては最初からほとんど任せています。〝自分の負けを認めること〞が大事だと思っていますので。 2022.01.07
  • 【新春座談会】DX士業が語り合う!新たな士業像とは?2022年、士業の大変革 Vol.2

    コロナ禍で加速したDXの波。士業事務所にとっても、業務の幅が広がり、顧問先のDX支援が可能になるなど、大きなビジネスチャンスといえます。このDX時代に取り残されないために、士業が行うべきこととは?自社でシステム開発に取り組む朝倉 歩氏(サン共同税理士法人)磨 和寛氏(司法書士法人トリニティグループ)柴垣和也氏(社会保険労務士法人クラシコ)角田 望氏(株式会社LegalForce)の士業4名が、その極意を語り尽くします!ファシリテーター/髙見史弥(株式会社アックスコンサルティング)Vol.1はこちら DXは、付加価値を生み出して業界のトップに立つ好機になる――DXで士業の定義が変わるという話がありましたが、士業事務所はどのような心構えが必要になるのでしょうか?柴垣 社労士業界は税理士業界と似ていて、高齢の先生も多く、まだまだDXが進んでいません。でも、お客様やスタッフのためにも、社労士はどんどん進化していくべきだと、私は思います。DXに取り組まないということは、古い車でレースをしているようなものです。古い車は故障も多く、メンテナンスも大変です。その対応に時間をかけるなら、最新の車に乗り換えて、余剰の時間を創意工夫に注ぐ方がいい。そういう社労士や企業が増えれば、よりイノベーティブな社会になっていくはずです。朝倉 本当にその通りで、DXによって良質で価値の高いサービスが提供できれば、一気に業界の上に行くことができるタイミングだと思います。DXについていけないという先生もいますが、FAXがメールになったり、手書きで作成していた申告書がパッケージソフトやクラウドソフトで自動化されたりと、以前からITで生産性が上がるという変化は起きています。DXで全体の生産性が上がるのであれば、その流れに取り残されないことを気にかけたほうがいい。DXできていないことに恐怖を感じている先生は、生き残れる可能性が高いと思います。 2022.01.07
  • 注目の税理士・島根猛氏に直撃!わずか3カ月で1人前に!未経験でも安心の相続マニュアルとは?

    年間60件を超す相続税申告業務をこなす島根税理士事務所。その秘訣は、未経験の社員でもわずか3か月で、一通りこなせるように手順をまとめた『相続マニュアル』にありました。考案者である島根猛氏の実績やノウハウを詰め込んだ独自マニュアルについて、本誌編集長・広瀬元義が島根氏のもとへ取材しました。マニュアルがもたらす効果や営業手法について語り合います! 相続業務の効率化と質の担保の共存を実現広瀬 島根先生は 、相続案件の業務フローをマニュアル化して、税理士の先生向けに販売されています。マニュアルに沿って業務を進めることで、どのような効果が期待できるのでしょうか。島根 業務効率化を図れるのはもちろん、〝質〞を担保できるという面が大きいと思います。広瀬 質の担保ですか。島根 はい。マニュアルは財産の計上漏れや、お客様に対する聞き漏れが起こらないように作成しています。相続案件は、まず初めにお客様へのヒアリングを行うのですが、マニュアルに沿って聞いていけば、必要な情報はすべて収集することができますし、時間も短縮できます。私の事務所でもマニュアルを活用していますが、漏れもなく、1時間ほどでヒアリングを終わらせています。広瀬 それは早いですね。相続業務について独自のマニュアルを作成している税理士の先生もいらっしゃると思うのですが、そのような方も島根先生のマニュアルと見比べることで改善点が見えてくるかもしれませんね。島根 そうですね。これから相続の分野へ踏み出したい先生はもちろん、すでに相続案件を継続的に受託していて、現在の業務フローに課題を感じている先生にも、ぜひ手にしていただきたいです。 ノウハウを集積し未経験でも業務可能に広瀬 マニュアルがあれば未経験者でも相続業務を手がけられるというのは驚きでした。島根 もちろんお客様に対してスムーズに説明をするには経験や練習が必要かもしれませんが、基本的には相続業務に関するすべてのノウハウを落とし込んであるので、たとえばまったくの未経験であっても、マニュアルを見て一つずつ進めていくだけで、最低限の相続業務はこなせると思います。広瀬 島根先生のコンピテンスを顕在化させているわけですね。マニュアルによって「暗黙知」を「形式知」にされている。島根 誰でもできるということは、必ずしも一人で手がける必要はないということです。マニュアルは土地や有価証券など、財産ごとに分かれているので、それぞれを別の人が担当してもいいのです 。広瀬 分業化ですね。島根 はい。このマニュアルは教育ツールとしても活用できますので、事務所のスタッフを育て、その能力に応じて振り分けることもできます。広瀬 相続業務を強化したいと考えている先生は、スタッフに任せることも視野に入れたほうがいいわけですね。現在、島根先生の事務所では、相続業務は全体の何割くらいを占めていますか?島根 今は8割が相続業務です。広瀬 マニュアルで効率化が図れているわけですから、時間単価は上がっていますよね?島根 そうですね。もちろん案件によってかかる時間も報酬もばらばらなので、一概には言えないのですが、たとえば先日手がけた案件ですと、お客様の所にお邪魔して、往復でだいたい3時間。そこからお客様からいただく資料を待つ時間などを省いて、社内での業務が3〜4時間の合計7時間くらいですべて終わりました。 年間60件もの案件を獲得する営業手法広瀬 どうやって年間60件もの相続案件を受託されているのかというのは気になります。島根 確かに「60件」という数字にはセミナーなどでも興味を持たれることが多いですね。結局、相続業務を始めてみたいという先生は多いのですが、相続案件はどうしても属人化してしまい、ノウハウを持っている経験者に流れてしまう。しかし、マニュアルがあれば、相続業務の全体像を把握できますし、実際に活用もできますので、あとは営業でいかに顧客を増やしていくのかが大事になってくると思います。広瀬 すでに顧客を多く抱えている先生であれば、ニーズの掘り起こしも営業の一環ですよね。島根 おっしゃるとおりです。顧問先に相続税の申告案件がなくても、将来のシミュレーションをしてあげて、相続に関する提案をしてしてみてもいい。他にも、不動産会社や保険会社、 銀行との関係をつくったり、司法書士などほかの士業の先生と連携を深めたりなど、さまざまなアプローチ方法があると思います。広瀬 島根先生のマニュアルには、営業の手法も含まれていますね。島根 はい。実は私が生命保険会社の営業出身で、そこで培ったノウハウを入れています。広瀬 もともと会計業界にいらっしゃって、そこから生命保険会社を経て、戻ってきたとお伺いしています。税理士の資格を取得したのはおいくつのときですか?島根 大学を卒業して2年目でしたので、25歳ですね。そこから専門学校で税理士講座の講師を経験して、26歳で税理士法人に入社し、基礎を学びました。そこでは1年半ほど働いたのですが、ご縁もありまして、生命保険会社の営業に転職しました。もちろん興味があったから移ったのですが、なかなか厳しい世界でしたね。広瀬 営業は難しかったですか。島根 そうですね。今の仕事にも通じると思うのですが、仕事を継続して獲得する難しさは身にしみて感じました。その分、当時の教えや出会いが今の礎となっています。基本的に保険会社は「紹介で人脈を広げていきなさい」 という教えなんですけど、紹介にも限度がありますから。ただ、 トップセールスマンが自分の営業ノウハウを公開するなど、社内には教え合う文化があり、マーケットの取り合いにはなりませんでした。広瀬 素晴らしい文化ですね。島根 そうですね。「この人の営業スタイルを参考にしたいな」という人に聞きに行けば教えてもらえる雰囲気はありがたかったです。おかげさまで、お客様の話に耳を傾ける重要さや信頼関係を築く建設的なコミュニケーションを学び、毎週契約をいただくことができました。その後、税理士に戻ったのが30歳くらいです。 より深く関わるために顧客を見定める広瀬 最初の税理士法人で税理士としての基礎を、保険会社で営業の基礎を学ばれたんですね。独立されたのはなぜですか?島根 保険会社から別の会計事務所に移って、資産税の経験を積んだのですが、やはり自分のやり方でやっていきたかったというのが大きいと思います。独立直前には年間100件ほどの案件を担当していたので、2017年に思い切って独立することにしました。広瀬 100件はすごい!今も手掛けている案件は多いと思うのですが、今後も増やしていこうと考えていますか?島根 いえ、今の規模で十分だと考えています。手広くしてしまうと管理も大変ですし、限られたお客様に集中するほうが結果的に売上も伸びていくと思うんです。また、今は準備段階なのですが、新しいビジネスも考えています。広瀬 なるほど。顧客を絞るというのは良い考えだと思います。島根 2015年に相続税法の改正がありまして、より広い範囲で相続税がかかるようになりました。たとえば、改正前の基準ですと100人のうち4人にしか相続税が発生しなかったのですが、改正後は100人のうち8人に相続税が発生する。ただ、改正前の4人と、新たに相続税がかかることになった4人では、財産の額に大きな差があります。お客様を選ぶ形にはなってしまうのですが、事務所の将来を考えたうえで、基本的には改正前の4人に絞って対応していこうと考えています。広瀬 考えているという新しいビジネスも、改正前の4人をターゲットにされているのですか?島根 はい。過去にお仕事をさせていただいて、私のことを覚えてくださっているお客様が5~600人はいますので、改正前の基準に当てはまるお客様を対象に、ライフプランをはじめ、保険も財産組み替えも資産運用もすべての相談に乗る、ファイナンシャルプランナーやプライベートバンカーのような仕事を考えています。広瀬 つまり、相続業務を入口に、そこからお客様と深く関わっていくというわけですね。島根先生のお話をお伺いすると、将来を見据えている人ほど、クライアントとの信頼関係を重視していると感じました。島根 税理士というだけでお客様の信頼は厚いので、その思いには応えたいと考えています。相続業務の作業部分はマニュアルを用いて対応していきながら、繰り返しお客様と接することで、信頼を勝ち取ることもできるのではないでしょうか。広瀬 なるほど。マニュアルがお客様との関係構築の一助となるわけですね。これまで相続業務というのは、寿司職人のように先輩の仕事を見て覚えていく職人のイメージがあったのですが、マニュアルによって誰もが業務に携われるようにしたというのは、すごく革新的ですよね。島根 実際に私の事務所でも、続業務未経験の状態で入社したスタッフを3カ月で一人前に育てた実績があります。相続に関して、そんなに難しく考える必要はないんです。相続業務は、税理士の仕事のなかでも、一番仕事の流れが見えやすい、把握しやすい業務でもあります。マニュアルで全体像を掴んでもらって、あとは現場に出てもらえれば、未経験の方でもすぐに成長できると思います。広瀬 なるほど。このマニュアルがあれば、相続業務はもうバッチリというわけですね(笑)。島根 はい、バッチリです(笑)。広瀬 とても良い話が聞けました。ありがとうございます。 【島根氏の相続業務ノウハウをマニュアル化!】「相続業務を効率化したい」「相続業務に対応できる職員を育てたい」「相続チームの教育体制を整えたい」という事務所は必見!島根氏が培ってきた相続申告業務のノウハウがギュッと詰まっています。詳細はこちら! 2022.01.05
  • 注目の税理士・島根猛氏が行く!高品質な相続サービスを安定して提供する極意とは?

    拡大する相続市場で士業事務所に求められるものは何なのか?いま注目の税理士・島根猛氏が相続のトップランナーたちと語り合う特別対談企画です。資産税特化で拡大し、 現在では100名以上の職員を有する税理士法人深代会計事務所の深代勝美氏、花島宣勝氏と、高次元でクオリティを維持するための社内教育について話します。 法人・資産税部門を超えた協力体制がカギ花島宣勝氏、以下:花島2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、4月から2カ月弱はお客様の所へ訪問することができませんでした。深代勝美氏、以下:深代ラインツールも導入しましたが、 それでも限界があります。ただ、 緊急事態宣言の解除後は、少しずつ訪問を再開できるようになってきました。もちろん、感染対策を講じつつですが。島根 猛氏、以下:島根私のところも同じです。やはり直接お会いしないと話せないことも多いですしね。花島 相続では遺産分割協議などもあるので、皆様に集まっていただかざるを得ないですから。深代 相続に関しては、コロナ前からですが、新規の金融機関や不動産業者との取引が増えてきていますね。要するに相続というものを皆さんが真剣に考えるようになってきた。 専門的な知識を持っている会計事務所との仕事を希望されている潮流のようなものは感じています。花島 昔は個人のお客様が中心でしたが、最近では法人のお客様からの相談も増えていますね。島根 わかります。私のところも金融機関や不動産の仲介会社、ハウスメーカーとの取引が中心です。不動産の仲介会社であれば、支店に電話をして、営業担当者と一緒にお客様のところへと足を運んでご挨拶をさせていただくというところから始まります。深代 弊社は基本的に受け身のスタイルでやっていまして、営業部門もないんです。「仕事は取りに行かない」というのが事務所の方針でして、お客様からご紹介いただいて、間接的に広がっていくことが多いですね。花島 受け身なので実際にお客様と話してみないとどんな仕事になるかは分かりません。法人化や遺言書づくり、確定申告まで、会計事務所ができることは何でもやるというスタンスです。弊社は資産税部門と法人部門に分かれているのですが、例えば法人部門の担当者が顧客の不動産管理会社に話を聞きに行ったら、実は相続の相談だったということもある。そうなると、資産税部門の出番になるわけです。島根 なるほど、仕事を受けてから各部門に割り振るのですね。花島 さらに今は法人部門が5部まであるので、仕事をもらってきたときに全体の仕事量を見て割り振り、偏りが出ないようにしています。深代 完全には分かれていないというか、資産税部門でも法人の確定申告を手伝ってもらったり、逆に法人部門の担当者が付き合いのあるお客様の相続を担当したりもします。お客様も馴染みの担当者が対応してくれる方が助かるはずですから。 チェック表と記録簿でクオリティを担保島根 深代先生のところは、売上高の数字目標を設定しないとお聞きしました。深代 そうですね、こなしてほしい件数などは指標として伝えていますが、売上高については設定していません。花島 おかげさまで業績も悪くないので、掲げる必要はないと思っています。全体的に業務は多いのですが、部門をまたいで流動的に仕事を割り振れば対応できる。同時に、仕事自体の質は300項目ほどあるチェックリストを使って担保するようにしています。深代 相続業務も細かい要点も記載した独自のチェックリストを活用することで高い品質を維持でき、 お客様に安心感を持ってもらえていると思います。花島 社内にチェックリスト委員会がありまして、年に1回更新を行うんです。過去のミスや税務調査で指摘されたことなどを盛り込んで、バージョンアップさせています。島根 規模が大きくなると、高次元でクオリティを維持するための標準化の体制は重要になりますよね。私のところは今、正社員と派遣社員を入れて3人で回しているので、まだチェックリストは必要ありません。相続の場合だとヒアリングのときにすべて書き出しますし、これまでに500件以上の相続問題を担当してきたので、レベルの低い仕事はしていないと思っているのですが。深代 なるほど、島根先生の経験が質の担保になっているわけですね。確かに相続案件は経験がものを言う場合もありますから。経験を積むことはとても大切です。島根 あと、細かい業務は社員がやりますが、最終的にはすべて私がチェックしているのも、質の担保につながっていると思います。花島 そうなんですね。弊社でも担当者のほかに、上司と審査部がチェックしています。もちろん、実務的な動きに関しては、ある程度、担当者に一任しています。島根 担当者がヒアリングからお客様に関わるということですよね。 とても素晴らしいですね。それを上司がフォローするイメージでしょうか?花島 そうですね。例えば、お客様にマストで聞くことなどもチェックリストの項目に入っていて、それを上司が毎回、確認していきます。また、お客様との打ち合わせ後は、どんな話をしたのかを複写の記録簿に付けてもらって、1枚は上司に、もう1枚はお客様に渡します。お客様にとってはそれが議事録代わりになりますし、上司にとっては報告書になる。それを確認することで、次回にプラスαで聞くことなどを指示できるというわけです。深代 お客様にも「今回はこういうご説明をしました」ということが記録に残るので、やりとりも遡ることができて好評なんです。島根 お客様と事務所の双方で記録簿を保管することで、過去のやりとりの記録を遡ることができますね。細やかなチェックリストと 記録簿があれば、経験が浅くても安心して業務を遂行できる体制になっているんですね。 知識が身につく研修で未経験でも実務に対応深代 弊社は新卒も採用しますし、もともと会計事務所にいたけれど、資産税を手掛けたことがないという人にも来てもらっています。花島 まず、入社1年目に行う研修では、簡単な仕訳や消費税、不動産収入の明細の見方など、すべてを教えるんです。それも長いスパンではなく、2〜3週間で学び、あとは実務で経験を積んでもらう。1〜2年経つと、仕訳が完璧に理解出来るようになるので、そこからは資産税研修を別で行います。新卒でだいたい3年目から、資産税が未経験の中途社員は、入ったときから受けてもらいます。深代 この研修に関しては、外部講師ではなく、近くの先輩が教えるようにしています。 教わる立場の人に近い人が指導するのがいちばんだと思うんですよ。 島根 確かに年次の近い先輩が、自分自身がつまずいた要点を踏まえたうえで指導するのはとても効果的ですよね。研修は教育テキストがあるのでしょうか?花島 あります。相続税の基礎知識、土地の評価、非上場株式、法人シミュレーション、遺言書の5つが基礎として、これを実務と行して学んでもらいます。同時に月に数回ですが会議の前に勉強会なども行っていて、法改正があったときなどは、私や深代が講師になって教えたりもしますね。深代 全部を外部に任せることもできますが、やはり内部で行うことで意思統一もできるし、全体の能力も把握できる。個人のレベルアップにもつながっていくことなので、そこは力を入れていますね。島根 社員のレベルは顧客の満足度に直結しますからね。結局、どれだけお客様のニーズに応えられるのかが重要なのだと思います。私も経験しましたが、こちらの仕事に満足していただければ、何年も前に担当したお客様から連絡が来ることもありますから。深代 おっしゃる通りです。これからの会計事務所に求められているのは、小さな相談でも対応できる柔軟性だと思っています。「ここに相談すれば安心だ」と思ってもらえることが、生き残るうえで大切なのではないでしょうか。島根 そうですね。相続は次の世代へのバトンのようなもの。お客様の記憶に残る仕事ですから、満足していただけるよう柔軟な姿勢が大切です。花島先生、深代先生、 ありがとうございました。ー 対談を終えて ー100名を超える職員全員の知識の底上げや、業務の標準化が確実に行われていることに大変驚きました。また、職員の方の事務所や業務に対する満足度が高いことが、結果として、お客様へ質の高いサービスを提供することに繋がるということを、今回お話をお聞きして改めて実感しました。社員研修や社内体制など、私がこれから組織をつくっていく上で、参考になる事がとても多く、組織運営方法について大変勉強させていただきました。(島根氏) 【島根氏の相続業務ノウハウをマニュアル化!】「相続業務を効率化したい」「相続業務に対応できる職員を育てたい」「相続チームの教育体制を整えたい」という事務所は必見!島根氏が培ってきた相続申告業務のノウハウがギュッと詰まっています。詳細はこちら! 2022.01.05
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